志位和夫 日本共産党

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2014年1月17日(金)

第26回党大会にたいする中央委員会報告

幹部会委員長 志位 和夫


 日本共産党第26回大会で15日、志位和夫委員長がおこなった中央委員会報告は次のとおりです。


写真

(写真)中央委員会報告をする志位和夫委員長

 代議員、評議員のみなさん、こんにちは。インターネット中継をご覧の全国のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。私は、中央委員会を代表して、第26回党大会にたいする報告をおこないます。

 この大会は、安倍・自公政権が、あらゆる分野で反動的暴走をすすめる一方で、国民運動が力づよく発展し、両者が激突するという情勢のもとで開かれました。

 大会決議案が発表されて2カ月が経過しました。決議案は、全党討論で、全体としてきわめて積極的に受け止められ、深められました。

 「自共対決」時代の本格的始まり、「世界の構造変化」と2010年代の世界の動向、安倍政権の反動的暴走と対決する各分野のたたかい、北東アジア平和協力構想、開始された躍進を本格的な流れにするための選挙戦と党建設の方針、日本における未来社会の展望など、決議案の新しい解明や提起が、新鮮な感動をもって受け止められ、党に新たな活力、展望、確信をつくりだしています。

 中央委員会報告は、決議案の章ごとに、全党討論をふまえて解明が必要な問題、情勢の進展にそくして補強すべき問題を中心におこないます。

 討論で寄せられた修正・補強意見については、大会の討論での意見もふまえて、一つひとつを吟味し、大会討論が終わった時点で、修正・補強した決議案を提出することにします。

決議案第1章(「自共対決」時代の本格的な始まりと日本共産党)について

 まず、決議案第1章について報告します。

 第1章は、日本の現在の情勢の特徴をどうつかみ、どうのぞむかについて、わが党の立場を総論的にのべた章であります。決議案第1項では、「日本の情勢は、『自共対決』時代の本格的な始まりというべき新たな時期を迎えている」と現状を規定づけました。

 情勢の進展、全党討論をふまえて、いくつかの点をのべておきたいと思います。

秘密保護法をめぐる闘争は、「自共対決」の政党地図をいっそう明瞭にした

 まず、強調したいのは、昨年の臨時国会での、秘密保護法をめぐる安倍政権と国民の世論と運動が真正面からぶつかりあうたたかいを通じて、すべての政党の本性があらわとなり、政党地図がいっそう明瞭となったということであります。

 自民党は、日本国憲法の基本原理をことごとく蹂躙(じゅうりん)するこの希代の悪法を、5割の国民の反対の声、8割の国民の「慎重審議」を求める声を踏みつけにし、“数の暴力”で強行しました。市民のデモを「テロ行為」と同列視した自民党幹事長の発言は、この法案の危険な本質を明らかにするとともに、国民世論を敵視する政権党の傲慢(ごうまん)と横暴を象徴するものとなりました。公明党は、連立を組むことで「ブレーキ役になる」などと主張していましたが、その仮面がはがれ落ち、悪政の推進・加担役でしかないことがむき出しになりました。安倍政権という「車」には、ブレーキはついていません。アクセルだけが二つある(笑い)。ハンドルは右にしか回らない(笑い)。文字通りの「暴走車」であります。

 野党はどうだったか。国会内の対応としては、国民の反対の声に押されて、野党が「慎重審議」を共同して求める場面もありました。同時に、それぞれが果たした役割を率直に指摘しなければなりません。維新の会、みんなの党は、与党と「修正合意」をして、希代の悪法の共同提案者となりました。「翼賛政党」としての正体を露呈し、メディアからも「すりよる野党はいらない」と手厳しい批判を受けました。民主党も、「修正」論の土俵にのり、最後まで廃案を主張できず、野党としての仕事を果たせませんでした。

 日本共産党は、希代の悪法にたいして、国民の急速な運動の広がりと一体になって、衆議院でも参議院でも真正面から反対する論戦をおこないました。法案の採決が強行された参議院本会議は、民主党、みんなの党、維新の会が退席し、討論を放棄するなかで、賛成討論をおこなったのは自民党議員、反対討論をおこなったのは共産党議員という、「自共対決」を象徴する光景となりました。

 国会を包囲する市民から共産党の反対討論に「がんばれコール」がわきおこりました。ツイッターでは、「反対討論(共産党の討論)は、国会周辺で人があふれて抗議していることを訴えていた。分厚い壁の中の議場まではコールは届かないが、反対派議員がわれわれの意思を背負っていた」との共感の声がおこりました。

 こうして、秘密保護法をめぐる闘争は、「自共対決」時代の始まりを浮き彫りにするものとなったのであります。

「自民党と共産党との間の『受け皿政党』が消滅した」ということについて

 決議案第2項で、今日の「自共対決」の新しい特徴として、「自民党と日本共産党との間の自民党批判票の『受け皿政党』が消滅した」と指摘したことについて、全党討論で議論され、深められました。「『消滅した』というが、民主党も維新の会やみんなの党も存在しているではないか」という疑問も寄せられました。

 決議案で、「消滅した」といっているのは、自民党と日本共産党との間に、「自民党批判を託せる政治的立場を持つ党がなくなった」ということです。そして、戦後日本の政治史を見ても、こうした政党地図はかつてない新しいものであるということです。

 1960年代終わりから70年代に、日本共産党が躍進した時期には、自民党と共産党との間に、社会党、公明党、民社党などの中間政党が存在し、それぞれなりに「反自民」の立場を掲げました。1990年代後半に、日本共産党が躍進した時期にも、自民党と共産党との間には、民主党、自由党が存在し、当時のこれらの諸党は、まがりなりにも「反自民」の旗を掲げたものでした。

 ところが、今回は、そういう政党が存在しません。野党に転落した民主党は、消費税増税、原発推進、TPP(環太平洋連携協定)推進、沖縄新基地建設など、安倍政権の暴走のどの問題をとっても、自分たちが政権についていた時期に手をつけた問題であるだけに、批判をしようとすればすべてブーメランのように自分に跳ね返ってきます。ですから、「反自民」の旗が立てられません。この党は野党としても自らの存在意義を見失っているのであります。「第三極」といわれた勢力は、自民党と「対決」するどころか、憲法改定でも、構造改革でも、公然と応援する立場をあらわにしています。こうして、決議案がのべているように、「日本共産党は自民党への批判を託せる唯一の党となっている」のであります。

 今後、この政党地図がどうなるか。支配勢力は、日本共産党の前進を抑えるために、新しい「受け皿」づくりを企てるでしょう。私たちの前途は平たんなものではないことを覚悟してのぞみたいと思います。

 ただ、間違いなくいえることは、「二つの異常」――「アメリカいいなり政治の異常」、「極端な大企業中心主義の異常」の枠内にとどまるかぎり、いかに政党の離合集散をはかろうと、自民党の補完勢力になるしかない、「反自民」の旗を立てることは決してできないということであります。そのことはすでに、「二大政党づくり」と「第三極」の破たんが証明しているではありませんか。

 「二つの異常」を根本からただす立場に立つ党でこそ、自民党政治への真の対決者の党になれるということを、私は、強調したいと思うのであります。(拍手)

「『自共対決』といっても力に差がありすぎるのでは」という議論について

 全党討論のなかでは、「『自共対決』といっても力に差がありすぎるのでは」という議論も出され、深められました。

 この点については、三つの点を強調したいと思います。

 第一は、国会内の力関係だけでみないで、社会全体の力関係をとらえようということであります。秘密保護法に反対する世論と運動の急速な広がりは、日本国民の中に平和と民主主義を求める巨大なエネルギーが存在していることを示しました。安倍政権の暴走は、「海外で戦争する国」づくり、靖国参拝、沖縄基地問題、原発問題、消費税増税、TPP問題など、どの問題をとっても、国民多数の声に背き、世界の流れに背く逆流であります。みなさん、どんな問題でも、日本共産党が、国民多数派の立場に立つ党であることに確信をもって、たたかいにのぞもうではありませんか。(拍手)

 第二は、参議院選挙での日本共産党の躍進が新しい変化をつくっていることをとらえようということであります。躍進は、わが党の国会活動に質的な変化をもたらしました。臨時国会で、日本共産党は、参院本会議で15回もの質疑・討論をおこないました。躍進がなければ、本会議での質疑も討論もありませんでした。日本共産党は、新たに獲得した議案提案権を行使して、ブラック企業規制法案を提出しましたが、これは社会的反響をよび、厚生労働省に、違法行為への取り締まりの強化、離職者数の公表を実施させるなど、法案の内容が部分的ではありますが実現し、現実政治を動かしつつあります。みなさん、全党の奮闘でつくったこの変化に確信をもとうではありませんか。(拍手)

 第三に、もちろん、自民党と共産党との間に、国会勢力としても、政治的影響力でも、大きな差があることは、いうまでもありません。この点で、決議案第1章にかかわる全党討論の結論が、多くの場合、「この党をもっと大きくしよう」となっていることは、たいへん重要だと思います。

 決議案は、「二つの異常」を特徴とする政治が「崩壊的危機におちいっている」とのべていますが、これは、古い自民党政治の枠組みを続けていては、日本社会がもはや立ち行かなくなり、社会の土台から壊れていくことになることを表現したものであって、自民党政治そのものは、どんなに行き詰まっても「自動崩壊」することはありません。社会変革の主体である国民の政治的認識が成長・発展し、日本共産党が国政で躍進を重ねてこそ、日本の社会変革の道は開かれることを銘記して奮闘したいと思います。

 みなさん。自民党政治に真正面から「対決」し、国民の立場に立った抜本的な「対案」を示し、国民のたたかいとの「共同」を広げる――この三つの政治姿勢を堅持した奮闘で、実力のうえでも「自共対決」という時代を開こうではありませんか。(拍手)

決議案第2章(世界の動きをどうとらえ、どう働きかけるか)について

 つぎに、決議案第2章について報告します。

 第2章は、20世紀におこった「世界の構造変化」が、「世界の平和と社会進歩を促進する力として、生きた力を発揮しだした」と規定しています。

 綱領は、20世紀におこった「人類史の上でも画期をなす巨大な変化」を、植民地体制の完全な崩壊、国民主権の民主主義の流れ、平和の国際秩序の建設――の三つの角度から明らかにしています。そのなかでも、植民地体制の崩壊と、100を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家になったことは、最大の変化であり、まさに「世界の構造変化」とよぶにふさわしいものでありました。

 この変化自体は、20世紀に進行したものですが、2010年代に入って、それが国際政治を動かす力として「生きた力を発揮しだした」――決議案は、現代の世界をとらえるさいに、こうした特徴づけをおこなっています。

 世界の変化という場合、10年間というスケールで見ると、大局的変化がはっきりと見えてきます。報告では、そのことをつぎの五つの角度から見てみたいと思います。

「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」をめざす流れが大きく発展した

 第一は、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」をめざす流れが大きく発展したということであります。

 11年前の2003年、米国など一部の諸国は、国連安保理事会の決議もないまま、無法なイラク戦争にのりだしました。しかし、この無法な戦争は、世界の平和秩序を前にすすめる重大な契機ともなりました。米国のイラク戦争に反対して、世界各地で空前の人々が声をあげ、立ち上がりました。世界の約7割もの国ぐにが反対の声をあげ、そのなかには、ドイツ、フランス、カナダなど、米国の同盟国も含まれました。「国連憲章のルールを守れ」という主張が、根本的要求として共有され、この流れは目覚ましい成長をとげました。

 それから10年後の2013年、アメリカなどがおこなおうとしたシリアへの軍事介入は、イラク戦争とは対照的な結果となりました。軍事介入は、国際世論の包囲によって阻止され、問題は国連にゆだねられ、外交的解決が選択されました。これは、どんな大国といえども、国連を無視した無法な侵略戦争を簡単には強行できない時代となったことを、象徴する出来事となりました。

 10年間という単位で見れば、世界の平和秩序は、着実な前進を見せています。この前進をつくったのは、各国人民のたたかいであります。みなさん、そのことを確信をもってつかみ、平和の流れをさらに発展させるために力をつくそうではありませんか。(拍手)

米国自身におこった変化――軍事的覇権主義とともに、外交交渉による対応も

 第二は、米国自身におこった変化であります。

 2001年に起きた9・11同時多発テロにさいして、ブッシュ大統領(当時)は、2002年年頭の一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と名指しし、無法な先制攻撃を宣言しました。

 この時期の米国の世界戦略は、国連を無視した単独行動主義、むきだしの先制攻撃戦略、軍事力によって都合のよい政権を押しつける新しい植民地主義、核兵器の一方的使用戦略など、軍事的覇権主義一色に塗り固められたものでした。10年前、2004年に開催された日本共産党第23回大会決議では、その特徴について次のようにのべました。

 「まさにいま米国は、『戦争と抑圧の国際秩序』を世界に押しつけようとしている。ここにあるのは、“一国覇権主義の暴走”ともいうべき世界支配のむきだしの野望である」。「米国が、いかに比類ない軍事力を持っていたとしても、軍事力にのみ依拠した『国際秩序』などは、決してつくれるものではない」。「米国のつきすすんでいる一国覇権主義の道には、決して未来はない」。

