道理にたった外交、国民の暮らしと安全
――日本共産党こそ21世紀を託せる政党

新潟県長岡市・演説会での志位委員長の訴え(2002年9月28日)


 みなさん、こんにちは。日本共産党の志位和夫でございます。
 今日は会場いっぱいのみなさんが、ようこそお運びくださいました。それから先ほど、津南町の小林町長から心のこもった激励の挨拶をいただきました。「国政に出るなら、応援する」ということが議事録にも載っているそうでありまして、公約を果たしていただいたということで、本当にうれしく激励のことばをうかがいました(拍手)。
 この新潟五区の補欠選挙は、なかなかおもしろい組み合わせになっておりまして、自民党の公認候補がいないのですね。推薦候補で無所属だそうです。政権党ともあろうものが、公認候補を立てられないということ自体、衰退の表れではないでしょうか(拍手)。民主・自由・社民の無所属候補と、日本共産党公認のくわはら加代子さん、三つ巴でありますが、どうかみなさんの切実な願いを国政に届ける架け橋として、くわはらさんを国会に送り出していただきたい、心からお願いを申し上げたいと思います(拍手)。

道理にたった外交になえる政党はどの党か

 私は、今度の選挙というのは、21世紀の日本をどうするのかが大きく問われる選挙だと思います。今日は国政の選挙ですから、2つの大きな問題で「政党の値打ちをみきわめていただきたい」というお話をさせていただきたいと思うのです。
 第1の大きな問題は、「道理にたった外交を担える政党はどの党か」という問題です。
 9月17日に日朝首脳会談がおこなわれました。拉致という痛ましい事実も明らかにされるなかで、多くの国民のみなさん、県民のみなさんが、これをどう見たらいいのか、さまざまな思いで、さまざまな考えをお持ちだと思います。私ども日本共産党の考えを、三点ほどお話をさせてもらいたいと思うのです。 

日朝国交正常化交渉の再開合意は重要な前進の一歩

 第一は、今度の首脳会談で、日朝国交正常化に向けた交渉を再開しようという合意がつくられたことは、私はその日の談話でいったのですが、悲劇の中の一歩ではあるけれども、やはり重要な前進の一歩だといえるのではないでしょうか。
 といいますのは、これまで北朝鮮と日本の間には国交はもちろんありませんでしたが、話し合いのルートもありませんでした。話し合いができない状態に両国があるとどうなるか。1998年8月にテポドンというミサイルが打ち上げられましたでしょう。日本列島を超えて太平洋に落ちた。あのときは大騒ぎになりました。日本では、「いつテポドンが打ち込まれるかもわからない」といって、「ガイドラインだ」といって、アメリカと一緒に戦争をやる仕掛けをつくろうという、軍事の対応に熱中するきな臭い動きが出てくるのですね。では北朝鮮はどうなっているかというと、「いつアメリカと日本が一緒になって攻めてくるかわからない」といっている。お互いがいいあって、一触触発の緊張状態になってしまいました。

日本共産党は、国交正常化のための話し合いを一貫して提唱

 そこで、これは1999年の1月の国会なのですが、私どもの不破委員長(当時)が代表質問で提案したのです、「いま軍事の悪循環が起こっている。話し合いのルートがないからこういうことになる。ぜひ政府の間で、もめごとは何でも話し合いで解決できるルートをつくろうではないか」という提案をしたのです。そのときはテポドンの大騒ぎですから、私も本会議場でその提案を聞いた反応を覚えていますが、あまり反応がなかったのですね。しかしそのあと、朝鮮半島で南北の首脳会談がおこなわれて、ずいぶん大きな変動が起こってくる。そういう流れのなかで、今度は同じ年の11月に、もう一度不破さんが提案をしました。今度は具体的にもっと突っ込んで、「日朝間には拉致の問題がある。ミサイルの問題がある。過去の植民地支配の清算の問題も大きい。こういう問題を解決するうえでも、話し合いのルートが必要だ。ルートは無条件に開いて、何でも交渉によって解決できるようにしようではないか」と提案しました。

国会議員団訪朝、政府間交渉、そして今回の首脳会談へ

 それをやったのは11月なのですが、12月になりまして、村山元首相が私のところを訪ねてきたのです。何の話かなと思いましたら、「今度、超党派で北朝鮮に行って、話し合いの道筋をつけたいのです。ついては共産党も参加してください。不破さんの提案も念頭にあります」という話だったのです。そこで、私どもは緒方さんと穀田さんという2人の国会議員を参加させ、まさに超党派で行って、国交正常化の交渉が次の年から始まった。しかしいろいろな問題があって中断して、見通しがつかなくなったところに、今度の首脳会談ですから、やっぱりこの動きは、全体としては前向きの動きなのです。
 ですから私は、この日朝の首脳会談がやられるということは、8月30日に発表されたのですが、そのあと党首会談がありまして、小泉さんに意見をいう場があったのですが、その場で「私は、今度の日朝首脳会談がやられることを、心から歓迎します」と、そして「必要な協力を惜しまない」ということをいいました。

北朝鮮の拉致に厳しい抗議と全面的な解決を要求

 第二に、そういうなかで首脳会談が開かれて、北朝鮮による拉致という事実が明らかになりました。その結果は思いもかけない痛ましいものであって、ご家族の悲しみは深いと思います。これは、まさに国際犯罪ですから、国家機関の関与があれば国家犯罪になりますから、もちろん今後きちんとした解決が必要です。
 私は、日朝首脳会談のおこなわれた次の日に、野党四党首との小泉さんの党首会談がありまして、その場で私たちが、北朝鮮による拉致という問題について、その日のうちに強い抗議の意思を表明したこと、それから今後、真相究明が必要であること――すなわち他にも拉致被害にあった方がいないのか、拉致された方々はどういう扱いを受けたのか、責任者はだれなのかなどの真相究明が必要であること、責任者が厳正に処罰されること、そして被害者の方々への謝罪と補償が必要であること、そういう立場で、拉致問題についても、「今後の日朝正常化交渉のなかで問題を提起し、解決をはかってほしい」ということを小泉さんにいいました。

