2001年2月10日(土)「しんぶん赤旗」>

中小業者の掛け金、税金を食いものに 自民政治の末期的腐敗

志位委員長 議場を圧する質問

衆院予算委


機密費疑惑

 こんな党略的流用許されない

歴代官房長官の証言つぎつぎ

機密費をめぐる証言

宇野内閣時の官房長官・塩川正十郎氏

(1月28日放映テレビ朝日系サンデープロジェクトで)

 「野党対策に使っているのは事実です。現ナマでやるのと、それから、まあ、要するに一席設けて、一席の代(金)をこちらが負担するとか」

村山内閣時の官房長官・野坂浩賢氏

(「朝日」1月26日付)

 「最も多い使い道はせんべつだ。国会議員が海外視察に出かける時に渡した」「せんべつを受け取る人は与野党問わない。だが、共産党は呼んでも取りに来ない」「(長官だった1994年7月からの1年半に)3回ほど与野党の国会対策委員会幹部に渡したことがあった。法案通過だったか難しい政局を乗り切ろうとしてだ」

在外公館で長い勤務経験をもつ外交官

 「どこでも報償費が飲み食いに使われて、本来の情報収集に使われてこなかったことを、つぶさに体験してきた。予算消化のために、年度末には無理やり金を使う。急に情報収集のために金は使えないから、飲食に化ける。きちんとした行事以外に、私的な飲み食い、大使館員の慰労などさまざまな形で飲食が行われている」

 内閣官房分と外務省分で年間七十二億円にのぼる機密費をめぐる巨額横領事件。「政府は一人の不心得者の個人的犯罪ですませようという姿勢だが、機密費という政治の深いヤミにメスを入れる必要がある」。こうのべた志位和夫委員長は、内閣官房機密費の実態をしめす歴代官房長官の衝撃的な証言を次つぎに明らかにしました。

 宇野内閣で官房長官を務めた塩川正十郎氏や村山内閣で官房長官を務めた野坂浩賢氏は、「野党対策」や「外遊の際のせんべつ」として、日本共産党以外の国対幹部や議員に渡したことがあったと明言しています。

 志位氏は、二人の元官房長官によるリアルな証言をつきつけ、官房機密費が野党を懐柔するための「国会対策」や「せんべつ」に使われるのは、「国としておこなう内政、外交とは無縁の党派的流用、私的な流用というほかはない」と指摘しました。

 外交機密費はどうか――。志位氏は、長く在外公館に勤務した外交官の証言(別項)を紹介し、「本来の目的からいって、『私的な飲み食い』に使うことが許されるのか」と追及しました。

 福田康夫官房長官は「使用目的、使途は申し上げることはできない」というばかり。

機密費が国会対策に

内閣の内部文書に明記

 こうした実態を明らかにした志位氏は、八九年五月に内閣官房が作成した「報償費について」という文書を配布しました。この文書は手書きで、「内閣」の文字の入った専用の用紙に書かれています。

 この文書には、重大な問題が二つ記載されている――。志位氏は第一に、「官房長官が取り扱う報償費は、予算上、内閣官房と外務省に計上されており、形式的には外務省計上分を内閣官房に交付する形をとっている」との記述をあげ、「外務省から内閣官房に、国会の議決を無視して『上納』が行われている動かぬ証拠ではないか」と追及しました。

 第二に、文書には「昭和63年度(八八年度)分については5億円が増額されているが、これは税制改正のための特別の扱いである」と明記。八九年度も同額が計上され、「新税制の円滑実施等の事情によるもの」と説明しています。

 志位氏は、「新税制」というのは、竹下内閣時の消費税導入だと指摘しました。とくに、五億円のうち、一日で一億円を使った八九年四月十八日は、どんな政治情勢だったのか――。

 当時、消費税導入とリクルート疑惑で竹下内閣の支持率は一ケタ台に低落。消費税を盛り込んだ予算案の衆院通過のめどはたたず、竹下登首相の総辞職要求と、リクルート疑惑で中曽根康弘前首相(当時)の証人喚問をめぐり、国会が空転していた時期でした。

 志位氏に党略的流用の明確な証拠をつきつけられ、森首相は答弁にも立つことができず、福田官房長官は「出所不明の文書」などと言い逃れようとしました。

 志位氏は、「空転のさなかに一億円、消費税のために五億円使った。まさに“消費税の生みの親”が機密費ということになる。そういう党略的流用をやったことがはっきり読み取れるではないか」と指摘。「これだけの文書が出てきた以上、過去にさかのぼって不正使用がないのかどうか明らかにすべきだ」と追及しました。

