2002年9月20日(金)「しんぶん赤旗」

いっせい地方選勝利・躍進全国遊説

「古都奈良を守れ」は後世への責任

希望ある流れを大きく

奈良市で3700人 志位委員長が訴え

日朝国交正常化 交渉の中でこそ問題解決図られる 演説会で志位委員長


志位和夫委員長の話を聞く体育館いっぱいの演説会参加者=19日、奈良市中央体育館

 いっせい地方選の勝利をめざす日本共産党の全国遊説で十九日、奈良県入りした志位和夫委員長は、奈良市中央体育館の大演説会で「『自治体らしい自治体』をとりもどす新しい流れを奈良でも大きく」と訴えました。

南田助役があいさつ

 七十六台の貸し切りバスを運行するなど県内各地からつめかけた三千七百人の参加者で会場はいっぱいになりました。開会にあたり奈良市の南田昭典助役があいさつ、大川靖則市長のメッセージを代読。来春のいっせい地方選をたたかう候補者や佐藤まさみち衆院奈良一区候補に大きな激励の拍手がわきあがりました。

 志位委員長は冒頭、日朝首脳会談について、この間の党首会談のやりとりを含め日本共産党の立場を報告。そのうえでいっせい地方選挙で躍進をめざす日本共産党の立場について話を進めました。

 志位氏は、長野県知事選と県議補欠選挙での勝利の意味、米国がねらうイラク攻撃に反対するたたかい、小泉政権がすすめる三・二兆円の国民負担増計画の問題など、世界と日本をめぐる情勢を縦横に解明しました。

 そのなかで、今回の負担増計画は、(1)毎年四兆円もの所得減とセットになっていること(2)所得税の控除見直し、消費税免税点引き下げ、外形標準課税など庶民増税とセットになっていることなど、「生活と経済への打撃では橋本内閣の九兆円負担増よりはるかに深刻です」と強調しました。

 また「小泉首相は『負担増がいやなら増税しかない』というが、ならば問いたい」とのべ、(1)なぜ大企業向けには二・五兆円もの減税なのか(2)日銀が数兆円規模で銀行保有株を買い、税金をつかっての資本注入もくわだてられるなど、なぜ大銀行に税金をつぎ込むのかと批判。「大企業や大銀行にばらまく金があるなら、まず社会保障への国の責任をはたせ」と怒りを込めて訴えると会場から拍手がわきました。

 そのうえで奈良県では、自民党県政と県内の多くの「オール与党」の自治体のもとで、「営利企業」化と「開発会社」化の二つの大きな問題があることを解明しました。

 「営利企業」化では、福祉・暮らし分野で自治体が独自の仕事をやらないもとで、特別養護老人ホームの待機者が介護保険が始まって二・六五倍に増加したこと、乳幼児医療費が高齢者医療費と連動して、値上げされる仕組みになっていることを告発。

 「開発会社」化では、浪費型の公共事業のために十年間で県の借金が二・八倍に増加し、予算に対する借金残高割合が全国第三位になっていると指摘。「これが暮らしを押しつぶすにとどまらず、奈良では、かけがえのない歴史遺産を押しつぶしていることがとりわけ重大です」と批判しました。

 百三十億円をかけて、飛鳥池遺跡を壊す「万葉ミュージアム」の建設強行がすすめられ、八四一年から一千年以上も伐採が禁止され、世界遺産にも登録されている春日山原始林をめぐっては、岩井川ダムの取りつけ道路が保存が求められる緩衝地帯に位置し、世界遺産が破壊されようとしています。

 平城京跡では地下トンネル高速道路建設を計画。建設で地下水の流れが変わり、地下水によって守られている埋蔵文化財が壊される恐れがあります。

 志位氏は「世界に誇る古都・奈良の遺産を粗末に扱う県政には、奈良の政治をあずかる資格はない」ときっぱりのべると、割れるような拍手がおきました。

 一方で「奈良県でも、新しい希望ある流れを感じる」とのべた志位氏は、平城京跡地地下トンネル計画に、東大寺の管長を務めた新藤晋海師が「たかだか五十年余りの利便性や経済効率のみを追求して、地下遺跡を壊す愚は避けた方がいい。千三百年の文化遺産を後世に引き継ぐ役目がありますから、後世に憂いを残さない方がいい」とのべたことを紹介。撤回要求が学会でも、木簡学会、日本史研究会、日本歴史学協会など広範に広がり、ユネスコ世界遺産センター責任者も重大な関心を寄せているとのべ、「『古都・奈良を守れ』は、世界に対する、また後世に対する私たちの責任です」と強調しました。

 日本共産党地方議員団の役割に話をすすめた志位氏は、介護保険では県下自治体すべてで利用料減免を実施し、党議員団がその「突破口」を開く大きな役割を果たしていると紹介。市長会が「ぬけがけはやめよう」と申し合わせをしている中、最初の利用料減免に踏み切った御所市では、党議員の活躍が減免実施に道を開いたことを強調。「この選挙で二十一世紀の地方政治の新しい姿をつくりあげる、素晴らしい結果を出しましょう」とよびかけると、大きな拍手がおきました。

 壇上にそろったいっせい地方選の県内候補者全員が紹介され、七人の県議候補を代表して山村さちほ県議団長が「奈良を新しい希望ある政治に切り換えたい」とあいさつ。さわだ洋子大和高田市議候補、十一月の補選をたたかう吉田かつのり田原本町議候補も決意を表明しました。

 佐藤衆院奈良一区候補は「私は多くの労働事件や住民訴訟、環境を守る運動を通じて、一人ひとりの力を合わせるならば、二十一世紀の政治や社会を変えることができると確信しています。奈良県の革新の議席を回復させてください。全力でがんばりぬきます」と訴え、大きな拍手につつまれました。

 一歳の子どもを連れて参加した男性(28)は「志位さんの話はわかりやすかった。予算にたいする借金残高の割合が全国三番目に高い、なんて驚きです。乳幼児医療費の負担増も困る。税金は県民のために使ってほしい。福祉の充実のためにも共産党にがんばってもらいたい」と話していました。