2002年1月22日(火)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ

(大要)


 二十一日の日本共産党議員団総会で、志位和夫委員長がおこなったあいさつ(大要)は次のとおりです。

 通常国会の開会に際しましてごあいさつを申し上げます。

 きょうの総会には、市田書記局長も元気な顔を見せてくれました(拍手)。病気が根治したという経過は、すでに発表したとおりでありますけれども、リハビリが早くすすんで、一刻も早く万全の体調になることを、みんなで願いたいと思います。(拍手)

小泉内閣――自民党政治の二つの“ゆがみ”を変えることについては、頑迷固陋(がんめいころう)な反対・抵抗派

 小泉内閣が発足してから九カ月となりました。今度の国会では、わが党はこの内閣と正面から対決して、ホンモノの改革の展望を太く明らかにしていく論戦をやっていきたいと思っています。

 小泉首相が公約にしたことは、「自民党政治を変える」ということだったわけですけれども、この九カ月の実態は何を示したか。

 私は、「改革」というのだったら、外交では「属国ニッポン」とまでいわれたアメリカ追随政治、内政では「ルールなき資本主義」という悪名の高い大企業中心主義――この二つの自民党政治の異常なゆがみを本気で変えるかどうか、ここにニセモノかホンモノかをわける試金石があると思います。

 この点でいいますと、小泉内閣というのは、この古い自民党政治を変えることについては最も頑迷固陋(がんめいころう)な反対派であり、抵抗派であるという正体が、はっきり明らかになっていると思います。

 そして、歴代の自民党政府でもやれなかったような国民いじめの悪い政治を、これまでやれなかったような乱暴なやり方で、強行するというのが正体であるということもはっきりしてきたと思います。

経済――大銀行・大企業の目先のもうけにとことん奉仕、あとは野となれ山となれ

 まず、経済でありますけれども、いま未曽有(みぞう)の日本経済の危機がすすんでいますけれども、小泉首相の繰り返すことは、「構造改革」、この四文字の連呼だけであります。

 さすがに、経済の実態があまりに悪いですから、さまざまな批判が広がります。さまざまな立場の批判ですけれども、共通しているのは、「いったい、『痛み』の先に展望があるのか」、この批判だと思います。

 一月十日付の読売新聞では、「小泉改革への不安」「『痛み』我慢の後 幸せは来るのか」、こういうかなり辛口の論評がでました。読売新聞でも痛みっぱなしで、その先に幸せがあるんだろうか、というかなりきびしい疑問符を投げかけざるをえないという危機感があるのです。

 私は、小泉内閣がすすめている「構造改革」というのは、端的にいえば、大銀行・大企業の目先のもうけにとことん奉仕する、それに邪魔なもの、それに障害となるものはすべて壊していく。「あとは野となれ、山となれ」。国民経済がどうなろうと知ったこっちゃない。国民の暮らしがどうなろうと知ったこっちゃない。展望などないというのが、私は、その実態だと思います。

金融――中小企業つぶしの「不良債権処理」のために、大銀行への公的資金再注入

 とくに、私は、これほど露骨きわまる大銀行への応援政治というのは、かつてないと思います。

 国民には失業、倒産、社会保障の負担増、たいへんな痛みをおしつけておいて、いまおこっているのは、大銀行にたいする公的資金の再注入の大合唱です。

 これは、考えてみますと、四年前の九八年にも、公的資金の注入をやったわけですけれども、このときの名目は、中小企業にたいする貸し渋りをなんとか緩和すると、これが一応の名目でした。中小企業のためなんだというのが、名目でした。これは、でたらめだったんですけれども、ともかくそういう名目をたてたものでした。

 ところが、今度の、いま計画されている公的資金の注入というのは、「不良債権の処理」を推進するというのが、あけすけな目的になっています。つまり、「不良債権の処理」をやる、そうすると大銀行は自己資本が減る、減った分を税金でつぎたそう、そして、収益力をもっと高めてやろうという話であります。

 しかし、いま「不良債権の処理」ということでやられていることは、中小企業つぶしであり、地方の信金・信組つぶしであり、たいへんな塗炭(とたん)の苦しみを全国にひろげているということは、みなさん、ご承知の通りです。

 中小企業をつぶす「不良債権の処理」のために、国民の税金をつかうというのですから、これは逆立ち政治きわまれりというべきではないでしょうか。

 それから、もう一面で、大銀行がもうけるために邪魔になるものはすべてつぶしていく。「邪魔者は消せ」という、これがもう一つの側面だと思います。そういう理屈から、たとえば、郵政三事業の民営化、住宅金融公庫の廃止、日本育英会の廃止までやろうとしている。小泉内閣が自慢にしている特殊法人「改革」の一つの狙いはここにあります。

奨学金つぶしをすすめながら「米百俵」とは何ごとか

 私は、とくに、そのなかでも、たとえば、奨学金をつぶしてしまうという話はひどいと思います。いまは無利子の奨学金を、有利子に切り替えていくという方向です。しかし、奨学金というのはもともと、これは欧州の各国をみても、給与があたりまえであって、無利子というのは最低の条件であって、有利子に変えてしまったら、これは奨学金とはいえません。教育ローンです。