官房長官に渡ったとたん

「公金」が「私金」に

 党略的流用の背景には、機密費の仕組みにも問題がありました。

 会計法上、予算支出は「支出官」から「取扱責任者」に支出された段階で終わります。官房機密費なら、内閣府大臣官房会計課長が内閣官房長官に手渡した段階で、国の公金が、会計法上、私金として扱われることになります。志位氏は、私金になると、機密費が本来の目的にそくして使われる保障はどこにあるのかと追及しました。

 「国民のばく大な血税を、事実上何にでも使える漠然とした目的、『つかみ金』的な目的を与え、たった一人の『取扱責任者』が意のままに使える私金にしてしまうというのが、『機密費』の制度だ」。こう喝破した志位氏は、「この制度は根本から見直すべきだ」と強調しました。

 動かぬ事実をつきつけられながら、機密費の減額を拒否する政府。志位氏は、外務省の元室長が横領したのに何ら支障がなかったではないかと指摘し、「少なくとも不正流用の実態がこれだけはっきりしたのだから、来年度予算で減額すべきだ」と迫りました。


KSD汚職

 自民丸ごと汚染の実態

 不況に苦しむ中小業者の共済掛け金から、個々の議員だけでなく自民党そのものに巨額資金が流れていたKSD汚職。志位委員長は、リクルート事件などのように大企業のおおもうけの一部がわいろに使われたこれまでの汚職事件と違った「新しい悪質な特徴」だと指摘し、これを独自調査とKSD関係者の証言など本紙取材をもとに解明しました。「業者の共済掛け金が自民党の福利厚生」に化けていった実態を暴露しました。

収支決算書が裏付ける流用

 自民に流れた金の出どころは

 自民党に流れたKSD資金のルートは(1)KSD豊明会、自民党豊明支部、豊政連を使った“トンネル献金ルート”(2)党費肩代わりルート(3)自民党機関紙「自由民主」への広告費ルート(4)やみ献金ルートの四つです。(図)

 (1)から(3)までは、自民党そのものへの資金の流入です。問題は原資です。

 志位氏がその解明のために取り上げたのが、第一のトンネル献金ルート。

 政治資金収支報告書によると、KSD豊明会から自民党東京都豊明支部に流れた資金は、九五年から九九年の五年間で二億五千七百四十万円。一方、財団法人KSDからKSD豊明会への補助金は二百三十億円(九年間)で、志位氏は「自民党東京都豊明支部に流れた資金の原資はKSD会員の共済掛け金のほかには考えられない」と追及しました。

 なぜ、そういえるのか。志位氏が突きつけたのが、九五年度のKSD豊明会の「収支決算書」のパネル(図)でした。同年度、KSD豊明会から自民党東京都豊明支部に八千五百四十万円献金されています。それはどこから出たのか。

 決算書によると、KSD豊明会の収入は(1)雑収入(2)会員負担金収入(3)KSDからの補助金の三つです。

 雑収入はわずか五十一万円。会員負担金収入は、KSD豊明会がおこなっている福利厚生活動の会員による一部負担金です。スポーツ、旅行、文化・教養などの活動で、「会員負担金」の収入費目と「福利厚生費」の支出費目もピタリ一致します。しかも会員負担金の収入が福利厚生費の支出を上回っているため、会員負担金は全額が福利厚生費に使われていることは否定しようがない事実です。

 志位氏の追及に坂口力厚生労働相は「(献金はKSD豊明会の自前収入から出しているという)これまでの説明には無理がある」と、補助金の流用を事実上、認めざるを得ませんでした。

 しかし、「自民党が吸い上げたかのようにいうのはこじつけ」と居直る森首相は「今捜査中で、地検の捜査を待ちたい」と繰り返すだけで、志位氏は「明々白々な事実さえ認めない、疑惑隠しの態度だ」と厳しく批判しました。

党員の支部も幽霊だった

 党員7万人が翌年ゼロの怪

 志位氏が次に取り上げたのが、KSDによる自民党への最大の資金ルートとなった「幽霊党員づくり」と党費立て替え問題です。

 志位氏は、古関前理事長の「一万人の党員をつくれ」の指示にもとづき、千葉支局で職員が三文判を数百個買いそろえ、KSD名簿などを使って幽霊党員づくりをおこなったとの生々しい内部告発を紹介。「事実とするなら、党費名目で巨額のやみ献金が自民党本部に流入し、そのカネで議席を買い取ったことになる」として、森首相に「党の責任者として責任をもった調査をおこなったのか」とただしました。