ともかく拉致問題での態度の転換があった

 ただみなさん、ここでもうひとつよく見ておく必要がある問題があります。それは、北朝鮮が拉致問題で態度を転換させたということなのです。すなわち、これまでは「拉致はない」といっていた。それが今度は存在を認め、責任を認め、ともかく謝罪をした。これ自体は、この問題についての大きな転換です。小泉首相と党首会談をやった際に、小泉さんはこういうことをいいました。「先方も誠意ある態度をもって、日朝間の関係改善を図る意思を感じたので、交渉再開に踏み切りました」。小泉さんは「誠意ある態度」ということをいったのですが、ともかく拉致に頬かむりするのではなくて、拉致を認める態度に変わったというところにそれを見たのだというふうに、私は思いました。
 拉致をやったことは絶対に許せない犯罪です。同時に拉致を認めて謝罪したことは、それ自体は前向きの変化です。ここを冷静に区別してみる必要があるのではないでしょうか。

北朝鮮の一連の国際的無法ーー清算できるかが国際社会の仲間入りのかぎ

 実はみなさん、この問題は拉致の問題にとどまらないのです。北朝鮮という国は、これまで国際的な無法をいろいろやってきた国なのです。1983年にはラングーン事件というものを起こしました。1987年に大韓航空機爆破事件を起こしました。私たち日本共産党は、その度ごとに「そういう国際的な無法は、絶対許されない」という強い批判をしました。批判したことで、向こうが逆に共産党を敵だと攻撃したので、そのあと関係が途絶えて、まだこの問題は解決していません。そういう経過があるだけに、そういう一連の国際的な無法を北朝鮮が清算できるかどうかが、北朝鮮が国際社会の本当の仲間入りができるかどうかのカギになっていると思います。
 これが全体としてただせるかどうかは、今後の経過を見ないとわかりません。しかし、日本人に対する拉致問題では、ともかく大きな転換が起こった。そうしますとこの転換は、全体に及びうる可能性があります。そういう点での変化が起こっている。これを冷静にとらえて、ここでも重要な一歩があるのだということをみる必要があるのではないでしょうか。

政党は国民の利益、世界とアジアの平和の見地で行動すべき

 さらにそのなかで、第三の問題です。こんど小泉首相が、国交正常化交渉の再開に合意したことを非難する声があります。これは、国民のみなさんのなかからさまざまな賛否が出るのは、私は、いろいろな感情がありますから、ある意味では当然だと思います。しかし、私は率直にいって、政党の中からそういう声が起こってくるのは残念な思いがします。
 首脳会談の次の日の党首会談で、他の野党の代表がとった態度は、率直にいって私はいただけないものだといわざるを得ません。民主党の代表の鳩山さんは「国交正常化交渉を進めるのは、時期尚早だ」、つまりそんな交渉をやるべきではない、こういいました。自由党の小沢さんは「ああいう『宣言』に署名したのは、間違いだ。正常化を前提とした交渉など、やるべきではない」、交渉反対なのですね。
 もちろん首脳会談で、日朝間の問題が解決したわけではありません。解決のレールがともかく引かれたという段階です。しかし、交渉なしに問題の解決がえられないことも、明瞭ではないでしょうか(拍手)。拉致問題にしても、これから真相を究明しなければなりません。責任者の処罰が必要です。謝罪と補償が必要です。本当に納得のいく解決を図るためにも、交渉を通じてこそ、この問題の解決も図れるのではないでしょうか。いま、「もうこれで交渉をやるべきではない」といって、制裁だとかいうことで、門戸を日本側から閉ざしてしまって、いったいどんな展望が生まれるというのでしょうか。何も生まれてきません。

道理のあることには協力するのが共産党の立場

 これは、もっと国民の利益、世界とアジアの平和の見地に立って、行動しなければならない問題だと、私は思います。
 私はその場で、小泉さんに「国交正常化交渉再開の決断は、ああいう問題があっただけに重くつらい問題があったと思いますけれども、交渉なしに改善は図られないという立場からの決断を、わが党は強く支持します」とのべました(拍手)。
 私は党首会談で小泉さんにいいました。「小泉さんと私とは、国政のありとあらゆる基本問題で対決・対立しているが」、そういいましたら相手も「そうだ」といっておりましたから、間違いないと思いますが(笑い)、「しかしこの問題については、小泉さんが踏み出そうとしている方向は、道理にかなったものだから、協力するのは当たり前だ」ということを申しました。これは、党利党略で扱ってはならない問題なのです(拍手)。
 そういう立場で、今後もいろいろな山や谷があると思いますが、日朝の関係が敵対から友好に変わるようにするために、私ども日本共産党は力をつくしていく、この決意を申し上げたいと思います(拍手)。

