2002年10月8日(火)「しんぶん赤旗」

地域金融と地域経済―「ふなしん」破たんから考える
シンポでの志位委員長の発言

(要  旨)


 六日に千葉県船橋市内で開かれた「シンポジウム 地域金融と地域経済―『ふなしん』破たんから考える」での日本共産党の志位和夫委員長の発言(要旨)は次のとおりです。


 志位委員長は、「一月二十五日の『ふなしん』つぶしは道理のないものだということを、原点にかえってあらためてはっきりと確認しておきたい」と、まず切り出しました。

 一つは、金融庁の検査が、担保物件にたいする不動産鑑定士の評価を90%しか認めないなど、「破たんさせるための検査」だったこと。いま一つは、金融整理管財人団のなかに、受け皿金融機関の『ひがしん』(東京東信用金庫)の職員が入り込んで債権の切り分け作業をしていた事実が明らかになったことを指摘。

 「この二点は、日本共産党の国会追及で、柳沢前金融大臣もその問題点を認めざるを得なかった。『ふなしん』つぶしに道理がなかったことを相手も認めざるをえなかったことを、最初にしっかり確認したい」と強調しました。

 次に志位氏は、「地域経済を守れ! ふなしん対策連絡会」が掲げた(1)出資金の保護(2)業者への融資を従来どおり行うこと(3)店舗の存続(4)職員の再雇用の保障――の四項目の要求が、どうなったかと問いかけ、「困難なたたかいを余儀なくされているものの、今後のたたかいにかかっているものも多いが、この数カ月のたたかいでかちとった成果もあることを、しっかり確認したいと思います」と、三つをあげました。

 一つは、四項目の要求が船橋市民、近隣の自治体も含めた共同の要求となったことです。

 二つ目は、たたかいで債務者全体の92%を、RCC(整理回収機構)に送らないで『ひがしん』に引き取らせたことです。

 三つ目は、金融庁が四月十二日に「金融検査マニュアル別冊・中小企業編」をつくり、不十分ながら中小企業の特性に基づいた検査への一定の改善の足がかりになっていることをあげ、「引き続き四項目実現のため全力をつくしたい。そのうえでも、かちとった成果にお互い確信をもちたい」とのべました。

 今後の課題について志位氏は、信金・信組つぶしの根本にある「不良債権の最終処理の加速」という政府の無謀な方針の転換を呼びかけました。

 「この一年間で破たんは証明済み」と志位氏。全国の銀行の不良債権残高(三月末)は、三十三兆六千億円から四十三兆二千億円に、九兆六千億円増加。不良債権は十兆円処理したが、二十兆円増えたと指摘。「こんなに破たんがはっきりしているのに、さらに国民の税金を流し込み、日銀が株を買い取り、中小企業つぶしを行う愚をやめさせよう」と訴えました。

 また、志位氏は、「ふなしん」はじめ全国のたたかいの結晶として提案している、地域経済・金融を守り育てる日本共産党の「地域金融活性化法」についてのべました。

 その中身は、(1)地域金融機関に貸し渋りなどの禁止や、地域住民や事業者の要望にきめ細かく対応する義務があることを明確にする。(2)信金・信組の監督・検査権限を金融庁から都道府県に移し、現状を踏まえた検査ができるようにする。(3)また、都道府県に「地域金融の活性化に関する審議会」を設置し、運営は地域住民、事業者、金融機関などの意見が適正に反映できるようにすると説明。

 志位氏は、「巨大金融機関による淘汰(とうた)と金融投機が激しいアメリカでも、『地域再投資法』(CRA)がつくられ、金融機関に対し、低所得者や中小企業などの資産需要に適切に応える責任があることを明らかにしている。ぜひ、力と知恵を尽くして、地域経済、地域金融を守るために頑張りたい」と決意をのべました。

 志位氏は、「どうして政府はそんな政策をとるのか」という会場からの質問に、長銀が破たんしたとき数兆円の税金を投入して不良債権を処理して、タダ同然の金額で外資系に売った新生銀行の例をあげ、「アメリカの国際金融資本のために国民の税金をつぎこんでまで『不良債権処理』をすすめる。アメリカいいなりの底流が働いている」と指摘しました。

 この流れをひっくり返すために、国政の流れを大もとから変えること。同時に、地域金融、地域経済を守る草の根レベルの共同をつくることを提起。「この両面で活路を見いだしていきたい。アメリカでも、CRAをつくったのは草の根の力です。『ふなしん』のたたかいでも、やられっぱなしではなく、たたかってこその成果もあった」と強調しました。

 志位氏は最後に、「立場の違いをこえて、地域金融・経済を守る流れをつくる意義あるシンポになったと思います」と語り、今後、草の根や幅広い自治体と協力した運動によって、道を開きたいとのべました。

 志位氏は、市場万能主義がありとあらゆる分野にはびこる状態は異常と指摘。地域経済が破壊されれば、商店街のにぎわいがなくなり、コミュニティーやふれあいが破壊され、地域のコミュニティーが福祉や教育を支える役割も失われると警告。「地域経済はお金で換算できないから社会的値打ちがあり、それを国や自治体が守るのが世界の流れ。この方向にこそ未来はある」と重ねて強調。今回のシンポを日本共産党国会議員団に持ちかえって議論し、これからもいっしょにたたかう決意をのべ、発言を結びました。