 事態は、わが党が見通した通りになりました。イラク戦争は、甚大な人的犠牲と物的破壊をもたらして深刻な破たんに直面しました。そうしたもとで、軍事的覇権主義一本やりでは通用しなくなり、ブッシュ政権2期目以降、米国の世界戦略に変化が生まれてきました。すなわち、「軍事的覇権主義に固執しつつ、国際問題を外交交渉によって解決する」という「二つの側面」があらわれてきました。わが党は、綱領にそくして、そうした米国の変化を、第24回党大会決議、第25回党大会決議で分析してきました。

 決議案第6項は、米国・オバマ政権が、現在とっている世界戦略について、つぎのようにのべています。

 「この4年間の米国・オバマ政権の世界戦略の展開は、アメリカの国際的影響力の相対的低下傾向をともないながら、前回党大会が指摘した二つの側面が継続していることを示している。すなわち、オバマ政権は、歴代米国政権の基本路線である軍事的覇権主義の立場を継承・固執しつつ、多国間・2国間の外交交渉による問題解決に一定の比重をおくという世界戦略をとっている」。

 もちろん、オバマ政権が、軍事的覇権主義に固執し、先制攻撃戦略を依然として選択肢としていること、さらに、この政権がすすめている外交戦略も、大局的に見れば、米国の影響力の確保という覇権主義の戦略の一環としてすすめられていること――すなわちアメリカ帝国主義の本質に変わりはないことを直視しなくてはなりません。

 同時に、米国ですら、軍事力一本やりではやっていけなくなったのは、この10年間の大きな変化であります。そして、米国に変化をもたらしたのは、平和と社会進歩を求める各国人民のたたかいであったということを、私は、強調したいのであります。

平和の地域共同体――この10年間の目覚ましい発展

 第三は、平和の地域共同体の発展であります。ここでも、この10年間の発展は目覚ましいものがあります。

 一つは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の発展です。ASEANが取り組んでいる平和の枠組みの基本に、東南アジア友好協力条約(TAC)があります。TACは、1976年に締結され、武力行使の放棄と紛争の平和解決などを掲げ、まずASEAN域内諸国の関係を律する平和のルールとしてつくられました。ASEANは、1987年にTACを域内の行動規範にとどめず、域外の諸国に批准を促していく方針を定めました。この動きが飛躍的にすすんだのは、この10年間であります。TAC加入国は、2003年には、11カ国、人口で5・4億人、世界人口に対する比率は8・5%でした。それが、ユーラシア大陸のほぼ全体、オセアニア、北アメリカにまで広がり、2013年には、57カ国、人口で51・5億人、世界人口の72%へと飛躍的に増大しました。こうして東南アジアは、世界とアジアの平和の一大源泉となっているのであります。

 いま一つ、中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)の創設も歴史的意義をもつものです。2010年、中南米カリブ海の33の諸国のすべてが参加した統一首脳会議でCELACの設立が宣言され、2013年1月に第1回首脳会議が開かれました。

 アメリカのケリー国務長官は、昨年11月、ワシントンの米州機構(OAS)本部でのラテンアメリカ諸国の代表を前にした演説で、米国がラテンアメリカへの介入を宣言した1823年の「モンロー・ドクトリン」について、歴代大統領がそれを強化してきたことを認めたうえで、その「時代は終わった」とし、「互いを平等とみなす」ことなどを特徴とする新しい関係の構築を強調しました。米国政府が、ラテンアメリカを自国の「裏庭」とみなして、干渉と介入をほしいままにした「モンロー・ドクトリン」の終結を公式に表明したのは、初めてのことであります。

 軍事ブロックのように外部に仮想敵を設けず、地域のすべての国を迎え入れるとともに、世界に開かれた、平和の地域共同体が、世界各地で目覚ましい発展をとげているのは、世界の平和と社会進歩にとっての大きな希望であります。(拍手)

一握りの先進国が世界経済を牛耳っていた時代は過去のものとなった

 第四は、世界の経済秩序の変化であります。

 かつての世界では、米国政府・国際通貨基金(IMF)・世界銀行が「司令塔」となり、「先進国サミット」(G8)を主要な舞台として、世界全体を支配するという古い経済秩序が横行していました。

 IMFや世界銀行が中心になって、「ワシントン・コンセンサス(合意)」の押しつけ――緊縮政策や大規模な民営化を融資条件とする構造改革、資本自由化など「新自由主義」の押しつけが猛威を振るいました。

 しかし、この路線は、東南アジアでも、ラテンアメリカでも大破たんに陥り、それぞれで自主的な地域共同体づくりを促す結果となりました。

 こうした一握りの先進国主導の古い経済秩序が、決定的に立ち行かなくなったのが、2008年のリーマン・ショックを契機にした世界経済危機であります。

 世界銀行のゼーリック総裁(当時)は、2010年9月の講演で、「世界的な金融危機によって、これまでの開発経済学では役に立たないことが示された」、「多極化した新たな世界経済には、多極化した知見が必要だ」、「われわれは開発経済学の民主化をはからなければならない」とのべました。「多極化した新たな世界経済」では、これまで世界銀行やIMFが押しつけてきた政策が「役に立たない」ものとなり、「民主化」が必要になっている――押しつけてきた当事者である世界銀行の総裁から、こうした認識が語られたことは、まさに変化を象徴するものであります。

 「G8」の時代は終焉(しゅうえん)し、新興国・途上国を含めた「G20」が、国際問題を議論する中核的な会議体として登場しました。さらに、「G20」の限界も指摘されるようになり、国際的な経済問題への対応は、「最大の合法性」をもつ国連を中心とした枠組みでおこなうべきだとする提案――「G192」が提唱されました。

 これは、20世紀におこった「世界の構造変化」と、新興国・途上国の世界経済に占める比重が年を追うごとに高まっていることを背景にした、逆戻りすることのない変化であります。IMFの推計によりますと、2013年に、新興国・途上国を構成する約150カ国の購買力平価(PPP)ベースでのGDP(国内総生産)は43・7兆ドルと、先進35カ国・地域の42・9兆ドルを初めて上回りました。

 一部の発達した資本主義国が世界経済を牛耳っていた時代は、もはや過去のものとなりました。そして、決議案が指摘しているように、国際経済における民主的ルールを確立し、多国籍企業化した大企業への国際的な民主的規制をおこなうことが、諸国民のたたかいの緊急の課題として日程にのぼる新しい時代を迎えているのであります。

「核兵器のない世界」をめざして――前向きの変化と、今日の対決点

 第五は、「核兵器のない世界」をめざすたたかいの発展であります。

 ここには、核兵器固執勢力と核兵器廃絶を求める勢力との、激しいたたかいの歴史があります。

 2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議は、「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を確認するという到達点を築きました。

 しかし、ブッシュ政権はこの合意を無視し、2005年のNPT再検討会議では、核不拡散の問題だけをとりあげ、核軍縮の課題の前進についての議論を拒否しました。核兵器廃絶の「明確な約束」をはじめ、いったんは米国政府も合意した課題にもことごとく反対し、最終文書をまとめられないまま閉幕するという失敗に終わりました。

 しかし、被爆者を先頭とする日本と世界の運動が、ここでも逆流を乗り越えて前向きの変化をつくりだしました。2010年のNPT再検討会議は、「核兵器のない世界」を実現するために、「必要な枠組みを確立する特別な取り組みをおこなう」ことを確認し、核兵器禁止条約の国際交渉に道を開く到達を築きました。

 国際世論と運動による包囲によって、「核兵器のない世界」の実現が、核保有国も含む共同の目標となるもとで、核兵器禁止条約の緊急の交渉開始か、「段階的アプローチ」の名で核兵器廃絶を永久に先送りするのかが、いま鋭い対決点として浮上しています。

 昨年の国連総会は、その対決の舞台となりました。

 非同盟諸国は、核兵器の非人道性、残虐性に注目しつつ、核兵器を禁止し廃絶するための包括的な条約の「早期締結」のための交渉を「緊急に開始」することを求める国連総会決議案を提出し、昨年12月、決議案は、加盟国の3分の2を超える137カ国という圧倒的多数の賛成で採択されました。

 米英仏は、この決議に反対して共同声明を出し、「われわれは、実際的で段階的な接近(アプローチ)こそ、世界の安全と安定を維持しながら、軍縮努力で本当に前進する唯一のやり方であると確信している」と、反対理由をのべました。「段階的なアプローチ」論は、核兵器の「究極」廃絶論が破たんして、「核兵器廃絶の明確な約束」をせざるをえなくなっている核保有国が、一方で「核兵器のない世界」をとなえながら、実際には、核兵器保有に固執する最後のよりどころとしているものであります。

 しかし、フィリピンのデルロサリオ外相が、「『段階的なアプローチ』を支持して、核兵器全面廃絶の明確なスケジュール設定を拒否することは、怠慢ということと同義だ」とのべたように、それは、核兵器禁止条約の緊急の交渉開始を求める圧倒的多数の国際世論に背くものにほかなりません。

 核兵器固執勢力は、核兵器の「究極」廃絶論が破たんし、「核兵器廃絶の明確な約束」に縛られ、大局的には追いつめられつつあります。

 その時に、日本政府が、「段階的なアプローチ」論に同調して、核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連総会決議に棄権していることは、被爆国政府にあるまじき、あまりにも情けない態度といわなければなりません。(拍手)

 日本共産党は、被爆70周年の2015年に開かれるNPT再検討会議で、「核兵器禁止条約の交渉開始」が国際社会の合意になるよう、日本と世界の反核運動と連帯し、被爆国の政党として全力をあげて奮闘するものであります。(拍手)

平和と社会進歩への歴史的変化――世界史の本流にたつ日本共産党の立場

 五つの角度から、この10年間の変化を見てきました。もちろん、世界の動きは、さまざまな逆行、試行錯誤、複雑さをはらんでいます。しかし、10年というスケールでその大局をとらえるならば、平和と社会進歩への歴史的変化が進行していることがはっきりと浮き彫りになってくるではありませんか。

 そして、この変化にてらすならば、「海外で戦争する国」づくりをめざす安倍政権のたくらみが、いかに世界の流れに背く時代錯誤の逆流であるかが、歴然としてくるではありませんか。(拍手)

 日本共産党の立場こそ、世界史の本流に立つものであり、未来あるものであります。みなさん、ここに深い確信をもって、世界の平和と社会進歩のために、力をつくそうではありませんか。(拍手)

決議案第3章(自民党政権の反動的暴走と対決し、新しい日本をめざす)について

 つぎに、決議案第3章について報告します。

 第3章は、安倍・自公政権の反動的暴走と対決し、新しい日本をめざす、直面するたたかいの諸課題を提起しています。

安倍政権の暴走の一歩一歩が、国民との矛盾、世界との矛盾を深めつつある

 まず決議案第12項は、安倍・自公政権について、「この内閣の基盤はきわめてもろく、深刻な矛盾をはらんでいる」、「安倍政権の暴走の具体化の一歩一歩が、多数の民意に逆らうものであり、国民とのあいだでの矛盾を深めつつある」とのべています。

この間の暴走につぐ暴走――安倍政権の「終わりの始まり」 

 決議案発表から2カ月、この指摘通りの情勢が展開しています。昨年末から今年にかけての安倍政権の暴走につぐ暴走は、この政権の国民との矛盾、さらには世界との矛盾を劇的に拡大するものとなりました。

 国民多数の声を押しつぶしての秘密保護法の強行は、多くの国民の批判と怒りをまねき、安倍政権の「終わりの始まり」を告げる出来事となりました。

 この内閣が強行しようとしている集団的自衛権行使と「海外で戦争する国」づくり、沖縄選出自民党国会議員と県知事を裏切らせての新基地建設のごり押し、日本社会を「3・11」以前の“原発依存社会”に逆行させる原発再稼働、消費税大増税と社会保障切り捨て、TPP推進など、そのすべてが国民多数の声に逆らうものであります。

 直近の世論調査では、安倍内閣の暴政と国民との矛盾がとりわけ集中している北海道、福島県、沖縄県で、内閣不支持率が支持率を上回りました。これはこの内閣の運命を先取り的に示すものにほかなりません。(拍手)

戦後の保守政治が掲げてきた諸原則すら否定する右翼的反動的立場

 とりわけ重大なのは、この内閣が、戦後の保守政治が掲げてきた諸原則すら否定する特異な右翼的反動的立場に立っていることであります。

 安倍内閣の「海外で戦争する国」への暴走は、憲法原理を覆す秘密保護法、解釈改憲による集団的自衛権行使、「専守防衛」すら投げ捨てる自衛隊の海外派兵の軍隊への大改造、憲法の平和主義・基本的人権を根底から否定する憲法改定案など、戦後、保守政治がまがりなりにも掲げてきた諸原則すら、ことごとく否定するものとなっています。

 保守の立場に立つある作家からも、「今の自民党は、保守政党じゃなくて右翼化した全体主義政党」という批判が起こり、元自民党幹部や自民党に支持を寄せてきた広範な保守の立場の人々からも、この道はとうてい容認できないという声が起こっていることは、決して偶然ではありません。

