2003年2月8日(土)「しんぶん赤旗」

小泉「改革」 財政と社会保障の土台崩す

志位委員長の総括質問


首相 “家計だけでなく総合的に見る必要ある”
志位 “経済の6割握る家計を見ずにどうする”

グラフ

グラフ

負担増

命に必要な治療を奪っている

 社会保障の負担増・給付削減と庶民増税をあわせて四兆四千億円もの負担増を強行したらどうなるのか−−志位氏は「在宅酸素療法」患者の実態をとりあげました。

 同療法は心肺機能が弱った人の生活と寿命を支えています。ところが、健康保険三割負担に先行して昨年十月実施した老人医療の改悪で、月八百五十円の負担が一万円前後に引きあがりました。

 志位氏 酸素を奪われた患者さんは、苦しさで動くこともできない。亡くなった患者さんもいる。新聞に「これが『痛み』の一言で片付けられるものかどうか、よく考えてください」との投書がのった。この声に首相はどうこたえるのか。

 小泉首相 皆保険制度を維持する点にも配慮してほしい。痛みだけ、負担だけいうが、だれかが負担しないといけない。それが保険制度だ。

 志位氏 命を奪うようなことをやっておいて、痛みの一言で片付けられるようなものなのか。

 治療中断に追い込んでいる実態を付きつけられ、答弁に窮した首相は「酸素をとりあげるなんて、バカなことをするわけがない」と開き直り。坂口力厚生労働相は「酸素療法のことはよく聞いているので今後、対応していきたい」と答えました。

家計・経済に空前の打撃

 志位氏は、経済に与える負担増の影響について検討しようともしない政府にたいして、家計に与える影響を九七年当時と今回を比較した試算結果をパネルで示しました。(図1参照)

 不況の引き金を引いた九七年当時の実質負担増は二・四万円。今回は二六・二万円にも跳ね上がり、十倍もの減少です。

 志位氏 これだけの負担増を押しつければ、経済に破壊的影響を与える。橋本内閣の大失政の二の舞いになることは火を見るより明らかだ。

 首相 先行減税もある。企業活動を活発化することで、雇用拡大とか全体を見れば経済にいい影響を与える。総合的に見る必要がある。

 志位氏は、先行減税の中身は大企業減税だと批判し、「経済の六割を占める家計に注目しないでどこに注目するのか。大企業を活発にすれば家計にも及ぶという議論はなりたたない」と指摘。「家計の影響にたいする認識もない、経済への影響の検討もしないで、これだけの負担増を押しつけることをやったら恐ろしいことになる」とのべました。

財政と社会保障を「持続不可能に」

 国民負担増によって皆保険制度は「持続可能になる」と言い張る首相。

 志位氏は、財政と社会保障の土台を破壊するとのべ、九四年度以降の税収と社会保障収入の推移をパネルで提示(図2参照)。税収で一五・八兆円、社会保障で四・八兆円の計二〇・六兆円も落ちこんでいる事実を示しました。

 「負担増を安易に押しつけるやり方をとると、税収も減るし社会保障収入も減ってしまう。四兆円の負担増をやったら持続可能どころか不可能にしてしまう」と志位氏。

 「財源がない」と開き直る首相にたいして、国と地方の税収のうちどれだけが社会保障に向けられているかを表す「見返り率」について、サミット七カ国を比較した実態を示しました。(図3参照)

 最高はドイツが66%で、日本はサミット七カ国中最低の22%。イタリア並みに一割引き上げただけでも八兆円もの税金を増税なしに使えます。

 「年間四十五兆円から五十兆円という異常に肥大した額を公共事業にあてているという財政のゆがみがある。税金の使い方にメスを入れれば、四兆円の負担増の必要もなくなる」と志位氏。「この経済危機のなかで負担増を押し付ける政策は今からでもやめるべきだ」とのべました。

首相 “確かにいわれる面ある”
志位 “黒字企業も狙い撃ちされている”

不良債権

成長の芽摘むやり方転換を

 不良債権処理を加速すれば“新たな成長分野に資金が回る”という小泉内閣。志位氏は「空理空論だ」と指摘しました。

 取り上げたのは、中小企業に対する大手都市銀行などからの金利引き上げ要請の実態です。中小企業家同友会は昨年十一月、全国一千社にアンケートを行いました。結果は、過去一年間に金融機関から引き上げ要請を受けた企業が25%。とくに大手銀行との取引が多い首都圏では40%にのぼります。

 「どこが狙い撃ちされているか」−赤字企業だけではなく、さらに「やや黒字」の企業が対象です(図4参照)。志位氏は「十年来の大不況のなかで『やや黒字』の企業といえば、将来伸びていく健全な企業だ。そこを狙い撃ちして、一方的に金利を引き上げ、むしりとっている」と告発しました。

 志位氏 不良債権処理をやればやるだけ、逆に成長分野に対する資金供給を困難にしている。

 首相 確かにいわれるような面も一部にある。しかし、不良債権処理を進めないと、金融がうまく機能しない。

 竹中金融相 貸しはがし的な問題が起こっていることは否定する気はない。

 “成長分野に資金が回る”どころか正反対の現実を示した追及。小泉首相はこの現実を認めざるをえませんでした。それでも「貸出残高はここ数年ずっと減っている」(竹中金融相)と責任逃れに躍起となりました。

 志位氏は「銀行は、借り手企業を育成するなど社会的機能をもっている」と指摘。「しかし、銀行と中小企業が信頼関係をつくるには時間がかかる。それを、二―三年と期限を区切って『不良債権処理の加速』という方針を押し付ければ、成長の芽を摘んでしまう」とのべ、抜本的転換を求めました。