2002年7月9日(火)「しんぶん赤旗」

不破議長、志位委員長の書簡への
パキスタン政府からの返書

〈全文〉



 ペルベズ・ムシャラフ大統領にあてたお二人の二〇〇二年六月七日付書簡に、心からお礼申し上げます。書簡は、大統領まで届けられました。私は、あなた方の書簡に回答するとともに、お二人のご多幸を祈る大統領のあいさつをお伝えするよう指示されています。

 私たちは、南アジアの平和と安定にたいするあなた方のお気持ち、インドとパキスタンの間の緊張にかんする懸念について、高く評価するものです。私たちはそういった感情を共有します。戦争にかんする私たちの立場についていえば、ペルベズ・ムシャラフ大統領は、パキスタンは戦争を開始はしないが自衛はするつもりだ、と断言しています。国際社会は、戦争の危険が弱まったと感じていますが、それは真実ではありません。両国の兵力がいまなお国境地帯に配備されているからです。インドが自国軍を平和時の位置にまで撤退させ、パキスタンとの対話を開始したときにのみ、永続的な平和をもたらすことができます。

 インドは、テロリズムにたいする国際社会の見解を利用し、カシミールの解放闘争をテロリズムだと主張していますが、それは真実ではありません。カシミール人民は過去五十五年間、インドの支配とたたかっており、一九八九年以来の過去十三年間、この闘争が強まってきたというのが真実です。インドの新聞さえ、この闘争の中で四万人が亡くなったとしています。しかし別の情報源によれば、その数は八万人です。それはテロリズムにもとづくたたかいではありません。インドは、それをテロリズムと呼ぶことで、カシミール人民の闘争を脇に押しやっているのです。

 インドは、カシミール問題はテロリズムの問題だと強調し、これをアルカイダおよびアフガニスタンでの事態と結びつけています。しかしカシミール問題は、それらの事件よりも以前にさかのぼるものです。インドは、カシミール問題が、パキスタンからの越境者のせいで起きていると世界の人々に信じさせようとしています。大統領は、一月十二日に重要な声明をおこない、パキスタンは、世界のいかなる場所であれ、だれによるものであれ、テロリズムのために自国領土を使わせることはない、とのべました。大統領は、この約束を五月二十七日の演説でも繰り返しました。インドは、このように強調したことも重要ではないとほのめかそうと試みています。しかし世界は、その重要性を認識しています。パキスタンは、カシミールでの実効支配線の侵犯を許さないと明言しています。

 私たちは、核問題にかんする日本国民の心情を理解し、評価します。核兵器の唯一の犠牲者として、日本は、核兵器について語る権利を持っています。私たちにとって、核による交戦は考えられません。 大統領は、このことを、二〇〇二年六月一日のCNNとのインタビューでのべ、他の機会にも繰り返してきました。

 大統領は、核兵器のない南アジアを提案し、インドとの武力不行使協定を呼びかけてきました。

 国際社会は、インド・パキスタン間の戦争での通常兵器の使用が核戦争につながりかねない、との懸念を抱いています。こうした懸念が引き起こされるのは、危機がこのようなレベルにまで達したからです。百万人の軍隊が国境地帯に存在し、それは戦争につながる可能性をはらんでいます。インドにたいし平和時の位置までの兵力撤退を国際社会が働きかけるよう、パキスタンは訴えてきました。カシミール問題は、カシミール人民の希望に沿って対処され、解決される必要があります。

 この機会にあらためて、私の最大の敬意をお伝えし、お二人のご健康とお幸せを心からお祈りいたします。


二〇〇二年七月三日

在日パキスタン大使館 トキール・フセイン(大使)

日本共産党中央委員会議長 不破哲三閣下
日本共産党幹部会委員長  志位和夫閣下



7月9日付の「しんぶん赤旗」に掲載された訳出には一部誤りがありました。ここには、訂正したものを掲載しています。