 こうした特異な右翼的反動的立場にたいして、海外からも異質な時代逆行という警戒と批判が広がっています。秘密保護法の強行をうけて、アメリカの新聞・ニューヨーク・タイムズは、「日本の危険な時代錯誤ぶり」と題する社説を書きました。イギリスの新聞・ガーディアンは、「日本帝国主義への回帰か」と書きました。ドイツの新聞・ターゲス・シュピーゲルは、「日本は武士の時代に逆戻りした」(笑い)と書きました。安倍内閣の暴走は、国民との矛盾を広げているだけでなく、世界の目から見ても時代逆行、時代錯誤というほかないものなのであります。

首相の靖国参拝――国内外から強い批判が広がる

 さらに深刻な問題は、安倍内閣が、過去の侵略戦争を肯定・美化する「靖国」派内閣としての正体をあらわにしたことであります。

 安倍首相は、昨年12月26日、靖国神社参拝を強行しました。

 靖国神社は、戦争中は、国民を戦場に動員する役割をになった神社でありました。「戦争で死んだら靖国神社で神としてまつられる」、これが軍人にとって最大の栄誉だとされたのです。そして、この神社は、現在も、日本軍国主義による侵略戦争を、「自存自衛の正義のたたかい」、「アジア解放の戦争」と美化し、宣伝することを存在意義とする特殊な施設となっています。侵略戦争を引き起こした罪に問われたA級戦犯が、連合軍による一方的な裁判で濡れ衣(ぬれぎぬ)を着せられた犠牲者として合祀(ごうし)されています。

 この施設に首相が参拝することは、侵略戦争を肯定・美化する立場に自らの身を置くことを、世界に向かって宣言することにほかなりません。

 首相は、「不戦の誓い」をしたと弁明しましたが、「不戦の誓い」に最もふさわしくない場所が、靖国神社なのであります。(拍手)

 第2次世界大戦後の国際秩序は、日独伊による侵略戦争を不正不義のものと断罪することを共通の土台としています。首相の行動は、今日の国際秩序に正面から挑戦するものであり、断じて許されるものではありません。(拍手)

 首相の靖国参拝にたいして国内外から強い批判が広がっています。中国政府、韓国政府は、きびしい抗議を表明しました。米国政府も「失望した」との異例の批判をおこないました。さらに批判は、国連事務総長、欧州連合、ロシア政府、シンガポール政府などにも広がりました。安倍首相は、自らがよって立つ特殊な右翼的勢力――「靖国」派に媚(こ)びを売る行動によって、文字通り、世界全体を敵にまわし、とりわけ近隣諸国との友好という日本の国益を大きく損なったということを、きびしく指摘しなければなりません。

 日本共産党は、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた党として、歴史問題での逆流を日本の政治から一掃するために全力をあげるものであります。(拍手)

暴走の先に未来はない――国民との共同を広げ、正面から対決してたたかう

 決議案はつぎのように指摘しています。

 「安倍政権の暴走は、危険きわまりないものであるが、恐れる必要はない。この暴走の先に未来はない。この暴走が、早晩、深刻な政治的激動、政治的危機を引き起こすことは、疑いないことである」。

 この指摘は、早くも現実のものとなりつつあります。

 国民多数の声に背き、世界の流れに背く、安倍政権に未来はありません。

 みなさん。その暴走と正面から対決し、あらゆる分野で危機打開の対案を示し、国民との共同を広げて奮闘しようではありませんか。(拍手)

東日本大震災からの復興――国民のたたかいで災害対策のまともなルールを

 決議案第13項は、東日本大震災からの復興についてのべています。

 未曽有の大震災から3年がたとうとしています。被災地では懸命の努力が重ねられていますが、いまだに多くの被災者が不自由な仮設住宅などの避難生活から抜け出せず、先の見通しがたたない生活を強いられています。被災地では人口流出も深刻さを増しています。決議案は、東日本大震災からの復興を「国政上の最優先課題」「日本の政治のゆがみをただす事業」と位置づけ、取り組みの方向を示しました。

 強調したいのは、被災者と国民の連帯したたたかいこそが、災害対策のまともなルールをつくる力であるということであります。阪神・淡路大震災の被災者が起こした運動は、住宅再建への支援制度を新たにつくらせました。東日本大震災にさいしても、被災地のたたかいによって、被災した事業者を直接支援するものとしてグループ補助の制度などが新設されました。まだまだ不十分ですが、被災者と国民の連帯したたたかいこそが、前途を開く力であるということを、強調したいと思うのであります。

 決議案は、「『個人財産の形成になる』といって、住宅、商店、工場、医療機関などの復旧を支援しないという旧来の災害対策の『原則』を取り払い、住宅と生業(なりわい)の再建に必要な公的支援を行うことを、復興の基本原則にすえることを求める」とのべています。

 いま東日本大震災の被災者の生活と生業の再建のために、住宅再建の支援制度の充実、二重ローン問題の解決、用地確保のための特例措置など、国の姿勢を変え、従来の枠にとらわれない災害対策のまともなルールをつくることは、現に苦しんでいる被災者にとって切実な課題であるだけでなく、災害が多発する日本列島において国民の命と安全を守るうえで、将来にわたって重要な意義をもつものであります。

 日本共産党は、政府にたいして旧来の災害対策からの転換を強く求めるとともに、党としての支援活動をさらに継続していきます。全国の党組織・民主勢力のみなさんのこれまでの支援活動に敬意と感謝をのべるとともに、引き続きの支援を心から訴えるものであります。(拍手)

暮らしと経済をめぐるたたかい――対決の熱い焦点について

 決議案第14項は、暮らしと経済をめぐるたたかいについてのべています。

 決議案は、安倍政権が「アベノミクス」の名ですすめている経済政策について、「『大企業を応援し、大企業がもうけをあげれば、いずれは雇用、賃金、家計にまわってくる』という、古い破たんした『トリクルダウン』の理論――“おこぼれ経済学”にほかならない。これが、日本経済に『好循環』をもたらすどころか、衰退の『悪循環』しかもたらさなかったことは、すでに事実が証明している」と批判しています。

 そのうえで、わが党の抜本的対案を、つぎの四つの柱で示しています。

 第一に、働く人の所得を増やす経済改革で経済危機を打開する。

 第二に、消費税大増税に反対し、税財政と経済の民主的改革で財源をまかなう。

 第三に、社会保障の解体攻撃とたたかい、社会保障再生、拡充をはかる。

 第四に、内需主導の健全な成長をもたらす産業政策への転換をはかる。

 この四つの柱であります。

 報告では、決議案の提起を前提にして、暮らしと経済をめぐる直面するたたかいの熱い焦点についてのべます。

消費税大増税に反対するたたかい――増税の論拠は総崩れになっている

 まず、消費税大増税に反対するたたかいについて報告します。

 決議案は、消費税大増税が強行されれば、「国民の暮らしにはかりしれない深刻な打撃をもたらし、経済も財政も共倒れの破たんに追い込まれることは明らかである」とのべましたが、その後の情勢は、この指摘が的を射たものであることを浮き彫りにしています。

 「アベノミクス」の本性はすでにあらわとなり、日本経済は、危険な水域に入っています。異常な金融緩和によって株価は上がりましたが、庶民への恩恵はなく、円安による燃料と原材料、生活必需品の値上げが家計と中小企業の営業を苦しめています。2013年7~9月期のGDPの実質成長率は、年率換算で1・1%にとどまり、1~3月期の4・5%、4~6月期の3・6%を大幅に下回り、経済の減速傾向が明瞭になりました。しかも、その中身を見ますと、家計消費や設備投資は低迷し、GDPの伸びをかろうじて支えているのは、消費税増税を前にした住宅建設などの駆け込み需要と、補正予算による公共事業という状況です。何よりも働く人の賃金は減り続けています。

 このような経済情勢のもとで、消費税増税で8兆円、社会保障の負担増・給付減を合わせれば10兆円もの史上空前の負担増を強行するならば、どうなるか。国民の暮らしに大打撃をあたえ、日本経済を壊し、財政も共倒れの大破たんをもたらすことは必至であることを、強く警告しなくてはなりません。

 消費税大増税の一方で、大企業には大盤振る舞いの減税がおこなわれようとしています。復興特別法人税の1年前倒しでの廃止につづき、法人税率の引き下げが計画されています。「国土強靱(きょうじん)化」の名で、東京外郭環状道路をはじめ三大都市圏環状道路、国際コンテナ港湾など、巨大公共事業に、巨額の税金が投入されようとしています。今後5年間に約24兆6700億円の軍事費をつぎ込む、大軍拡の道に踏み出そうとしています。

 結局、消費税大増税は、「財政再建のため」でも、「社会保障のため」でもない。消費税増税で吸い上げた税金を、大企業減税と巨大開発、軍拡予算に流し込む――これこそ真実であることが、浮き彫りになっているではありませんか。

 消費税増税の論拠は、総崩れになっています。

 みなさん。「4月からの消費税増税の中止」の一点で、国民的共同を広げ、増税の実施を阻止するために、最後まで力をつくそうではありませんか。(拍手)

 日本共産党の「経済提言」は、消費税に頼らずに、現在の経済、財政、社会保障の危機を一体的に打開する唯一の道を指し示すものです。わが党は、この抜本的対案を高く掲げて奮闘するものであります。(拍手)

雇用大破壊の逆流を許さず、賃上げと安定した雇用の拡大を

 つぎに、雇用大破壊の逆流を許さず、賃上げと安定した雇用の拡大を求めるたたかいについて報告します。

 安倍政権は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」のスローガンのもと、正社員にも、非正規社員にも、不安定雇用を広げ、賃下げと労働条件悪化をもたらす、雇用大破壊の逆流を押しつけようとしています。

 その特徴は、次の通りであります。

 ――一つは、非正規雇用の拡大と固定化をすすめることです。「派遣労働を常用雇用の代替にしてはならない」という大原則をくつがえし、企業が派遣を「常用」できるようにする労働者派遣法の大改悪がすすめられようとしています。派遣労働者に“生涯派遣で低賃金”のまま働き続けることを強いる仕組みへの大改悪であります。

 ――二つは、「残業代ゼロ」の合法化です。何時間残業しても8時間労働とみなす裁量労働制の拡大、一定年収以上の労働者の残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入などがねらわれています。

 ――三つは、解雇自由への規制緩和です。仕事内容や勤務地などが限定され、クビにしやすい「限定正社員」制度の法制化、不当解雇であっても企業が金さえ払えば労働者をクビにできる“解雇の金銭的解決”の導入などがすすめられようとしています。

 安倍政権の労働法制大改悪は、自らの「賃上げ」発言にも真っ向から反する、「賃下げ促進」政策にほかなりません。労働者の生活と権利を破壊し、日本社会の総ブラック企業化をすすめる雇用大破壊の逆流を、断固として拒否しようではありませんか。(拍手)

 賃上げは、労働者の切実な要求であるとともに、日本経済の危機打開にむけた国民的課題になっており、その必要性は、政府も含めて否定できなくなっています。安定した雇用を増やすことは、日本の経済と社会の健全な発展のためにも、いよいよ重要となっており、これも国民的課題であります。

 労働法制の大改悪に反対し、賃上げと安定した雇用の拡大を求める労働者のたたかいが、労働運動のナショナルセンターの違いを超えた共同へと発展しつつあることは、重要であります。昨年12月には、日本弁護士連合会が主催し、労働法制の規制緩和反対を掲げて、全労連、連合、全労協、純中立などの労働組合が勢ぞろいした画期的集会が取り組まれましたが、これは1989年に二つのナショナルセンターが結成されて以来、初めての出来事となりました。

 いまこそ、ナショナルセンターの違いを超えた、大きな共同で、逆流をはねかえし、賃上げと安定した雇用の拡大をすすめようではありませんか。正規も、非正規も、民間も、公務も、ナショナルセンターや労働組合の違いを超えた共同を発展させ、国民各層との連帯を広げ、このたたかいに勝利しようではありませんか。(拍手)

社会保障の解体攻撃とたたかい、社会保障再生、拡充をはかる

 つぎに、社会保障の解体攻撃とたたかい、社会保障再生、拡充を求めるたたかいについて報告します。

 安倍・自公政権は、昨年の臨時国会で、「社会保障制度改革プログラム法案」と生活保護法改悪案を強行・成立させました。今年以降、「プログラム法」に書いた“スケジュール”にそって、医療・介護・年金・保育など、社会保障の全分野での改悪を具体化しようとしています。この分野でも本格的な激突が始まります。

 決議案は、安倍政権が推進する「社会保障制度改革」について、「『制度改革』の基本を『国民の自助・自立のための環境整備』とし、憲法25条に基づく社会保障を解体して、公的支えをなくし、国民を無理やり『自助』に追い込むというもの」と批判しました。「プログラム法」が列記した「改革案」の中身は、いずれも、この指摘を裏付ける改悪案のオンパレードとなっています。

 ――医療では、70~74歳の窓口負担の2倍化、「都道府県単位化」の名による国保料(税)の大幅値上げなど、さらなる国民負担増が打ち出されています。入院食費の患者負担の引き上げ、入院患者の“追い出し”促進にむけた新たな病床再編計画の策定など、入院医療を狙い撃ちにする制度改悪も計画されています。これは「医療崩壊」を加速し、国民の命と健康を脅かす大改悪にほかなりません。

 ――介護では、「要支援者」から訪問介護と通所介護を取り上げ、特別養護老人ホームから要介護1、2の人を締め出し、在宅でも施設でも利用料の大負担増をすすめるなど、「介護難民」を政府自ら増やしていく方向が明記されています。