東アジアの平和と友好をめざして

 東アジアの地域を見たときに、東南アジアというのは、ASEANという平和の機構ができていまして、何でも話し合いで解決ということがルールになっていまして、戦争の心配もありません。北東アジアには問題も残っています。北東アジアというのは日本と中国と韓国と北朝鮮、この四つの国です。ここでの確固たる平和の枠組みができたら、東アジアはほんとうに平和の地域になる。私たちはそういう立場で、野党ではありますが、道理にたった外交の努力をしてまいりました。
 中国との関係では、4年前には不破さんに同行して私も訪中しまして、いろいろな話し合いをやりました。今年の8月には今度は不破さんがまた訪中しまして、突っ込んだ話し合いをやりました。中国と話し合って私たちが感じるのは、いま中国がいちばん力を入れているのは、経済を豊かにすることなのです。豊かな中国にしよう、そのために社会主義的市場経済という道をいろいろと模索しながら進んでいます。私が、印象深かったのは、江沢民さんたちと話し合ったときに、「中国の目標は100年単位なのです」というのです。「21世紀の100年をかけて、社会主義を前進させる。100年といっても長いから、真ん中の50年までの目標として、世界の中進国まで前進するというのが、目標なのだ」というのです。中進国というのは、先進国、中進国、後進国と、この真ん中まで行こうというのです。「まだ中国は遅れているから、2050年までに真ん中まで行こう」、そういう遠大な計画で国づくりをやっているということがわかりまして、そして平和な国際環境を中国はとっても求めているということが、痛いほど話し合いの中でわかりました。ですから、日本と中国の関係は、本当に道理をもってつきあえば、善隣友好の関係がうんと将来にわたって築けるのです。
 韓国との関係はどうか。韓国との関係も前に向かって進んでいます。韓国というのは、二つ壁があったのですね。一つは「共産主義反対」、もう一つは「日本反対」。この2つの壁が、つい最近までずいぶんあったというのです。ところがやっぱり南北和解の流れがあって、もう反共の壁がずいぶんなくなってきている。この前ワールドカップをやっても、韓国のサポーターが赤を着ているでしょう。つい最近まで赤はなかなかああいう時の色にはならなかったそうですよ。そういう変化があるのです。反日のほうもずいぶん変わってきた。植民地支配のずいぶん苦労をさせられていますから、韓国では親日の政治家といわれると、それだけで政治生命を失うくらい、風当たりが強かったというのです。しかし、それもだいぶ変化が起こってきた。最近、私どもの国際局長の緒方さんが、南京でおこなわれた「アジアの平和と歴史認識フォーラム」というものに参加したのですが、そこに中国と韓国と日本の識者が集まった。そこで緒方さんが、「日本共産党は創立80年になるけれども、あの植民地支配や侵略戦争に命がけで反対した党なのです。そういう党が日本にあるのです」と話をしたら、たいへん大きな衝撃を与えて、韓国代表の人が、「日本共産党という反対の党が日本にあったのなら、これまで自分は日本といえば、『反日』、『戦争無反省の国』と思っていたけれども、考え方を変えなければならない」ということをいったそうです。日本共産党が懸け橋になりながら、そういう交流もしながら、韓国とも心の通った交流・連帯の道は、ずっと開かれているということが、実感できることであります。
 最後に残ったのが北朝鮮なのです。この北朝鮮との関係をどうするかという問題について、私たちは先ほどいったように、「話し合いのルートを開こう」という提案をずっとやってきた。その提案が今度の首脳会談という方向に実って、これからいろいろ大変ですけれども、ともかくレールが引かれたということは、やはり大事な一歩なのです。
 私たちは東アジアに住んでいる。これは引っ越せないのです。ですからこれは、「どの国であろうと、友好と交流の関係をちゃんと開いて、どんな揉め事も話し合いで理性をもって解決できる北東アジアをつくろう、東アジアをつくろう」、その努力を日本共産党は道理をもってつくしている党なのだということを、ぜひご理解いただけますと、幸いでございます(拍手)。

アメリカの無法な軍事の暴走――許されない世界の大問題

 道理にたった外交ということで、もう一つ世界には大事な問題があるのです。それは、とても危ないアメリカの軍事の暴走なのです。
 同時テロから一年たちまして、アメリカは、テロからいちばん悪い教訓を引き出した。ひとことでいいますと「やられる前にやっつけろ」という教訓なのです。「相手がテロリストだから、やられるまで待っていたら間に合わない。やられる前にやっつけろ」、つまり先制攻撃という戦略をブッシュ政権が公式に宣言しました。その先制攻撃にあらゆる手段を使うという。核兵器も使うといいます。そして気に入らない政権があったら武力で転覆することもいとわない。ここまでいっている。これが今のブッシュ政権のドクトリンといわれているものです。
 その最初の標的になっているのがイラクです。イラク攻撃には、何の大義名分もありません。だいたいみなさん、昨年の同時多発テロとフセイン政権を結びつける証拠は、アメリカが血眼になってさがしても何一つ示せないではありませんか。それから、イラクが核兵器を開発しているかもしれないというけれど、その証拠も何一つありません。大量破壊兵器を持つ国が増えることはだれも望んでいないけれども、この問題は国際的な交渉によって解決する問題であって、「あの国が大量破壊兵器を持っているかもしれない」という疑いだけで戦争に訴えるなんていうことは、絶対に許されない無法だということを、はっきりいわなければなりません(拍手)。

