2011年7月21日(木)「しんぶん赤旗」

「原発撤退は政治の歪みを大本から変えるたたかい」

志位委員長 外国特派員協会で講演


写真

(写真)スピーチする志位和夫委員長=20日、東京・日本外国特派員協会

 「原発が未完成な技術だという話はとても興味深く、その通りだと思った」―。日本共産党の志位和夫委員長は20日、東京都内の外国特派員協会に招かれ、「原発問題と日本共産党の立場」と題して講演し、大きな反響を呼びました。

 司会者は「日本共産党は日本で唯一、一貫して原発に反対してきた政党。志位委員長は今回、福島原発事故の三つの教訓と原発撤退の道筋について説明してくれる」と述べました。

 志位氏は冒頭、政府が19日に福島第1原発事故収束に向けた「ステップ1」達成を表明したことについて、「根拠のない楽観論をふりまくことは許されない」と批判。「なにより原子炉と核燃料の状態がわからないままで『ブラックボックス』に水を入れている状態」、「汚染水が地下水となって拡散する危険がある」ことなどを指摘し、「政府がなすべきは、客観的に事態を把握し、最悪の事態も想定し、収束のためになしうるすべてのことを責任を持って実行することだ」と強調しました。

 その上で、「原発事故から何を教訓として引き出すか」について三つの角度から解明しました。

 第一は、日本ではびこる原発の「安全神話」こそが最も危険であり、世界から見ていかに異常かということです。志位氏は(1)IAEA(国際原子力機関)勧告に反して、「日本では過酷事故はおこりえない」と何の対策も取らなかったこと(2)国際条約に違反して原発の「規制機関」を「推進機関」のもとに置いていることを厳しく批判し、「今度こそ、『安全神話』を根絶することを求める」と述べました。

 第二に、原発事故はその被害を「空間的」「時間的」「社会的」に限定することは不可能な「異質の危険」を持っており、それは、いまの原発の技術そのものが、本質的に未完成で危険であることに起因していると指摘。「現在の原発技術は、はたして社会的に許容できる技術か」「私たちは安全な原発はないと考える」と力説しました。

 第三は、世界有数の地震・津波国に原発が林立した根底に、日本政治の二つの歪(ゆが)みが横たわっていることです。

 志位氏は、一つは、財界、政界、官僚、一部学者、一部マスメディアが形成する「原発利益共同体」が、「安全神話」の製造元となり、巨額の利益をむさぼってきたことであり、もう一つは、現在も原発で使う濃縮ウランの73%が米国からの輸入で、原発技術も米国の「コピー」であるなど、原子力開発が米国のエネルギー政策に従属する形でつきすすんできたことだと解明。

 「原発からの撤退のたたかいは、財界が中心に座った『原発利益共同体』を解体し、エネルギーの対米従属をあらためるという、日本の政治の歪みを大本から変えるたたかいでもある。国民的討論と合意で『原発ゼロ』の日本をつくるために力をつくしたい」と表明しました。

 これを受けて、「マスコミが原発に協力した背景は」「原発の技術的問題は」「代替エネルギーの潜在能力は」「原発撤退の日本国民の運動をどう見るか」などの質問が次々寄せられ、志位氏は一つ一つに丁寧に答えました。九州電力の「やらせメール」問題で「どうやって『赤旗』はスクープしたのか」の質問も飛び出し、関心の高さを示しました。

 最後に司会者が「志位さんには原発撤退後に再びここに来ていただき、どうやって達成したか報告していただきたい」と述べると、会場はどっと沸きました。