2012年3月13日(火)

社会保障充実と財政危機打開

消費税に頼らない道ここに

党「提言」各界懇談会 志位委員長語る

71団体110人が参加


 日本共産党は12日、「社会保障と財政危機打開の提言」各界懇談会を国会内で開催しました。労働、中小企業、医療・社会保障、農漁業、女性、芸術・文化など各分野から71団体、経済、社会保障の研究者を含め110人が参加し、活発に意見交換しました。志位和夫委員長は日本共産党が発表した「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」の内容を説明。参加者からは、営業と暮らしの現場の切実な要求が出され、「提言を使って消費税増税反対運動を広げたい」「百万の援軍」など共感が語られました。司会は、小池晃政策委員長が務めました。市田忠義書記局長と衆参の共産党国会議員も参加し、各界の意見を聞きました。


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(写真)「提言」を説明する志位和夫委員長

 志位氏は、野田政権の消費税大増税計画に国民の不安と怒りが広がると同時に、社会保障の財源や国と地方の財政危機をどうするかについて多くの国民が真剣に答えを求めているとのべ、日本共産党は消費税大増税に断固反対を貫くとともに、抜本的対案として「提言」を発表したと語りました。

消費税の合理化論は国民欺くウソ

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(写真)「社会保障と財政危機打開の提言」で開かれた各界懇談会=12日、参院議員会館

 志位氏は、消費税大増税を押し付けるための政府の三つの合理化論―(1)「社会保障の充実と安定化」(2)「社会保障の安定財源確保と財政健全化が同時達成」(3)「経済成長との好循環」―は「三つとも国民を欺くウソだ」と指摘しました。第一に、「社会保障の充実」をはるかに上回る切り捨てメニューを並べ、「社会保障はムダの宝庫」とあからさまな切り捨て論に立っていること。第二に、消費税を増税して経済が悪くなれば全体の税収は減り、安定財源確保にも財政健全化にもつながらないこと。第三に、家計消費にも中小企業にも大打撃を与え、政府が底なしの「大不況運動」の引き金を引くことになるということです。

 志位氏は、消費税大増税は、社会保障も財政も経済も破たんさせる道だと批判し、別の選択肢を真剣に探究する必要があると強調。国民の願いにそくして展望を開こうという立場で日本共産党の「提言」を作成したとのべ、その四つの特徴を詳しく説明しました。

第一の特徴―社会保障充実と経済改革を同時並行で

 特徴の第一は、「社会保障充実」と「民主的経済改革」を「二つの柱」とし、同時並行で進めることです。

 志位氏は、日本経済の長期にわたる低迷・後退を放置したままでは展望は開けないと指摘。国民の暮らしと権利を守るルールをつくって所得を増やす「民主的経済改革」を実行し、260兆円もの大企業の内部留保を日本経済に還流させて経済を内需主導の健全な成長の軌道に乗せることで、税収を増やし、財政危機打開の道を開くこともできると語りました。

 同時に、「社会保障の段階的な充実」は(1)将来不安を解消し消費マインドを温める(2)地域に仕事と雇用を生む―という経済効果があると強調。

 「社会保障充実」と「民主的経済改革」が相乗的に効果を発揮し、社会保障・経済・財政の3分野で一体的に問題を解決する展望が開かれるとして、「ここに『提言』の一番の眼目があります」と強調しました。また、これは財政危機の歴史的原因を踏まえた提案だと説明しました。

第二の特徴―社会保障拡充を2段階で

 第二は、社会保障拡充を2段階で進めることです。

 志位氏は、第1段階の「社会保障再生計画」で、壊された社会保障を再生し、第2段階でヨーロッパ各国では当たり前の「先進水準の社会保障」に進むという「提言」の内容を紹介。なぜ段階的改革を提案したかについて、(1)「構造改革」で壊された社会保障の甚大な傷痕をなおすこと自体が一大事業である(2)財源も段階的なアプローチが必要で、第2段階の財源を確保するための税制改革は「民主的経済改革」で国民の所得が増え続ける状態をつくりだして初めて実施できるが、それまでは一定の時間がかかる―ことをあげました。

