2012年1月9日(月)

アメリカ・財界中心――日本の政治の「二つの害悪」ただし、「国民が主人公」の政治を訴え、総選挙での躍進を

NHK「日曜討論」 志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長が、8日のNHK「日曜討論」各党代表インタビューでおこなった発言はつぎのとおりです。聞き手は、神志名(かしな)泰裕解説委員でした。


今年の政治は何が問われるか

閉塞打開のためには、日本の政治の「二つの害悪」からの切り替えを

 神志名 今年の政治は、どんな点が最も問われているとお考えですか。

 志位 2年半前の「政権交代」で、国民のみなさんが託したのは「自民党政治をなんとか変えてほしい」という願いだったと思うのです。ところが、3代の民主党政権で、ことごとく裏切られた。民主党は、いまや自民党とうり二つの政党になってしまっているというのが現状だと思います。

 なぜこうなったのかということを考えますと、結局、日本の政治の「二つの害悪」――アメリカいいなりと財界中心、この縛りから抜け出すことができなかったというところにあると思います。

 アメリカから、「結果を出せ」といわれますと、(米軍)普天間基地の辺野古「移設」に暴走する、TPP(環太平洋連携協定)参加に暴走する。

 それから、財界からいわれるままに、消費税増税、法人税減税、社会保障切り捨ての「一体改悪」を進める。

 いまの閉塞(へいそく)状況を打ち破ろうと思ったら、アメリカと財界いいなりの政治から、本当に「国民が主人公の政治」への大本からの切り替えが必要だということを訴えて、大いに今度の選挙では躍進したいと思っております。

税と社会保障の「一体改革」素案の評価は

無駄遣い継続、社会保障切り捨て、経済どん底――消費税大増税の三つの大問題

 神志名 焦点の消費税増税の問題ですが、先に(政府・民主党の)素案がまとまりましたが、この評価、対応はどうなんでしょうか。

 志位 今度の、消費税大増税というのは、私は、三つの大問題があると思っています。

 まず第一は、無駄遣いを続けながらの大増税になっている。たとえば、八ツ場ダムの建設を再開する。それから、原発推進の予算は4200億円もつける。さらに、政党助成金の320億円は、「(政治家が)身を切る」といいながら手をつけない。そして、大企業・大資産家への1・7兆円の新たな減税をばらまく。こういう無駄遣いをやりながらの増税は、これはひどい。

 第二は、「一体改革」といいますけれども、社会保障の方で用意されているメニューは切り捨てばかりなんですね。まず年金の支給額を減らす。それに続けて、医療については窓口負担を増やし、さらに年金については(支給開始年齢を)68歳から70歳に繰り延べする。まさに、「一体改革」ではなくて、「一体改悪」ですね。

 そして、第三に私がいいたいのは、日本経済をどん底に突き落とすと(いうことです)。97年に消費税を5%にして、総額9兆円の負担増というのがありました。あのときに、景気がぺっちゃんこになったわけですね。今度の(消費税)10%ということになりましたら、消費税だけで13兆円の増税ですよ。それに、年金の支給減など合わせますと、16兆円の負担増です。

 いま、これだけ景気が悪い。大震災であれだけ苦しんでいる。そこにドカーンとこういう負担増をかぶせたら、私は、経済も暮らしも底が抜けてしまって、結局、税収もあがらない。財政再建もいよいよ進まないと(思います)。

 私は、本当に大義がない大増税はやめるべきだと、強くいいたいと思います。

消費税増税に代わる財源は

無駄遣いを一掃、増税するならまず富裕層と大企業に

 神志名 増税をしない場合、それに代わる財源はあるんですか。

 志位 私たちは三つ大きく考えていまして、第一に、まずは無駄遣いを一掃すると(いうことです)。米軍の「思いやり」予算を含めた軍事費、原発推進予算、あるいは政党助成金、こういうところに全部メスを入れる。

 第二は、やはり大企業と富裕層という、お金を払う能力を持っているし、たんまりもうけているところに応分の負担を求める。増税をするなら、まず富裕層と大企業にと(考えています)。

 第三に、社会保障を抜本的によくするうえでは、国民全体で支えることがどうしても必要になってきます。そのさいの税金のあり方は、消費税という弱い者いじめの税金ではなくて、私たちは「応能負担」といっていますけれども、「負担能力に応じた負担」という累進課税でまかなっていくと、こういうことを考えています。