 ――年金では、2013年度から実施されている2・5%削減をすすめるとともに、「マクロ経済スライド」を発動し、毎年1%=5000億円もの支給削減を連続的におこなっていくことがうたわれています。さらに、年金支給開始年齢の68歳、70歳などへの先送りも検討課題にあげられています。

 ――保育では、株式会社の参入促進、人員配置基準・面積基準・安全基準の緩和など、保育の営利化、規制緩和をすすめようとしています。「安心して預けられる認可保育所の大幅増設」という保護者の願いに背を向け、保育への公的責任の後退と、“安上がり化”をすすめるものであります。

 「プログラム法」に列記された負担増・給付減は、試算できるものだけで3兆円を超えます。文字通り、史上空前の規模での社会保障解体攻撃であります。

 国民の反撃も始まっています。生活保護改悪に対しては、日弁連、司法書士会、ソーシャルワーカー協会なども反対を表明しました。介護保険改悪に対しては、介護事業所・施設の団体、厚生労働省に協力してきたNPOや有識者からも批判が続出しています。年金削減に対しては、10万人の不服審査を組織する運動がはじまり、生活保護削減に対しては、バッシングに抗して受給者1万人が不服審査に立ち上がっています。

 決議案がのべているように、自公政権が社会保障切り捨ての常とう手段としているのは、「高齢者と現役世代」、「給付を受けている人と受けていない人」など、「国民の中に対立と分断を持ち込み、『いじめ』と『たたきあい』を広げる攻撃」であります。

 みなさん。この卑劣な攻撃を、社会的連帯の力ではねかえし、憲法25条を生かした社会保障の再生・充実をたたかいとろうではありませんか。(拍手)

原発推進政策に反対し、「即時原発ゼロ」をめざすたたかい

 決議案第15項は、「原発ゼロの日本」をめざすたたかいについてのべています。

 原発推進への暴走を許すのか、原発ゼロに道を開くのかは、国政の熱い対決の焦点の一つとなっています。

「即時原発ゼロ」の政治決断こそ、もっとも現実的で責任ある態度

 政府は、昨年12月、原発を「基盤となる重要なベース電源」として、将来にわたって維持・推進し、「再稼働を進める」とした、「エネルギー基本計画案」を発表し、閣議決定しようとしています。これは、民主党政権時に定めた「2030年代に原発ゼロ」という政府としての目標すら投げ捨てる、あからさまな原発推進宣言であります。

 こうした政府の姿勢を受けて、全国の48基の原発のうち16基が再稼働の申請をおこなっており、さらに再稼働申請の動きが広がるとみられます。青森県・六ケ所村の再処理工場の稼働の申請もされました。

 何よりも、これは国民多数の民意に背くものであります。

 どんな世論調査でも、原発の今後について、「今すぐ廃止」「将来は廃止」をあわせると7割~8割にのぼります。原発再稼働と輸出をすすめ、将来にわたって原発にしがみつく安倍政権の姿勢は、福島原発の深刻な大事故を体験し、「原発ゼロの日本」を願う、国民多数の民意への挑戦にほかなりません。

 第一に、事故原因の究明もされておらず、事故収束の見通しもたたないもとでの、原発再稼働など論外であります(拍手)。「新規制基準」は、各原発の地震・津波想定に対する数値の定めもなく、活断層があっても地表に「ずれ」が見えなければその真上に原発を建ててもよく、住民の避難計画は自治体まかせという、きわめてずさんなものであり、これをテコに再稼働をすすめるなど、断じて許せるものではありません。現在、日本のすべての原発は停止しています。このまま再稼働せずに、廃炉に向かうことこそ、もっとも現実的で責任ある態度ではありませんか。(拍手)

 第二に、原発推進は、処理の見通しのない「核のゴミ」をさらに増加させる、もっとも無責任なものであります。「エネルギー計画案」は、「最終処分」を「将来世代に先送りしない」などといっています。しかし、使用済み核燃料を安全に「再処理」する方法も、「再処理」した後の高レベル・低レベルの放射性廃棄物を「最終処分」する方法も、人類は持ち合わせていません。すでに、多くの原発では使用済み核燃料を貯蔵するプールが満杯近くになっています。「核のゴミ」の問題を考えても、「即時原発ゼロ」の決断が強く求められているということを、強調したいのであります。(拍手)

 第三に、「エネルギー計画案」は、原発は安価で安定供給だということを、原発固執の最大の理由にしていますが、これは成り立ちません。原発事故から3度の夏をこしても「電力不足」は起きておらず、日本社会は原発なしでもやっていけることは、日本国民が体験していることではありませんか。原発こそ究極の高コストであることは、その後始末にどれだけ巨額の費用がかかるかも定かでない福島原発事故が証明しているではありませんか。

 「即時原発ゼロ」を政治決断し、再生可能エネルギーの思い切った普及と低エネルギー社会への転換に力をそそぐことこそ、政治がとるべきもっとも現実的で責任ある態度であるということを、私は訴えたいと思います。(拍手)

福島の復興と「原発ゼロの日本」を求めるたたかいを一体にとりくむ

 「原発ゼロの日本」を求めるたたかいを、福島の苦しみに心をよせ、福島の復興をすすめることと一体にとりくむことが大切であります。

 福島原発事故は収束するどころか、放射能汚染水が増え続け、制御できない非常事態が続いています。わが党は、昨年11月21日、汚染水問題の危機打開のためのシンポジウムを開催しました。そこでも明らかになったように、汚染水問題の解決と事故収束は、長期にわたる努力を必要とするものであり、内外の英知を総結集した取り組みが求められます。わが党は、政府に対して「放射能汚染水の危機打開のための緊急提言」にそくした抜本的対応を要求します。国会に、日本の科学者、技術者、産業界の英知を総結集する場をしかるべき形でつくることを提起し、この問題の解決のために力をつくす決意であります。

 原発被害は、3年近くたった今、深刻さを増しています。福島では約14万人もの方々が避難を強いられ、震災関連で亡くなった方が、地震・津波の直接被害で亡くなった方を上回るなど、先の見えないつらい生活のなかで、命と健康が脅かされています。

 政府は、昨年12月20日、福島の「復興指針」を決定しましたが、それは、(1)被害者である住民と自治体に、上からの線引きで格差を持ち込み、分断と幕引きをはかるとともに、(2)加害者である東京電力は、国民の税金と電気料金によって救済するというものになっています。被災地の自治体首長からも、「地域の分断を招く」、「支援策を差別するべきではない」との懸念と批判があいついでいます。

 原発事故の被災者支援にあたっては、被災者を分断する一切の線引きや排除、「期限切れ」を「理由」にした切り捨てをおこなわず、事故前にどこに住んでいたかにかかわらず、避難している人もしていない人も、故郷に戻りたい人も戻れない人も、すべての被災者が生活と生業を再建できるまで、国と東京電力が責任をもって等しく支援することを、大原則にすえよ――日本共産党は、このことを強く要求してたたかうものであります。(拍手)

「原発ゼロ」をめざすかつてない創意的・画期的な運動の発展を

 この間、「原発ゼロ」をめざす運動が、大きく広がっています。2012年3月に始まった首相官邸前の毎週金曜日の抗議行動が全国に広がるとともに、節々で、東京と全国各地で大規模な集会がもたれています。この運動は、日本の国民運動史上でもかつてない創意的で画期的な運動であります。この運動の力こそが、国民世論を変え、原発推進勢力への大きな圧力となり、再稼働への動きを押しとどめ、稼働原発ゼロという状況をつくりだしていることに、大いに確信をもとうではありませんか。

 日本共産党は、この運動に固く連帯し、圧倒的な「原発ゼロ」を求める国民世論によって、原発推進勢力を包囲・孤立させ、「原発ゼロの日本」への道を開くために、全力をあげて奮闘するものであります。(拍手)

「アメリカいいなり」をやめ、独立・平和の日本を――二つのたたかいの焦点

 決議案第16項は、「アメリカいいなり」をやめ、独立・平和の日本をめざすたたかいについてのべています。

沖縄新基地建設問題――「沖縄は屈しない」という決意に全国が応えよう

 決議案発表以降、沖縄基地問題をめぐって重大な事態が進展しました。安倍政権は、強圧をもって、沖縄県選出の自民党国会議員と自民党県連に、「県外移設」の公約を撤回させ、新基地建設容認に転じさせました。さらに、沖縄振興策など「札束」の力で、仲井真(なかいま)知事に圧力をかけ続け、新基地建設のための埋め立てを承認させました。

 裏切った者の責任はもとより重大ですが、裏切らせた安倍政権の責任はさらに重いものがあります。アメとムチによって、自分たちの仲間に「嘘(うそ)つきになれ」とけしかけ、「嘘つき」にさせた。これは、民主主義の国では決してあってはならない暴政であり、断じて許すわけにいきません。(拍手)

 しかし、沖縄県民は、この背信と欺瞞(ぎまん)を、冷静かつ毅然(きぜん)と受け止めています。地元紙の緊急調査では、自民党県連と知事に圧力をかけ、公約を撤回させた安倍政権の対応にたいして、7割を超える県民が「納得できない」と答えています。「普天間基地の解決方法は」という問いに対しては、「県外・国外・無条件撤去」が73・5%を占め、「辺野古(へのこ)移設」はわずかに15・9%にすぎません。「辺野古移設反対、普天間基地閉鎖・撤去」という「オール沖縄」の声は、強圧や背信によって揺らぐものでは決してありません。知事による埋め立て承認は、手続き面での一段階にすぎず、7割の県民が反対している辺野古移設が易々(やすやす)とすすむものではありません。

 戦後、沖縄は、米軍によって、また日米両政府によって、常に分断工作にさらされてきました。しかし、沖縄の意思が一つにまとまったときには、どのような強圧をもはねかえして、歴史を前にすすめることができる。そのことは、島ぐるみのたたかいで勝ち取った本土復帰が証明しているではありませんか。さらに、この17年間、辺野古の美しい海に杭(くい)一本も打ち込ませてこなかったのも、島ぐるみのたたかいの成果ではありませんか。(拍手)

 この間、オリバー・ストーン氏をはじめ米国を中心とする海外の著名な有識者や文化人など29人が「声明」を発表し、「私たちは沖縄県内の新基地建設に反対し、平和と尊厳、人権と環境保護のためにたたかう沖縄の人々を支持します」と表明しました。「声明」では、沖縄の現状を「軍事植民地状態」と指弾するとともに、普天間基地は、もともと米軍の無法な土地強奪のうえにつくられたものであり、「返還に条件がつくことは本来的に許されないことなのです」と、その無条件撤去を求めています。これは、沖縄県民のたたかいが、世界の大義に立ったものであることを、示すものにほかなりません。世界の良識によって追いつめられているのは、日米両政府なのであります。(拍手)

 「沖縄は屈しない」――沖縄県民のこの決意に、全国が応えようではありませんか(拍手)。日本共産党は、辺野古への新基地建設に断固反対するとともに、普天間基地の無条件撤去を強く求めてたたかいぬきます。

 最終盤のたたかいを迎えている名護市長選挙での稲嶺ススム市長の勝利のために、全国のみなさんの支援を集中することを心から訴えるものです。(拍手)

 みなさん。沖縄と本土の連帯したたたかいを大きく発展させ、「基地のない沖縄」「基地のない日本」をたたかいとろうではありませんか。(拍手)

「公約を守る」というならTPP交渉から即時撤退を

 昨年12月に開かれたTPP閣僚会合では、交渉が合意に至らず、「年内妥結」どころか大筋の合意さえ発表することができず、再度、交渉をおこなうことになりました。関税をはじめ、知的財産権、国有企業などの各分野の各国の主張は対立したままに終わりました。予断は許しませんが、TPP交渉全体の矛盾が深まっています。

 安倍政権は、「農産物の重要5項目を聖域とする」という自らの公約にも背き、重要5項目の一部を関税撤廃の対象とするという譲歩を始めました。しかし、それに対するアメリカの回答は、「全品目、100%の関税撤廃」というものでした。安倍政権は、日本には一定の農産物の重要品目があることを、昨年2月の日米首脳会談でオバマ大統領が認めたと説明して、TPP交渉に参加しました。しかし、それは「空約束」だった。「例外なき関税撤廃」こそがTPPの真実だということが明瞭になったのであります。

 秘密交渉で、この真相を隠したまま、日本の将来を犠牲にした譲歩という結論を問答無用で押しつけるなど、絶対にあってはなりません。安倍政権が「公約を守る」というなら、TPP交渉からただちに撤退すべきであります。(拍手)

 日本共産党は、TPP反対の一点での国民的共同を広げるために最後まで力をつくすとともに、食料主権、経済主権の相互尊重に立った、平等・互恵の経済関係を発展させるために奮闘するものであります。

日米安保条約廃棄の国民的多数派を

 決議案は、日米安保条約廃棄の国民的多数派をつくりあげていくことの、独自の取り組みの重要性について強調しています。

 発効から62年を経て、この条約を背骨とした「異常なアメリカいいなりの政治」は、あらゆる分野で行き詰まりを深め、国民との矛盾が噴き出しています。沖縄をはじめ米軍基地問題の矛盾は限界点を超えています。安保条約は日本国憲法といよいよ両立しえなくなっています。TPPなど日本の経済主権を根底から損なう危機に直面しています。

