2001年2月21日(水)「しんぶん赤旗」

内閣官房 機密費文書

志位委員長の国会追及

テレビ朝日系 ニュース番組が検証


 官房機密費の引き継ぎ文書をつくったのは、官僚機構のトップにある現役の官房副長官だった――。十九日に放映されたテレビ朝日系「ニュースステーション」で、日本共産党の志位和夫委員長が明るみに出した「報償費について」と題する内部文書の存在が改めてクローズアップされました。志位委員長の暴露、追及の重大性を浮き彫りにするものです。

 

年間12億円 証言と一致

 場面は、九日の衆院予算委員会。志位委員長が内閣官房文書を手に追及する映像にあわせて、「いつもの怒号とヤジがそのときやんだ」というナレーションが流れます。

 「こういう内容は承知いたしておりません」と答弁する福田官房長官。

 つづいて、志位氏が「この文書について(福田氏は)『存じ上げていない』とはいったが、『こんな文書はない』という否定はできなかったんですね。私たちは確かな文書だという認識を持っています」と、局側のインタビューに答えました。

 番組では、独自に入手した同文書の中身を裏付ける一つとして、官房機密費の額が「月に一億円ぐらいだった」との塩川正十郎元官房長官の言葉を紹介。文書によれば、塩川氏在任の一九八九年(平成元年)度の報償費の内閣分は年間十二億九千七百万円で、ほぼ証言と一致します。

 

古川官房副長官しどろもどろ

書かれたのは内閣官房内部

 番組はこの文書が「本当に内閣官房内部で書かれたものか」を取材で跡付けます。

 久米宏キャスターは「これが本物だとしたら何が問題か」と提起。清水建宇朝日新聞編集委員はこれにこたえて、(1)外務省の予算を内閣官房に上納し、官房長官が流用しているという財政法違反(2)自民党の外交対策費や盆暮れのモチ代、国会対策費など使い道の問題(3)外務省と官邸が共犯して流用を組織的に繰り返てきたこと―を挙げました。

 また、文書の真偽について、現在官邸などで使われている用せんと並べて比較したり、「二行書いて一行空ける」という独特の書式が「役所の書き方。文書を直す修正がしやすいようになっている」(元通産官僚の民主党・岡田克也政調会長)点などを検証しました。

複数の専門家「古川氏筆跡」

 番組はさらに、「文書はだれが何のために書いたのか」という点に踏み込みました。

 番組では文書の日付「平成元年五月」に退陣した竹下内閣当時の小渕恵三官房長官から、宇野内閣の塩川官房長官に業務を引き継ぐ映像を写しました。塩川氏はインタビューで「『報償費は本年度予算でこの程度で、この程度残っております』という引き継ぎはあった」と認めながら、文書の存在については「あったかも分からんし、なかったかも分からん」と言明を避けました。

 さらに番組では、その引き継ぎ文書を作成した首席参事官への直接取材に及びました。それが現在の官房副長官、古川貞二郎氏でした。古川氏は文書について「承知しておりません」と否定。これにたいし番組は、文書と古川氏の署名の入った「直筆」の文章を、複数の筆跡鑑定の専門家が照合し、「本人の筆跡である」という確認を得て、再度本人に当たりました。

 記者「承知していないというのは、どういう意味でおっしゃっているんですか」

 古川氏「それはこの種の問題は週刊誌で何回か聞いておりますから、そういう意味でこういうふうな文書なのかということを承知していないということです」

 しどろもどろになり意味不明の言葉を残し、記者の質問をさえぎって逃げるように車に乗りこんだ古川氏。後日、秘書を通じて書面で「私が書いたものではない」と回答したといいます。

政府の責任で明らかにせよ

 久米キャスターは「テレビカメラってこわいもんですね。車に乗りこむときのあのそぶりというのは、『すまん、私はウソをついている』と見抜いちゃったね、カメラが」と感想をのべました。

 清水編集委員は、政府がみずからの責任で文書について調べ、国会でも追及して本物かどうかをはっきりさせるべきだと指摘。その上で「もしはっきりすれば、これは財政法違反を長年繰り返してきた物的証拠ですよ。だからいま予算案にかかっている当初予算案も、一回組み替えて、財政法違反がないようにしてもう一回再検証しなくちゃならない。大幅に減額して予算を再提出すべきだと思いますね」と結びました。

 


私たちには不愉快極まる

おおさか市民  ネットワーク代表 藤永のぶよさん

 動かぬ証拠が出てはっきりしたわけですから、もう言い逃れできないはず。事実を認めて、二度と違法な税金の使い方ができないようにすべきです。

 私も長く、大阪市の公金詐取問題を追及してきましたが、裏ノートという動かぬ証拠を突きつけても、市は白を切ろうとしました。内閣官房と外務省の機密費は、規模の点では大阪市の比ではありませんが、国民の税金の不正使用という点では同じです。税金が原資の予算は、どう使われたか公開すべきです。機密費は、ヤミに群がる人には必要でも、税金を払っている私たち国民には不愉快極まりないものです。

 


「上納」は明らかに法律違反

椙山女学園大教授 川崎 泰資さん

 雑誌の報道、志位さんの国会質問、そしてテレビ朝日の報道とだんだん核心に迫ってきています。政府は、官邸への「上納」の事実を国会で否定していますが、予算委員会には河野外相、宮沢財務相ら官房長官経験者が座っています。機密費を使っていた政治家がみんな内閣に入っている。「上納」というのは明らかに法律違反であり、こんな予算をそのまま通すなどというのは信じられません。減額するのは当然です。

 これまで政府は、完全に知らぬ存ぜぬでうそを通してきました。しかし、過去にさかのぼって責任をとらなければいけない問題です。

 こんなめちゃくちゃな政治はすぐに終わりにしてほしい。




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