米のイラク攻撃による被害は想像を絶する

 そしてこれがやられた場合の被害は想像を絶するのです。アフガニスタンに対する攻撃で何人の罪のない犠牲者が出たか。3400人ともいわれています。同時テロ一周年のときに、ニューヨークの現場で一人ひとりの犠牲者の方が名前を挙げて追悼されました。私はそれを聞きながら、「その追悼の気持ちには変わりはないけれども、それでは米軍がアフガニスタンで殺した3400人、この方々への追悼はしないのか」という思いをもちました。追悼どころかだれが死んだかもわからない、何人死んでいるかもわからない、調べようともしない、謝罪と補償すらしないのがアメリカではありませんか。
 それをイラクに広げてごらんなさい。今度は岩山が戦場になるのではないのです。戦場はバグダッドになるといわれています。アメリカはバグダッドを占領する計画です。フセイン大統領はバグダッドで迎え撃つという計画だと伝えられています。しかしバグダッドというのは500万人もの人が住んでいます。その人口密集地が戦場になったら、どんな恐ろしいことになるかは、火を見るよりも明らかです。そしてここに戦争が起こったら、イスラエルとパレスチナの戦争にも飛び火して、イスラエルは核兵器を持っているといわれる、この核が発射されない保障がどこにあるでしょうか。ですから、これは絶対にやってはならない戦争です。

「国連憲章を守ろう」のスローガンで世界が団結を

 いま、国際社会では、この問題で大論争が起こっているのです。日本でもこれを大論争して、こんなことを許していいのかを、きちんと国民が意思をしめす必要があると思う。ドイツではこの問題が総選挙の大争点になって、戦争反対を訴えたシュレーダー政権が勝ったわけですね。どこでも大論争になっている。
 この戦争には、大義名分はひとかけらもない。あるのは憎しみだけです。憎しみだけで一国を先制攻撃し、核兵器を使い、占領することが許されるのなら、国連憲章というものはもうぼろぼろになってしまうではありませんか。みなさん、国連憲章というのは2回の世界大戦を経て、「もう絶対戦争をしてはいけない」という、全世界の国々の気持ちを結集してつくったもので、武力行使の禁止が書かれています。唯一の例外は「侵略されたときに、自衛の反撃するとき」です。先制攻撃なんていうものは認めていないのです。どんな理由をつけようと、これは国連憲章違反なのです。ですからこの問題では、難しいスローガンはいりません。ただ一つあればいい。「国連憲章を守りましょう」、このスローガンです。このスローガンのもとに、平和を守る、世界中の良識を結集しようではないかということを、私は強く呼びかけたいと思うのであります(拍手)。

米の先制攻撃に「ノー」をいえない小泉首相

 小泉首相の態度は、こちらは情けないのです。日米関係となると情けない。
 私は、国会でアメリカの戦略についてずいぶん論戦したことがあります。
 これは有事法制の特別委員会で、ラムズフェルド国務長官がある雑誌で先制攻撃論を公然といったことがあったので、それを引いて「先制攻撃というのは無法そのものだ。日本として許容できないということをいえますか」と聞きましたら、何と答えは「さまざまな選択肢の一つとして、理解します」というのです。
 私は党首討論でも論戦したことがあります。「アメリカが核兵器を持っていない国にも核兵器を使う計画をもっています。一方的に核を使う、核の先制攻撃、これは許されないでしょう。被爆国の総理として反対をいうべきではありませんか」と私が聞いても、「選択肢として理解します」。何でも「選択肢として理解」してしまうのです。情けないでしょう。
 先日、日米首脳会談がおこなわれる前に党首会談がありまして、私は、その場で小泉さんに、「ブッシュさんに会うのだったら、『イラク攻撃は反対です』とはっきりおいいなさい」といいました。ところがそのあとの日米首脳会談で、小泉さんがいったのは、「国際協調でやってください」ということだけです。「反対」といえないのです。「国際協調」としかいえない。しかしみなさん、先制攻撃は「国際協調」でやろうとなんでやろうと、無法は無法なのです。参加する国が多少増えても、無法は無法であることには変わりないではありませんか。それを「ノー」といえない国では、これは私はまともな主権国家とはいえないと思います(拍手)。

有事法制ーーきっぱり廃案に

 そうしますと、こういうなかでの有事法制が、重要な争点になります。そういう先制攻撃までやろうというアメリカの戦争に、日本の自衛隊が参戦をすることがどれだけ危険かは、いうまでもありません。秋の臨時国会で相手は「出してくる。通す」といっているわけですから、とどめをさしたい。10月27日に、くわはら加代子さんが国会に颯爽と登場してごらんなさい。これは間違いなく、新潟五区のみなさんが有事法制を食い止めたという歴史的審判の日になりますから、どうかその審判をくだすためにも、くらはら加代子さんをよろしくお願いいたします(拍手)。

国民の暮らしと安全に責任をおう政党はどの党か

 第二の大きな問題として、「国民のくらしと安全に、本当に責任を負う党はどの党か」ということを、ぜひみきわめていただきたいと思うのです。
 いま、不景気が大変です。この経済危機から国民のくらしをどう守るのかということについて、それぞれの政党がちゃんと責任をもって、国民のみなさんに方策を出す責任があると思います。私は昨日記者会見をしまして、「経済危機から国民のくらしを守る4つの緊急要求」を発表して、この4つの緊急要求でみんなが力を合わせてくらしを守ろうではないかという呼びかけをいたしました。