 直面する熱い問題で、一致点にもとづく共同をそれぞれ発展させながら、根源にある日米安保条約の是非を国民的に問うべき時期がきています。いまこそ、「日米安保条約をこのまま続けていいのか」を問う国民的議論を起こそうではありませんか。「外交ビジョン」で示した「安保条約をなくしたらどういう展望が開かれるか」を、広範な国民のなかで大いに語り広げようではありませんか。(拍手)

“戦争する国づくり、暗黒日本への道”を許さない国民的共同をよびかける

 決議案第18項は、憲法改定、「海外で戦争する国」づくりを許さないたたかいをよびかけています。

 安倍政権は、昨年の臨時国会で、外交・安保政策の「司令塔」となる国家安全保障会議(日本版NSC)法と秘密保護法を強行し、それに続いて、「国家安全保障戦略」、新「防衛計画の大綱」、新「中期防衛力整備計画」を閣議決定しました。

 これらの一連の動きから浮かび上がってくる「海外で戦争する国」づくりの野望は、次の三つの柱からなっています。

 第一の柱は、憲法9条を改変して、これまでの海外派兵立法の「歯止め」をとりはずし、自衛隊が戦闘地域まで行って、米軍とともに戦争行動ができるようにすることであります。安倍政権は、「国家安全保障戦略」の基本理念として「積極的平和主義」なるものをすえました。その内容は、明示こそされていませんが、集団的自衛権行使をはじめ、憲法9条の破壊を志向していることは、これまでの首相の発言から明らかであります。まず、解釈改憲によって集団的自衛権行使の容認に踏み出し、それを明記した「国家安全保障基本法案」を成立させる。さらに、明文改憲によって、憲法9条そのものを葬り去る。これが、安倍政権が描く「改憲スケジュール」にほかなりません。

 第二の柱は、自衛隊のあり方を、これまでの「専守防衛」という建前すら投げ捨てて、海外派兵の軍隊へと大改造することであります。新「防衛計画の大綱」では、「統合機動防衛力の構築」――陸海空自衛隊が海外に迅速かつ持続的に展開できる能力を構築することを強調しています。オスプレイ、水陸両用車、無人偵察機、新型空中給油機などを新たに導入するとともに、米海兵隊のような「殴り込み」作戦をおこなう「水陸機動団」を編成するとしています。そのために5年間で24兆6700億円の軍事費を投入する大軍拡に打って出ようとしています。「武器輸出三原則」を放棄し、戦後、武器を輸出しなかったことで果たしてきた積極的役割や国際的信頼を自ら傷つけ、投げ捨てようとしています。

 第三の柱は、「海外での戦争」に国民を動員するための仕組みをつくることであります。秘密保護法は、その重大な一歩です。それは、国民の「知る権利」を奪い、基本的人権を蹂躙する弾圧立法であるとともに、国民の目・耳・口をふさいで「海外で戦争する国」をつくる戦時立法でもあります。さらに、安倍政権は、実際の犯罪行為がなくても、「2人以上で話し合った」だけで処罰する共謀罪の新設を狙っています。改悪教育基本法にそって、子どもたちに「愛国心」を強要する教科書検定基準の改悪、「愛国心」をABCと評価する道徳の教科化、教育内容への権力的介入をすすめるための教育委員会制度の廃止など、一連の教育制度改悪がくわだてられていることも重大であります。

 これが、安倍政権の狙う「海外で戦争する国」づくりの恐るべき野望であります。しかし、この野望が簡単にすすむと考えたら、大きな間違いであります。その一歩一歩が、広大な国民の激しい怒りをよびおこさざるをえないでしょう。そのことは、秘密保護法に反対する世論と運動が、これまでにない広範な人々をとらえて、ごく短期間に日本列島に燃え広がったことにも示されました。それは、日本国民の中の平和と民主主義を求めるエネルギーがいかに深く、広いものであるかを示すものとなりました。

 日本共産党第26回大会の名で呼びかけたい。

 “戦争する国づくり、暗黒日本への道”を拒否する、日本の理性と良識を総結集しようではありませんか。(拍手)

 憲法9条を改変し、「海外で戦争する国」をつくるいっさいの動きに反対し、憲法を守り生かすたたかいを発展させましょう。(拍手)

 自衛隊を海外派兵の軍隊へと大改造する軍拡計画をやめさせましょう。(拍手)

 秘密保護法を廃止・撤廃し、共謀罪の新設を許さないたたかいを発展させましょう(拍手)。「愛国心」の押しつけを拒否しましょう。(拍手)

 みなさん。それぞれの一致点での共同を広げながら、日本の理性と良識を総結集した大闘争に合流・発展させ、“戦争する国づくり、暗黒日本への道”を許さない広大な国民的共同をつくりあげようではありませんか。(拍手)

北東アジア平和協力構想――ここにこそ平和と安定への大道がある

 つぎに決議案が提唱した北東アジア平和協力構想について報告します。

 安倍政権は、中国の軍事力増強や、北朝鮮の核兵器開発などの軍事行動を、「強く懸念」「重大かつ差し迫った脅威」などとのべ、「海外で戦争する国」づくりを合理化する口実に利用しています。

 日本共産党は、中国による尖閣諸島の領海や領空への侵犯、「防空識別圏」の設定など、地域の緊張を激化させる動きに反対し、そうした行動の自制を強く求めています。問題は、どのような手段をもって、こうした事態を解決するかにあります。

安倍政権の対応の問題点――まともな外交戦略なしの軍事的対応一辺倒

 安倍政権の対応には、三つの問題点があります。

 第一は、まともな外交戦略を持ち合わせていないということです。安倍政権が、中国への対応として、昨年12月の日本・ASEAN特別首脳会議などで追求したのは、“中国包囲網”をつくろうということでした。しかし、これには賛同が得られませんでした。ASEANが追求している平和的安全保障は、軍事ブロックのように外部に仮想敵を設けず、地域のすべての国を迎え入れ、友好関係をつくるというものです。中国であれ、どの国であれ、ある国を対象として、日本とASEANで“包囲網”をつくるなどというのは、ASEANが最も避けてきた論理なのであります。安倍首相は、ASEANのすべての国ぐにを訪問したと自慢していますが、いったい何を学んできたのでしょうか。ASEANがもっとも重視している根本精神をまったく理解していないといわなければなりません。

 第二は、まともな外交関係の土台を覆す行動をとっているということです。首相の靖国神社への参拝は、中国、韓国など、近隣諸国との緊張を激化させ、地域の平和と安定への重大な逆流をつくりだしています。

 そして、第三は、軍事的対応に熱中しているということです。中国の軍事的台頭を理由に、集団的自衛権行使、自衛隊の海外派兵の軍隊への大改造など、「海外で戦争する国」づくりに熱中する。これが安倍政権がもっぱら力を入れていることであります。

 まともな外交戦略を持たないばかりか、靖国参拝という外交関係の土台を覆す行動をとり、もっぱら軍事的対応の強化に熱中する――これでは、地域の緊張をいたずらに激化させ、「軍事には軍事」という危険な軍事的緊張の拡大と悪循環に陥るだけではありませんか。

 こうした有害で危険な道ときっぱり決別することが、いま日本に強く求められていることを、私は、強調したいと思うのであります。(拍手)

北東アジアに平和と安定をもたらす最も現実的かつ抜本的な方策

 この地域の国ぐにが、経済関係、人的交流をいよいよ深化させるもとで、国と国との戦争は決して起こしてはならないし、もはや起こせないことは誰の目にも明らかです。そうであるならば、問題解決の方法は、平和的・外交的手段に徹する以外にありません。

 決議案第17項は、つぎのような目標と原則にたった、北東アジア平和協力構想を提唱しました。

 ――域内の平和のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結する。

 ――北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、これを平和と安定の枠組みに発展させる。

 ――領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ。

 ――日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる。

 これは、この地域に存在する紛争と緊張を、平和的・外交的手段によって解決する抜本的対案を示したものであります。また、この構想は、この地域に、日米、米韓の軍事同盟が存在するもとで、軍事同盟に対する立場の違いはあったとしても、一致して追求しうる緊急の提案として示したものであります。

 これは決して理想論ではありません。すでにASEAN諸国が実践している平和の地域共同の取り組みを、北東アジアでも構築しようというものであります。北東アジア規模の「友好協力条約」という提起で念頭に置いているのは、東南アジア友好協力条約(TAC)であります。領土問題の紛争をエスカレートさせない行動規範という提起で念頭に置いているのは、ASEANと中国による南シナ海行動宣言(DOC)から行動規範(COC)をめざす取り組みであります。

 昨年5月、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が、米国議会での演説で「北東アジア平和協力構想」を提起したことに続き、昨年12月、インドネシアのユドヨノ大統領が、東京での講演で、「インド・太平洋友好協力条約」の締結をよびかけ、「そのような条約は、TACがASEAN諸国に与えているのと同じ平和的変化の影響を及ぼすだろう」とのべました。これらは、わが党の提唱と重なり合うものであります。

 昨年9月、わが党代表団は、インドネシアを訪問し、ワルダナ外務副大臣と会談をおこないました。私が、「私たちは、東南アジア友好協力条約(TAC)のような紛争の平和的解決をはかる国際規範を、北東アジアでも構築するという政策ビジョンを打ち出しています」とのべますと、ワルダナ氏から、「そのようなイニシアチブを歓迎します。この点でASEANと北東アジア諸国の協力をすすめたい。ASEANの経験と教訓を北東アジアにも生かしていただきたい。TACのように、北東アジアでも平和と安定につなげてほしい」との歓迎の意が示されたことを報告しておきたいと思います。(拍手)

 私は、わが党が提唱する北東アジア平和協力構想の方向こそ、この地域に平和と安定をもたらす最も現実的かつ抜本的な方策であると確信するものです。日本共産党は、この構想をもって、国民的議論をおこし国民的合意をつくりあげるとともに、関係各国の政府や政党と広く語り合い、その実現のために奮闘する決意を表明するものです。(拍手)

統一戦線の現状と展望について

 決議案第20項は、統一戦線の現状と展望についてのべています。

 決議案では、「この数年来、原発、TPP、消費税、憲法、米軍基地など、国政の根幹にかかわる問題で、一致点にもとづく共同――『一点共闘』が大きな広がりをもって発展している」ことを、「未来ある画期的な動き」とのべ、「この動きを発展させ、日本を変える統一戦線をつくりあげていく」ことを訴えています。この問題では、決議案が示している四つの努力方向が重要であります。

「一点共闘」の発展のために誠実に力をつくす

 第一は、「一点共闘」の発展のために誠実に力をつくすことです。さまざまな分野で発展している「一点共闘」で発揮されている国民のエネルギーの深さ、広さ、大きさに確信をもつとともに、新しい質が生まれていることに注目する必要があります。

 それぞれの「一点共闘」に、従来、保守といわれてきた人々、広大な無党派の人々など、まったく新しい層、人々が自発的に参加しています。秘密保護法反対のたたかい、「原発ゼロ」を求めるたたかいに見られるように、一過性でない粘り強い持続的なたたかいになっています。さらに、それぞれの「一点共闘」が、たがいに連帯し、合流しあい、「点」から「面」をなす共闘となりつつあります。

 「一点共闘」は、日本を変える大きな可能性をもった、未来ある流れであります。みなさん、ここに深い確信をもって、その発展のために大いに力をつくそうではありませんか。(拍手)

革新懇運動の発展のために思い切って力をそそごう

 第二は、革新懇運動の発展のために思い切って力を入れるということです。

 どの「一点共闘」も、その掲げている要求を本気で実現しようとすれば、「二つの異常」を特徴とする自民党政治の根本の枠組みにつきあたらざるをえません。

 そのときに、全国で800の地域・職場・青年革新懇が草の根で活動している、革新懇運動の存在はきわめて重要となっています。革新懇運動は、草の根のレベルで、多くの課題での「一点共闘」に参加しており、「一点共闘」が互いに連帯する「要」としての役割を発揮しています。同時に、「一点共闘」が日本の政治を変える統一戦線に発展していくうえで「架け橋」としての役割を発揮しています。

 「革新懇運動では狭くなる」という意見が一部にあります。しかし、革新懇運動は、草の根から国民の要求にもとづく多彩な共同の取り組みをすすめることと、自民党政治を根本から変える「三つの共同目標」を掲げて国民的合意をつくることを、一体的に追求しているところに、その魅力の源泉があります。一つの要求でも、あるいは「共同目標」のうちの一つでも、一致するならば、それをとりあげて運動に取り組むのが革新懇運動なのであります。革新懇運動は、最も広大な国民を結集しうる運動だということを、私は、強調したいと思うのであります。

 この運動の提唱者の党として、革新懇運動の大きな発展のために思い切って力をそそぐことを、心からよびかけるものであります。(拍手)

労働運動の階級的民主的強化――二つの注目すべき変化をふまえて

 第三は、労働運動の階級的民主的強化に力をそそぐことです。この分野では、二つの注目すべき変化があります。

 一つは、連合指導部が支持を押しつけてきた民主党が、政権党として、また野党に転落してからも、悪政を推進していることに、労働者のなかから怒りと批判が広がり、公務でも、民間でも、職場段階では多くのところで特定政党の支持押しつけが、崩壊状態になっていることです。連合指導部が、特定政党支持路線と労資協調主義路線という二つの重大な弱点を克服することが、いま強く求められていることを、率直に指摘したいと思います。

