2001年6月30日(土)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での志位委員長のあいさつ

(大要)


 百五十一通常国会閉会にあたって、二十九日に開かれた日本共産党国会議員団総会で志位和夫委員長がおこなったあいさつ(大要)は次のとおりです。


 閉会日にあたりまして、ごあいさつを申し上げます。

都議選結果―こんごの反転攻勢につながる大事な足場築いた大奮闘に感謝

 まず、都議選の結果についてです。議席を後退させたことは、たいへん残念なことでありましたけれども、得票では約七十五万票を獲得して、わが党の都議選史上では三番目の得票を確保しました。さらに得票率では、昨年の総選挙の東京比例ブロックで獲得した一四・三%を、一・三ポイント伸ばして、一五・六%獲得したことは、たいへん重要だと思います。

 今度の選挙というのは、四年前の都議選にくらべて、たいへん複雑で困難な条件のもとでたたかわれました。石原都政への対応、公明党・創価学会の反共戦略、民主党とわが党との政党間の力関係の大きな変動、それに小泉人気がくわわって、四つの複雑で困難な条件のもとでたたかわれたわけですが、それぞれに対して、正確で攻勢的な論戦を展開して、議席は残念ながら後退しましたけれども、得票率で押し返した。これは、こんごの反転攻勢につながる大事な足場を築いたといえると思います。

 私は、日夜をわかたず大奮闘された東京の党員、後援会員、支持者のみなさん、そしてご支持をいただいた多くの都民のみなさん、全国からよせられたあたたかいご支援に、この場をおかりして、あらためて心からの敬意と感謝を申し上げたいと思います。(大きな拍手)

 かちとった成果をみんなの確信にするとともに、力が及ばず議席を後退させた問題については、党内外の声に耳を傾けて教訓をくみとり、つぎのたたかいにしっかり生かすという立場でのぞみたいと思います。

小泉流「改革」―国民には耐えられる限界をはるかにこえた「痛み」

 小泉政権ができてから二カ月になりますけれども、わが党は、国民の立場にたって正面からこの政権と対決する論陣を、国会ではってきました。そういう正面からの対決の論陣をはった政党というのは、日本共産党だけであって、そのことが持つ意義は、非常に大きなものがあると思います。そのことが、しだいに、この政権の本質、問題点を明るみに出しつつあります。そして、国民の中に「このままでいいんだろうか」という不安や批判を広げつつあるというのが、いまの状況だと思います。

 たとえば、経済の問題ですが、私たちは、小泉流「改革」が、国民に「痛み」を押しつけるものだということを告発してきました。この前、政府が、「構造改革の基本方針」――「骨太方針」なる方針を決めたわけですけれども、私は「痛み」を押しつけるといった場合に、三つの点が重要だと思います。

 第一は、押しつけられる「痛み」というのは、国民が耐えうる限界をはるかに超えた痛みだという点であります。たとえば、「不良債権の最終処理」ということで、押しつけられる痛みというのは、二十万社から三十万社の中小企業の倒産、百万人という規模での失業です。これは、つぶされる企業、首を切られる労働者にとっては、耐えうる痛みをはるかに超えたものであります。

 それから「社会保障構造改革」の名で、国の支出を減らしてしまうという動きがすすめられていますけれども、医療費負担の増大による必要な医療の抑制、あるいは介護保険の高すぎる利用料による必要な介護の抑制、これは国民的な規模での健康悪化や、生活の質の悪化につながるもので、これもとてもではないけれども耐えうる痛みを超えたものであります。だいたいそういう痛みは、本来、政治として国民に押しつけてはならないものであります。

 さらに消費税の増税という動きが強まっていますが、「これをもしやられたら、店をたたまなければならない」という声が日本中にあふれているわけで、絶対に許されないことであります。

 どれも、いま押しつけられようとしている痛みは、国民が耐えうる痛みをはるかに超えたものだということが、まず重大な点であります。

「痛み」に耐えても展望なし―景気対策なしが致命的弱点

 第二に、それでは「痛み」に耐えたら未来の展望はあるのか。これがまったくないというのが、重大な点です。

 今度の「骨太方針」を読んでみても、政府自体がこれだけ「景気の悪化」ということを認定しながら、景気対策が一言もないというところが、私は致命的な弱点だと思います。景気の悪化策はあっても、景気の回復策はない。これは本当に、深刻で重大な問題点だと思います。これだけの不景気のなかで、景気対策を示せないというのは、まさにいまの自民党流政治が、どんなに行き詰まっているかを示しています。

 このことは、ずいぶん各方面から批判もあります。日商の稲葉会頭が、今度の「骨太方針」について、「小骨は切り捨てて、骨太だけでよいわけがない」、「マイナス成長は我慢できない。健全な中小企業まで、不利になるのは許せない」。こういうかなり厳しい批判をしました。

 海外のマスコミでも、イギリスのフィナンシャル・タイムズがなかなか手厳しい論評を出しました。「地獄への道は、小泉の善意によって敷きつめられている」として、「痛みなしに成果なし」という考えは、需要対策を忘れているために、「破滅的に不完全だ」とのべています。つまり景気対策をもっていないことが、日本経済に破局をもたらすという警告が海外からも寄せられています。

「痛みをひとしく」ではない―大銀行と大企業には甘やかし政策

 第三に、「痛み」を押しつけられるのは国民だけであって、大銀行と大企業には、甘やかし政策に歯止めがないということです。これも具体化されつつありますけれども、大銀行にたいしては「株式買い取り機構」をつくる。そのさいに公的資金を注入し、減税をやる。こういうしくみがつくられようとしています。