日本共産党が発表した「暮らしを守る四つの緊急要求」

(1)社会保障の3兆円負担増の計画中止を
 第一は「社会保障の3兆円にのぼる負担増の計画を中止させること」であります。これは、7月のはじめの党首討論で使ったパネルです。私がこのとき告発したのは、今度の社会保障の負担増は史上空前だということなのです。
 まず医療費が上がるでしょう。このままだとサラリーマンの負担が3割、お年寄りの負担が1割、これで1兆5100億円。介護保険の保険料が上がる。これで2100億円。年金は下がる。物価が下がっているという理由で年金を下げようという。これで9200億円。雇用保険も、どんどんリストラで失業者を増やしたあげく、赤字になったというので保険料を値上げで6000億円。総額3兆2400億円です。
 私はこのパネルを示して、小泉さんに聞きました。「こんな不景気のときに、こんな負担増をかぶせて、経済はどうなるのですか」。小泉さんの先輩の橋本さんが、97年に消費税を上げるなど9兆円の負担増をかぶせた。あのときはまだ、国民の所得が、景気が上向きでしたから、年間6兆円上がっていた。6兆円の上り坂のところに9兆円の負担をかぶせて、差し引き3兆円の減だった。今は4兆円下がっているのです。年間所得が。4兆円下がっている下り坂のところに3兆円かぶせたら、7兆円減でしょう。ですから「これをやったらひどいことになりますよ」と警告して聞きましたが、小泉さんは答えないのですね。経済への影響を聞いても答えない。小泉さんには悪いくせがありまして、自分の都合の悪いことは、聞いたことに答えないで聞かれていないことに答える(笑い)。まともな答えがなかった。
 しかしこの3兆円の負担増というのは、そのあとずっといろいろな識者がいうようになりました。この前テレビ朝日の「ニュースステーション」という番組を見ていましたら、森永卓郎さんという経済アナリストが出てきて、「このままでは橋本不況の二の舞になる。3兆円の負担増をかぶせたら、経済はたいへんなことになる」とやっていました。これは、広い国民のなかでの共通の批判となっていますから、社会保障に対する将来像はいろいろあると思いますが、その違いをこえて、「負担増を許すな」という一点での運動を大いに広げていこうではないかということを、心から訴えていきたいと思うのであります(拍手)。
(2)庶民、中小企業への大増税に反対
 第二の提案は、「庶民増税をやめろ」ということです。社会保障の負担増だけではなくて、増税計画がある。
 まず所得税の増税です。たとえば配偶者控除、特定扶養控除を縮小・廃止するというのですね。この理屈が実にひどいのですよ。この前テレビを見ていましたら、担当大臣がいろいろ話している。大臣の一人は「配偶者控除があると、男女平等、女性の働く意欲を阻害する」というのです。都合のいいときだけ「男女平等」をいうのですね(笑い)。しかし、女性が働きたくても働けないようにしている、男女の賃金格差を倍ぐらいつけている、不安定な職種しか働けないようにしているのは、自民党政治ではありませんか。「男女平等」をいうのなら、まずそれをただすのが先決ではないでしょうか。増税など、もってのほかではありませんか(拍手)。
 それから、先ほどもお話がありましたが、中小企業増税をやろうとしている。外形標準課税というものです。来年度から導入の危険があります。これはどういう課税かといいますと、資本金とか人件費にも全部かかる。つまり黒字だろうと赤字だろうとかかる。赤字の中小企業に甚大な打撃です。そして人件費にかかりますから、人減らしを強いる増税です。これもこの前テレビを見ていましたら、担当の大臣がひどいことをいうのですよ。「赤字の中小企業でも、社会の恩恵は受けている。税金を払わないのは不公平だ」というのです。中小企業は、赤字でも、道路を使ったり病院を使ったりするのだから、税金を払って当たり前だというのです。これは本当に腹が立ちますね。だいたい私は、日本の中小企業の7割以上を、赤字のまま苦しめているような政治こそ、まず反省すべきだと思います(拍手)。それからみなさん、赤字の中小企業は税金を納めていないというけれど、黒字のときは納めているでしょう。中小企業は生まれてからずっと赤字のままの中小企業というのはないのですよ。黒字だったり赤字だったりを繰り返しながら、がんばっているのが中小企業なのです。それを、一切税金を払わないようないい方というのは、まったく許せないいいかたです。しかも、赤字の中小企業だって固定資産税を払っているではないですか。消費税を転嫁できなくて、身銭を切って払っているではありませんか。こんな中小企業をばかにしたようないい方は、ほんとうに許せない。そして私が、何よりもいいたいのは、この不景気の苦しい中で雇用を支えているのは、中小企業なのです。この1年間の統計をとってみましたら、大企業は100万人も雇用を減らしている。中小企業はほとんど減らしていないのです。雇用を守っているのは、中小企業なのです。これは社会に対する、大きな貢献ではないでしょうか。そういう大事な社会的役割をはたしている中小企業の足をひっぱって、追い詰めるような増税をかぶせるというのは絶対に反対です。その大きな声をあげていこうではありませんか(拍手)。
(3)「不良債権処理」の名による中小企業つぶしを転換せよ
 第三に私たちが提案したのは、「不良債権処理の名による、中小企業つぶし政策を転換せよ」ということなのです。これは去年から小泉さんがずっといってきたことで、去年の6月の党首討論で、私は激しい論争をしたことがあります。だいたい、「不良債権、不良債権」と不良みたいにいうけれど、不良でもなんでもない。そのほとんどは、10をこえる不景気に耐えて、まじめにがんばって働いている中小企業です。乱脈経営に手を出したわけでもない、投機に手を出しているわけでもない。こつこつまじめにものをつくっている中小企業が、そのほとんどではないですか。それを不良債権といって、貸し剥がしをやる、資金をどんどん回収する、こういうやり方は、私は小泉さんを目の前にして「あなたのやり方は、水に溺れそうな人の頭を押さえて、水の中に沈めるようなものだ」といったけれど、それくらいひどいやり方ですよ。「こういうことをやったらどうなるか。景気がもっと悪くなるでしょう。景気が悪くなったら、またまた不良債権が増えるのですよ。やってもやってもきりがない。絶対これはうまくいきませんよ。だからおやめなさい」ということをいったのが、一年半前です。結果はいった通りになりました。この間に、10兆円の不良債権を処理したけれど、新たに20兆円も増えてしまった。景気がますます悪くなるから、ますます不良債権が増える。むりやり中小企業から貸し剥がすやり方はやめて、景気をよくする中で中小企業が立ち行くようにするのが、政治の役目だということを私は強く訴えたいし、これもともにがんばろうではないかということを呼びかけたいと思うのであります(拍手)。
(4)職場での無法の一掃、失業者に生活保障を
 第四に提案したのは、雇用の問題での二つの提案です。「職場の無法、サービス残業や転籍・退職の強要をやめさせること」、「失業されている方が350万人もいる。ところが、失業保険がすぐ切れてしまう。これをせめて1年までまず延長し、切れたあとも生活保障ができるように、ヨーロッパ並みの体制をつくる必要がある」という提案をいたしました。
 この四つの提案です。社会保障の負担増は中止すること、庶民増税・中小企業増税をやめること、「不良債権処理」の名での中小企業つぶし政策を転換すること、雇用を守るための政治の責任をはたすことーーこの四つの緊急要求は、いろいろな立場の違いを超えて、いまの経済危機からくらしを守るうえで、多くの方々の理解をいただける提案だと思います。私はこの四つの旗印を高く掲げて、それを実現するうえでも日本共産党を伸ばしてほしい、くわはらさんを勝たせてほしいということを心から訴えたいと思うのであります(拍手)。

