2001年2月16日(火)「しんぶん赤旗」

2・15緊急集会での志位委員長の国会報告

(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が2・15緊急集会(東京・日比谷野外音楽堂)でおこなった国会報告の大要を紹介します。
 
米原潜事故──森首相に国民の命預かる資格ない
 みなさん、こんばんは。(「こんばんは」の声)日本共産党の志位和夫でございます。国会報告をかねて、連帯のごあいさつを申し上げます。(拍手)
 米原潜によって、実習船「えひめ丸」が沈没させられるという事件が、起こりました。
 私は、まず最初に、米軍の無法な行動に、みなさんと一緒に、強い抗議をのべるものです。(拍手)
 民間船舶が多数往来する海域で無謀な緊急浮上訓練を行った。民間人をこともあろうに潜水艦の操舵(そうだ)席につかせていた。そして、事故後も救援活動を行わなかった。まさに、無法そのものではありませんか。(「そうだ」の声)
 しかもきょう、アメリカ側から「捜索を打ち切る」との発表が行われました。わずか五日間の捜索で打ち切るなどということは、絶対に許すことはできません。(「そうだ」の声)
 加害者として重大な責任を負っているアメリカ政府は、捜索・救援を続行すべきであります。このことを、強く求めようではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
 森首相の対応も、情けない限りであります。事故が起こった第一報を聞きながら、二時間近くもゴルフのプレーを続けました。
 私は、きのうの党首討論で、この問題を追及しました。“実習船が沈められた。原潜に沈められた。三十五人の乗組員がいる。二十五人しか安否が確認されていない。つまり十人は、安否不明”。それが第一報であります。それを聞きながら、どうしてゴルフができるのか。胸に痛みがないのか。
 そうしましたら、首相の答弁は、「ゴルフ場にいたことは反省するが、そこでもやるべきことをやった」というものでした。
 私は、「ゴルフの片手間にできるような仕事ではない」(「そうだ」の声)と、きびしく批判いたしました。
 みなさん、首相がこんな姿勢だから、現地に行っている政府代表も情けない限りなのです。いまハワイの現地に桜田外務政務官が行っています。ところが、この対応が実に情けない。
 原潜が衝突直後に、救助を行わなかったということが問題になりました。「えひめ丸」の大西船長も、「原潜は助けてくれなかった、ただ監視しているだけだった」と、強く抗議しました。現地ホノルルでも、最大手の新聞が、原潜の行動を批判する特集記事を組みました。
 私が、きのう質問する直前に、現地にわが党の調査団で行っている緒方国際局長から電話で連絡がありました。「ホノルルでは、原潜が救助しなかった、このことが大問題になっている」。原潜の元艦長さんもその新聞で語っています。「ああいう場合には、レスキュー・ダイバーが海に飛び込んでも助けるのが当然なんだ」。原潜の元艦長さんがいっているんです。
 そして、アメリカの政府もまだ、「この問題は調査中」といっているさなかに、桜田政務官は、米軍にいわれるままに、「米軍には落ち度がなかった」ということをいってしまったのです。ひどい話ではありませんか。まるで米軍のスポークスマンみたいなことをやっている。これが、日本の政府の現地での対応です。
 私は、きのうの党首討論で、「調査も終わっていないのに、どうして『落ち度がなかった』といえるのか」。こう聞きました。さすがに首相も「最終調査結果を待ちたい」と、立場を修正せざるを得ませんでした。それを受けて、直後に外務省の報道官も、「認識はいまの段階ではいえない」と、「米軍に落ち度はなかった」という現地の桜田発言を事実上撤回せざるを得なくなってきました。
 対米屈従の外交を一歩ではあるがただした。現地での私たちの調査団と国会でのたたかい、そしてみなさんの世論と一体になって、一歩でも動かしたということをみなさんに報告したいと思うのであります。(拍手)
 私たちは、捜索と救援の活動を強く求めます。そして、事故原因と責任の徹底的な究明を強く求めます(拍手)。そして、森首相には国民の命を預かる資格はない、このことをはっきりいおうではありませんか。
 
