2001年1月 19日(金)「しんぶん赤旗」

定例記者会見の志位委員長の発言

(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が十八日、国会内で行った定例記者会見での発言(大要)は次のとおりです。


KSD資金―四つのルートで汚染

 一、KSDから十五億から二十億以上という政界工作資金が流れたことがすでに明らかになっているが、わが党としてこの問題をどう位置付け、どう追及していくかという基本的立場についてのべたい。

 小山議員の汚職の糾明と議員辞職を求めること、村上議員の疑惑の徹底的な糾明をはかることは当然必要だ。村上議員についてもKSDを応援する質問をやっていた事実が明らかになっており、逮捕された小山議員と一体の深刻な疑惑がかけられているわけだから、その糾明は当然だ。もちろん額賀経済財政担当大臣へのヤミ献金の糾明も重要だ。そういう個々の自民党議員にかかわる疑惑の糾明は徹底的にやっていきたい。

 それに加えて強調したいのは、KSD資金というのは個々の議員にとどまらず、自民党全体を汚染している、自民党は丸ごとKSDの資金によって汚染されている、これが事件の本質だ。

 これまで明らかになっただけでも、KSDから自民党への資金の流れは四つのルートがある。

 第一のルートは、KSDからKSD豊明会、自民党豊明支部、豊政連という資金の流れだ。このルートで五年間で二億数千万円というお金が流れた。これは、豊明会をトンネルにし、豊明支部をトンネルにするという二重の脱法的な手口で流れた。その金が数十人から百人といわれる自民党議員にばらまかれた。

 第二のルートは、村上議員や小山議員を比例名簿の上位にするために幽霊党員を集めて、党費を立て替えるというものだ。このルートで五年間だけでも十二億円の金が流れた。ここで重要なことは、この資金というのは自民党本部など自民党そのものに上納されたという事実だ。

 つまり、KSDから村上氏、小山氏は“議員バッジ”をもらった。そして自民党は“金”をもらった。十二億円というお金は自民党に流れた。団体による党費の立て替え払いは、政治資金規正法上、寄付とみなされる。これを党費として処理していたとなると、それだけでも立派な違法献金だ。自民党本部に巨額の違法献金が流れ込んでいたことになる。

 第三のルートは、自民党の機関紙の「自由民主」(旧「自由新報」)に、広告費として五年間で二億八千六百万円が流れていた。KSDから自民党への直接の事実上の献金がやられていた。これも脱法的なものだ。

 そして第四のルートとして、個々の自民党議員へのヤミ献金がある。額賀大臣への一千五百万円。あるいは小山議員への二千万円のワイロ。これは個々の議員へのものだ。

 だいたい区分するとこの四つのルートがある。

自民党丸ごと汚染が事件の本質

 一、私が強調したいのは、第一のルートも第二のルートも第三のルートも、すべて自民党にお金がいっているということだ。第一のルートというのは自民党豊明支部にお金が流れている。第二のルートは自民党本部そのものにお金が上納されている。第三のルートも自民党本部にお金がいっている。

 KSD問題について、小山氏個人の問題、村上氏個人の問題、あるいは額賀氏個人の問題は当然追及するが、それに終わらせてはいけない。自民党全体が丸ごと、KSDの資金で汚染されている。中小企業の汗の結晶である保険の掛け金に寄生する腐敗政党が自民党だということがことがらの本質だ。その腐敗構造の全容の徹底的な糾明を私たちはやっていきたい。

 森首相はあたかも人ごとのように、小山氏逮捕のときにも、“これは党のほうで処理するから”という趣旨のことをいった。しかし人ごとではない。森首相が総裁をやっている自民党に、違法献金、脱法的献金が巨額に流れているということがことの本質だから、深刻な政治的・道義的責任を森総理は自民党総裁として負わなければならない立場にある。そういう問題として総理の責任も追及していきたい。

 一、さらにいうと、KSD汚職は、政官業癒着の一角であって、自民党の今度の参院比例代表の名簿をみると、ずらりと官僚OBの名前が並んで、それぞれ業界団体と癒着している。建設業界と癒着しているものもいれば、軍需産業と癒着しているものもいる。今度の比例の名簿は、第二のKSD、第三のKSD問題が生まれうる名簿だ。政官業癒着の見本のような名簿を引っさげて選挙に臨もうとしている自民党にたいする、厳しい審判が必要だ。