税金の使い道は、暮らし、社会保障最優先で

 政府は、私たちが要求をぶつけますと、「それでは財源をどうするのか」とすぐにいいます。私が小泉さんとこの論戦をやったときも、私に対して小泉さんはいい返してきました。「それならば増税でもいいのか」というのです。その人が増税をやろうとしているのですから、説明がつかないのですけれども。
 私は、ならば小泉さんに問いたいことが二つある。
 一つは、国民には負担増を押しつけておきながら、大企業のほうは2兆5000億円もの減税をやろうとしているではないですか。法人税の税率の引き下げ、政策減税、とんでもない減税をやろうとしている。国民に負担増を求めて、大企業にばら撒くというのは理解できない話ではないでしょうか。
 第二に、大銀行にはまたまた税金を入れようとしているではないですか。「大銀行に税金を入れよう」と、大合唱でしょう。しかしみなさん、これまで大銀行にいくら税金を入れてきたかご存知でしょうか。4年間で30兆円です。30兆といってもみなさん、大きすぎてピンときませんね。持ったことがないですから(笑い)。私は計算してみました。4年間で30兆というと、1日いったいいくらかなと、割ってみたのですけれども、簡単な計算ですが、1日何と200億円。土日も休まずですよ(笑い)。土日も休まず「はい、200億円」。これを4年間やって、やっと30兆が達成できるのです。しかしみなさん、2百億円といってもピンとこないでしょう。これも持ったことがないですから(笑い)。そこで私は計算してみました。お年寄りが医療費が10月からあがる。みんなこれで不安に思っています。それでいったいいくら医療費が増えるか。全国のお年寄りの全部の値上げ分をあわせて、2000億円です。ということは、10日分ではありませんか。銀行に持っていくお金を、1日200億円を10日やめて、お年寄りのほうに持っていくのに切り替えただけで、お年寄りの値上げは必要なくなる。みなさん、そのくらいでたらめなやり方はないではありませんか(拍手)。
 私は、大企業や大銀行にばら撒くお金があるのだったら、社会保障という国民のいのちとくらしを支える土台にこそ、ちゃんと国の責任を果たすべきであって、国民への負担増計画は絶対にやめるべきだということを強く訴えたいと思います(拍手)。

新潟で暮らしと安全にかかわる二つの大問題―農業と原発

 さてみなさん、私はくらしと安全といったのですが、この問題でとくに新潟では、それにくわえて二つの大きな問題があると思っているのです。
 一つは農業です。いま私は、全国どこにうかがっても、おコメの暴落が大変だということを聞きます。1俵だいたい2万円くらいだったのが、だいたい1万5600円だというのです。新潟の場合、コシヒカリという銘柄米ですから強いですけれども、それでも魚沼コシヒカリ、新潟コシヒカリ、だいぶ価格暴落で大変だということをうかがいました。

コメは全面的に市場まかせの農業版小泉「構造改革」

 私は、1994年にWTO協定が締結された当時に、新潟の燕市でシンポジウムがあったときにうかがいまして、農家の方の訴えを聞きました。専業農家の方で、わりと規模の大きな方なのですが、「夫婦ふたりで働いて、朝から晩まで一生懸命働いて、実際の収入が18歳になる娘さんの初任給と同じだ」といわれるのですね。「これではやっていけません」というお話でした。
 これがWTO締結の時期ですから、そこからさらに米価がこれだけ下がったら、いまの事態は深刻だと思います。これはWTO協定の際に、三つの悪政をやった。つまりコメの輸入を年々増やす、減反の押しつけをどんどんやる、そして価格保障の制度をどんどん壊していく、この三つの悪政をやったことの結果であります。
 私が告発したいのは、小泉政権がここでも悪いことをやろうとしている。小泉「構造改革」をおコメにまで押し広げる、「構造改革促進のためのコメ政策の抜本的見直し」という方針を進めようとしているということです。これは、さっきいった3つの悪政を極端にまでひどくするという政治です。この方針は、「輸入は引き続き増やしましょう」「減反はコメ政策の基本として維持します」というものです。そして、コメの価格保障は、これまであった最小限のしくみ、つまり米価がうんと下がってしまったときには一定額の保障をするしくみが残されているわけですが、それすら全部取り払って、「おコメの価格は全面的に市場まかせにする」という方針です。つまり、政府のやる仕事は、コメに関しては輸入することと、市場から買って備蓄すること、輸入と備蓄しかやらない、あとはすべて、野となれ山となれという方針を、小泉首相は出している。