 奨学金をつぶすということを平気でやりながら、「米百俵」というのは、いったいどういうことか(笑い)。「米百俵」というのは、次代の青少年の教育のためにお米をとっておくという話でしょう。青少年から、奨学金をとりあげて、「米百俵」とは何ごとか。このスローガンは返上してもらいたいと、私は申し上げたいと思います。(拍手)

外交――あまりのアメリカいいなりが、アジアからもアメリカからも批判と警戒の声

 外交の問題では、テロ問題で、しゃにむに憲法破りの海外派兵をやったというのが、この間の小泉内閣でした。

 結局、こっちの方は、ホワイトハウスにほめられるかどうかというのが、小泉首相の唯一の判断基準でした。アメリカいいなり政治もいきつくところまできたと思います。

 これにたいして、アジア各国から厳しい批判や警戒の声があがったのは当然ですが、アメリカ筋からは本音としてどういう声が聞こえてくるか。

 私が興味深かったのは、去年の暮れに、日米関係にくわしい財団幹部が、小泉内閣についてのリポートを出した。そこで、テロ問題にたいする小泉内閣の対応についてこう言っています。

 “テロ事件への対応は評価できるが、奇怪とうつる。テロ対応はあまりにも無邪気に近い。そういったパフォーマンス的反応は、ワシントンから見るとむしろ危険である”

 あれほどアメリカに忠誠のかぎりをつくしたのに、結局アメリカ側からは、あまりに無邪気で、パフォーマンス的で、むしろ奇怪な対応だというふうに言われたのでは、これは立つ瀬がないと言いますか、国民にとっては不幸このうえない、いいなり外交というほかありません。

有事立法――戦争体制の「備え」をつくることが「憂い」なく日米共同の戦争にのりだす道開く

 小泉内閣が、そのつぎに今度の国会ですすめようとしているのが、有事法制の問題です。

 私は、いったい何のための有事法制なのか、その本音を言えということをいいたいと思います。

 「テロ対策」のためとか、いわゆる「不審船」対策のためとか、いろんな理屈がごちゃ混ぜのようにいわれますが、これは全然次元の異なる話です。警察と司法のレベルの話です。

 くわえて「不審船」なるものについていいますと、これにたいする対応というのは、国際法上きちんと説明がついて、周辺の国際社会にもしっかりと納得のいく対応でなければならない。これは当然のことであります。日本がかつて侵略戦争という誤りをおかした国であるだけに、このことは特別に強調されなければなりません。

 いずれにしても、次元がまったく違う話です。

 では、何のための有事法制なのかといいますと、結局は、米軍がアジアで戦争を起こす、その戦争に日本を総動員するというところにねらいがあるのではないか。

 小泉首相は、「備えあれば憂いなし」と言いました。私は、逆の意味で、これは本当ではないかと思います。つまり、戦争動員体制の「備え」をつくっておけば、「憂い」なく日米が共同して海外の戦争に乗り出せる。そこに、一番の本音があるのではないか。これはぜひ、論戦のなかで明らかにしながら、きっぱりと中止・撤回を求めていきたいと思います。

公共事業口利き疑惑――首相の責任とわれる、国会の徹底した真相究明の努力を

 公共事業を食い物にする金権・腐敗問題も、大きな争点になっています。

 この問題で、私は、小泉首相の対応を見ていて、つい最近あった自民党大会で一言もこの問題についてふれなかったというのが、たいへん無責任な態度として印象に残りました。

 党として責任が問われていることへの自覚がまったくない。利権と腐敗の政治を改革する意思はまったく見られないというのが、首相の態度だと思います。

 この問題はもちろん、あっせん利得罪の抜け穴をなくすなど、しくみの上での改革は必要ですが、大前提として、真相究明が徹底しておこなわれるべきです。関係した秘書、元秘書、そして政治家の証人喚問を含めて、国会が徹底した真相究明のための努力をはかるべきだと考えます。

国民のたたかいはげます国会論戦、「大運動」成功に議員団の力をつくそう

 いくつかの分野で見てまいりましたけれども、内政でも外交でも腐敗の問題でも、まさに自民党の悪政の暴走が、小泉内閣で起こっている。

 この暴走に正面から立ちはだかって、ストップをかけ、そして経済でも外交でも民主主義の問題でも、「国民こそ主人公」のわが党の改革の提案を堂々と掲げて、正面からこのいつわりの流れを打ち破っていく、正論の力で打ち破っていく国会にしていきたいと思います。

 そしていま、全国ではリストラの問題でも、医療の問題でも、中小企業の問題でも、たたかいが起こっております。全国のたたかいをはげます論戦をやっていこうではありませんか。

 そして全国ではいま、草の根で党を大きく強くする「大運動」が取り組まれておりますが、この「大運動」の成功のために、わが議員団もいっしょになって全国のみなさんといっしょに力をつくす。このこともあわせて誓い合いまして、ごあいさつにかえたいと思います。ともにがんばりましょう。(拍手)