2011年6月29日(水)「しんぶん赤旗」

B型肝炎 合意書調印

原告団と国 恒久策・再発防止など盛る

首相が謝罪


 国が法律で強制して実施した集団予防接種のためB型肝炎に感染した被害者が国に損害賠償を求めた裁判で、全国B型肝炎訴訟原告団(谷口三枝子代表)は28日、和解によって解決するための「基本合意書」に調印しました。調印後に面談した菅直人首相は、国の責任を認め、「基本合意はスタートラインです。何万何十万人の人が苦しんでいる。心からおわびいたします」と謝罪しました。

 「基本合意書」は、患者らに最大3600万円を支払うなどと定めました。また、集団予防接種の注射器を連続使用したことによってB型肝炎被害者に甚大な被害を生じさせ、被害拡大を防止しなかったことの責任を認めています。

 国は、恒久対策として、不当な偏見・差別を受けることなく安心して暮らせるよう啓発・広報に努めること▽肝炎ウイルス検査の推進、肝炎医療体制の整備、研究の推進、医療費助成など必要な施策を講ずること―を約束。再発防止のための第三者機関の設置、原告・弁護団と国の継続的協議の場を設定することが盛り込まれました。

 谷口代表は提訴から16人の原告が亡くなり「あまりにも遅い解決になりました」と国の対応を批判。「しっかりした恒久対策と人前で堂々と(肝炎患者だと)言えるような社会になること、増税はB型肝炎患者のせいだと見られないように配慮を願いたい」と、多額の和解金になることを理由にした国の増税論にくぎを刺しました。

早期全面解決へ共産党力尽くす

 日本共産党は、志位和夫委員長が原告団・弁護団と懇談して要望を聞き、早期全面解決に力を尽くしてきました。党国会議員団は、衆参両院の厚生労働委員会などで国の責任を追及、被害者の全面救済を図るように国に迫ってきました。

B型肝炎和解の報告集会

胸のつまり 少し取れた

 「この日が来るのに時間がかかりすぎた」。全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団は28日、厚生労働省と和解についての基本合意に調印し、菅首相の謝罪を受け、国会内での報告集会で思いを語りました。

 全国B型肝炎訴訟原告団代表の谷口三枝子さん(61)は「40歳のとき、11歳と9歳の子どもへの母子感染を知り、自殺しようとも思った。どんな思いで生きてきたのかを首相に話した。首相も厚生労働相も、誠実に対応するといわれた。二度とこのようなことが起こらないように検証し、再発防止を考えてほしい。肝炎患者の補償を理由に増税をするのはやめてほしい」とあいさつしました。

 大阪原告団の久永信行さん(43)は「この病気は治る病気ではありません。それが差別と偏見の元になっている。国は責任を持って根治できる薬をつくってほしい」と訴え。

 二次感染で慢性肝炎となった谷口さんの娘の布美子さん(30)は「9歳のときに病気のことを知り、年を取るごとに悩みが深くなってきたが、今日胸のつまりが少し取れた。患者が充実した生き方ができるよう、もっとB型肝炎のことを知ってほしい」と話しました。

 集会には各党の国会議員が出席。日本共産党からは穀田恵二国対委員長、高橋ちづ子衆院議員、紙智子、田村智子両参院議員、志位和夫委員長秘書が参加しました。穀田氏は「皆さんのがんばりにこたえて立法府としての役割を果たしたい」と激励しました。