 いま一つは、全労連の「内部留保を活用して賃上げを」「最低賃金の大幅引き上げを」「労働法制の規制緩和反対」などの提起が、ナショナルセンターの違いを超えた多くの労働組合の共通の要求となり、共同の条件が大きく広がっていることです。昨年12月、ナショナルセンターの違いを超えて開かれた労働法制改悪反対の集会は、新たな共同の条件の広がりを示すものとなりました。

 労働者の要求にもとづく共同行動を発展させていくうえで、全労連の果たす役割は、いよいよ大きなものとなっています。全労連は、「一致する要求での行動の統一」「資本からの独立」「政党からの独立」という3原則にもとづいて結成されており、もともとあらゆる傾向の労働組合との共同に向けて開かれているナショナルセンターです。全労連がこの民主的原則を生かして、大きく発展、飛躍し、ナショナルセンターの枠を超えた共同、国民的共同をすすめることを、私は、強く願ってやみません。

 労働者の切実な要求実現のためにも、労働者階級を統一戦線に結集していくうえでも、1949年には56%だった労働組合の組織率が、現在、18%まで落ち込んでいる事態を克服することは急務です。党と階級的・民主的労働運動が協力して、広大な未組織労働者を労働組合に結集する仕事に、知恵と力をそそいで取り組むことを訴えるものです。

政党戦線での連合の展望――日本共産党の躍進が決定的条件

 第四は、政党戦線での連合の展望についてであります。

 決議案は、「政党戦線においても、日本共産党との連合の相手が必ず出てくると、私たちは確信するものである」と表明するとともに、「そのさい、私たちの連合の対象となる相手が、従来の保守の流れも含む修正資本主義の潮流であることも、大いにありうることである」とのべました。この間のさまざまな課題での保守の人々との共同の発展は、そのことを強く予感させるものであります。

 同時に、ここで強調したいのは、このような政党戦線における前向きの変動は、待っていて訪れるものではないということです。それを起こす決定的条件となるのは、日本共産党が国民と結びつき、強大な組織力をもって発展し、国政において衆議院と参議院で数十という議席を確保することにあります。

 1960年代後半から1970年代の日本共産党の躍進は、他の野党の政治的立ち位置にも影響を与え、公明党までが、一時ではあれ、安保条約「即時廃棄」を掲げました。みなさん、日本共産党の政治的・組織的躍進こそ、政党状況に前向きの変化を促し、新しい日本への扉を開く決定的保障であることを銘記して、奮闘しようではありませんか。(拍手)

決議案第4章(国政と地方政治で躍進を本格的な流れに)について

 つぎに決議案第4章について報告します。

 第4章は、来るべき国政選挙と地方選挙で党躍進をかちとり、昨年の参議院選挙で開始された躍進を本格的な流れにするための方針を提起しています。

来るべき国政選挙の目標の積極的意義をつかみ必ず達成しよう

 決議案第21項では、来るべき国政選挙――衆議院選挙および参議院選挙の目標についてつぎのようにのべています。

全党の猛奮闘なしには実現できない目標であることを銘記してのぞもう

 「次期総選挙、および参院選では、『比例を軸に』をつらぬき、『全国は一つ』の立場で奮闘し、比例代表選挙で『650万、得票率10%以上』を目標にたたかう」。

 全党討論のなかで、一部から「もっと高い目標を設定してはどうか」という意見も出されました。しかし、決議案でものべているように、わが党は、2013年の参院選で、得票率は9・7%とほぼ10%に到達しましたが、得票は、低投票率のもとで515万であります。また、8中総決定でも確認したように、この結果自身が、「私たちの実力以上の結果」であり、515万という峰は決して既得の陣地ではありません。得票を515万から650万以上に伸ばすことは、全党の猛奮闘なしには実現できないことを、まず銘記してのぞみたいと思います。

民主連合政府樹立への展望を開く、大志ある積極的な目標

 同時に、この目標は、開始された“第3の躍進”を本格的な流れにし、「21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立する」展望を開く、大志ある積極的な目標であることを、強調したいと思います。

 「650万、10%以上」を獲得すれば、どのような展望が開かれるでしょうか。

 「515万、9・7%」を獲得した先の参院選の結果を、衆院選の比例ブロック別にあてはめて試算しますと、北海道1議席、東北1議席、東京3議席、北関東2議席、南関東2議席、北陸信越1議席、東海2議席、近畿3議席、中国1議席、九州沖縄1議席で、合計17議席となります。四国はあと1万5千票上乗せすれば1議席、九州沖縄はあと6万票上乗せすれば2議席となります。小選挙区ごとにみても、第2党の地位を獲得した選挙区が13あり、小選挙区でも議席を獲得する可能性が開かれます。

 全党的に「650万、10%以上」の目標を達成するならば、この段階からさらにすすみ、衆議院選挙では、「すべての比例ブロックで議席獲得・議席増をかちとり、小選挙区でも議席を獲得する」という目標を達成する可能性が大きく開けてきます。参議院選挙でも、昨年の選挙で獲得した比例代表5議席、選挙区3議席にくわえて、比例でも選挙区でも新しい議席を獲得する可能性が生まれてきます。

 みなさん。衆院選、参院選ともに、この目標を必ず達成し、来るべき国政選挙で、“第3の躍進”を本格的な流れに発展させていこうではありませんか(拍手)。中期的展望にたった「成長・発展目標」――どの都道府県、どの自治体・行政区でも「10%以上の得票率」を獲得できる党へと接近し、「21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立する」という目標への展望を開く選挙にしていこうではありませんか。(拍手)

いっせい地方選挙での躍進の意義と、たたかいの方針について

 決議案第22項は、地方政治をめぐる政治的な焦点と地方選挙での躍進をめざす方針を提起しています。

“第3の躍進”を地方選挙へと押し広げ、国政選挙躍進の突破口を開こう

 2015年4月におこなわれるいっせい地方選挙は、国政に重大な異変が起こらない限り、私たちが直面する最も早い全国的政治戦となります。

 決議案がのべているように、「この選挙に勝利することができるかどうかは、それぞれの地方自治体の今後を左右するだけでなく、わが党にとって“第3の躍進”を本格的な流れにするうえで重大な関門」となります。

 連続してたたかわれる国政選挙を展望しても、地方議会での議席占有率を高めることは、国政選挙での躍進の確実な土台をつくるものとなります。昨年の参議院選挙で、選挙区で議席を獲得した東京、京都、大阪で、地方議員の議席占有率が、京都が全国第1位(18・09%)、大阪が全国第2位(13・83%)、東京が全国第3位(13・47%)だったことは、地方自治体で住民と結びついた議員団を持つことが、国政選挙でもどんなに大きな力となるかを、はっきりと示しています。

 わが党は現在、県議、政令市議とも第4党ですが、各都道府県の報告を合計しますと、道府県議で前回当選80から159以上に、政令市議で前回当選104から160以上に挑む、意欲的な目標を掲げています。

 みなさん。いっせい地方選挙で、これらの目標を必ず達成し、“第3の躍進”を地方選挙へと押し広げ、「地方議会第1党を奪回」し、引き続く国政選挙での躍進の突破口を開こうではありませんか。(拍手)

いっせい地方選挙の躍進を、党活動の前面にすえて奮闘しよう

 1年3カ月後に迫ったいっせい地方選挙で躍進をかちとることを、党活動の前面にすえ、以下の諸点に留意した取り組みをただちに開始することを訴えます。

 第一に、予定候補者のすみやかな決定は、勝敗を大きく左右します。どんなに遅くとも選挙1年前の3月中に予定候補者を決めるとともに、予定候補者を先頭に選挙をたたかう態勢をつくりあげます。

 第二に、政策論戦では、それぞれの地方政治の問題とともに、国政の問題を大争点にしてたたかいます。安倍政権による、暮らし、平和、民主主義破壊の数々の暴走に対して、国民が審判を下す最初の全国的政治戦としていくことが大切であります。

 第三に、すべての党組織と党支部が、「650万、10%以上」にみあう得票目標、支持拡大目標をもって活動します。地方選挙の選挙区定数との関係で必要な場合には、得票目標を引き上げて、必勝のための取り組みをすすめます。

 第四に、選挙活動の方針としては、決議案第23項が示している、党員と党組織のもつあらゆる結びつき、つながりを生かして選挙勝利に結実させる「選挙革命」というべき活動方向を、全面的に実践します。期限の決まった選挙であり、1年前、半年前、3カ月前など、活動の節を区切って、計画的・日常的に着実に選挙準備をすすめます。

 第五に、いっせい地方選挙の前半戦(道府県議選、政令市議選)と後半戦(市区町村議選)の双方で勝利をかちとるための独自の努力をはらいます。前回の選挙では、前半戦では県議の議席を獲得したが、後半戦の市議選の独自準備をおろそかにして議席を失ったところや、県議選の独自活動が弱く「市議選に上乗せ」するなどの取り組みとなり県議で惜敗する失敗がありました。前半戦と後半戦を、「同時に、独自に、相乗的に」の見地でたたかいぬきます。そのさい、自治体合併後、2回、3回目の選挙戦となるところは、様相の変化を的確にとらえた取り組みの強化をはかることが必要であります。

 第六に、自治体合併による選挙時期の分散によって、中間地方選挙の比重が高まり、全体の約6割におよびます。党大会からいっせい地方選挙の前までに、茨城県議会選挙、173市、160町村で中間選挙がたたかわれます。これらの中間選挙の一つひとつで議席の確保と拡大をはかり、得票を増やし、躍進の流れをつくりだすことに力をつくします。

 第七に、首長選挙を、日本共産党と無党派の人々との共同を強め、革新・民主の自治体の流れを発展させるために、積極的に位置づけ、攻勢的な取り組みをすすめます。大阪市長選、堺市長選の教訓をふまえ、可能な条件が生まれた場合には、反動的潮流を打ち破るために、党派の違いを超えた共同を追求します。

 2月9日投票の東京都知事選挙は、都政の今後が問われるとともに、安倍政権の暴走への都民的審判が問われる選挙となります。日本共産党は、「希望のまち東京をつくる会」の宇都宮けんじ氏を推薦し、政策で一致する政党、団体、個人の共同の一員として、勝利のために全力をあげて奮闘するものであります。(拍手)

決議案第5章(躍進を支える質量ともに強大な党建設を)について

 つぎに決議案第5章について報告します。

 第5章は、党の躍進を支える決定的な条件となる質量ともに強大な党建設を推進する方針を提起しています。

4年間(第25回党大会期)の党建設の取り組みと、今後の方向について

 まず、この4年間――第25回党大会期の党建設の取り組みについて報告します。

全党の努力によって、一連の重要な成果がつくられてきた

 私たちは、この4年間、第25回党大会決定にもとづき、また2010年の参院選を総括した同年9月の2中総決定で、「党の自力の問題」にこそ、わが党の最大の弱点があることを深く明らかにし、強く大きな党づくりに一貫して力を注いできました。

 党建設の根幹である党員拡大で、「党創立90周年・党勢拡大大運動」、「第26回党大会成功・党勢拡大大運動」などに取り組み、今党大会期、新入党員は3万7千人を超え、党員を迎えた支部は全国的に5割を超えました。これは、90年代以降の党大会期の取り組みとしては、最も高い水準であります。多数の支部で新入党員を迎えたことが、支部に新鮮な活力をもたらし、活動を豊かに発展させ、参院選の躍進に実をむすびました。これは、多くの党組織、党支部で共通の確信となっていることではないでしょうか。

 大会の名において、この間、新しく党の一員となったすべての仲間のみなさんに、心からの歓迎のメッセージを送るものです。(拍手)

 この大会期の大事業として、1年余にわたって党内通信を活用した「綱領・古典の連続教室」に取り組み、約2万8千人が受講するという党史上でも空前の規模の学習運動となりました。この運動は、全党に大きな知的・理論的活力をよびおこし、困難を抱えていた支部が見違えるように変化するなど、大きな力を発揮しています。「連続教室」は、その後、DVD視聴による学習として発展し、さらにそれぞれが全3巻の書籍になるもとで、新たな学習の広がりを見せています。

 第24回党大会決定にもとづいて、第25回党大会期も継続的に取り組まれてきた「特別党学校」、「職場講座」も力を発揮しつつあります。「特別党学校」の参加者が、職業革命家としての自覚を深めて成長し、各級機関の幹部や新しい議員・候補者となり、参院選を「若者が輝く選挙」としてたたかうことができたことも、特筆に値する成果であります。

 全党の努力によって、これらの一連の重要な成果がつくられたことを、まず確信をもってつかむことを訴えるものであります。

「第26回党大会成功・党勢拡大大運動」の到達点について

 党大会にむけて、全党は、昨年9月の8中総決定がよびかけた「第26回党大会成功・党勢拡大大運動」に取り組んできました。

 全党の努力によって、「大運動」の4カ月通算で、昨日までに、新入党員は5300人を超えました(拍手)。奈良県・奈良地区委員会につづき、福岡県・嘉飯地区委員会、福岡県・直鞍地区委員会、福岡県・田川地区委員会、福岡県・東博多地区委員会、あわせて五つの地区委員会が、「大運動」目標を達成して大会を迎えました(拍手)。奮闘をたたえたいと思います。(拍手)

