2011年1月5日(水)「しんぶん赤旗」

閉塞打破する未来への展望語ろう

力あわせ いっせい地方選勝利を

党旗びらき 志位委員長のあいさつ


 日本共産党の志位和夫委員長が4日の「2011年 党旗びらき」でおこなったあいさつは次のとおりです。


写真

(写真)2011年党旗びらきであいさつする志位和夫委員長=4日、党本部

深い閉塞感のもとで、国民の真剣な模索が始まる

 みなさん、2011年、明けましておめでとうございます。インターネット中継をご覧の全国のみなさんにも、新春にあたって心からのあいさつを送ります。いっせい地方選挙は3カ月後に迫りました。この政治戦で必ず勝利をかちとる決意を、まずともに固めあいたいと思います。(拍手)

 昨年は、国民が民主党政権によせた期待が、幻滅に、そして怒りに変わった年となりました。だからといって自民党政治に戻ることもできません。こういうもとで国民はいま、政治と社会に対する閉塞(へいそく)感を深めています。外交でも、経済でも、日本の国際的地位の急激な地盤沈下がおこり、これに対しても多くの国民が前途に不安をいだいています。

 同時に私が強調したいのは、この閉塞感は、新しい政治をもとめる国民の真剣な模索と表裏一体のものだということです。戦後半世紀以上つづいた古い政治の枠組みがいよいよ最終段階に入った、しかしまだ新しい政治は起こってはいない、そのもとで閉塞を打破する真剣な模索が始まっています。昨年は、その新たな発展を予感させる動きが、さまざまな面でおこった1年でもありました。

 こうした情勢のもとで、新しい年を日本共産党の新たな躍進の年にするために、どのような取り組みが必要か。新年にあたって、私は、私たちの活動の発展の大きな方向として、つぎの三つの点をのべたいと思います。

閉塞の根がどこにあるかを明らかにし、打開の展望を大いに語ろう

 第一は、日本の政治と社会がこの閉塞状況から抜け出すにはどうしたらよいか、その展望を大いに語ることであります。

古い政治が壊れつつある時代に、新しい政治を切り開く力をもつ党に成長を 

 その前提となるのは、この閉塞状況の根がどこにあるかを、国民的な規模で明らかにしていくことにあります。

 なぜ民主党政権が公約を裏切る冷酷な社会保障切り捨てを強行しながら、大企業への1兆5千億円規模の減税のバラマキをすすめようとしているのか。なぜTPP(環太平洋連携協定)という日本の農林漁業、地域経済、国土と環境を破壊する道をしゃにむに進もうとしているのか。なぜ沖縄・普天間基地の問題で、「辺野古移設」という県民の総意に背く実現不可能な道にしがみついているのか。

 どれも単なる政権の一時的な失敗ではありません。個々の閣僚の資質の問題でもありません。「官僚依存」で「政治主導」が足らないからでもありません。「異常な対米従属」「財界・大企業の横暴な支配」――この「二つの異常」を特徴とする古い政治の枠組みそのものが、いよいよ立ち行かなくなった。ここに閉塞状況の根があることを、国民的な規模で明らかにしていくことが大切であります。

 そして、いま未来への展望――閉塞打破の展望を語ることの特別の重要性について、私は、強調したいのであります。

 かつても日本共産党が躍進をかちとった時期が何度かありました。1970年代前半、1990年代後半などの時期です。この時期は、自民党政治が矛盾を深めながら、なお彼らなりに政権を維持する力をもっていました。こういう時期には、「どの党が悪政への一番きびしい批判者か」――野党としての批判力が政党の評価の大きな基準となりました。わが党こそ悪政と正面から対決し、筋を通す党だということで、国民的評価が高まり、それを前面に押し出しながら、日本改革の方針を語り、私たちは躍進を果たしました。

