2012年6月4日(月)

迫る会期末、国政の重要課題にどうのぞむか

NHKインタビュー 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は3日、「NHK日曜討論」の「政府代表・各党代表に問う 迫る会期末 どうなる消費増税法案」に出演し、インタビューにこたえました。聞き手は、神志名(かしな)泰裕解説委員。


増税法案に反対の理由は

暮らしと経済、財政、社会を壊す――消費税増税の三つの害悪

 神志名解説委員 よろしくお願いします。

 志位委員長 よろしくお願いします。

 神志名 焦点の消費増税法案に共産党は反対の立場ですが、端的にいって、反対の一番の大きな理由は何ですか。

 志位 私は、三つの害悪がはっきりしたと思います。

 第一は、暮らしと経済をどん底に突き落とすという問題です。ただでさえ所得と消費が長期にわたって落ち込んでいるもとで、消費税10%をはじめ20兆円もの負担増をかぶせたら日本経済の底が抜けてしまう。

 第二は、財政危機をもっとひどくするという問題です。1997年の消費税5%への増税は大不況の引き金をひき、14年間で税収が(単年度で)90兆から76兆に14兆円も減りました。これがひどいかたちで繰り返されることになる。

 そして、第三は、貧困と格差に追い打ちをかける。いまの税率5%で、所得200万円以下の方は消費税の負担率は5・3%。それに対して2000万円以上の方は(負担率が)1・2%。消費税は、所得の少ない方に重くのしかかる最悪の不公平税制です。

 暮らしも、経済も、財政も、社会も壊すものであり、(増税法案は)廃案にしたい、と私たちは決意しております。

中小企業が転嫁できるか

日本から商店街も町工場もなくなる――痛切な声が寄せられている

 神志名 消費増税問題に関連して、中小企業が増税分を価格に転嫁できるのかどうかという問題も焦点になっていますが。

 志位 中小企業4団体が、消費税が引き上げられた場合にどうなりますかと(調査したところ)、5割から7割の中小企業が、「販売価格に転嫁できない」と答えているわけです。

 中小企業のみなさんにお話をお聞きしますと、(税率が)5%の現在でも、たとえば、自分の保険を解約する、定期預金を下ろす、家族は無給で働いてもらう、ささやかな不動産を切り売りする、つまり、身銭を切って払っているわけです。

 消費税というのは、利益にかかる税金ではなくて、売り上げにかかる税金で、赤字でも払わなければならない。ここが残酷だ(という訴えです)。

 5%でもこういう状況なのに、10%になったら、日本から商店街も町工場もなくなってしまう。こういう痛切な声が寄せられております。

 中小企業は日本の雇用の7割を支えているわけですから、これを壊すようなやり方は絶対に反対です。

財源をどうするのか

応能負担の税制改革、国民の所得を増やす経済改革で、約40兆円の新財源

 神志名 消費増税の問題、かたや財源をどうするのかがありますが、この問題にはどう答えますか。

 志位 私たちは、消費税に頼らなくても、社会保障を拡充し、財政危機を打開することができるという「提言」を示しております。(ダイジェストパンフを示して)これは(「提言」の)ダイジェスト版ですが。

 二つの柱を同時並行で進めようと(提案しています)。

 第一の柱は、ムダ遣いの一掃とともに、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革を行う。いま、サラリーマンより大金持ち、中小企業より大企業のほうが、税負担が軽いという不公平があります。これをただす必要があります。

 第二の柱は、国民の所得を増やす経済改革を行う。賃下げやリストラではなく、国民の所得を増やして、日本経済を内需主導の健全な成長の軌道に乗せる。そのことによって税の自然増収も出てきます。

 この二つの柱を同時並行でやりますと、10年後にだいたい40兆円の新たな財源がつくられる。それを社会保障と財政危機打開のためにあてようというのが私たちのプランです。

大飯原発の再稼働どうする

科学的安全性が、唯一、最大の基準――再稼働は無謀のきわみ

 神志名 政治課題のなかで、今週の動きとして大飯原発の運転再開の問題がありますが、これについては共産党はどういう考え方でのぞみますか。

 志位 私は、再稼働の是非というのは、科学的安全性が唯一、最大の基準としておかれなければならないと思います。

 その点で考えますと、第一に、福島原発事故の原因究明がなされていない。

 第二に、政府がとりあえずの30項目とした「安全対策」もやられていない。

 第三に、東日本大地震を受けて、地震と津波の学問的知見の根底からの見直しが求められていますが、この議論ははじまったばかりです。

 第四に、いざ原発事故が起こったときに、放射能がどうばらまかれるのか(が予測されておらず)、避難計画はどうするのかが、決まっておりません。

 そして、第五に、原子力に対するまともな規制機関がない。

 このもとで再稼働というのは無謀のきわみで、私は、道理のかけらもなければ、科学的知見もまったくないやり方で、やめるべきだと。「原発ゼロの日本」への政治決断を強く求めたいと思います。

どうする選挙制度

民主党は「比例80削減」の撤回を――そうすれば前向きの議論の条件が開ける

 神志名 政治課題のなかで、1票の格差是正など政治改革の問題がありますが、これについてはどういうふうにやっていきますか。

 志位 この間、選挙制度に関する各党協議会がやられてきたのですが、その到達点は、民主党をのぞくすべての政党が、小選挙区制というのは大政党有利に民意をゆがめる問題点を持つと認めたわけです。

 ところが、民主党は、その害悪をもっとひどくする「比例定数80削減」に固執している。これが各党協議を前に進める最大の障害になっていると思います。

 比例の定数削減というのは、多様な民意を国会に届かなくするわけで、私たちは絶対に認めることはできません。他の党も全部、「比例80削減」には反対しています。ですから、民主党が「比例80削減」という案を撤回する、そうすれば前向きの議論の条件が開かれてくる。

 私たちは、比例中心の民意の反映する制度に改革する、そのなかで、1票の格差の問題も抜本的に解決するという考えです。

終盤国会の対応は

民意に背く“増税大連合”許さず、院内外の力を総結集して必ず廃案に

 神志名 最後に、終盤国会と、衆議院の解散・総選挙。これにはどういうふうにのぞんでいかれますか。

 志位 国民の五十数%から60%は、どんな世論調査を見ても、消費税増税に反対と答えているわけですね。こういうもとで、民主党が自民党と一緒に“増税談合”をやって、“増税大連合”で押し通してしまおうという動きがいま起こっておりますけれども、これにはきびしく反対します。院内外の力を総結集して必ず廃案に追い込むために力をつくしたい。

総選挙にのぞむ戦略

閉塞打開する展望を、経済でも、外交でも大いに語りぬく

 志位 総選挙にのぞむ戦略としては、いま、閉塞(へいそく)状況が非常に深い状況にあります。自民党はダメだけれど、民主党もダメだと。こういう状況のもとで、批判とともに、どの分野でも(打開の)展望を示していきたい。

 いまの閉塞状況の根っこには、「アメリカいいなり、財界中心の政治」がある。これを断ち切る改革をやったら、展望が開けてくることを、経済の問題では、この「提言」では明らかにしておりますし、外交の問題でも、この間、「外交ビジョン」を提案しております。これを大いに明らかにして、躍進を期したいと考えております。