 「しんぶん赤旗」読者の拡大は、昨年の10月、11月、12月と3カ月連続で前進し、日刊紙2400人、日曜版1万人、あわせて1万2400人の増加となりました。岩手県の宮古地区委員会が日刊紙・日曜版の双方で、さらに11地区が日刊紙あるいは日曜版のどちらかで前大会水準を回復・突破しています。(拍手)

 私は、全党の同志のみなさんの奮闘に心から敬意を表するとともに、後援会のみなさんのご協力に感謝を申し上げるものであります。(拍手)

 「大運動」の取り組みの最大の教訓は、参議院選挙での日本共産党の躍進、安倍政権の暴走と「自共対決」の様相が鮮明になるもとで、党への新しい期待が広がり、こうした情勢の前向きの変化をとらえて、そこに思い切って働きかけるならば、これまでにない広範な人々が入党し、読者になってくれる状況が広がっているということにあります。

党勢の現状について――党大会としての二つの呼びかけ

 同時に、党勢の現状は、情勢がもとめる水準にてらして、大きな立ち遅れがあることを、私たちは直視しなくてはなりません。

 党員については、拡大のための努力が重ねられてきましたが、2中総決定が呼びかけた「実態のない党員」問題の解決に取り組んだ結果、1月1日の党員現勢は、約30万5千人となっています。「実態のない党員」問題を解決したことは、全党員が参加する党をつくろうという新たな意欲と機運をよびおこしています。同時に、「実態のない党員」を生み出した原因は、十数年におよぶ「二大政党づくり」など日本共産党抑え込みという客観的条件の困難だけに解消できるものではありません。それは、「支部を主役」にすべての党員が参加し成長する党づくりに弱点があることを示すものといわなければなりません。「二度と『実態のない党員』をつくらない」決意で、革命政党らしい支部づくり、“温かい党”づくりへの努力を強めることを訴えるものであります。

 「しんぶん赤旗」の読者については、日刊紙読者の拡大に特別の努力を注ぎながら、毎月、粘り強い取り組みがすすめられていますが、現在、日刊紙、日曜版読者をあわせて124万1千人となっています。前党大会比で日刊紙87・5%、日曜版85・0%の到達であります。配達・集金体制の確立の努力の強化が、どこでも大切な課題となっています。

 このように党勢の現状は、さまざまな努力が積み重ねられているものの、依然として党活動のなかでの「最大の弱点」となっているといわなければなりません。

 こうした現状をふまえて、第26回党大会として、全党の同志のみなさんに、つぎの二つの点を強く訴えるものであります。

 第一は、「第26回党大会成功・党勢拡大大運動」の目標総達成のために、最後まで力をつくすということであります。いま取り組んでいる「大運動」の期日は1月末までです。党員拡大、読者拡大の党大会時の到達は、1月末時点の到達が記録されます。全党のみなさん、この党大会に呼応し、また党大会を一大跳躍台として、さらに運動を発展させ、目標総達成に正面から挑戦しようではありませんか。(拍手)

 第二は、「大運動」は1月末までの期日を区切った運動です。“会期延長”はいたしません(笑い)。同時に、この党勢拡大運動を、2月以降、持続的に発展させることができるかどうかが、きわめて重要だということであります。もともと、「大運動」は、8中総決定が提起したように、綱領実現――民主連合政府樹立をめざす「成長・発展目標」を支える強大な党をつくることを展望して、「支部が主役」で日常不断に党勢拡大に取り組む気風を、全党に定着させることを、最も重要な目的にすえた運動であります。全党が苦労に苦労を重ねて「大運動」でつくりだしてきた、党員拡大を中心にすえた党勢拡大の前進の流れを、絶対に中断したり、後退させたりすることなく、2月以降も、持続的に発展させていくために、知恵と力をつくすことを、私は、心から呼びかけるものであります。(拍手)

前進している地区委員会の経験に学ぶ――「成長・発展目標」、「支部が主役」

 決議案第24項は、2010年代の党建設の目標として、次の二大目標を提起しました。

 第一は、「『成長・発展目標』を実現するために、50万の党員(有権者比0・5%)、50万の日刊紙読者(同)、200万の日曜版読者(2・0%)――全体として現在の党勢の倍加に挑戦する」ことであります。

 第二は、「党の世代的継承を、綱領実現の成否にかかわる戦略的課題にすえ、全党あげて取り組む」ことであります。

 さらに、決議案第25項は、「党建設の重視すべき基本方向について」、五つの諸点を提起しました。

 この提起をいかにしてやりとげていくか。

 中央委員会として、第25回党大会期を通じて、党員拡大を根幹にすえ、党建設で前進しているいくつかの地区委員会の聞き取りをおこないました。そこには、中央をはじめ、全党が学ぶべき豊かな教訓があります。

「成長・発展目標」実現が生きた自覚的目標となり、大志とロマンある活動になっている

 一つは、「成長・発展目標」の実現が党活動の生きた自覚的目標となり、大志とロマンある活動になっていることであります。

 この大会期に9割近い支部で新入党員を迎えている北海道・十勝地区委員会からは、次のような報告が寄せられました。

 「第25回党大会で『成長・発展目標』が提起された時に、“民主連合政府が日程にのぼってくる時に、わが地区はどういう位置にあるのか、責任が果たせるのか”、“いつまでも国政選挙で得票率6%程度という水準を突破するには、全自治体で有権者比1%の党を何としてもつくろう”と議論し、日常不断に努力してきました。地方選挙で失敗したのは、党員拡大をおこたり、後継者をつくってこなかったからだと反省し、いやがられても、きらわれても(笑い)、――本当にきらわれたわけではないと思います(笑い)――、党員拡大に力をつくしてきました。その結果、参院選で、党員拡大が力となり、10%以上の得票率を勝ち取り、みんなの確信になっています」。

 この党大会期に8割を超える支部で新入党員を迎えている熊本県・北部地区委員会からは、次のような報告が寄せられました。

 「第25回党大会以来『成長・発展目標』を握って離さず追求してきました。2010年代を党躍進の時代にするには、遅れた党組織から脱却することが必要であり、党員も読者も現在の党勢を倍加しても届きません。選挙があろうが、何があろうが、地区の方針は、『成長・発展目標』を基本にすえ、絶対に目標を棚上げせず、機関の会議でも支部にも率直に目標を提起して論議してきました。いまでは8割を超える支部が党勢拡大目標を決めて活動するようになっています」。

 双方とも「成長・発展目標」をすえたことが、大きな力となっています。

「支部が主役」で「政策と計画」を持ち、みんなが参加する党活動をつくっている

 二つは、「支部が主役」の自覚的で楽しい活動――「政策と計画」を持ち、支部会議を開催し、支部長と支部指導部を確立し、みんなが参加する党活動をつくるために、一貫した努力をしていることであります。

 この大会期に6割を超える支部で新入党員を迎えている京都府・伏見地区委員会からは、次のような報告が寄せられました。

 「2011年のいっせい地方選挙での大失敗を真剣に総括しましたが、根底には支部の自覚的活動の弱まりという問題がありました。地区委員長として悟りを開く気持ちで決意したことは、支部本来の力に依拠し、党建設も『支部が主役』に徹し、支部会議を軸に、『みんなが活動する支部活動』をどうつくるか、そのためにカギとなるのは自覚的活動の指針となる『政策と計画』をもって活動する援助だと決意しました。支部がまわりの人々の願いや要求をしっかりつかみ、その実現のための活動ができるよう、地区が常に心を砕き、経験交流会も開く、支部長との相談にものる。こうした努力が喜ばれ、実ってきて、いまではほぼ全支部が『政策と計画』をもって活動しています。それが有権者の信頼を高め、国政選挙でも、党勢拡大でも前進の力になっています」。

 2000年の第22回党大会で改定された党規約は、第40条第2項で「支部の任務」の一つをつぎのように明記しています。

 「その職場、地域、学園で多数者の支持をえることを長期的な任務とし、その立場から、要求にこたえる政策および党勢拡大の目標と計画をたて、自覚的な活動にとりくむ」。

 「成長・発展目標」を、「その職場、地域、学園で多数者の支持をえる」という「長期的な任務」にたった生きた自覚的目標として常に追求し、「支部が主役」で「政策と計画」をもった自覚的な活動を広げていく――このことを根本方針にすえることにこそ、強く大きな党づくりへの大道があることを、すすんだ地区委員会の経験は教えています。

 この教訓に学び、2010年代に党勢の倍加をかちとる――50万の党員、50万の日刊紙読者、200万の日曜版読者を築くという大目標に、全党が挑戦しようではありませんか。(拍手)

党の世代的継承――「新しい条件と可能性」に働きかけるとりくみを

 いま一つの大目標は、党の世代的継承の問題であります。

 決議案第26項は、「すべての党機関、支部・グループ、議員団が、世代的継承のための目標と計画を具体化し、この取り組みを軌道にのせることを、2010年代を民主連合政府への展望を開く時代とするうえでの戦略的大事業として位置づけて力をつくす」ことをよびかけました。そのさい、職場でも、青年・学生のなかでも、「新しい前進をつくりうる条件と可能性が生まれていることをとらえた、積極果敢な活動」を訴えました。

 全国の経験を見ても、「新しい条件と可能性」に着目し、それに働きかけたところで、重要な前進がつくりだされています。

職場での党づくり――「いい仕事がしたい」という根本的要求を重視して

 職場での党づくりでは、決議案が指摘しているように、全国各地の職場で、雇用・労働条件改善などの要求とともに、「社会に役立つ、いい仕事がしたい」という労働者の根本的要求を重視して人間的信頼関係を築き、党に迎え入れている経験が広がっていることは、たいへん重要であります。

 教職員の職場で多くの入党者を迎えているところに共通しているのは、入党者が、「子どもを大切にするすてきな先生だなと思う先生は党員だった。子どものいいところも悪いところも全部温かく見ているのが素晴らしいとあこがれ、しっかりした考えをもって“ぶれない”共産党の仲間に入れてもらえたらと思うようになりました」と語るように、党員教師が、教師として信頼され、尊敬されていることが大きな力となっています。

 自治体の職場でも、青年をはじめ多くの新入党員を迎えているところでは、党の自治体労働者論の立場で、労働者の生活と権利を守り、住民の福祉と暮らしのために献身する労働組合運動の発展のために頑張る姿が、職種の違いを超えて労働者の厚い信頼を集め、「住民のために一生懸命に活動する党員の姿にあこがれ、尊敬の念をもっていた」などの思いで入党しています。

 この大会期に5人の入党者を迎えているある民間大企業の職場では、職場の労働者と結びつくうえで、「仕事でつながり、仕事で信頼されることが一番大事」をモットーに努力しています。ある党員は、「難しい仕事は○○さんに」と職場でいわれるほど技能が高く評価され、大臣表彰まで受けています。そんななかで、「臨時で入社したが、党員の方が正社員採用試験のために勉強など支援してくれた」と党に信頼を寄せて青年が入党しました。この経験から、党支部・党員が厚い信頼を得ていることが確信になり、党員拡大がすすみました。

 教職員の職場でも、自治体の職場でも、民間大企業の職場でも、「競争と分断」による職場支配で、労働者がバラバラにされるなか、日本共産党員が仲間を大切にし、自らの仕事に誇りをもって頑張っている姿が、若い労働者に共感と信頼を広げ、入党につながっています。長期にわたって職場支部の灯を守り、不屈にたたかってきた多くの労働者党員は、生き方、仕事、人間性について信頼を得ています。ここに確信をもち、職場での党づくりの本格的な前進のために力をつくそうではありませんか。(拍手)

青年・学生のなかでの党づくり――党をあげた系統的なとりくみを

 青年・学生のなかでの党づくりでは、若い世代のなかでおこっている前向きの変化に着目して、党をあげた系統的なとりくみをおこなうという姿勢が大切であります。

 千葉県は、若い世代のなかでの前向きの変化に働きかける系統的なとりくみで、この間、学生党員を倍加、学生党支部と民青同盟学生班を2倍以上にし、民青同盟高校生班を3倍にするなど、前進にふみだしています。

 その教訓の一つは、青年の思い、願いにこたえた、多面的なとりくみをおこなっていることであります。高校生に学ぶ楽しさを伝える「無料塾」のとりくみ、各地での「青年トーク集会」のとりくみ、被災地ボランティアのとりくみなどをつうじて、若い世代との結びつきが広がり、党と民青同盟の拡大につながっていきました。

 二つは、県委員会の援助のもと、地区委員会が「若い世代対策委員会」などを、機関メンバー、若手の地方議員、地域支部、職場支部、青年支部、新婦人グループなどの参加で立ち上げ、党をあげたとりくみにしていることであります。60代、70代が中心の地域支部も、「青年のことは青年がやればいい。自分たちには難しい」というところから、「自分たちのつながりのなかに青年はいる。支部のみんなで青年に働きかけよう。年配だからこその知恵もある。支部のまわりに民青班をつくろう」と大きく変化してきています。