 いまは、そういう時期とは違います。古い政治の枠組みがいよいよ最終段階に入り、土台から壊れつつある。そういう時代にあっては、政治悪への批判だけではたりません。「自民党も、民主党もだめだから共産党へ」といういわば「引き算式」の訴えではうまくいきません。日本共産党は、この閉塞状況をどう打開して、どういう日本をつくるのか。未来への展望を語る力がいま、私たちに問われています。端的にいえば、わが党が“政権を担ったら何ができるのか”、わが党は政権にまだ近くはないかもしれませんが、わが党が言っていることについて国民が“政権を担ったら何ができるのか”という目で見る時代となっている。それに正面からこたえた活動がいまこそ必要であります。

 「批判とともに展望を語る」――これは、昨年の参院選での私たちの政治論戦の最大の教訓であったことを、あらためて銘記したいと思います。

 外交でも、経済でも、地方政治でも、古い政治の根本を大胆に転換すれば、まったく違った展望が開けてくることを明らかにする活動に、全党の知恵と力を結集してとりくもうではありませんか。

 古い政治が土台から壊れつつある時代に、国民の真剣な模索にこたえ、新しい政治を切り開く力量をもつ党に成長する――これを今年の私たちの共通の目標としてともに奮闘しようではありませんか。(拍手)

綱領を学び、国民に広く語り、展望を語り合う運動の大波をおこそう 

 私たちは、国民に確かな展望を指し示す羅針盤をもっています。新しい綱領であります。私は、今年を、全党が綱領を学び、自らの言葉、生きた言葉で広く国民にその中身を語り、この閉塞を打ち破る展望を語り合う運動の大波を起こす年とすることを、心からよびかけるものです。

 昨年12月から「綱領・古典の連続教室」が開始されました。2万人を超える党員、民青同盟員が受講を申し込み、インターネット受信箇所などが5千を超える、かつてないとりくみが始まりました。「これで党を変えられる実感がわいてきた」「2万人がいっしょに学ぶことは感動的」などの声が寄せられていることはうれしいことです。これは党の中長期の発展を展望した大事業であり、私も講師の一人として最大限の力でがんばりますので、どうかこの大事業が実り多い成果をあげるために、最後まで多くのみなさんの参加と協力をお願いするものです。(拍手)

 「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」「集い」は、ようやく開催のテンポがあがり、参院選後で、とりくみ支部17・5%、開催数4881回、参加者数8万239人となりました。綱領を正面から語り、自由に語り合ったところでは、実に面白い「集い」になっています。

 最近、北九州市八幡西区で開かれた「集い」では、町会役員や会社経営者など参加したほとんどが初めて共産党の話を聞く人たちでした。つぎつぎと出された質問は、「民主党は政権をとったら国民を裏切った。共産党は大丈夫か」、「共産党は、政権をとったらどういう外交をやろうとしているのか」、「共産党は、資本主義をどうしようとしているのか、財界や企業をどうするのか」、「ほかの政党はくるくる変わる。なぜ共産党は一貫して頑張れるのか」などでした。“共産党が政権を担ったら何ができるか、どうするか”という質問が相次ぎました。

 2中総決定では、綱領の生命力について、「経済危機をどう打開するか」、「財政危機打開の道」、「米軍基地と安全保障の問題」、「核兵器のない世界」などの角度から具体的に明らかにしました。尖閣問題、千島問題、朝鮮半島の問題など一連の外交問題についても、わが党は先駆的見解と提言を明らかにしてきました。どんな問題でもわが党が建設的方針を示せる根本に綱領の力がある。ここに確信をもって国民のなかで縦横に語り広げようではありませんか。

変革の最中にあるブラジルからのうれしいニュース 

 ここで、ホットなニュースを報告したいと思います。いま、ブラジル新大統領の就任式に出席するため、緒方靖夫副委員長が、ブラジリアに行っています。日本共産党とブラジル労働党との交流をきっかけにした、ブラジル政府からの招待によるものですが、政府の公式招待で大統領就任式に党代表が出席するのは、わが党にとって初めてのことであります。