KSD汚職──真相を糾明して自民党に審判を
 KSD汚職と「機密費」の問題、この二つの大事件も、国民の大きな怒りを広げています。
 私たちは、国会の衆参の本会議質問、予算委員会の質問で、この問題を追及してきました。問題の核心が浮き彫りになってきたと考えます。
 まず、KSD汚職です。これまで戦後数々、自民党の腐敗事件が繰り返されてきましたが、この汚職事件は、これまでにない新しい悪質さをもっています。何よりも、中小企業のみなさんの共済掛け金を吸い上げたのです。個々の政治家にヤミ献金が流れただけではなくて、自民党という党そのものに、ヤミのお金が巨額な規模で流れ込んだ。これまでにない悪質な事件であります。
 私たちは、予算委員会の質問で、この問題をとりあげました。四つのルートで、KSDから自民党にお金が流れました。そのなかで、とくに「トンネル献金ルート」、「党費肩代わりルート」について追及しました。
 「トンネル献金ルート」というのは、KSD豊明会という、トンネル団体を通じて、自民党の豊明支部にお金を流す。だいたい、五年間で二億数千万円のお金が、このトンネル団体を通じて流れました。
 この政治献金の元手はどこか。原資はどこか。KSDの会員のみなさんが払った共済掛け金しかないじゃないか。
 政府は、はじめは「原資は掛け金ではない」、こういって頑張っていたのですが、とうとう最後は言い訳が通用しなくなって、「その主張には無理がある」。自分が言って「無理がある」っていうのも奇妙ですが(笑い)、首相もいわざるをえなくなりました。
 つまり、中小業者のみなさんの掛け金が、自民党に流れていたということは、相手も事実上認めざるをえなくなりました。「自民党丸ごと総汚染」、これがはっきりしたというのが、国会論戦の到達点であります。(拍手)
 もう一つのルートは、「党費肩代わりルート」であります。これは、小山前参院議員や、村上参院議員を比例名簿の上位に載せるために、幽霊党員をつくり、党費を肩代わりしていた。やり口は、東京、埼玉、神奈川、千葉にある、自民党の四つの「豊明支部」なるものを受け皿にして、そこにお金が流れ込んでいた。
 私たちが、調べてみましたら、九一年から九九年までの九年間に、総額十八億円ものお金が、党費という形で、流れていたのであります。
 私たちは、幽霊党員と党費肩代わりの実態を、私たちの調査にもとづいて、生々しく告発しました。これは国会で使ったパネルです(拍手)。自民党の四つの「豊明支部」なるものの党員の数のパネルです。九一年から九九年までのものですが、九六年はゼロでしょ。
 この前の年には四つの支部で七万人の党員がいたものが、どうしてゼロになっちゃうのか(笑い)。しかも東京、神奈川、埼玉、千葉がどうしてそろってゼロになっちゃうのか(笑い)。説明つかないじゃありませんか。
 その次の年にはまた九万人になっている。ドロンと消えてヒュードロドロと現れる。幽霊そのものじゃありませんか。
 そして、「しんぶん赤旗」の特別取材班がこの四つの支部なるものを調べてみましたら、実態はもっと驚くべきものでした。
 埼玉では、埼玉県の自民党県連から自民党豊明支部の代表者あてに、党費振り込みの用紙がいっぱい詰まった段ボールが送られてきた。本当はこれを党員一人ひとりに渡して党費を集めなければならないはずなのに、段ボールごと毎年KSDの本部に送っていた。つまりKSDが党費を肩代わりしていたという生々しい証言が得られました。
 東京と千葉と神奈川の自民党豊明支部の「代表者」として届け出がだされている方に、「赤旗」の取材班が一人ひとり直接お会いしてお話を聞きました。
 三人とも「私は代表者になった覚えはありません」。こういうんです。
 千葉県と神奈川県の代表者として届け出られている方は、「私は自民党の党員ではありません」。こういうんですよ。
 まさに丸ごと幽霊支部です。この実情が明々白々になりました。
 ここまで事実をだしたものですから、首相も弱ってしまって、「党費の集め方はまとめてやることもあります」(笑い)。「立て替えることもあります」(笑い)。「志位さんのところ(日本共産党)は一人ひとりが集めているんですか」(笑い)。「当たり前です」と答えたら(笑い)、「参考にさせていただきます」(笑い)。
 首相も調査を約束せざるをえなくなりました。自民党幹部からは、「立て替えがあれば、返したほうがいい」という声も起こってきました。
 この問題でも相手を土壇場まで追い詰めてきました。
 みなさん、ここで手をゆるめず真相の徹底究明を求めていこうじゃありませんか。一刻も早い関係者の証人喚問を実現させようではありませんか。そして中小業者のみなさんの共済掛け金を食い物にする人たちに国政は任せられないという審判を下そうではございませんか。(拍手)
 
