2002年6月27日(木)「しんぶん赤旗」

つかみ金的流用のカラクリ示す

政府の官房機密費「執行の基本方針」

志位委員長が批判

国会での真相究明は不可欠


 「官房機密費の党略的な流用に対する何らの歯止めがない。そればかりか逆につかみ金的な流用ができるカラクリをしめすものになっている」――。日本共産党の志位和夫委員長は二十六日、国会内での定例記者会見で、政府が二十四日に公表した「内閣官房報償費の執行にあたっての基本的な方針」「内閣官房報償費取扱要領」についての見解を明らかにしました。


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記者会見する志位委員長=26日、国会内

何の歯止めもなし

 第一は、同文書が官房機密費の使途に「何の歯止めにもならない」(志位氏)ということです。

 「執行にあたっての基本的な方針」は、機密費の使用目的を(1)「政策推進費」(2)「調査情報対策費」(3)「活動関係費」に三分類しています(注)。その規定は何の意味もなく何の制限もありません。志位氏は「施策の円滑かつ効果的な推進のため」とされれば、「国会対策」や「せんべつ」など何にでも使えることになると批判しました。

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首相官邸。国民の税金である官房機密費が“ヤミ金”として使われています

「ヤミの中のヤミ金」

 第二は、官房機密費全体が国民に対して「秘密扱い」「機密扱い」になっているのに加え、官房長官が自由勝手に使える「ヤミの中のヤミ」の金が存在するという「二重構造」になっていることが、政府の公式文書ではじめて明らかになりました。

 「取扱要領」によると、官房機密費は、(1)「取扱責任者(内閣官房長官)が指名した事務補助者に出納管理などの実施事務にあたらせる報償費」(2)「取扱責任者みずから出納管理などの実施事務にあたる報償費」の二つに区分されています。

 その「支払い事務の管理」として(1)の場合は、「取扱責任者の支出決定書」として一件ごとの支払い金額、支払い相手、支払い目的などが、きわめて不十分ではあれ、内部的な記録として残るようになっています。

 しかし(2)の場合は、官房長官みずから官房機密費を使うもので、「受払簿」に記入されます。しかしそこには、トータルの残額と支払い額、繰入額だけを記入すればよく、「一件ごとの支払い金額、支払い相手などの記録は内部的にもいっさい残らない仕組み」(志位氏)です。

 官房機密費の「出納管理の記録」は、「内閣官房報償費出納管理簿」で行い、支払い時期、金額、使用目的、支払い相手などを記入することになっています。しかし志位氏が内閣府に問い合わせたところ、官房長官みずから使う官房機密費については、支払い相手先を「官房長官」とだけ書けばいいことになっています。

 志位氏は、「官房長官みずから使うお金については、まったく自由裁量で使え、国民に対して秘密にするだけでなく、内部的にもあとにいっさいの記録が残らない、まさにつかみ金のシステムを今でも続けていることをしめしているのが、今回の文書だと思う」と指摘しました。

内部文書とも符合

 志位氏は、四月十二日に加藤紘一官房長官時代の官房機密費の使途を詳細に記した金銭出納帳を示して党略的・私的に使われている生々しい実態を明らかにしたことにふれ、「そのときに、この金銭出納帳は官房長官の自由裁量でまったく勝手に使われる金の支出をしめしたものと考えられるとのべたが、まさにそういうシステムがつづいていることをこの文書は裏付けている」とのべました。

 志位氏は、さらに、昨年の衆院予算委員会で明らかにした八九年の宇野内閣時の「報償費について」の文書に言及。同文書は、内閣官房機密費を(1)「経常経費」と(2)「官房長官扱」「官房長官予備費」などに区分しています。

 「経常経費」は「官邸会議費」「慶弔」「国公賓接遇費」などとされる一方、「官房長官扱」「官房長官予備費」は「内政・外交対策費」などとされ、消費税導入のための国会対策など党略的な使用の疑いがありました。

 こうした「二重構造」の実態が、いまでも続けられていることを今回の政府公表の文書は示しています。官房長官が直接扱う官房機密費は「ヤミのなかのヤミの金」(志位氏)なのです。

ヤミ金に自浄能力なし

 志位氏は、官房機密費使途の資料を発表した四月十二日に、政府に対し、(1)官房機密費の実態公表(2)党略的・私的流用を行わないことを約束すること(3)「上納問題」の調査を要求したことを紹介。しかし今回公表された政府の文書は四月一日付のものだと指摘し、「私たちが具体的で決定的な事実を突き付けても、その後政府はだんまりを決め込むだけで、事実の調査も、制度の改善のための措置もいっさいとらなかったということになる。もっとも悪質な国民の税金を食い物にしたヤミ金に対して自浄能力のかけらもないことを示すものだ」と厳しく批判し、国会で引き続き真相究明をすすめる決意をのべました。



 〈注〉(1)政策推進費 施策の円滑かつ効果的な推進のため、官房長官としての高度な政策的判断により、機動的に使用することが必要な経費

 (2)調査情報対策費 施策の円滑かつ効果的な推進のため、その時々の状況に応じ必要な情報を得るために必要な経費

 (3)活動関係費 上記(1)及び(2)を行うにあたり、これらの活動が円滑に行われ、初期の目的が達成されるよう、これらを支援するために必要な経費