 緒方さんは、1日、ジルマ・ルセフ新大統領と両手を取り合ってあいさつを交わし、祝意を伝えましたが、大統領は、「オー、ジャパン! ベリーグッド」「感謝します」「遠方からはるばるありがとうございます」と、大歓迎だったとのことです。新大統領は、軍政時代に投獄、拷問を受けた女性闘士として有名な政治家ですが、緒方さんによると「その手は温かく、柔らかでした」との報告でした。

 緒方さんから、みなさんにぜひ伝えてほしいという話があります。中南米・カリブ海地域の30カ国から56の政党が加盟する中南米・カリブ海政党常設会議(COPPPAL)というフォーラムがあります。民主主義、民族自決権の擁護、公正で対等な国際秩序づくりなどを掲げているフォーラムです。その代表のグスタボ・モレノさんは、昨年12月にプノンペンで開催されたアジア政党国際会議(ICAPP)にも参加しており、そこで私たちとも会っています。緒方さんはモレノ代表とブラジリアで再会し、「世界は狭い」と喜び合ったとのことですが、そのさい朝鮮半島の情勢が話題になり、モレノ代表はこう言ったとのことでした。

 「プノンペンのICAPP総会での日本共産党の委員長の発言は非常に重要だった。こうした対立する問題にどう対処すべきか、ということをきちんと示した政治演説だった。あの発言は会議の成功に貢献したと思う」

 私は、プノンペンの会議の発言で、北朝鮮の軍事的挑発行為を厳しく退ける立場を表明しながら、関係国による緊急の対話と交渉の実現を訴えました。この発言を、遠くラテンアメリカで平和の国際秩序づくりにとりくんでいる国際的な政党会議の代表が共感をもって注目・評価してくれた。綱領が明らかにしているように、紛争があっても戦争にしない。外交的・平和的解決に徹する。これこそ世界の流れだということを実感させるうれしいニュースであり、報告しておきたいと思います。(拍手)

 いま日本の政治と社会が陥っている閉塞状況を打ち破る、希望と展望を語れる党は、日本共産党しかありません。みなさん、ここに自信と誇りをもって、「大運動」「集い」にとりくみ、私たちの綱領の生命力を、何十万人、何百万人の国民に語り、広げようではありませんか。(拍手)

国民のあらゆる「大義あるたたかい」に連帯し、たたかいで展望を開こう

 第二は、国民との結びつきを広げ、より良い明日をめざす国民のあらゆるたたかいに連帯してたたかうことであります。

 いま日本各地で澎湃(ほうはい)として起こりつつあるたたかいのどれもが、自らの切実な要求を実現するとともに、「この国のあり方」を大本から問う、大義あるたたかいになっていることに、私は注目したいと思います。いくつかの焦眉の課題をのべるものです。

人間らしい雇用――大幅賃上げ、不当解雇反対は、大義あるたたかい 

 一つは、人間らしい雇用を求めるたたかいです。

 日本経済の最大の問題が、長年にわたって賃金が減りつづけていることにあることは、いまや立場の違いを超えて共通の声となっています。

 昨年11月、連合主催の会合で、富士通総研のエコノミストが「来年の春闘は4%の賃上げを目指せ」と題して講演をおこないました。そこでは、「10年以上も賃金が下がり続ける国は先進国の中で唯一日本だけである。その結果は内需の低迷、勤労者の労働意欲の低下など経営側にとっても好ましいものではない。企業は200兆円もの現金をため込みながら、成長のための投資や、適切な分配は忘れられている」とズバリ指摘し、「経営と労働の真摯(しんし)な議論」を求めています。財界のシンクタンクが労組の集会で「賃上げ」を訴える。これも、大幅賃上げが日本経済全体の立て直しのための大義あるたたかいであることを示す出来事だと思います。“こんな異常な賃下げ社会でいいのか”を国民的大問題にし、正規も非正規も、民間も公務も、すべての労働者・国民が連帯して、大幅賃上げをめざすたたかいを大いに発展させようではありませんか。(拍手)

