2001年9月28日(金)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ

(大要)


 二十七日の日本共産党国会議員団総会で、志位和夫委員長がおこなったあいさつ(大要)は次のとおりです。

 みなさん、ごくろうさまです。

 今度の国会は、アメリカでのテロ事件をきっかけにして、国際危機の高まりが進展し、たいへん緊迫した状況のもとで開かれる国会となりました。

 この問題について、日本共産党は、不破議長と私の連名の書簡を、各国政府首脳にあてて、在京の百三十の大使館を通じて送りました。書簡は、卑劣なテロにたいする徹底的な糾弾とともに、どうやればこの問題を解決できるかという解決方法を示したものです。

 軍事報復ではなく、“法にもとづく裁き”をということを、私たちはこの書簡で訴えました。少なくない大使館の関係者から、たいへん理性的で冷静な提案だという共感の声が寄せられました。

 ある大使館の関係者からは、「この内容だったら、世界の平和を愛する人のおおかたの賛同を得られる」という反応もありました。この書簡にもとづく活動は、ひきつづき国内外で広げていきたいと考えています。

報復戦争は新たな市民の犠牲を引き起こす―法の裁きでテロ根絶を

 アメリカは、いま大規模な報復戦争の準備を進めています。これがおこなわれたらどうなるかということが、ひじょうに重大な問題です。

 最近のいくつかの報道をみても、この攻撃対象となるアフガニスタンで、罪なき多くの市民が犠牲になるという警告と憂慮の声が広がっています。

 すでに、アメリカなどが軍事報復戦争の態勢をととのえるなかで、アフガニスタンから国際機関の関係者が撤退し、援助が途絶しています。また、国境の封鎖がおこっています。そういうもとで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からも、このままいけば、あと二〜三週間で三百八十万人が深刻な食糧危機に直面するという深刻な事態が報告されています。

 さらに、国連食糧農業機関(FAO)は、もし報復攻撃がおこなわれれば、新たに六百万人が飢餓状態におちいると警告しています。

 ユニセフの親善大使の黒柳徹子さんが現地入りして、テレビでもいまの悲惨な実態について訴えておられましたけれども、アフガンという国は二十年におよぶ内戦で経済が破壊され、干ばつによる飢餓が広がっています。そして、子どもたちの状態も非常に深刻で、五歳までに、四人に一人の子どもが栄養失調ないし病気で亡くなるという実態がある。黒柳徹子さんは、“報復戦争をやったら、ただでさえ悲惨な子どもたちの状況をいっそう深刻なものにする”と訴えています。

 無差別に市民を殺傷したテロリストの行動は、憎みてあまりあるものです。しかし、それへの報復戦争として、罪なき市民、罪なき子どもたちの新たな犠牲を引き起こすことも許されない。これは明りょうだと思います。それは新しい憎しみを生み、事態を泥沼に導き、テロ問題の道理ある解決にもつながらない。この立場をきっぱり主張してがんばりぬいていきたいと考えております。(拍手)

 もちろん国際社会を見ますと、一方では、冷静で健全な声も広がってきています。

 この間、アメリカの世論調査会社のギャラップ社が、世界三十一カ国の世論調査をおこないました。その結果を見ますと、アメリカによる武力行使に賛成する人々が多数を占めた国というのは、イスラエルとアメリカの二国だけです。あとの二十九カ国は武力行使賛成派が少数です。ヨーロッパ各国を見ましても、だいたい二割前後しか武力行使賛成がいません。八割前後の人々が、法による裁きを求めています。

 時がたつのにしたがって、いま進められている報復戦争の道を進んだらやはり危険だ、新たな惨害をまねき、テロ根絶にもつながらないといった、冷静で慎重な対応を求める理性の声が広がりつつあります。

 情勢は予断をもっていえない事態に直面しておりますけれども、報復戦争ではなく“法にもとづく裁き”によってテロの根絶を、という理性の旗をかかげて、世界でも日本でもこの声を広げていきたい。日本共産党はその先頭に立ってがんばっていきたい。この決意をかためあいたいと思います。(拍手)

