2002年7月4日(木)「しんぶん赤旗」

政府・与党の最終合意をどうみる

郵政関連法案

志位委員長の会見から


 国民の共有財産である郵政三事業を大銀行の食い物にする“新しい利権”に道を開き、これまでの“古い利権”の構造を温存、拡大する――日本共産党の志位和夫委員長は三日の記者会見で、郵政関連法案についての政府・与党最終合意の本質をずばりこう指摘しました。


大銀行の要求にこたえ 民営化へ第一歩

 第一に、首相自身が今回の法案について、郵政三事業の「民営化の一里塚」とくりかえしのべてきたように、まさにそういう方向での決着になったということです。

 郵政三事業とは郵便、郵便貯金、簡易保険の三事業。郵便事業への民間参入を第一歩に、“本丸”である郵貯民営化の突破口を開こうというのが、小泉首相の思惑です。

 もともと、郵政民営化というのは国民の中から出てきた議論ではありません。実際、国民の側から見れば、安心して預けられる小口の貯金先がなくなってしまう、全国一律の確実で使いやすい郵便制度が崩されてしまうなど、“百害あって一利なし”の代物。郵政民営化は、「もっぱら大銀行の要求にこたえる、大銀行に新たな利権をもたらすもの以外なにものでもない」(志位氏)のです。

 志位氏は、「郵便事業への“いいとこどり”の民間参入がすすめられようとしている」として、「信書の定義に関する政府の考え方」と題する文書を示しました。これは、「最終合意」にあたって、「信書」の定義についての政府の見解をまとめたものです。

 そこでは、一番問題になったダイレクトメールについて「多数の者に差し出されることをもって信書に当たらないものとは考えられないが…」と、基本は信書であるとしながら、一方でこう書いています。

 「公然或いは公開たりうる事実のみであり、もっぱら街頭における配布や新聞折込を前提として作成されるチラシのような場合には、それが差し出される場合にも…信書に該当しない」

 しかし、現在のダイレクトメールの実態は、ここでいう公然と公開されても構わないチラシのようなものが大部分です。

 志位氏は、「これが信書でないというのが政府の考え方ですから、郵便事業でも、結局、いいとこどりの民間参入を可能にすることになる。大手の企業がもうかるという状況が作られれば、採算性が厳しいところは切り捨てられ、値上げになったりするわけで、ユニバーサルサービス(全国均一のサービス)が崩壊に追い込まれることになります」と批判しました。

首相対郵政族議員── まやかしの「対決」

 第二は、今回の法案をめぐって、マスコミなどで盛んにけん伝された「小泉首相対郵政族議員」という対決構図をどうみるかという問題です。

 志位氏は、「今度の決着は、郵政族議員たちがもっていた“古い利権”の構造についても、温存するだけでなく、拡大する方向になっていることが、たいへん重大だ」と強調しました。

 利権癒着構造という点でいえば、いまでも「特定郵便局長会」を通じての自民党支持のおしつけや、人と金をフルに使っての選挙応援などが問題になっています。今回の法案はそこに指一本ふれていませんが、問題はそこにとどまりません。

 志位氏は、与党三党が「議員修正」という形で出した「修正案の要綱」に、「公社は、郵便の業務の運営に特に必要がある場合には、…業務に密接に関連する政令で定める事業に行う者に出資することができる」(第一の二)という規定が突然盛りこまれたことに注意を向けました。

 「出資を認める」ということは、道路公団型の古い利権構造に道を開くことになるからです。

 日本道路公団は子会社、孫会社をかかえ、そこに“天下り”がどんどんいき、いろいろな利権が絡んでいます。公団本体は赤字だが、関連会社の方は黒字になっているということも問題になっています。

 これまで郵便事業は国の直営という形でやってきたので、こうした「出資」はできませんでした。しかし、今度の法案では郵政公社のもとに子会社をつくり、孫会社をつくることが可能になる、そこが天下り先になったりして利権の巣くつになったりする危険性があるのです。

 結局、首相と族議員との「対立」の実態とは、いったいなんだったのか。志位氏は指摘します。

 「一方では、郵政三事業を大銀行の食い物にするという、“新しい利権”に道を開く。他方では“古い利権”の温存と拡大をはかる。両方とも、国民の共有財産である郵政事業を食い物にする、利権の対象としかみないという点では少しも変わらないし、郵政三事業をいかに国民にとってより良いものに改革していくかという、国民サービスという観点がまったくないということも、共通していると思います」


首相も族議員もメンツ保つ
「三方一両得」と皮肉る報道も

 郵政関連法案の「最終決着」がついた三日。マスコミは「小泉首相と自民党郵政族の戦いも、終わってみれば、互いのメンツを保った格好」(「読売」三日付夕刊)として、郵政族のドンである野中広務元幹事長と合わせて「三方“一両得”」(同)との見出しで、小泉首相と郵政族の「決着」のてん末を報じました。

 その小泉首相は三日、記者団に、郵政公社法案の「修正」案が国会に提出されたことに関連し、同法案は「民営化の一里塚」だとしたみずからの発言について、「わたし自身はそういう考えを持っている。変わりません」と不変ぶりをアピール。その一方で、「皆さんいろいろ苦労してもらった。反対した人も改革に理解を示してくれたと感謝している」と、郵政族を含めた党側の対応に謝意を表明しました。

 一方、派手なパフォーマンスでマスコミにアピールした自民党の荒井広幸総務部会長ら郵政族議員、その郵政族議員を“説得”した野中氏。それぞれの思惑はあるにせよ、結局は、首相のメンツも、族議員の利権も失われなかったという、国民不在ぶりを浮き彫りにした“決着劇”でした。