 非正規雇用労働者の不当な解雇・雇い止めとのたたかいも重要な局面となっています。「派遣切り」に抗して、5千人をこえる労働者が労組を結成・加入してたたかいに立ちあがり、全労連の集約によるとその労働組合数は227、約70件の裁判が今日たたかわれています。その多くが、派遣先企業の責任をほとんど問わない現行派遣法のもとで、派遣先に安定した直接雇用を求めるたたかいであり、いわば「道なき道」を切り開き、働くルールをつくる先駆的なたたかいであります。このたたかいが今年、大きなヤマ場を迎えます。私は、労働者派遣法の抜本改正のたたかいと一体に、この勇気ある闘争を、労働組合、民主団体と共同して、全力をあげて支援することをよびかけるものです。(拍手)

 日本航空は、パイロットと客室乗務員の165人を、こともあろうに12月31日付で解雇しました。国も関与した再建機構が、「整理解雇4要件」という天下公認のルールを蹂躙(じゅうりん)し、解雇を強行したことに、私は、強く抗議します。「不当解雇撤回をめざす国民支援共闘会議」が結成され、この無法行為を、全労働者にかけられた攻撃、国民の命と安全を危険にさらす攻撃として、不当解雇撤回の闘争が開始されました。わが党は、この大義あるたたかいの一翼を担い、ともに奮闘する決意を表明するものであります。(拍手)

社会保障――憲法25条にのっとった国づくりか、公然と投げ捨てるか 

 二つ目は、社会保障の充実をめざすたたかいです。

 民主党政権は、自公政権時代につくられた社会保障費削減路線の「傷口を直す」という公約を投げ捨てただけでなく、逆に「傷口を広げ」、そこに塩をぬりこむような冷酷な政策に転換しました。医療、介護、年金、障害者福祉、生活保護などあらゆる分野で、社会保障費削減のために制度改悪を繰り返すという、自民党政治と同じ道にかじを切りました。

 憲法25条の生存権に立って、「社会保障の増進は国の責任」という大原則にのっとった国をつくるのか、それをいよいよ公然と投げ捨てるのか、まさにここでも問われているのは「この国のあり方」であります。

 たとえば、高すぎる国民健康保険料の問題は、全国どこでも大問題となっています。滞納世帯は445万世帯、正規の保険証が取り上げられた世帯は152万世帯にも及びます。全日本民医連の調査では、「悔しい手遅れの死」が年間47人にもなったとのことです。ところが民主党政権は、国保の「広域化」を推進するためとして、市町村がおこなっている一般会計から国保会計への繰り入れをやめ、「国保料引き上げ」に転嫁せよとの通達を出しました。さらに2018年度には国保を都道府県単位にするとしています。これが破局的な保険料高騰を招くことは火を見るよりも明らかであります。この方針は2003年に小泉内閣が打ち出した方針そのものであり、民主党政権はいまや「小泉医療構造改革」の公然たる継承者になるところまで堕落しているのであります。

 後期高齢者医療制度の問題でも、政府が決定した「新制度」は、引きつづき75歳以上を「別勘定」にして都道府県単位の国保に囲い込むという差別医療を温存したうえ、所得の少ない方への保険料値上げ、70〜74歳の窓口負担の2割への引き上げなど、自公政権でも手をつけられなかった負担増をはかるものとなっています。公約を投げ捨てただけでなく、「新制度」なるものを国保の「広域化」の突破口にする――二重に国民を愚弄(ぐろう)する姿勢は、断じて許すわけにはいきません。

 高すぎる国保料を引き下げよ、後期高齢者医療制度をすみやかに撤廃せよ、国は憲法25条の責任を果たせ。この旗を掲げ、広い共同のたたかいをすすめようではありませんか。(拍手)

 「社会保障財源」として消費税増税を狙う動きが日程にのぼりつつあります。「財源というなら、大企業減税をやめ応分の負担を、軍事費の思い切った削減を」の旗を高く掲げ、消費税増税反対のたたかいに意気高くとりくみたいと思います。