新規立法―報復戦争への参加、憲法九条じゅうりんする二重の暴挙

 この問題での小泉首相と日本政府の対応は、米国による報復戦争を無条件の前提において、それにいかに参加・協力するかに熱中する。この姿勢で終始しています。

 報復戦争をおこなう米軍などに、輸送・補給・医療などの支援をおこなうことを中心とした新規立法が、国会の冒頭にも強行されようという動きになっています。

 首相は、「今度の立法はけっして憲法を侵すものではない。武力行使と一体にならない範囲でおこなう」ということを繰り返しています。しかし、この問題というのは、一昨年のガイドライン法の審議のさいに、政府が「後方支援」と呼ぶ兵たん活動が、どの分野についても、国際法上も相手方からの攻撃目標とされること、そして国際法上も武力行使の一部であること、これはもうガイドライン法の審議のときに、私たちの追及で徹底的に明らかにされています。決着ずみの問題であります。

 それにくわえて、今後の新規立法について、首相自身が、「自衛隊は危険なところにも行ってもらう」ということを明言していること自体が、「武力行使と一体にならない範囲でおこなう」ということが、まったくの空文句であるということを、みずから告白するものだと私は思います。

 それから首相は、「日本の主体的な対応なんだ」と、「主体的」ということばを繰り返しています。あまりたくさん繰り返すものですから(笑い)、かえって主体的でないということがすけてみえてきます。先日の党首会談のさいに、私は米軍の報復戦争に自衛隊が参加するというんだけれども、その報復戦争をやる国際法上の根拠というのは、一体どこにあると日本政府は認識しているのか、ということを尋ねました。これに対する首相の答えはありませんでした。何回か私がただしますと、最後に返ってきたのは、「アメリカが判断する、それを見て、日本が主体的に判断する」というのです。普通、こういう「判断」は「主体的」とはいいません。(笑い)

 まさに、アメリカのいわれるままに、アメリカの顔色をうかがって、バスに乗り遅れてはいかんとばかりに、あたふたと非常に危険な立法を通そうというのが、いまの政府の立場であります。

 今度の新規立法というのは、報復戦争への参加がその立法目的であるという点でも、憲法九条をいよいよ本格的にズタズタにしていくという点でも、二重に許されない暴挙であります。

 私たちは、この憲法違反の報復戦争法案を許さないために、全力をあげて国会内外でがんばりぬきたい、この決意もかためあいたいと思います。(拍手)

雇用・くらし守る国民のたたかいと一体の国会論戦を

 最後に、くらしと経済の問題でも、国民生活破壊の小泉「改革」と正面から対決して、国民のくらしを守り、経済を立て直すための論戦も、大事な課題であります。

 さまざまな問題がありますけれども、失業率5%という最悪な状況のもとでの、大企業のリストラに反対して雇用を守るたたかい。それから、医療の改悪を中心とした社会保障の大改悪に反対するたたかい。これらは今度の国会の大きな焦点をなすものです。

 リストラの問題では、中央委員会としてたたかいのよびかけを出しました。これは、全国の職場でたいへん歓迎されています。いま日本共産党が、雇用の問題でも、社会保障の問題でも、国民のたたかいのよりどころになる、不屈性と先進性を発揮すべきときだと思います。

 国会論戦も、全国でたたかう仲間たち、たたかう人びとを励ます論戦をおこなう必要があると思います。

 すなわち、リストラについても、社会保障についても、国民のたたかいに大義と道理がある、そして、このたたかいには展望があるし解決策もある、このことを、国会論戦を通じて明らかにし、国会外のたたかいと、国会のたたかいが一体になって、くらしを守るうえでもわが党ならではの論戦を繰り広げていこうではありませんか。

 内外のたいへんな激動のもとでの国会になりました。私たちが、理性の旗を高く掲げて、日本共産党国会議員団としての真価を発揮し奮闘をすることを決意しあって、ごあいさつといたします。ともにがんばりましょう。(拍手)




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