志位和夫 日本共産党

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演説・あいさつ

2023年8月6日(日)

NGO主催討論会 志位委員長の発言

日本政府に三つの要求


 5日に広島市で開かれた核兵器廃絶NGO連絡会主催の討論会「核兵器廃絶へ 日本はいま何をすべきか」での日本共産党の志位和夫委員長の発言を紹介します。


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(写真)NGO主催の討論会で発言する志位和夫委員長(左から2人目)。奥右はサーロー節子さん、奥右から3人目は中満泉国連事務次長=5日、広島市中区

 志位 「日本はいま何をすべきか」という(討論)テーマにかかわって、私は、8月6日を前にして、日本政府に三つの要求をしたいと思います。

 第一は、「核抑止力」論を見直すことです。

 5月の「G7(主要7カ国)首脳広島ビジョン」が「核抑止力」論を公然と宣言したことに、被爆者をはじめ強い批判が寄せられました。「核抑止力」論はいざという時には、核兵器を使用し、広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわないという議論であって、こうした立場を被爆地から発信したことは恥ずべきことだと思います。

 日本政府に対して、「核兵器のない世界」をつくるうえで最大の障害物となっている「核抑止力」論を見直し、その呪縛を断ち切ることを求めます。

 第二は、核兵器禁止条約の存在に正面から向き合うことです。

 禁止条約は、その機能を発揮し始めています。条約6条と7条に基づいて、核兵器の被害者を支援し、環境修復をはかる非公式作業部会が、日本の被爆者や核実験被害者の報告を受け、国際的な支援基金の創設に向けた検討を始めています。

 わが党は、日本政府がすみやかに禁止条約に参加することを求めますが、11月の第2回の締約国会議に少なくともオブザーバーとして参加し、核兵器の被害者支援をはじめ、現時点でも協力できることを行うことを強く求めたいと思います。

 第三は、NPT第6条の義務の履行を核保有国に迫ることです。

 現在開かれている準備委員会でも厳しく指摘されているように、NPT体制の信頼を揺るがせている最大の問題は、核保有国が第6条に基づく義務、すなわち「核軍縮・撤廃のための誠実な交渉を行う」という義務を果たしていないことであります。

 中満泉(国連事務次長)さんからもお話がありましたが、(多くの国ぐにのNPT体制に対する)フラストレーション(不満)が、シニシズム(冷笑主義)に変わるなどということはあってはならない。こう思います。

 日本政府は、条約第6条に基づく一連の合意を再確認し、具体化し、実行すべきだということを、アメリカをはじめとした核保有国に強く迫るべきだと思います。

 以上、3点を求めたいと思います。

核禁条約へのオブザーバー参加――核被害者、環境修復の国際協力を

 各党間の討論では、核禁条約第2回締約国会議への日本政府のオブザーバー参加が大きな議題となりました。自民党以外の各党は政府に参加を求める立場を表明。一方、自民の寺田稔衆院議員も「核禁条約は重要な条約であり、党内に持ち帰って議論したい」と表明しました。

 この問題をめぐり、志位氏は次のように発言しました。

 志位 締約国会議のオブザーバー参加ということが一つの焦点になっているわけですが、この問題を核兵器禁止条約のもとで現実に進んでいることの中で考える必要があると思います。

 核兵器禁止条約は第6条で核兵器の被害者の支援と環境修復を、第7条で国際協力を提起している。それに基づく、非公式のワーキンググループが設置されて作業をやっているわけです。

 その状況をみますと、カザフスタンのセミパラチンスクの被害、アルジェリアにおける核実験の被害、マーシャル諸島の被害が議論になっています。日本も被団協が報告していますが、日本は政府がコミットしていないためにこれまでに十分に関与できていないと思うんですね。

 オブザーバー参加して、まず核兵器による被害者の支援、環境修復、そのための国際協力の輪の中に入っていく。これは私は、まずは最初のステップとして、当たり前のことだと思う。

 先ほどサーロー節子さんからも世界中の被爆者の支援を、もっと日本はやるべきだとの発言がありました。その通りです。日本はこの問題で知見もある。経験もある。その力を国際社会で発揮して、まずこの6条、7条というところで力を発揮する上でも、オブザーバー参加という形でコミットする。この決断が必要じゃないか。これは安全保障の問題までいかなくても、ここからスタートするということができるのではないかと思います。

国連代表・被爆者の発言

 中満泉・国連軍縮担当上級代表は、11月の核禁条約第2回締約国会議の重要性を強調。「具体的な示す場として、締約国がなすべき役割が非常に大きくなってきている」とした上で、「オブザーバーとして出席するということは、締約国に入っていない国に、どのような形でこの条約があるべきかということを発言する機会でもある。国連としてはぜひ日本のような国も参加して、貢献していただければと思います」と述べました。

 被爆者のサーロー節子さんは、海外の被爆者への支援を求めるとともに、5月のG7広島サミットでの「核抑止」の正当化や、原爆資料館を訪問した各国首脳の発言を非公開とした日本政府に、強い憤りを示しました。

NPT6条にもとづく義務の履行を核保有国に迫れ

 志位 最後に、NPTの問題に一言申し上げたいと思います。

 日本政府はNPTが大事だと繰り返すわけですが、6条を真剣に言おうとしない。

 たとえば、今ウィーンで準備委員会をやっています。中満さんはよくご存じだと思いますが、日本政府の発言を見ますと、6条に関する言及がないわけです。つまり、核兵器国の義務の履行という問題を言おうとしない。これでは、先ほど言われた世界の多くの国のフラストレーション、これがますます広がる方向に日本政府もたっていると言わざるを得ません。

 ですから、私は、日本政府に対して、核禁条約への参加、オブザーバー参加を強く求めていますが、同時に、NPTについては、6条の義務の履行を核保有国に迫ると、この役割を果たすべきだということを最後に申し上げたい。