TPP――「この国のあり方」を根本から問うたたかい 

 三つ目は、TPP(環太平洋連携協定)の問題です。

 例外なき関税撤廃をすすめるTPP交渉に反対し、日本農業再生を求める声が、怒濤(どとう)のように日本列島で広がっています。私も参加したJA全中、全漁連、全森連、消費者団体などが開催した、TPP反対11・10緊急集会で印象的だったのは、その共同の国民的広がりとともに、参加者のみなさんが、このたたかいを「この国のあり方」を問う大義あるたたかいと位置づけていたことでした。緊急集会の「特別決議」はつぎのような格調高い言葉で結ばれています。

 「わが国は、今、たしかに『歴史の分水嶺(れい)』に立っている。地球環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡大し、世界中から食料を買いあさってきたこれまでのこの国の生き方を反省しなければならない。自然の恵みに感謝し、食べ物を大切にし、美しい農山漁村を守り、人々が支え合い、心豊かに暮らし続け、日本人として品格ある国家を作っていくため、我々はTPP交渉への参加に断固反対し、更なる国民各層の理解と支持を得ながら、大きな国民運動に展開させていく決意である」

 わが党は、この精神と立場に全面的に連帯し、大きな国民運動の力でこの企てを葬り去るために全力をあげるものであります。(拍手)

沖縄問題――軍事同盟という“戦争力”か、道理に立った“外交力”か 

 四つ目は、「基地のない沖縄」、独立・平和の日本をめざすたたかいであります。

 沖縄県知事選をつうじて、「県内移設反対」「普天間基地撤去」の県民の総意は、いよいよ揺るがぬものとなりました。今年の課題は、この沖縄県民の総意を、いかにして日本国民の総意にしていくかにあります。

 これは、世界のなかで日本がどういう進路を歩むか、その選択を問うたたかいでもあります。基地押しつけ勢力は、尖閣問題、朝鮮半島問題、千島問題など、日本を取り巻く紛争問題をあげて、「日米安保の強化が必要だ。沖縄の基地はやむをえない」と説教します。しかし、これらの解決に必要なのは軍事同盟という“戦争力”でしょうか。国際的道理にたった“外交力”こそ必要ではないでしょうか。東南アジアやラテンアメリカでつくられている地域の平和共同体を見ても、紛争の平和解決こそ21世紀の世界の本流ではないでしょうか。

 憲法9条を持つ国の政府でありながら、外交力には熱意も関心もなく、軍事的対応だけに熱中する。この異常さこそ問われなければなりません。

 私たちは、日米安保条約の解消、対等・平等・友好の日米関係への転換という将来の展望を高く掲げつつ、憲法9条を生かした平和外交によって東アジアに平和的環境をつくっていく努力を重ね、それと一体に「基地のない沖縄」をめざす県民の総意を、日本国民の総意とするためにあらゆる力をつくす決意であります。

 いま国民のなかに起こっているどのたたかいも、「この国のあり方」を問う、大義あるたたかいです。みなさん、今年を、国民がみずからの切実な願いを掲げてたたかいに立ちあがり、たたかいを通じて、閉塞を打ち破り、展望を見いだす年にするためにともに力をつくそうではありませんか。(拍手)

国民からみて、頼もしく温かい、強大な党をつくろう

 第三は、国民からみて、頼もしく温かい、強大な党をつくることです。

 2中総決定は、党勢の新たな上げ潮のための「五つの挑戦」をよびかけました。いま強大な党をつくることは、わが党の死活にかかわる大問題であるとともに、政治と社会の閉塞状況のもとで、国民の真剣な模索にこたえる力量をもつ党に成長するという国民的意義をもつものであります。私たちは、全国に、素晴らしい経験をたくさんもっていますが、きょうは二つの支部の経験を紹介したいと思います。

