志位和夫 日本共産党

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2015年6月1日(月)

志位質問が明らかにしたもの

米の無法な戦争への参戦が集団的自衛権問題の核心

編集局次長 藤田健


武力行使の「新3要件」

①我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、
②我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、
③武力の行使は必要最小限であること

 戦争法案の重大問題の一つ、集団的自衛権問題の核心は米国の無法な戦争に日本が参戦するかどうかにある―。日本共産党の志位和夫委員長の5月28日の質問は、このことを政府が集団的自衛権発動の要件としている「新3要件」(別項)との関係で、歴史的事実を踏まえながら、疑問の余地なく浮き彫りにしました。

 党本部に寄せられた感想の多くが、「米国いいなりの政府に戦争法案をもたせることは空恐ろしい」というものでした。識者からも「アメリカが行う誤った先制攻撃にも日本が協力することになる可能性があぶりだされました」(政治学者の五十嵐仁氏)との評価が寄せられています。メディアでは、志位質問翌日の「毎日」社説(29日付)が「米国が間違った戦争を始め、自衛隊に協力を求めてきたら、日本は断れるのか」と論じました。

政府の無限定な裁量権が最大の問題

 戦争法案のうち、集団的自衛権行使の最大の問題は、志位氏が指摘したように、「発動要件である『新3要件』を満たしているかどうかの判断が、時の政権の裁量にまかされており、事実上いくらでも無限定に広がる恐れがある」ことにあります。

 一般メディアでは、集団的自衛権行使の「範囲」や「対象」について、中東のホルムズ海峡での機雷封鎖だけか、「例外」があるのか、敵ミサイル基地への攻撃も可能なのか、経済的理由も根拠になるのかなどさまざま議論されています。これ自体深刻な問題です。

 しかし、結論的にいえば、集団的自衛権行使の「範囲」「対象」は、政府の裁量次第でいくらでも広がるのです。実際、首相は「3要件にあてはまれば、(例外は)法理上ありうる」と答弁し、時の政府の判断次第と認めています。

「密接な関係にある他国」とは  

 その政府判断に際して問われるのは、「新3要件」のうち、第1要件である「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」をどうとらえるかです。

 「他国」について、最も可能性が高いのは、日本と軍事同盟を結んでいる唯一の国である米国です。政府も、昨年の集団的自衛権行使容認の閣議決定の際には、国会で「日米同盟はわが国の平和と安定を維持するために重要。新3要件に該当する可能性が高い」(岸田文雄外相、2014年7月14日衆院予算委)と答弁しています。

 つまり、「他国に対する武力攻撃」は、米国が違法な先制攻撃を実行した結果生じたものなのか、米国への違法な武力攻撃の発生なのかを区別して議論する必要があるのです。歴史を振り返れば、米国への他国からの武力攻撃は日本による真珠湾攻撃(1941年)以来ありません。第2次世界大戦後は、すべて米国による軍事紛争への介入か先制攻撃かです。

 だからこそ、米国の戦争に政府がどういう姿勢でのぞむのかが、この問題の本質になってくるのです。

米の戦争に反対できない

 志位質問は、米国の戦争への政府の態度を歴史的な事実で明らかにし、戦争法案の危険な核心―米国が先制攻撃を行った場合でも、新3要件を満たしていると判断すれば、集団的自衛権を発動することがありうるのか、をつきました。

 首相は言を左右にして先制攻撃の場合の発動を否定せず、「国連憲章上、違法なことをした国に対して、日本が武力行使をもって協力することはない」という一般論で逃げようとしました。

 しかし、志位氏は、米国がかつても今も先制攻撃戦略を国家の方針としていることを示したうえで、グレナダ派兵(1983年)、リビア爆撃(1986年)、パナマ軍事介入(1989年)など国連総会で非難決議が採択されたような、国連憲章と国際法を踏みにじった先制攻撃の戦争を実行してきたことを指摘。日本政府がこれらに「賛成」「支持」「理解」してきたことをあげ、「米国の戦争に口が裂けても『反対』といえない。このような政府が、米国から『武力攻撃されたから支援してくれ』『支援しないと日本の存立にかかわるぞ』といわれて、どうして自主的な判断ができるのか」と喝破しました。

開戦理由が捏造された場合でも

 さらに、米国がさまざまな口実を捏造(ねつぞう)してまで、先制攻撃を仕掛けてきた場合はどうか。

 志位氏は1960年代から70年代にかけてのベトナム戦争と、2003年から今日に至るイラク戦争を例に追及しました。ベトナム戦争では、本格的な軍事介入の決定的契機となった「トンキン湾事件」について、米国防総省秘密報告(ペンタゴン・ペーパーズ)や当時の国防長官の『回顧録』で、捏造だったことが明らかになっています。

 ところが、日本政府は「有権的な判定をする立場にはない」(岸田外相)というだけ。ベトナム戦争を支持し、在日米軍基地を出撃拠点として使わせたことの反省も検証も拒否する姿勢が、志位質問で浮き彫りになりました。

 イラク戦争ではどうか。開戦の最大の口実とされた大量破壊兵器の問題について、米国も英国も情報が誤っていたことは明確に認めているのに、日本政府は「事実については厳粛に受け止める」というだけで、誤りの反省をしていません。

 さらに、志位氏の質問で、大量破壊兵器の情報捏造について、米国に問い合わせもしておらず、検証もしていないことが明らかになりました。

歴代政府に輪をかけた従属ぶり

 戦後ただの一度も米国の戦争に「ノー」といったことがない、究極の対米従属の政府が日本政府です。しかも安倍首相は、戦争法案の閣議決定前に、米議会で夏までの成立を約束するなど、歴代政府に輪をかけた対米従属ぶりです。その政府がつくった法案で、対米従属の政府が集団的自衛権を発動し、アメリカとともに海外での戦争に踏み出すことがいかに危険か。志位氏は、こう警告しました。

 「第二の『トンキン湾事件』、第二の『大量破壊兵器』問題が起こった時に、あなたがたは、これまでもそうだったように、米国政府の発表をおうむ返しにし、無条件で支持し、協力することでしょう。ただし、ベトナム戦争のさいには、日本の協力は、在日米軍基地の使用にとどまりました。イラク戦争のさいには、自衛隊を派兵しましたが、『非戦闘地域』での支援にとどまりました。しかし、この法案が通れば、根本的に事態は変わってきます。米国の無法な戦争に、自衛隊が武力行使をもって参戦することになります。日本が侵略国の仲間入りをすることになるわけで、その危険性ははかりしれない」

 この警告を現実のものにしないためにも、戦争法案は廃案にするしかありません。