志位和夫 日本共産党

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インタビュー・対談

2015年10月1日(木)

いまこそ「戦争法廃止の国民連合政府」を

憲法学者・小林節さん、志位委員長が大いに語る

ネット番組「とことん共産党」


 憲法学者の小林節(せつ)・慶応大学名誉教授をゲストに迎え、日本共産党の志位和夫委員長と「戦争法廃止の国民連合政府」構想について語り合ったインターネット番組「とことん共産党」(9月28日放送)。立憲主義の回復とは、野党党首会談の内容は、今後のたたかいは―。1時間にわたる対談となりました。メーンキャスターは小池晃副委員長、司会は朝岡晶子さん。その一部を紹介します。


立憲主義の回復

「すべてに優先する問題。主権者国民が国を取り戻す」小林さん

「政治の非常事態。国民的大義あるたたかい」志位さん

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(写真)小林節さん

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(写真)志位和夫委員長

 小池 単刀直入に小林さん、この「提案」の受け止めはいかがですか。

 小林 もともと私自身がいっていた学説と同じですから、よくやってくれたなという感じです。せんえつながら「わが意を得たり」と申し上げました。

 いまのままだったら、野党で足して自公より票が多くても、議席で負ける仕組みですから、「ナチスに学んだ」自公にわれわれは賢く学んで、野党が選挙協力をきちっとやって、国会の過半数を得られれば、彼らが過半数を根拠にした暴挙をきれいにチャラにできるじゃないですか。単純明快ですよ。

 志位 (「わが意を得たり」の評価に)たいへん激励されます。提案したからには、かならず実らせたいと決意しています。

 野党結集の「旗印」と、その実現に向けた選挙協力をめぐって、つぎのようなやりとりになりました。

 小林 (「旗印」は)立憲主義を取り戻す、です。(自公がやった)選挙が終わったら何をやってもよいというのは、議会政治じゃないです。憲法を無視する以上、独裁政治が始まったわけです。この独裁政治をつぶして立憲主義を立て直し、平和主義と民主的な議会制度を回復する。これが全てに優先します。それは、政策の論争以前の前提です。

 志位 私たちの「提案」も、戦争法廃止、立憲主義を取り戻す――これをメーンテーマにしているんです。立憲主義というのは、小林さんからもお話がありましたけれども、あれこれの政策課題とはレベルの違う話、国の土台にある問題で、これが壊されたら、どんな政策を並べても意味をなさなくなる。

 小林 そうなんです。

 志位 その土台が危なくなっている以上は、それを取り戻す仕事は、(他の全てに優先する)ほんとうに国民的大義なんだと(思います)。

 小池 一時的に権力を委任されているにすぎない政府が、憲法を無視して、民意も無視して突き進むということになれば、民主主義の根本が破壊される。

 小林 そうです、そうです。よく言うんですが、国民主権国家ですから、(国民は)すべてこの国の一株株主で、政府なんていうのは、いわば雇われマダムとその手下にすぎないわけです。それが国を丸ごと持ってどっかいっちゃうわけで、それを取り返す、主権者国民が国を取り返すたたかいですよ。

 志位 その一番の土台が危うくされているのは、一種の非常事態だと思っていまして、この非常事態のときに、私たちがこれまでと同じ対応でいいのかということをずいぶん考えました。やっぱり非常事態のときには、たとえ野党間に政策上の違いがあったとしても(それを)横に置いて、戦争法廃止と立憲主義を取り戻すというこの大命題を実行するために結束する。そのために政府をつくることが必要です。政府をつくるために選挙で勝つ。そのために選挙協力をやる。これはもう当たり前の話だと。

 私たちは党をつくって93年になりますが、これまでこういう全国的な規模での他党との選挙協力(の試み)というのは、実はやったことがないんです。

 小林 そうですね。

 小池 僕は別の番組で小林さんから「なんで選挙で協力できないんだ」とさんざんいわれて(笑い)。その点からみると、今回の「提案」は踏み込んだものです。

 小林 感動していますよ。重大な決意ですよね。党大会の方針を修正するために、中央委員会総会を開いたわけでしょ。だから、これは本気ですよ。ある意味で野党のなかで一番選挙に強い共産党が、本気でこのことを理解したということは、とても意味があると思いますよ。

 志位 選挙協力をやるときには、やっぱり国民に大義がはっきりと見えてこそ、自公に勝つことができる。沖縄では(昨年の総選挙で)1区、2区、3区、4区、全部自民党に勝ったんですが、これは「辺野古の新基地建設反対」という大義がはっきりと見えていたから勝つことができた。

