2002年4月20日(土)「しんぶん赤旗」

「対ロシア外交への疑問」

志位委員長公表の秘密会談記録がヒントに

NHK解説


 「この疑問にたいして、ヒントを与えてくれそうなのが、今月十日の党首討論で、共産党の志位委員長が独自に入手した外務省の内部文書をもとにした発言です」。十八日深夜放送のNHK「あすを読む」の「対ロシア外交への疑問」で、田中和夫解説委員は、こう語りました。

 国民にはわかりにくいことばかりの日ロ領土交渉ですが、田中氏が「疑問」だというのは、「並行協議」という交渉方法をめぐる日ロ政府間の対応の違い、不可解な経過です。

 「並行協議」とは、日本政府がロシアに返還を求める「北方四島」のうち、歯舞、色丹については引き渡しの議論を、国後、択捉については帰属の議論を「車の両輪」のようにすすめるというものです。

 日本側は、この交渉方法で「合意した」と繰り返し発表してきたのに、ロシア側はまったく反応せず、今年になると、急に反対をいいだし、結局、日本側も取り下げざるを得なくなったのです。

 なぜ、こんなことになったのか。田中氏は、そのナゾを解くヒントが、「内部文書をもとにした志位委員長の発言」にあるというのです。「内部文書」というのは、鈴木宗男議員とロシアのロシュコフ外務次官が昨年三月五日におこなった秘密会談記録。志位委員長は、鈴木氏がこの会談で「面積の小さい歯舞と色丹を日本に渡し、国後と択捉については継続して議論を行うべきだ」とのべていたことを指摘、政府の方針にさえ反する「二重外交ではないか」と追及したのです。田中氏は、この会議で話し合われた内容が「内部文書で示しているようなもの」だったとすると、「ロシア側の態度が理解できます」とのべています。

 田中氏は、「『並行協議』をめぐって、こうした疑問が生まれるのは、単にわかりにくいだけではなく、どのような経緯で政府の方針になったのかが明らかでないからだ」といい、交渉が仕切り直しになった以上、「政府はどのような議論がおこなわれたか明らかにする責任がある」と強調します。

 小泉首相が、鈴木・ロシュコフ会談について「政府の交渉ではない」などと究明の責任を放棄しているもとで、田中氏の提起は当を得たものといえます。