 それから、「不良債権の最終処理」で、大銀行の自己資本が傷ついたら、公的資金を注入して、ここでも税金によって、大銀行を助けてやる。

 ですから、「痛みをひとしくわかちあう」というのは、本当にデタラメです。痛みを押しつけられるのは国民だけで、大銀行、大企業には、甘い話だけがしっかり用意されている。ここを、きちんと告発していく必要があると思います。

 私たち日本共産党の対案――需要を増やし、日本経済をよくする。需要のなかでも、従来型の無駄な公共事業の積み増しのようなやりかたではなくて、消費税減税など家計を直接応援する対策で、景気回復をはかり、日本経済を立て直す。この道こそが、現状打開の唯一の道理ある道だということが、いま小泉政権がやろうとしている道との対比でも、いよいよ鮮やかになっていると思います。

日米関係ほど“聖域中の聖域”にしている問題はない

 外交についてのべますと、小泉内閣は「聖域なき改革」というのがたいへん好きなのですけれども、日米関係ほど“聖域中の聖域”にしている問題はないと思います。

 昨日、党首会談で私は三つの問題を小泉首相に提起しました。一つは、日米安保体制の問題ですが、「集団的自衛権の研究」、あるいは「ミサイル防衛」構想への理解や参加はすべきでないということ。二つは、日米経済関係では「不良債権の最終処理」を対米誓約にするなど、日本経済の重荷になるようなことを背負って帰ってくるようなことはすべきではない、対等・平等の日米関係をつくる必要があるということ。三つは、京都議定書を、日本が率先して批准する必要があること。この三つを提起しましたけれども、三つとも首相の答えというのは、アメリカいいなりの追随外交の域を出るものではありませんでした。

「ミサイル防衛」構想めぐり政府の説明が根底から崩れる矛盾が

 ただそのなかで、深刻な矛盾も起こっているということを報告しておきたい。「ミサイル防衛」構想をめぐってです。

 この問題でアメリカのブッシュ政権は、いま新しい構想にきりかえてきています。これまでは、NMD(米本土ミサイル防衛)とTMD(戦域ミサイル防衛)とは別個のものとして推進するということが建前だったわけですけれども、このNMDとTMDを一体化して、一つの新しい「ミサイル防衛」システムにするというのが、ブッシュ大統領の方針であり、ラムズフェルド国防長官も同じことをいっている。ラムズフェルド氏は、「NとTを区別するのはもはや有害ですらある、一体化する必要がある」ということを明りょうにのべています。

 アメリカの新戦略では、ミサイルが打ち上げられたら、高度二十キロ、三十キロの低い段階で撃ち落とすという計画が今度の計画のようです。つまりそのミサイルがどこにむけられたものかを区別する前に落としてしまおうという計画なのです。

 こうなってきますと、これまでの日本政府の立場がなりたたなくなってくる。日本政府は、TMD研究を日米共同ですすめるが、それはあくまで「専守防衛のため」であって、「純然たる日本防衛のシステム」だと説明してきたわけですけれども、それがなりたたなくなっています。一体化されたアメリカの核戦略の網の目のなかに日本のTMDががっちりくみこまれることになるわけですから、いままでの政府の説明が根底から崩れるという矛盾がここで起こっているわけです。

 この問題を、昨日、小泉首相にただしましたら、返答に窮して、「たしかに日本とアメリカの立場に違いがあります」ということを首相も認めました。違いがあると認めるのであれば、その違いをただすことをしないまま、これまでと同じようにTMD研究の推進を、ズルズルすすめるということは、道理がたたなくなっているわけです。

 私たちは、「ミサイル防衛」というのはもともと、核軍拡競争をひどくするという点で、ロシア、中国はもとより、ドイツやフランスからも警告や批判があがっているわけですから、被爆国の政府として、これに協力するとか参加するなどという態度をとるべきではない。すみやかな核兵器廃絶のために、被爆国の政府としてイニシアチブをとるべきだということを強く求めていきたいと思います。

 外交の問題でも、私たちは、二十一世紀の早い時期に日米安保条約を廃棄する、そのために国民的多数派をつくるということを大きな目標にしながら、そのまえにも自主・自立の道理にたった外交を野党としても独自にすすめてきたわけですが、その値打ちが小泉政権の対米屈従外交との対比でもたいへん光っているということがいえると思います。

「自共対決」はどの分野でも鮮明に―大きな構えでのぞみ、参院選の躍進を果たそう

 なお、昨日の党首会談について補足しますと、そういうやりとりがあったあと、小泉首相は最後に「共産党とは違いが鮮明でいい」(笑い)ということを言いました。そこで、私は「それは、自共対決ですから」と言って別れたわけですけれども、先方も違いが鮮明といっているのがいまの現実です。

 私たちは今度の選挙で、まさにどの分野でも「自共対決」が鮮明に、するどく、わかりやすくなってきているわけですから、大きな構えで「自共対決」にのぞみ、そして日本共産党こそが本当に国民に責任を負い、日本の未来に責任を負う党だということをどの分野でも堂々と示して、躍進を期したいと思います。その決意をかためあおうではありませんか。(大きな拍手)

 今期で橋本敦議員と須藤美也子議員が、議員の仕事としては、引かれることになりました。長年のお二人の国会での奮闘と努力に心からの敬意と感謝をみんなで表したいと思います。(大きな拍手)

 改選を迎える六名の参院議員のみなさんは、たいへん激戦ですが、必ず国会にもどってきていただきたい。新しい仲間をたくさんひきつれてもどってきていただきたい。もちろん、これは全党の仕事でありますけれども、そのために互いに全力をつくしましょう。参院選挙の躍進を誓いあって、ごあいさつといたします。がんばりましょう。(大きな拍手)




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