WTO協定を改定させ輸入をくい止めよう

 これに対して私たちはどういう旗印でのたたかいが必要でしょうか。
 一つは、やっぱり輸入を食い止めなければなりません。そのためにWTOの協定の改定が必要です。私は8年前にWTOが結ばれたときに、「WTOというのは、世界が合意すればこれは改定できるのだ。改定のためにがんばろうではないか」と、私も出身が千葉県で農家が多いですから、ずっと回りました。しかし「そんなことをいったって志位さん、もう決まってしまったものはしょうがない。いまさら改定なんかできない」という声がずいぶん多かった。しかしいま、それから8年たってみたら、「WTOから農業をはずせ」という声は、途上国からも起こってくる、先進国からも起こってくる、アメリカからも起こってくる、日本からも起こってくる。世界中の農民、生産者、消費者が、声をあわせていっているわけですから、これはぜひ大問題ですけれども、輸入を食い止めるという運動をおおいに広げたいと思います。

日本政府が決断すればいまでも価格補償制度を再建できる 

 同時に、もう一つ問題がある。WTO協定を変えなくても、日本の政府の決断ひとつでやれることがある。それは、価格保障の制度を再建することです。おコメの価格の下支えの制度を再建することは、WTOは禁じていないのです。WTOの枠内でもやれるのです。
 私が調べてみましたら、WTOを結んだあと、アメリカは価格保障・所得保障の予算を増やしているのです。農業予算の2割くらいだったものを、いまでは5割近くまでいっているのです。ヨーロッパは6割、7割が価格保障・所得保障の予算です。日本は逆に、どんどん減らして、もう2割以下でしょう。
 これは日本政府の一存でできることです。農業というのは工業とは違う。農業というのは食糧なのですから、いのちに関わる。そして国土と環境を保全している。ですから、その値打ちというのは目先の市場の値段でははかれない、社会的価値があるのです。市場まかせにしてはならない分野なのです。だからこそ、EUでもアメリカでも、所得保障・価格保障をやっている。社会として、宝として位置づけているのです。日本だけ、そこから撤退して、市場まかせにしてしまうという、こんな亡国の道を進んでいいのでしょうか。やっぱりこれは、どうしても切り替えなければならない。自給率は4割にまで落ちているわけですから、これ以上、日本の食べ物が外国に頼らなければならないという事態をひどくするということは、これは食い止めなければならないのではないでしょうか。どうかみなさん、「農業を守れ、食糧を守れ」という一票を、日本共産党のくわはらさんに託していただきたい、心からお願いしたいと思います(拍手)。

命にかかわる原発の事故隠しは許せない

 新潟のみなさんにもう一つ、どうしても訴えたい問題は、原子力行政の問題です。
 この間、つぎつぎに出てまいりましたね。東京電力、中部電力、東北電力、日本原燃、つぎからつぎへとよくもまあ、これだけ事故隠しをやっていたものだ。しかもずるいではありませんか。東京電力が事故隠しを発表したのは、日朝首脳会談のその日でした。発表の仕方まで姑息で、事故隠しではありませんか。
 しかも事故はなかなか深刻なのですよ。どこが損傷していたかというと、シュラウドという炉心隔壁にひびが入っていた。それから原子炉を冷やす冷却水のパイプにひびが入っていたという問題なのです。つまり、原子炉の心臓部の大きな事故につながる損傷があったということなのですね。たとえば原子炉の冷却水のパイプのひびがすすんで水漏れということになったら、大変です。マンションの水漏れと違う(笑い)。原子炉の水漏れというのは、原子炉が冷やせなくなって、暴走して、スリーマイル島事故とかチェルノブイリ事故のように、炉心が溶けてしまうというところまで進む大事故につながるものなのです。そういう問題で事故隠しをやられたというのは、本当に許しがたいことです。

危険なプルサーマルはきっぱりやめさせよう

 私は先日、青森へ行きまして、この問題で「緊急提言」を発表したのですが、なかでも私は、プルトニウムを原子炉で燃やすプルサーマルというやり方は、ほんとうにこれを機会にキッパリやめるべきだと思います。
 日本では、原子炉でウラン燃料を燃やしたあと、その使用済みの燃料から再処理といいましてプルトニウムを取り出して、このプルトニウムをプルトニウム燃料に加工して、もう一回燃やそうという方式をつづけています。その燃やすところの本命は、「もんじゅ」のような高速増殖炉でした。ここでもう一回燃やそう。リサイクルといっているのです。「プルトニウムを何回もグルグル回して使えば、永久にこれは燃えるぞ」というので、始めたのです。しかし、燃やすところを最初は「もんじゅ」のような高速増殖炉と考えていたけれども、「もんじゅ」が事故を起こして、燃やすところがなくなってしまった。そこで、それなら普通の原子炉で燃やそうというのが、プルサーマルです。軽水炉という普通の原子炉で、プルトニウムの燃料を燃やすのがプルサーマル。これを柏崎・刈羽原発でやろうとしているわけですね。まだあきらめていないわけですよ。
 私は3年前の11月に、柏崎・刈羽原発の視察に行ってまいりました。ものすごく大きいですね。7つの原子炉が並んでいまして、世界最大なのです。1つの原子炉を見ることだって大変です。私は見て回って、そこでプルサーマル計画について、所長さんに聞きました。柏崎・刈羽原発では、プルトニウム燃料(MOX燃料)を、炉心の3分の1で使う。私は聞きました、「3分の1をプルトニウム燃料にしたら、どういう燃え方をするか。実験データを持っているのですか」。そうしましたら、「ないのです。でもだいたい安全です」という(笑い)。これが「安全神話」というものなのですね。しかし、どういう燃え方をするかわからなくて、いきなり軽水炉で3分の1をプルトニウム燃料にして燃やして、どんなことになるかわからない。
 私は聞きました。プルトニウム燃料というのは溶ける温度が低い、それから熱が伝わりづらい、つまり熱がこもりやすい。熱がこもりやすくて溶ける温度が低かったら、燃料棒が溶けやすいということになりますね。それで、所長さんに私は「これは溶けやすいということですね」と聞きましたら、なかなか「溶けやすい」といわないのですね。最後は認めましたけれども、そういうものなのです。だから、危険度ははるかに高いのです。一般のウラン燃料だって危ないのに、プルトニウムを使った燃料というのは、どれだけ危ないか。データもなくてやるのですから、これは絶対にやってはならないところに踏み込もうということなのです。