 さらに、志位氏が党費立て替えの決定的証拠として示したのが、東京都豊明支部の党員数の推移です。

 九四年四万人、九五年六万人。ところが九六年にはゼロとなり、九七年にはまた七万人、九八年は九万人、九九年七万人となっています。

 六万人いた党員が突然ゼロとなる自民党の党員。「豊明」と名のついた支部は埼玉、千葉、神奈川にもありますが、結果はまったく同じです(グラフ)。東京を含めた自民党の四支部の党員総数は九六年を除き、九一年から九八年までで四十四万六千百十二人、党費総額は十七億八千四百四十五万円にものぼっています。

 「参院選が終わると、四つの支部の党員がゼロとなる。『ドロン』と消え、いっせいに『ドロドロ』とあらわれる。まさに幽霊ではないか」と“自民党員”なるもののでたらめさを暴露。

 さらに志位氏は、「しんぶん赤旗」特別取材班の調査で、埼玉県のKSD関係者が、自民党埼玉県連から党費振り込み用紙が段ボール箱詰めで送られ、それをそのままKSD本部に送り返していたとの証言を紹介(左上に別項)。「党員がいるなら、一人ひとりの党員に渡して党費を集める手続きが必要なはず。KSDが肩代わりしていたことにほかならない」と迫りました。

 刑法犯罪の疑いもある

 幽霊だったのは党員だけではありません。

 政治資金収支報告書に自民党豊明支部の「代表者」として届け出ていた東京、千葉、神奈川いずれの人物も「豊明支部の代表者になった認識はない」などと否定(左上に別項)。「党員も幽霊、自民党の四つの支部も丸ごと幽霊だったということになるではないか」とたたみかけました。

 森首相は「党費の集め方にはいろいろある」とはぐらかすのに懸命でしたが、KSDによる自民党費肩代わりは動かしがたい事実です。

 志位氏は、第一に、KSDによって党費が肩代わりされていたとすれば、共済の掛け金が巨額の規模で自民党本部に流れ込んでいたことになり、重大な政治的・道義的責任があること。第二に幽霊支部、幽霊党員、党費肩代わりの事実があれば政治資金規正法違反で、入党申込書が偽造されていれば有印私文書偽造罪、支部設立届け出偽造は有印公文書偽造罪となるれっきとした刑法上の犯罪行為。第三に自民党の規約によれば、支部設立は本部の承認事項で、自民党本部とその責任者である総裁の直接の責任になる――と指摘。「総理には自民党総裁として疑惑を明らかにする重大な責任がある」として、真相を明らかにするよう重ねて森首相を追及しました。


本紙記者に証言

県連からも党費振り込み用紙入り段ボール箱が…/代表になった覚えない

 埼玉県のKSD関係者

 「1997年ごろのことだと思うが、自由民主党埼玉県連から、KSD埼玉支局に段ボール箱が送られてきた。自民党埼玉県豊明支部の代表者あてのものだった。段ボールの箱を開けてみると、自民党の党費を振り込むための用紙がぎっしりつまっていた。党員の欄には、知っている埼玉県のKSD会員の名前が印刷されていた。あて先になっている自民党豊明支部の代表者に送ったら、『なんだこれは、こんなものは私は知らんぞ』と文句をいってきた」

 「その後、ほぼ毎年のように、自民党埼玉県連から、自民党埼玉県豊明支部代表者あてに段ボール箱が送られてくるが、事情がわかったので、そのままKSD本部に送っていた。本当に党員が存在するなら、自民党埼玉県豊明支部をつうじて、一人ひとりの党員あてに党費振り込み用紙を送らないといけない。しかし、そうしたことなど一度もない。そう指示されたこともない。全部、KSD本部に送った。党費を自分で支払っている自民党埼玉県豊明支部の党員なんて私は聞いたことがない」

自民党豊明支部「代表者」

 東京都「代表者」

 「代表者になったという認識はない。政治資金収支報告書の書類が回ってきたこともないし、はんこを押したこともない」

 千葉県「代表者」

 「(代表者になっていることは)全然知らない。自民党員になったことはない。自民党の党費を払ったこともない」

 神奈川県「代表者」

 「入党した記憶もないし、党費を支払った記憶もない。代表者になることも了承していない」




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