いすゞ自動車の職場支部――「みんなの声を力」に賃上げ実現の先頭に 

 一つは、神奈川県のいすゞ自動車の職場支部の賃上げのたたかいです。

 いすゞ自動車は昨年2月、営業利益を50億円の赤字見込みと発表し、いすゞ労組は春闘で「一時金(年間)5カ月」を要求したものの、「4カ月」にカットすることで妥結しました。しかし、いすゞはその直後の4月、営業利益を110億円の黒字に修正。さらに課長以上の賃金カットを元に戻し、「5カ月」の支給を決めました。「なぜ部課長だけが5カ月? 不公平だ」「利益の一部を社員に還元してくれ」などの疑問や不満が広がりました。いすゞは期間工や派遣労働者1400人を解雇し、その後の生産回復にさいしても要員を増やさず、長時間労働が深刻化していました。

 こうした職場の声を代弁して奮闘したのが、JMIUいすゞ自動車支部と、工場門前で配布された職場新聞「こえちか」――「みんなの声を力に」の意味――でした。昨年11月の「こえちか」では、「だまされた! 110億円の黒字なのに 冬のボーナスで5ヶ月(年間)取り戻せ」「今年の一時金(ボーナス)組合員は年間4・0ヶ月! なんと課長さん、部長さんたちは5・0ヶ月?これほんと?」と、起こっている事実を知らせました。これは吸い込まれるように労働者の手に渡り、大反響をよびました。1週間後、会社は組合員には0・2カ月、雇用延長者には生産協力金4万円を出すと発表しました。昨年12月の「こえちか」では、「冬のボーナスで『特別協力金』出させる やったネ! 0・2ヶ月の割増だァ!」と成果を知らせました。第一歩ですが、いすゞに利益を還元させる快挙です。ここには、職場の「みんなの声を力」にして不屈のがんばりでその実現の先頭に立つ、「頼もしく、温かい党」の姿があります。全国の職場でこういうたたかいを広げたいと思います。(拍手)

三重県・鳥羽市の地域支部――「正月から福の神、ござった」

 いま一つは、三重県・鳥羽市の党の地域支部の国保値上げ撤回のたたかいです。

 鳥羽市では、昨年10月末に国保の運営協議会があり、1人あたり2万円値上げという方針を打ち出しました。それが11月28日の党の支部会議でわかった。ちょうどこの支部会議では「結びつき・要求アンケート」で市民の暮らしの実態を出し合おうという会議でした。「これはたいへんだ。反対運動に立ちあがろう」と決めました。さっそく12月1日付「鳥羽民報」――党の地域新聞で大増税案を明らかにしました。「国保1人2万円も増税! 市民の悲鳴が聞こえますか」「生活苦になお追い打ち」という見出しです。世論が沸騰し、役所に抗議電話が殺到しました。

 そうすると何と12月4日に市長が、突然、党支部の事務所に来訪し、開口一番「国保税の値上げ議案を撤回します。先ほどの緊急課長会議で決定しました。ご迷惑をおかけしました」と陳謝したというのです。苦渋の決断だったと思いますが、立派な市長の決断ですね。市民からは、「共産党のおかげで助かった。共産党は福の神ですわ、正月から福の神、ござったようですわ」との声が寄せられたとのことです。

 こうした経験は、全国にたくさんあると思います。いま多くの国民が、閉塞状況のなかで新しい政治を模索しています。そうした動きにこたえる力量をもった「頼もしく温かい、強大な党」をつくろうではありませんか。今年を、党建設での力強い前進が開始されたと記録される年にするためにがんばろうではありませんか。(拍手)

いっせい地方選挙勝利へ――三つの基本姿勢にたって奮闘を

 最後に、目前に迫ったいっせい地方選挙について訴えます。参議院選挙後の中間地方選挙の結果と教訓にたち、つぎの三つの基本姿勢にたって奮闘することを訴えたいと思います。

激しさと厳しさの新たな様相を正面からとらえる 

 第一は、激しさと厳しさの新たな様相を正面からとらえることです。

 参院選後の中間地方選挙の結果は、わが党は1県、55市、40町村に199人が立候補し、175人が当選しました。議席占有率は8・51%から8・49%とわずかですが減らしました。得票の合計は前回比で93・5%、得票を前進させた選挙区は全体の31%です。率直に申しますが、この流れの延長線上では、いっせい地方選挙で勝利にとどきません。この流れを上げ潮へと、何としても変えていくための大奮闘が必要です。