 戦争法廃止と立憲主義の回復――この大義の旗を立て、そのために政府をつくるんだという大義があってこそ、選挙で勝てると思いますね。

 小林 今回は主権者国民に理解されると思うんですよ。戦争法は内容的にも違憲だし、それをつくり上げていく過程が手続き的に違憲だし、これを許したら立憲主義は壊れてしまう、われわれの国家がわれわれの国家でなく独裁国家になってしまうと。だから、(こんどの「提案」は)大義が立っていると思いますよ。

政府・与党の議論

「専門家の意見を聞かずにどうするのか」志位さん

「ディベートとしては向こうが失格」小林さん

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(写真)対談する小林節さん(中央右)と志位和夫委員長(同左)。司会の小池晃副委員長(左端)と朝岡晶子さん=28日、党本部

 6月4日の衆院憲法審査会の参考人質疑で、自民党推薦の長谷部恭男・早大教授らとともに戦争法案を「憲法違反」と断じた小林さん。「戦争法案は憲法違反」の流れが大きく広がる一大契機となりました。ところが政府・与党は「憲法学者が決めるんじゃない」と非難しました。

 小林 僕は参考人として呼ばれて、「参考人としてご意見をたまわりたい」と言われてしゃべったら、「おまえらが決めるんではない」と(笑い)。別に、決めるといったつもりはないんですけどね。

 小池 ほんと、失礼な話ですよね。

 小林 そうそう、失礼そのもの。

 志位 長谷部さんは「(参考人が)自分にとって都合の良いことを言ったときは専門家であるとし、都合の悪いことを言ったときは素人だと侮蔑の言葉を投げつける」と。

 さらに志位氏は、9月13日放送の「NHKスペシャル」で戦争法案を与野党幹部と討論したさい、集団的自衛権行使がもたらす危険を告発した大森政輔元内閣法制局長官の発言を示し、「これは正論ではないか」と与党側に認識をただすと、自民党の高村正彦副総裁が「大森さんは法律の専門家ではあっても、安全保障の専門家では全然ない」とのべたことを紹介し、政府・与党の傲慢(ごうまん)な姿勢を批判しました。

 小林 自民党の議論がとても失礼だと思うのは、議論のテーブルに着きながら、議論で負けると、「アンタは素人だ」とか、「アンタは学者で政治を知らない」とかね。それから場外で「変節漢だ」とか、人身攻撃するんですよ。話にきちんと答えてくれない。ディベートとしては、向こうが失格なんですよ。

 志位 私が紹介した大森さんの発言は、論理の問題として、集団的自衛権行使は、国際法上は違法性が阻却されるとしても、事実上の先制攻撃となり、相手方からの攻撃をまねく結果となるという話をされているのに、「安全保障を知らないんだ、あの人は」と言っておとしめる。ほんとうに今の政権党はどうかしている。大森さんのような方がやむにやまれず、“今度のやり方はおかしいぞ、憲法違反だ、立憲主義の破壊だ”といわれているときに、専門家の言うことをちゃんと聞かないでどうするんだと思いますよ。

 小池 自分たちがいままで頼りにしてきた学者にも耳を貸さない。どうして自民党は情も理もないこういう集団になってしまったかなと感じます。

 小林 それは、僕は二つあると思うんですね。世襲貴族みたいな、「3世じゃない、4世だ」なんていばっている人々は、人間としてすべき苦労をほとんどしないであの地位についているんですね。だから、やはり封建時代の殿様の感覚だと思うんです。根拠があるわけじゃなく、好き嫌いで、思った通りまわりが動かないと腹を立てる、そういう人が多いですよ。

 それからもう一つは、そうやって彼らが「右向け左」みたいな、わけのわからないことをいっても、「はい、そのとおりでございます」という御用学者、御用評論家がいるんですよね。だから、僕らがいくら頑張っても、「たくさんいる」という「3人」(の戦争法案を「合憲」とした憲法学者)が、それを打ち消してくる。(笑い)

