2001年3月21日(水)「しんぶん赤旗」

日米首脳会談

国益損なう約束次々

ミサイル防衛支持、日本経済の構造改革

当事者能力ない森首相

原潜事故対応に「感謝」


 【ワシントン19日坂口明記者】ブッシュ政権発足後初となる日米首脳会談は十九日(日本時間二十日)ワシントンで開かれ、共同声明で、森首相が銀行の不良債権処理への効果的対処を約束、ブッシュ政権が推進する「ミサイル防衛」計画に日本が積極的支持を与えることを確認しました。

 昼食をはさみ二時間続いた会談でブッシュ大統領は、特に不良債権問題に懸念を表明。また「日本が(円安を利用し)輸出で景気回復を図る」動きに警戒感を示しました。森首相は「不良債権は(景気回復への)最大のネックだ」と発言。同首相が「企業債務と不良債権問題の処理を含め金融システム強化のために構造・規制改革を精力的に促進するとのべた」ことが共同声明に明記されました。

 共同声明では、双方が「大量破壊兵器拡散と弾道ミサイルによる脅威の増大を認識した」とし、「脅威に対処する効果的措置をとる必要を再確認」。「日米両国がすでに弾道ミサイル防衛技術の共同研究を実施していることに満足」し、他の関係国とも緊密に協議することで合意しました。

 共同声明は「日米同盟の一層の強化のためさらに協力する」とのべ、「二国間の防衛協議や計画立案への躍動的対処」の必要性にふれました。会談で森首相は有事法制の検討を進める意向を表明しました。

 沖縄駐留米軍問題では、森首相は海兵隊削減など県民の要望に具体的にはふれませんでした。

 米原潜による実習船「えひめ丸」衝突・沈没問題では、森首相が「米側の迅速で誠意ある対応に感謝している」とのべ、事故が日米同盟に影響を与えるものではないとの見解を表明しました。


志位委員長が談話

 日本共産党の志位和夫委員長は二十日、ワシントンでおこなわれた日米首脳会談について、次の談話を発表しました。

 一、森首相とブッシュ米大統領の首脳会談が、本日未明(日本時間)、ワシントンでおこなわれた。わが党は、与党むけには事実上の退陣表明をして、政権担当の当事者能力を失っている森首相が日米首脳会談にのぞむこと自体が、「日本国民の利益を損なう」として批判してきた。首脳会談の結果は、わが党の危惧(きぐ)を裏づけるとともに、自民党外交の対米従属の深さと危険をしめすものとなった。

 一、米原潜による「えひめ丸」衝突・沈没事件について、森首相のとった態度は、「米側の迅速で誠意ある対応を感謝」するとしたうえで、「事故が日米同盟に影響を与えるものではないと確信している」ことを強調した。こうした態度は、日本国民の怒りを代弁して米側と交渉するという、主権国の責任者なら当然とるべき立場にそむくものといわなければならない。

 一、森首相が、日米軍事同盟について、「拡大、深化のためにできることから進める」として、「有事法制の検討の開始」を約束し、アジアやヨーロッパからもきびしい批判の声があがっているNMD(米本土ミサイル防衛)に「理解」をしめすなど、安保体制のいっそう危険な変質にふみこむ立場を表明したことも重大である。

 日米軍事同盟を絶対視する立場から、いまわが国で大問題となっている米軍機による夜間離着陸訓練や超低空飛行訓練、日米地位協定改定問題など、日本国民の切実な要求については、だんまりを決め込むという態度に終始したことも、情けないかぎりである。

 一、経済問題も重要議題になったが、事実上のインフレ政策への転換をはかり個人消費への打撃をもたらす日銀の金融緩和政策を「手土産」にしたうえ、七十兆円の公的資金をつかった不良債権の早期処理を約束させられるなど、すでに破たんが明瞭(めいりょう)になっている大銀行とゼネコン応援の「景気対策」を対米公約したことも重大である。




著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7