 今度、「非拘束名簿式」になったわけだが、自民党の場合、拘束式のときは名簿の順位を決めるまでが争いだったわけで、今度は選挙の投票日まで癒着関係、業界ぐるみがずっとつづくわけだから、「非拘束式」になってよりいっそう事態は深刻になるだろう。党略的に強行された選挙制度の問題点もおおいに明らかにしていく。

 一、KSD問題は、根本をたどると、政党にたいする企業・団体献金が野放しになっているところからおこっている。政治家個人にたいする献金だけでなく、政党にたいするものも含めて企業・団体献金をきっぱり禁止するというところまでふみこまないと、この腐敗の根は絶てない。このことを私たちは強く求めていきたい。

人為的株価操作は邪道―実体経済、家計消費への直接応援こそ必要

 一、いま、景気の先行きの見通しが悪くなるもとで、株価の下落がおこり、人為的に株価をつりあげるさまざまなくわだてが政権党サイドから聞こえてくる。公的資金による株買い上げという案もあるし、「金庫株」の解禁という案もある。

 いろいろなやりかたを考えているようだが、公的資金による株の買い支えということになったら、株が下落すれば、国民負担になって返ってくる。株の人為的操作は、景気対策としても、経済対策としても、邪道中の邪道であって、とるべきではないというのが私たちの立場だ。

 株というのは、実体経済を反映する「鏡」だ。実体経済がいま、冷え込んでいる。とくに、家計消費が冷え込んでいるわけで、その家計消費を直接応援する手だてをとるということこそ、景気対策として大事だ。雇用の安定・拡大をはかる、社会保障の充実をはかるという方向での対策が必要だ。ところが実体経済、とくに家計を応援する対策を何ひとつとらないで、「鏡」だけふいても、まともな対策には絶対にならない。こういう邪道の対策しか思い浮かばないというところに、いまの自民党政治の、経済の面でもゆきづまりが明りょうにあらわれている。

記者団との一問一答

 一、(金庫株の解禁は国民負担にならないのではないか)「金庫株」の解禁は、国民負担にすぐつながる問題ではない。しかし「金庫株」の解禁というのは、自社株が下落した場合に、それを買い戻して株価をつりあげる、そして株価があがったところで売って利益が出るというやり方だが、これは一言でいって、「スーパー・インサイダー取引」というべきもので、そういうことをみんなやりだしたら、およそ市場経済は成り立たない。モラルハザードをまん延させる。やるべきでない。

「白昼堂々の使途不明金」―官房機密費はただちに廃止を

 一、(外務官僚の公金流用について)外務省の前の要人外国訪問支援室長が公金を流用していたという疑惑が出てきたが、その原資が官房機密費であったという報道がされた。

 官房機密費というのは、一言でいって、白昼堂々と使途不明金を使うというものだ。何に使われたのか正式にはわからない。国会対策に使われたり、与党の議員などが外遊するさいに“せんべつ”として使われてきたといわれている。

 官房機密費という不明朗な制度は、きっぱり廃止すべきだ。年間十六億円という金だ。これだけの金が、まったく党略的なつかみ金で使われているというのは、民主主義国家であってはならないことだ。

小選挙区制の宿命的矛盾がふきだした

 一、(参院非拘束名簿式への修正案への対応について)民主党の出した案というのは、中途半端なものだと思う。「非拘束式」という枠内での修正であるという面を一面でもつ。同時に、票の横流しということはやりづらくなるという面はある。

 共同提案にわが党が加わることは無理なことだ。賛否については、よく吟味して決めたい。

 一、(与党内にある衆院小選挙区への一部中選挙区導入議論について)いま起こっている事態というのは、国勢調査をやったら一票の格差がうんと広がった、それでなんとか手直ししなければならないというところから出発している。これは、私たちが、小選挙区制を導入するときから、小選挙区制の宿命的な矛盾だといってきたことだ。

 小選挙区制というのは、一票の格差が広がりその是正をする場合に、小選挙区という制度の全体を崩さないとすれば、つねに選挙区の区割りの変更をしないと成り立たない制度だ。そういう小選挙区の宿命的矛盾が、一票の格差の広がりという局面で噴き出してきたというのがいまの事態だ。

 だから、そのときに、一部二人区を復活するというこそくな取り繕いではなく、小選挙区制自身の是非を根本から見直すことが必要だ。

 私たちは、あるべき選挙制度とは、国民の民意が正しく反映されることが唯一の尺度だと考えているから、全国十一ブロックの比例代表制度にすべきだと主張している。

 (いまの与党内で浮上している案には)反対だ。




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