野党党首会談

「話し合いをきちんとやっていけば先は開けてくる」志位さん

「主権者国民の幸福を増進する一点で」小林さん

提案「『戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府』の実現をよびかけます」

 1、戦争法(安保法制)廃止、安倍政権打倒のたたかいをさらに発展させよう

 2、戦争法廃止で一致する政党・団体・個人が共同して国民連合政府をつくろう

 3、「戦争法廃止の国民連合政府」で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おう

 志位氏が、「提案」にもとづく、これまでの野党各党との党首会談の内容を紹介しました。

 9月25日の民主党・岡田克也代表との会談では「思い切った提案をいただいたことに、敬意を表します」との発言があり、「今後も引き続き話し合っていく」ことで一致したことを紹介。その後も岡田氏が「政権協力はハードルが高い」とのべつつ、「お互いの信頼関係に基づいて話し合いをしていきたい」と語っていることから「話し合いをきちんとやっていけば、先は開けてくるのではないかと感じています」と語りました。

 これを聞いて「私も国会の近くで見ていて、その雰囲気が共有できます」と語った小林さん。全国を歩いて各地の懇談会に出席すると、民主党系の労組関係者から「どうやって共産党と口を利いたらいいか。実は人脈がわからない」という話が出ているエピソードをあげ、「国会でせっかくいい関係ができたんですから、ちゃんと指導してあげたらいいと思います」と語りました。

 志位氏はまた、28日の社民党・吉田忠智党首との会談では「前向きに受け止め、積極的な選挙協力ができるようにしっかり議論を進めていきたい」、生活の党・小沢一郎代表との会談では「共産党の提示した3点は私たちも理解を同じくします」とそれぞれ発言があったことを紹介し、やりとりに。

 志位 (党首会談では)立憲主義を取り戻すという国民的大義のもとに野党は大同団結して、安倍政権を倒し、連立政権をつくるべきだと(話しました)。共産党は長い間、独自の立場で選挙をたたかってきました。それは原則に立った対応だと思っています。ただ、日本の政治がこういう非常事態にある、そして国民多数の声がある、そのときには思い切って方針を変える必要がある。私は、野党各党の党首のみなさんに、「私たちも変わらなければならないと考えました。ご一緒できればと思います」と話しました。

 小林 もちろん反対側から批判を受けるでしょう。だけど大状況が変わった以上、つまり、政治が何のためにあるのか、主権者国民の幸福を増進することの一点ですよね。自由と豊かさと平和です。(それらを)今度の戦争法は破壊しています。それを取り消しにして、そして立憲主義を取り戻す、そこからまた新しく自由と豊かさと平和が始まるわけで、これは立派な大義名分ですよ。

 志位 これ以上の憲政上の大義はないと(思います)。

 小林 ないですよ。(安倍政権は)憲法が殺された独裁国家ですよ。

広がる廃止のたたかい

「『このままではすませない』の思いあふれる」小林さん

「『海外で戦争する国』づくりということが二重、三重に明らかに」志位さん

 強行成立後も広がる戦争法廃止のたたかい。「法案審議のさなかよりも街頭の反応が熱いんですよ」とのべた小池氏は、9月27日に名古屋市内で行われた「シールズ東海」の宣伝に民主党の国会議員とともに参加して訴えたら「野党は共闘、野党はがんばれ」の大コールがおきたことを紹介しました。

 小林 僕も驚いているんですけど、強行採決された後、講演依頼がしばらく減ると思っていたんです。ところが、これまでは1日平均1・5件だったのが、1日平均2件くる。「このままではすませない」という思いがみんなあふれています。

 志位 ほんとそうですね。だいたい政府は、なぜ集団的自衛権行使が必要か、まったく説明ができなくなってしまっている。「ホルムズ海峡の機雷掃海」も、「日本人輸送の米艦防護」も、いえる根拠がなくなってしまって、何の立法事実も示せなくなった。ひどい話です。

 小林 「立法事実」という言葉、専門家は平気に使いますけど、その法律を必要とする社会的事実関係のことで、それがない以上、その法律をつくる必要はないというわけです。

 小池 (安倍首相は集団的自衛権の行使で)“ホルムズ海峡の機雷以外は、私の念頭にない”といったんですよ。そう言っていたのが、最後はそれは“想定されない”と言ったわけです。ということは首相の頭のなかには根拠は何もないのかって(笑い)、そういうことになりますよ。(安倍首相は)“日本人を守る法律なんです”“日本人のお母さんと子どもを守るんです”と説明したわけじゃないですか。そうしたら(中谷元・防衛相は)“日本人は乗ってなくていい”と。詐欺ですよね。