 三つは、県委員会が、系統的なイニシアチブを発揮していることであります。毎週の常任委員会の最初の議題に青年・学生問題を位置づけ、毎回必ず担当者から報告と提案がされる。みんなも発言するようになり、知恵を出し合うようになっています。県委員長は、「青年・学生への援助は系統的にやらないと成功しません。県委員長、地区委員長の役割は大きい。一部門の活動にしたらできません」とのべています。

 千葉県の経験は、特殊な条件のもとでの特別の活動ではありません。県委員会が本腰を入れて、若い世代のなかでの活動を系統的に強化するなら、全国どこでも前進が可能であることを示しています。

 未来は青年のものであり、日本共産党こそもっとも未来ある党であります。若い世代の前向きの変化に働きかけ、その思いにこたえた多面的な活動に粘り強くとりくみながら、この分野での大きな前進を必ずかちとろうではありませんか。(拍手)

党機関の指導体制の強化――困難はあっても財政を強化して常勤者を増やそう

 決議案第27項は、党機関の指導の改善・強化、態勢の強化についてのべています。

 そのなかで、決議案は、指導機関の中核をなす常勤常任委員の減少による体制の弱体化を直視し、「党機関の常勤常任委員を都道府県委員会は7人以上、地区委員会は3人以上にすることをめざす」と提起しました。この提起に、多くの支部などから「大歓迎」との声が寄せられる一方、「地区委員会の実情から難しい」などの意見も寄せられています。

 この課題は、2010年代に党勢倍加と世代的継承という党建設の大目標を本気でやり上げようと考えたら、絶対不可欠の課題であります。たしかに困難はともないますが、正面から挑戦をはかることを訴えたいと思うのであります。

 兵庫県・神戸西地区委員会のとりくみを紹介したいと思います。この地区委員会では、財政困難や専従者の定年退職などから専従者が減り、2人になってしまった。そうしたもとで、地区常任委員会で、「このままでは将来の見通しが立たない。財政が大変だから専従者が減るのは仕方ないと考えていいのか。これでいっせい地方選挙や次期国政選挙をたたかえるのかと思うと、どうしても専従者を増やしたい。常勤常任委員は指導機関の中核、地区党の宝。あとを継げる若い専従者がほしい」と繰り返し討議してきました。そして、地区委員長を先頭に、党費納入率を5割台から8割台に前進させ、機関紙誌代、募金活動をあわせて、機関財政を安定的に黒字化してきました。現在、すでに財政的には常勤常任3・5人分を確保したとのことであります。

 「財政が大変だから常勤者が減るのは仕方ない」と考えるのか、「困難はあっても財政を強化して常勤者を増やそう」と考えるのか。ここが分かれ目だと思います。神戸西地区委員会の経験にも学び、中核となる常勤常任委員体制を強めつつ、非常勤の同志を結集して補助指導機関の確立・強化の努力を強めることを訴えるものであります。

市民道徳と社会的道義を大切にした党づくり――規律委員会報告を受けて

 一昨日おこなわれた第10回中央委員会総会は、第25回大会期の規律委員会の報告を承認しました。規律委員会の報告では、党内のごく一部ですが、社会のさまざまな退廃的風潮におかされ、社会的モラルに反する誤りをおかして、党への信頼を深く傷つけている実態があったことが、のべられました。

 決議案がのべているように、国民の党への理解や信頼は、党の路線、政策、理念への信頼とともに、身近に活動している党員の一人ひとりの生活や言動を通して寄せられます。党規約の精神にのっとり、市民道徳と社会的道義を大切にした党づくりに取り組むことは、国民の多数者を社会変革の事業に結集していくうえでも、各分野の国民運動の健全な発展のうえでも、欠くことのできない重要な仕事だということを、かさねて強調しておきたいと思います。

新しい日本を開く開拓者の党として、強く大きな党づくりに挑戦しよう

 全党の同志のみなさん。

 開始された“第3の躍進”を本格的な流れに発展させ、2010年代を民主連合政府樹立への道を開く躍進の時代にできるかどうかは、決議案が提起した2010年代の党建設の二大目標――党勢の倍加と党の世代的継承が成功するかどうかにかかっています。根本的には、ひとえにここにかかっているといっても過言ではありません。

 私たちは、新しい日本を開く開拓者の党であります。党建設の事業は、党の活動のなかでも最も大きな困難と苦労をともなう仕事です。しかし、この困難は突破のしがいがある困難であり、その苦労は最も価値ある苦労ではないでしょうか。

 みなさん。開拓者の精神をもって、強く大きな党づくりに挑戦し、この分野で必ず躍進の流れをつくりだし、民主連合政府への道を切り開こうではありませんか。(拍手)

決議案第6章(日本における未来社会の展望について)について

 最後に、決議案第6章について報告します。

 決議案第6章は、“社会主義をめざす国ぐに”をどうみるかについてのべるとともに、日本における未来社会が、きわめて豊かで壮大な展望をもっていることを明らかにしました。全体としてこの章は、全党討論で、きわめて積極的に受け止められ、歓迎されています。それを前提にして、いくつかの点について報告しておきたいと思います。

“社会主義をめざす国ぐに”という評価をめぐる疑問について

 一つは、「決議案」が、中国やベトナム、キューバについて、「これらの国ぐには、“社会主義に到達した国ぐに”ではなく、“社会主義をめざす国ぐに”――『社会主義をめざす新しい探究が開始』(綱領)された国ぐに」とのべていることについてであります。

 討論のなかで、一部から、これらの国ぐにについて、「“社会主義をめざす国ぐに”――『社会主義をめざす新しい探究が開始』(綱領)された国ぐに」とも呼べないのではないかという疑問が提起されています。

 この疑問にたいして三つの点をのべておきたいと思います。

 第一に、綱領での「社会主義をめざす新しい探究が開始された」国ぐにという評価は、私たち自身の自主的判断にもとづくものであるということです。

 私たちは、中国、ベトナムなどの現状を評価する場合に、何よりも重要になるのは、それぞれの国の指導勢力が社会主義の事業に対して真剣さ、誠実さをもっているかどうかにあると考えています。

 ただし、私たちは、中国やベトナムの国のなかに住んでいるわけではありませんから、これらの国の指導勢力の真剣さや誠実さをはかる基準としては、対外的な関係――外部にあらわれた事実を評価するしかありません。つまり、私たちが対外的にこういう国ぐにの指導勢力と接して、私たち自身が判断するしかありません。あるいは、これらの国ぐにが現実にとっている対外路線を分析して判断するしかありません。

 そういう取り組みの全体のなかで、私たちは、これらの国ぐにで「社会主義をめざす新しい探究」が開始されていると判断してきたということであります。

 第二に、同時に、私たちは、決議案でのべているように、これらの国ぐにの「社会主義をめざす新しい探究」が成功をおさめることを願いつつ、その将来について、楽観的、固定的に見ているわけでは、決してありません。

 決議案では、中国について、「社会主義という以前に、社会主義の経済的土台である発達した経済そのものを建設することに迫られているのが現状である」こと、「そこには模索もあれば、失敗や試行錯誤もありうるだろう。覇権主義や大国主義が再現される危険もありうるだろう。そうした大きな誤りを犯すなら、社会主義への道から決定的に踏み外す危険すらあるだろう」と率直に指摘しつつ、「私たちは、“社会主義をめざす国ぐに”が、旧ソ連のような致命的な誤りを、絶対に再現させないことを願っている」と表明しています。

 第三に、わが党は、これらの国ぐにが抱えている「政治上・経済上の未解決の問題」などについて、内政不干渉という原則を厳格に守りながら、いうべきことは率直に、また直接に伝えてきました。

 中国共産党に対しては、中国の政治体制の将来、「反日デモ問題」、「チベット問題」、尖閣諸島問題、「防空識別圏」の問題などについて、率直にわが党の見解を伝えてきました。

 ベトナム共産党指導部との会談でも、政治体制の問題、原発輸出の問題、TPPの問題などについて、率直にわが党の見解を伝えてきました。

 このように節度と原則を守りながら、率直に、また直接に問題点を指摘している政党は、日本でほかに存在しません。陰で「勇ましい」ことをいう党はあっても(笑い)、面と向かって堂々と問題を提起してきた党は、日本共産党しかありません。(拍手)

 ここには、日本共産党が半世紀以上にわたって貫いてきた自主独立の精神の発揮があることを、私は、強調したいと思うのであります。(拍手)

資本主義社会との対比で、未来社会がどんなに壮大な可能性を開くかを大いに語ろう

 いま一つは、日本における未来社会の展望についてであります。

 決議案は、社会主義日本の展望について、「その出発点の諸条件を考えるならば、きわめて豊かで壮大な展望が開けてくる」ことを、発達した経済力の水準が土台となること、自由と民主主義、政治体制でも日本国憲法で保障された到達点が土台になることなどを示して、大きな視野で明らかにしました。

 科学的社会主義の立場は、未来社会の詳細な設計図を示そうという「青写真主義」をとるものではありません。しかし、資本主義社会との対比で、未来社会がどんなに壮大な可能性を開くものとなるかを、大いに語っていくことはできますし、それはきわめて重要であります。

 こうした角度からの論究の一つとして、決議案が、「今日の資本主義がきわだった『浪費型の経済』――繰り返される恐慌、大量生産・大量消費・大量廃棄、金融経済の異常な肥大化など――になっている」こと、社会主義的変革によって、人間による人間の搾取を廃止するとともに、「現在の資本主義経済のこうした『浪費的な部分』は一掃されることになるだろう」と指摘していることに注目してほしいと思います。

 マルクスは、『資本論』のなかで、浪費的な性格という角度から、つぎのような資本主義に対する痛烈な批判をおこなっています。

 「資本主義的生産様式は、個々の事業所内では節約を強制するが、その無政府的な競争制度は、社会的な生産手段と労働力の際限のない浪費を生み出し、それとともに、こんにちでは不可欠であるがそれ自体としては不必要な無数の機能を生み出す」(新書版(3)906ページ、上製版Ib902ページ)。

 「資本主義的生産は、他のどの生産様式よりもずっとはなはだしく、人間、生きた労働の浪費者であり、血と肉の浪費者であるだけでなく、脳髄と神経の浪費者でもある」(新書版(8)150ページ、上製版IIIa151ページ)。

 マルクスによる「社会的な生産手段と労働力の際限のない浪費」「人間、生きた労働の浪費者、血と肉の浪費者であるだけでなく、脳髄と神経の浪費者」という資本主義批判は、長時間・過密労働、不安定雇用によって、生きた人間が使い捨てられ、健康と生命がむしばまれている、現代日本資本主義への痛烈な批判そのものになっているではありませんか。この恐るべき「人間、生きた労働の浪費」が一掃されたら、社会と経済のどんな素晴らしい発展がもたらされるか、その可能性ははかり知れないではありませんか。(拍手)

 また、マルクスが「こんにちでは不可欠であるがそれ自体としては不必要な無数の機能」という角度から、資本主義の浪費的性格の批判をおこなっていることにも注目したいと思います。決議案でのべている「大量生産・大量消費・大量廃棄」「金融経済の異常な肥大化」などは、それにあたるでしょう。

 現代の資本主義のもとでは、絶えず新しい型の商品が開発される一方で、古い型の商品の部品はなくなり、不必要に新しい商品を買うことを強制されます。資本主義に固有の利潤第一主義がもたらすこうした「大量生産・大量消費・大量廃棄」がもたらす浪費がただされたら、人間的な生活に使用される富ははるかに豊かなものになるでしょう。

 現代の世界資本主義のもとでは、「世界の金融経済」は「世界の名目GDP」(実物経済)と比較すると、3倍もの規模に膨れ上がっています。そのかなりの部分は、余剰資金として、すなわち実物経済の成長に必要のないお金として膨れ上がっていると指摘されています。余剰資金は投機マネーとなって、実物経済、実体経済を支配し、諸国民の生活に深刻な打撃をあたえています。通貨を暴落・高騰させたり、原油や穀物価格を高騰させたり、証券市場を投機市場に変えて企業にリストラ競争を強制させるなど、その破壊的影響はきわめて甚大であります。そのもたらす浪費がただされたら、ここでも諸国民の生活ははるかに豊かなものとなるでしょう。

 こうした問題も含めて、未来社会においては、現在の資本主義に固有な「浪費的部分」は一掃され、そのことによって、現在の社会的生産の規模と水準でも、日本国民すべてに「健康で文化的な最低限度の生活」を十分保障し、労働時間の抜本的な短縮を可能にすることになるでしょう。そのことが、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台となり、社会と経済の飛躍的な発展への道を開くことになるでしょう。

 みなさん。現代の資本主義社会との対比で、日本における社会主義・共産主義の未来が、どんなに壮大な可能性をもつのかを、大いに語っていこうではありませんか。(拍手)

 最後に、決議案の結びの言葉を引用して、報告を終えたいと思います。

 「発達した資本主義国から社会主義・共産主義の道に踏み出した経験を、人類はまだもっていない。この変革の事業のもつ可能性は、その出発点の諸条件を考えるならば、はかりしれない豊かさと壮大さをもつものとなるだろう。そのことに深い確信をもって、未来を展望し、前進しよう」。(拍手)

 以上をもって、中央委員会を代表しての報告を終わります。(拍手)