自治体首長の前向きの変化を歓迎ーー国に中止をせまろう

 私はそのときに、プルサーマルの中止を求めました。しかしそのときは、残念ながら、県も市も村も、容認でした。ところが、今度の事故が起こって、とうとう見切りをつけたではありませんか。新潟県知事も柏崎市長も刈羽村長も、三者がそろって、「事前了解を取り消して、白紙にする」、この決断をしたことは、私は前向きの変化として大いに歓迎したいと思うものであります(拍手)。
 しかし、地元がそういっていても、国は何が何でもやるという方針を変えません。「これをやらなかったら、プルトニウムが余って大変だ」というのですね。「余って大変だから」といって、危ないところで燃やされたら、もっと大変です。ですからこれは、選挙で決着をつける必要がある。国民のいのちを粗末に考える、「安全神話」というものに凝り固まっている、プルサーマル計画はキッパリやめなさい、これは日本共産党しかやれない仕事ですから、これもどうか、くわはらさんにやらせていただきたい、心からお願いしたいと思います(拍手)。

外交・内政で道理ある提案をしめし、政治を動かす党

 みなさん、「道理をもって外交を担える党はどの党か」ということということを、今日はさまざまな角度からお話させていただきました。北朝鮮の問題、イラクの問題、さまざまありますが、私たちは野党ではありますけれども、道理の力で、世界の平和、アジアの平和、日本の平和のために行動する党です。
 もう一つ、「国民のくらしと安全に本当に責任を負う党はどの党か」というお話もさせていただきました。私たちは社会保障の負担増の問題、あるいは「不良債権処理」の名による中小企業つぶしの問題、農業の問題、プルサーマルの問題、さまざまございますが、どの問題でも悪い政治に厳しく反対する党であるだけではありません。どんな問題でも、外交でも内政でも、道理にたった解決の道筋を提案し、その提案にたって政治を動かすために力をつくす党が、日本共産党だということをぜひご理解いただけますと、幸いでございます(拍手)。

全国に広がる新しい政治の流れ
ーー長野県のすばらしい勝利のニュース

 みなさん、新しい政治の流れというのは全国に広がっております。となりの長野県では、9月1日にすばらしい勝利のニュースが伝わってまいりました。日本共産党が支援した田中康夫知事が圧勝しました。同時に上田市でやられた定数1を争う県議補選で、日本共産党の高村京子さんが、県政会相手の一騎打ちで一万票以上相手を離して圧勝しました。
 私はこの応援に行ったときの光景が忘れられないのです。上田の駅前に私が行きまして、「いま田中さんのやっている方向は、まともな道理ある方向だ。大型開発のダムはやめて、福祉や環境などの公共事業にお金を振り替えよう。これは道理ある方向で、これこそ未来がある」という話をしました。「この流れを強くするうえでも、日本共産党を勝たせてください」と話をしました。しかしみなさん、その話を始めたとたんに、雷が鳴ってきたのです(笑い)。どかどかどかと雷が落ちまして、そのあときたのは大雨です。いちばん前にいるお年寄りはずぶぬれです。私ははらはらしてきまして、「風邪ひいたらどうしよう」。お年寄りがずぶぬれになっているわけですから、「早く演説を終わりにしなければ」(笑い)、こう思いながら演説を続けるのですが、みなさんだれもその場から帰る人がいない。どんどん膨れ上がって、とうとう2200人という上田市はじまって以来の演説会になりました。それをみて私は、たいへんな変化が、深いところでおこっているということを痛感したわけです。

「新潟から日本の政治が変わった」といえる結果を  

 長野県で起こっている変化は、日本共産党がずっと主張してきた方向に、県政が前進しているということなのです。「巨大開発に使うお金があったら、福祉や環境のための公共事業や、福祉や環境のためのお金に当てるべきだ。ダムに使うよりも、こちらのほうがはるかに地域経済にも役に立つではないか」。これは、共産党がずっといってきた方向なのです。そういう方向で、県レベルで変化が起こった。国レベルでもこれは起こって当然の変化ではないでしょうか(拍手)。
 私は、そういう希望ある変化は、全国どこでも起こる条件があると思います。新潟の場合も、やはり同じ矛盾があります。それに加えて、農業やプルサーマルやさまざまな、みなさんの命や暮らしを脅かすいろいろな問題がある。やはりどんな問題でも、日本共産党の日本改革の提案の方向でこそ、ちゃんと答えが出る。どうかその願いを、今度はくわはら加代子さんに託していただいて、10月27日には「新潟から日本の政治が変わった」といえるような、すばらしい結果をみなさんのお力で出していただきたい。このことを最後に重ねてお願いいたしまして、私の訴えを終わらせていただきます(拍手)。ご清聴、ありがとうございました(大きな拍手)。