 志位 もう一つ、米軍への「後方支援」=兵站(へいたん)の問題。「安全なところでやる」「リスクは高まらない」とさんざん言ったけど、結局、「戦闘地域」までいって兵站をやるわけですから、相手から攻撃されて戦争になる。一つひとつ詰めた議論をやると、もう何もいえないわけです。集団的自衛権で戦争に乗り出す、兵站でも戦争に乗り出す――「海外で戦争する国」づくりということが二重、三重に明らかになって、まったく答弁ができなくなった。

 ところが国会閉会の記者会見で(安倍首相は)「『戦争法案』などというのは根拠のない無責任なレッテル貼りだ」とまた言うんです。私は、彼と本会議でも、党首討論でも、安保特別委員会でも、論戦をやりました。そのすべてで「戦争法案」と言ったのですが、私に向かって「戦争法案はレッテル貼りだ」と一回も言ったことがありません。

 小林 強い人には言わない(笑い)。国会(の質疑は)たくさん見せてもらいましたけど、民主党の岡田代表と共産党の志位委員長は別格のすばらしい質問をしていましたよね。格が違いましたよね。

 小池 国会審議で、野党はかなり力を合わせて、お互いそれぞれ別の党の質問なんかを後追いをしたり、ほんと連携でね。こんな論戦をやったのはあんまり経験がありません。

 志位 今後のために、この国会で戦争法のどういう危険があきらかになったのか、それから、こんなにたくさんのことが解明されていないのに(国会を)通したのはけしからんとか、全体がわかるマップみたいなものをつくる必要があると思っています。

 小林 「しんぶん赤旗」の一番真ん中のページで、見開きでやってください。

共産党について

「触ってみたら噛みつかれず」小林さん

「未来に向かって団結したい」志位さん

 日本共産党について党創立記念講演会のメッセージで「触ってみよう共産党」と述べてくれた小林さん。

 小林 ずっと付き合ってきて、結論として共産党は正しいと思いますよ。だから、まさに触ってみたら噛(か)みつかれなかった。(笑い)

 志位 こっちから構えるような態度でなく、どなたともフランクに。そして過去にとらわれず、未来に向かって団結しようということで話し合っていきたい。

 小林 他の野党とにらみ合っていると、お互いにおまえが先に譲歩しろよって言うでしょ。ある意味では、選挙でいちばんしっかり強い共産党が先に譲歩した。すばらしいことだと思います。

 志位 提案したからには、私たちも一生懸命、いろいろな方々とお話をして、いろいろな形で広げて、なんとか実らせて、実際に結果を出していきたい。衆議院選挙と参議院選挙の両方で野党が勝って、それで安倍政権を退陣させて、本当の国民の政府をみんなでつくるというところまで、やり抜きたい。私もこんなに燃えたことはないくらい燃えています。

 小林 幸い、参議院選挙が確実にくるじゃないですか。時間も読める。それから中選挙区になっているところは、それぞれ頑張ればいいし、比例もそれぞれ頑張ればいいし、むしろ比例まで一緒になることはまったくないんで、あとは1人区がたくさんあるじゃないですか。

 志位 参議院選挙で、(全国32ある)1人区で野党がすべて勝てば、自公は過半数割れになる。

 司会の朝岡さんは「これから安倍政権を倒すぞという雰囲気がすごくあります。大きな運動が広がったなかでみんな元気になっています。そこに共産党の呼びかけがあって、タイミング的に市民、国民を励ます形になったと思います」とコメント。小林さんは「講演の依頼が増えているだけではなくて、予定されていた講演に行くと、全部立ち見が入っています(驚きの声)。それくらい国民が意識を持ったんですよ」。志位氏は「国民が主権者として一人ひとりが自分で考えて立ち上がって声をあげようという、この歩みは誰にも止められないですよ。この歩みが見えない安倍政権には未来がない。この歩みに野党が応えなければならないと思いますね」と強調しました。

今後のたたかい

「怒りを持続して、運動を広げよう」志位さん

「倒閣のための野党政府をつくるたたかいに参加してほしい」小林さん

 視聴者からメールで「国民連合政府樹立のために私にできることをしたい。具体的にはどんなことをすればいいか」との質問が寄せられました。

 志位 一つは、戦争法が通ってしまったからといって、あきらめないで声を上げつづけてほしいです。怒りを忘れないで、持続して、発展させていく。粘り強くずっと運動を広げていきたいですね。

 小林 怒りが持続するためには、やっぱり、もう一度、この戦争法、内容とつくられた手続きがなんだったのか、学習しなおすことだと思うんです。

 ぜひ倒閣のための野党政府をつくるたたかいに個人として参加してほしいと思います。