「機密費」──消費税の生みの親この仕組みに抜本的なメスを
 「機密費」の問題も重大な問題であります。これは外務省の元室長の個人的犯罪にとどまらない問題です。政治の深く暗いヤミにいまこそメスを入れる必要があります。
 この問題では、歴代官房長官がいろいろな証言を始めました。宇野内閣のときの官房長官だった塩川正十郎さんや村山内閣のときの官房長官だった野坂浩賢さんなどが、次々に発言をして「内閣機密費というのは、実は国会対策費に使っていました。国会議員が海外にいくときのせんべつに出していました」。ずいぶん生なましい証言を始めました。こういう国民の血税を党略的な流用、私的な流用が許されるのかという問題が、この問題の核心であります。
 私たちが国会でこの点をただすと、「それはいえません」「国政に支障をきたすからいえません」。「せんべつ」がなんで国政に支障をきたすのですか(笑い)。説明がつきません。
 そこで私は、きょうここに持ってまいりましたが、一九八九年の五月に内閣官房が作った文書を配布しました。ここにはきわめて重大な事実がたくさん書かれています。
 一つは、じつは内閣官房長官が使っている「機密費」というのは、内閣官房に計上された額だけではない、外務省から「上納」された額もいっしょになって使える。三十億円以上の金が自由に使える仕掛けになっていることがはっきり書いてあります。
 そしてもう一つ、もっと重大なことですが、この機密費がまさに党利党略で使われていたということが生なましく書かれているのです。
 「昭和63年度分については5億円(内閣分1億、外務省分4億)が増額されているが、これは、税制改正のための特別の扱いである。更に平成元年度についても、引き続き同様の額を計上しているが、これも新税制の円滑実施等の事情によるものであり、異例の扱いである」
 最後のページに、いろいろ支出の内訳が書いてあるんですけども、「平成元年四月十八日一億円」、こう書いてあります。ここでいう「新税制」とは何か。消費税です。一九八九年、消費税の導入が国会で大問題になっていました。四月十八日というのはどういう日だったか。まさに消費税導入が原因で国会が空転していました。リクルート問題で中曽根さんの喚問をめぐって国会が空転していました。竹下内閣の総辞職をめぐって空転していました。
 この国会空転のさなかに、自民党と社公民が日本共産党をのぞいて、密室協議をやっていた。このさなかが四月十八日という日であります。その日に一億円、ぼーんと出た。まさに、消費税という天下の悪税の生みの親が、「機密費」だったということが、この文章には生々しく書いているのであります。みなさん、こんなこと、許せるでしょうか(「許せない」の声)。庶民を痛めつけ苦しめている消費税、これを党略的に導入する、そのために庶民の血税が使われていた。二重に国民を踏みつけにする、愚ろうするものじゃありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
 みなさん、この問題を私たちが国会で突きつけましたら、この文書、官房長官も首相も否定できませんでした。「承知していない」ということしかいえません。「これはにせの文書だ」といえません。否定できなかった。これが重要な点であります。間違いなくこれは、真実の文書だということを、国会の審議を通じて、私は、明らかになったと思います。
 みなさん、「機密費」というのは、実に奇妙きてれつな仕掛けです。国の予算というのは、会計法という法律で、執行されます。これが国の、金銭経理の基本法です。
 ところが、「機密費」というのは、会計法上では、支出官から官房長官にお金を渡した段階で、公金から私金になってしまう。会計法上、私金ですから、何にでも使えます。会計法上のコントロールがききません。だから、まともな検査もできません。そこから、「国会対策に使っちゃえ」「せんべつに使っちゃえ」「飲み食いに使っちゃえ」、こういうデタラメが起きているんです。
 みなさん、この仕掛けにおおもとからメスを入れるべきではないでしょうか(拍手)。そして、ああいう使い込みが明白になった以上、少なくとも、大幅減額をやるのが、だれが考えても当たり前の要求ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
 みなさん、米原潜による、衝突・沈没事故、この問題は政府の、国民の命に責任をもたない姿勢、アメリカにまともにものもいえない情けない姿勢を浮き彫りにしました。
 KSD汚職と「機密費」事件は、庶民の金、血税を食い物にし、金でゆがめる腐敗を明らかにしました。
 どちらも自民党政治の末期的な退廃を象徴しているじゃありませんか。(「そのとおり」の声、拍手)
 みなさん、森内閣を一刻も早く退陣に追い込もうじゃありませんか。(拍手)
 そして、国民をふみつけにする自民党政治そのものを一日も早く終わらせて、二十一世紀には「国民が主人公」といえる新しい日本への道をごいっしょに開こうではありませんか。(拍手)
 最後までがんばりましょう。(「おー」の声、大きな拍手)




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