第三の特徴―財源の考え方を「応能負担」に 

 特徴の第三は、財源の考え方を富裕層・大企業優遇から、税と社会保障の根本原則である「負担能力に応じた負担」=「応能負担」に、根本から切り替えることです。

 志位氏は、ムダ一掃とともに富裕層・大企業に応分の負担を求めるという方針は、「誰が考えても当然の道理あるものだ」と強調。国会論戦でも、所得が1億円を超えると所得税負担率が下がる事実を突きつけると政府も「結構」とは言えないこと、法人税減税が雇用や投資につながるとの説明ができないことなどを報告。大企業の応分の負担は、労働者、中小企業、国民から吸い上げた過剰な富を国民に還元せよという当然のものだと強調しました。

 また、社会保障拡充の第2段階では、消費税に頼らず、「応能負担」の原則で所得税の累進課税強化を行うと説明。「社会保障拡充のための財源の必要性を国民に率直に訴え、税制民主主義に立った財源確保の道を示すことが、『提言』全体に説得力をもたせることになると思います」と語りました。

第四の特徴―民主的な国際経済秩序を視野に

 第四は、民主的な国際経済秩序をつくるという視野に立っていることです。

 志位氏は、▽法人税の引き下げ競争を見直す国際的働きかけをする▽為替投機課税を導入する▽人間らしく働くルールをつくる▽「食料主権」を保障する貿易ルールをめざす―などの「提言」の方策について、OECD(経済協力開発機構)やILO(国際労働機関)などの提起も示して国際的な流れとなっていることを紹介し、その重要な意義を明らかにしました。

 その上で志位氏は、「世界的に求められているのは一握りの多国籍企業の無責任な活動を規制し、また一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重および各国国民の生活向上をめざす民主的な国際経済秩序です」とのべ、「提言」はそうした国際的視野に立つものだと強調しました。

 志位氏は最後に、政治姿勢を根本から変えれば、消費税に頼らなくても社会保障を充実し、財政危機を打開する「実行可能な別の道がここにある」という希望を大いに語り、消費税大増税ストップのたたかいを発展させる決意を表明しました。

活発な発言

 懇談では各界・研究者から18人が発言しました。社会保障削減への怒りや深刻な経済状況の実態が出され、消費税増税ストップに向けた決意が語られました。

 「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫(やんべゆきお)さんは「応能負担と社会保障という原則を踏まえていて、具体的で現実的だ」と評価。全労連の大黒作治議長は「2段階に分けて社会保障の充実を提案している。国民のあいだに満ちあふれているエネルギーと結んで運動を広げたい」と述べました。

 能楽協会の清水美穂子事務局長は「芸能の分野では、消費税が引き上げられた場合、チケットに転嫁できない。物事には手順がある。まずはムダの削減です。今月のうちに(法案提出)という話にはならない」と話しました。

 税経新人会全国協議会の佐伯正隆事務局長は「商店街の確定申告をしている。ある差し押さえされた業者は消費税を10年滞納して、本税は100万円程度なのに延滞税で400万円もかかっている。これが10%になると想像もできない。何としても阻止したい」と決意表明しました。

 東北大学名誉教授で、東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター代表世話人の日野秀逸さんは「やっと営業を再開できた業者に重税を課すというのでは復興どころか、意欲をなくさせる。生活と生業(なりわい)の復興を応援するものとして提言を広めていきたい」と述べました。

 このほか会場からは「日本の危機打開の提案として最高のものだ」などの声も出されました。

志位委員長閉会あいさつ

 志位氏は閉会あいさつで、「たくさんの方がたからそれぞれの分野での切実な実態を踏まえての発言をいただき、多くのことを学びました。すべてを受け止めて政策活動の発展に生かしたい」と発言しました。

 その上で党の「提言」について、野田内閣が提起している消費税増税への抜本的対案を示す性格のものとしてつくったことを説明。いま出されている増税計画に反対する一点で国民的な大同団結をつくりあげることが重要だと強調しました。

 ▽社会保障を拡充する▽国民の所得を増やす▽税制は「応能負担」を原則とする―などの基本的な方向性を共有できれば、ぜひ協力をお願いしたいと語りました。

 志位氏は、参加者の質問や意見の一つ一つに丁寧に回答。「『提言』について温かく、高い評価もいただいたことは心強い限りです」と述べ、「消費税増税を阻止する国民的運動を広げる上で、今回の『提言』が大義と展望を提供する力になることを心から願います」と語りました。