原発・エネルギー政策は

事故原因究明なしの再稼働は許せない――除染・賠償・「原発ゼロ」に力つくす

 神志名 なるほど。政治課題について、いくつか端的にお聞きしたいと思いますが、一つは原発・エネルギー政策、原発再稼働問題についてはどんな考えですか。

 志位 再稼働については、私と野田総理との(国会)論戦の中で、“事故原因の究明なしにはすべてスタートさせない”ということが、一応答弁になっているのです。ところが政府の(福島原発事故調査・検証委員会の)中間報告が出ていますけれども、結局、たとえば津波についてはある程度わかっていても、地震でどれだけ壊れたかは、まだわからないわけですね。事故原因の究明抜きの再稼働ということは絶対これは許せないことだと(思います)。

 それから、政府は年末に「収束宣言」を出しましたでしょう。あれは、福島県議会が全会一致で撤回(要求)決議をあげていますけれども、炉心の状態もわからない、それから除染もまったく進んでいないなかでの「収束宣言」というのはとんでもないことだと思いますね。

 私は、除染と賠償と、そして「原発ゼロ」に向けた取り組みを大いに強めたいと思っています。

TPP問題にどう対応する

米国との「事前協議」でコメ・牛肉・郵政自由化が――共同広げ断念においこむ

 神志名 TPP問題はどうですか。

 志位 TPPは、ああいう形でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で参加表明したわけだけれども、これからが問題になってくるのです。

 まず、参加しようと思ったら、アメリカとの「事前協議」が必要になる。アメリカ政府と議会がOKといわないと、これは参加できないわけですね。この「事前協議」は、おそらく水面下でいまやっているんですが、さっそく、(米側から)お米、牛肉、郵政と、自由化の要求が出ています。

 結局、これを進めていきますと、日本の食料主権も経済主権も全部アメリカに売り渡すということになりますから、こういう“亡国の政治はストップ”ということで、この間、農協の方々などと幅広い共同が広がっておりますが、これをさらに広げて、断念に追い込みたいと思っております。

普天間基地「移設」問題をどうする

正当性のなさを自ら示す政府の暴挙――日米合意の白紙撤回、無条件撤去を

 神志名 普天間基地の「移設」問題についてはどうなんでしょう。

 志位 年末に政府がやったやり方というのは言語道断だと思うんですね。例の(新基地建設にむけた)環境アセス評価書を、まず宅配便で送りつける。それが失敗すると、今度は午前4時に、ほとんど人がいないところに段ボール箱を(沖縄)防衛局長が持ち込んで、無理やり押し付けてくると。こういうやり方自体が、いかに(政府が)やろうとしていることに正当性がないかを自ら示していると思います。

 いま、沖縄の世論というのは、もう限界点をすでに超えて、「県内移設絶対反対」「普天間基地は閉鎖・撤去」、これは県民の「オール沖縄」の声となっていますから、力ずくでことを進めるというやり方では絶対に解決しない。私は、(新基地建設の)日米合意を白紙撤回して、(普天間基地)無条件撤去を求めて本腰の交渉をアメリカとするべきだと、求めていきたいと思います。

解散・総選挙にどう対応するか

“民主も自民もダメ”が大勢に――創立90年、日本共産党の名前を掲げ躍進を

 神志名 最後に衆院解散・総選挙への対応ですが、共産党は次の選挙からすべての小選挙区に候補者を擁立するということですが、これの狙いはどういうことですか。

 志位 やはり、いまの政治状況を見ますと、2年半民主党政権が続いたけれども、“自民もダメだけども、民主もダメだ”と、これが大勢になっていると思うのです。そして、この「二大政党」の支持基盤の大崩壊が起こって、日本の政治の力関係が大きく変わる変動の条件があると思います。

 そのなかで、本当の改革を掲げた日本共産党が大きく躍進する必要がある。とくに私ども、今年は党創立90周年を迎えますが、戦前・戦後、一つの名前でがんばってきた、いろんな試練に耐えてがんばってきた党で、この日本共産党という名前を大いに掲げて躍進したいと思っています。

 神志名 ありがとうございました。

 志位 ありがとうございました。