 ここには、激しい党派間闘争が刻印されています。とくに都市部を中心とした選挙区では、メディアによる「民主、自民の対決が焦点」という報道が強められ、「わが党を選択肢から除外する」という長期にわたる攻撃が、地方選挙においても、わが党が前進するうえでの圧力、障害となって作用しています。

 選挙戦の激しさ厳しさを正面からとらえ、参院選の比例票を、大幅に増やし、大きく押し返す奮闘をやりぬくことが、勝利にとってどうしても必要であります。

最後に勝敗を決するのは、党の自力にかかっている

 第二は、最後に勝敗を決するのは、党の自力にかかっているということです。

 それは昨年12月12日投票の茨城県議選の最大の教訓の一つでありました。水戸市で激戦を制し現有議席を確保した重要な要因は、党員拡大と党費納入の努力によって、党費納入者の数を4年前から170・8%へと大きく前進させたこと、機関紙読者でも、前回比で日刊紙97・0%、日曜版97・4%と、前回時回復に近づいて選挙をたたかったことにありました。一方、議席を失ったつくば市では、みんな大いに奮闘しましたが、職場の退職者が多数生まれるなどの困難もあり、機関紙読者が日刊紙・日曜版ともに80%台に後退したもとでのたたかいでした。

 昨年12月26日投票の東京・西東京市議選は、定数2減、激烈な党派間闘争のもとで日本共産党は4人全員当選を勝ち取りました。ここでは、10月1日時点で日曜版読者が前回比80%まで後退していたことを「この現状では勝利なし」と直視し、大量宣伝、対話と支持拡大と一体に、執念をもって拡大にとりくみ、1カ月で100人近い読者を増やしたことが、僅差で競り勝つ力となりました。最後まで前回時突破をめざし奮闘することが、最後の底力につながったことは重要な教訓であります。

情勢の激動がはらむ党躍進の可能性、条件をくみつくそう

 第三に、やるべきことをやりきれば新しい飛躍をおこせる、党躍進の可能性、条件が存在していることに広く目をむけて、大いに打って出るということです。

 茨城県議選の筑西地区では、市民病院を守る運動、TPP反対のたたかいなどで保守層との共同が広がり、得票を、参院選比例得票比で353・5%にのばし、1998年の参院選比例得票比でも170%という過去最高を獲得し、当選まであと476票に迫る文字通りの大善戦となりました。保守層の方々が広く選挙に参加し、支持拡大も700人もの党外の人たちがとりくんでくださいました。私たちも応援にいきましたが、保守層の方々が必勝のハチマキを締めて、陣太鼓が打ち鳴らされる。そういう住民がともにたたかう選挙になりました。そういう劇的変化がおこる可能性をはらんでいるわけです。

 参議院選挙の比例票を「たたかいの出発点」とリアルに認識しつつ、それを固定的に見ないことも大切です。たたかいようによっては、力関係を変えることができます。この間の中間地方選挙におけるわが党の得票は、参院選比例得票比でみますと161・5%です。他党は、民主党は38・6%、自民党は97・6%、公明党は93・7%、みんなの党は43・8%、社民党は63・9%です。わが党が比例得票を2倍以上にのばした選挙区が31あり、そのうち3倍以上が6選挙区ある。全国どこでも、主体的な奮闘いかんでは、比例得票を2倍、3倍以上に伸ばし、政党間の力関係を大幅に変化させる可能性と条件は存在している。ここに私たちは大いに目を向けて、がんばりぬくことが必要です。

 国政でも、地方政治でも、古い政治にしがみつく勢力と国民との矛盾は深くなっています。閉塞感も深いが、真剣な模索が開始され、広がっています。情勢を大局的につかみ、情勢のはらむ条件を残らずくみつくし、いっせい地方選挙では必ず勝利を勝ち取ろうではありませんか。そのことを最後に訴えて、年頭にあたってのあいさつといたします。ともにがんばりましょう。(大きな拍手)