2010年9月27日(月)「しんぶん赤旗」

日本共産党第2回中央委員会総会

参議院選挙の総括と教訓について

志位委員長の幹部会報告


 志位和夫委員長が25日、第2回中央委員会総会でおこなった二つの幹部会報告は次の通りです。


写真

(写真)報告する志位和夫委員長=25日、党本部

 みなさん、おはようございます。インターネット中継をご覧の全国のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。私は、幹部会を代表して、まず最初に、参議院選挙の総括と教訓についての報告をおこないます。

 今回の参議院選挙で、日本共産党は、比例代表選挙で改選4議席から3議席に後退し、得票数では3年前の440万票(7・5%)から356万票(6・1%)に後退しました。議席の絶対確保をめざした東京選挙区では、東京と全国のみなさんの熱い支援をうけて大奮闘しましたが、当選をかちとることができませんでした。

 まず私は、幹部会を代表して、日本共産党を支持してくださった支持者のみなさん、奮闘していただいた党支持者、後援会員、党員のみなさんに、心からのお礼を申し上げます。同時に、選挙指導に日常的に責任を負う常任幹部会を代表して、全国のみなさんの奮闘を議席と得票に結びつけられなかったことについて、おわびします。

 7月12日の常任幹部会声明は、今回の選挙結果を重く受け止め、政治論戦、組織活動などあらゆる面で、どこにただすべき問題点があるか、前進のために何が必要かについて、党内外の方々のご意見・ご批判に真摯(しんし)に耳を傾け、掘り下げた自己検討をおこなう決意を表明しました。

 この見地で、全国の都道府県委員長、地区委員長、比例代表・選挙区の候補者から意見と感想を寄せていただきました。私たちは、地方党組織に出向いての直接の聞き取りもおこないました。党内外の文化・知識人など、さまざまの分野の方々からも意見をお聞きしました。党内外の5千人をこえる方々から、電話、メール、ファクス、手紙などで、ご意見、ご批判、叱咤(しった)激励をいただきました。

 総括と教訓についての報告は、これらの意見の一つひとつを検討し、中央(常任幹部会)としての自己分析を明らかにし、国政選挙での巻き返しにむけて、今後の選挙活動を、いかに改善、強化、発展させるべきかについて、のべるものです。

1、政治論戦の総括と教訓について

 まず政治論戦にかかわる総括と教訓です。

 わが党が、参議院選挙で掲げた政策は、どの分野、どの問題でも、国民の利益にかなったものでした。同時に、参院選の政治論戦を全体として振り返ってみると、いくつかの重要な弱点がありました。

「探求にこたえ」「展望をしめす」という点でどうだったか――消費税論戦の弱点

 第一は、わが党の訴えの基本姿勢が、国民の新しい政治への「探求にこたえ」、政治の閉塞(へいそく)感を打ち破る「展望をしめす」ものになっていたかという問題です。

 8月3日におこなった党創立88周年記念講演では、政治論戦のこの基本姿勢を最後の最後まで貫くべきだったにもかかわらず弱点が生まれた、とくに6月17日に菅首相が「消費税10%」を宣言したあとのわが党の消費税論戦にその弱点があらわれたとして、中央の自己分析として、つぎの諸点を明らかにしました。

 ――まず、消費税増税反対の論戦それ自体は、「大企業減税のための消費税増税」という問題の本質を明らかにし、増税勢力を追い詰め、国民世論を動かし、「増税ノー」という国民の審判につながりました。そして、来年度にも消費税増税法案を強行するという増税のスケジュールをくるわせるうえでの貢献となりました。このことは確信にすべきだと考えます。

 ――しかし同時に、この論戦は日本共産党への支持を広げることには結びつきませんでした。その大きな原因の一つは、「生活からいえば反対、でも…」という人々に対して、「消費税増税反対」の主張と一体に、「政治をこう変える」というわが党の国民要求にもとづく建設的な提案を押し出すことが、弱かったことにありました。

 ――とくに菅首相の「消費税10%」発言以降の論戦は、「消費税増税反対」が前面に押し出される一方で、国民の新しい政治への探求にこたえ、展望をさししめす建設的な提案は、語ってはいたものの、事実上後景に追いやられる結果となりました。

 ――そのために、多くの国民には、「反対」というメッセージだけが伝わることになりました。「反対」自体は正論であっても、それだけでは「自分の一票でさらに政治を変えたい」と願い、その願いにこたえる政党を求めている広い有権者の心には響きませんでした。消費税問題でのわが党の訴えが、わが党の前進に結びつかなかった一因はここにありました。

 ――「消費税増税反対」と一体に、「大企業応援から暮らし最優先」への転換というわが党の経済政策の基本姿勢が伝わり、この立場に立ってこそ財政危機打開の道も開かれるという展望が伝わるような、建設的なスローガンを提起すべきでした。

 そして、記念講演では、つぎのように表明しました。「どんな問題でも、批判と同時に、国民の探求にこたえ、打開の展望をしめす、変革者の党ならではの建設的なメッセージが伝わってこそ、国民の心に響く訴えとなります。私たちは、このことを今回の教訓として胸にしっかりと刻み、今後に生かしていきたいと思います」。私は、この教訓を、あらためて確認し、努力をはかる決意をまずのべるものです。

有権者との接点をリアルにつかむ指導上の弱点

 記念講演で明らかにした消費税論戦の弱点にかかわって、「この自己分析は納得できるが、なぜもっと早く気づかなかったのか」という意見が寄せられています。

 消費税問題での対話が、「時間がかかる」「なかなか難しい」という現場の声は、中央も選挙中からつかんでいました。しかし、わが党の政治論戦が記念講演で自己分析したような弱点をもっているという認識は、選挙中にはもてなかったのが実情でした。これは中央の選挙指導のあり方に、現場での有権者との対話の反応を、リアルに、また積極的・能動的につかんで検討し、対策を講じるという点で、弱点があったことを示すものです。

 選挙戦は、時間とのたたかいです。わが党にとって「良い情報」は多少遅れても勝敗に大きな影響を与えませんが、「悪い情報」は、ただちにつかみ、解決・改善しないと、勝敗そのものに影響を与えることになります。選挙戦の状況、とくに有権者の反応をリアルにつかむ、そのために現場の率直な意見によく耳を傾け、また意見を積極的に寄せてもらうようにつとめる、そして選挙指導にただちに生かしていく、そのことも重要な教訓としたいと考えます。

日本改革の方針を語り、具体化する活動にかかわる問題点について

 第二は、わが党綱領が示す日本改革の方針を語るとともに、生きた情勢の進展にそくして豊かに具体化をはかる活動にかかわる問題点についてです。

 今回の参議院選挙は、国民が、自民党政治に代わる新しい政治とは何かを探求する大規模なプロセスが進行しているなかでたたかわれました。さらに、民主党政権が国民への公約や期待を裏切るもとで、政治への閉塞感が深まり、「日本の政治をどう変えるのか」という大きなビジョンを示すことが強く求められた選挙でした。

 こうした選挙だけに、綱領が示す日本改革の方針を縦横に生かして選挙戦をたたかうという政治論戦の姿勢をつらぬくことはとりわけ重要でした。この点で、選挙戦をふりかえると、中央の活動に弱点がありました。

思想攻撃、国民意識にかみあって、日本改革の方針そのものを語る活動について    

 一つは、支配勢力による思想攻撃、国民の意識にかみあって、わが党の日本改革の方針そのものを、広く明らかにする活動についてです。

 日本共産党が、一貫して目標にしている日本改革の旗印は、「二つの異常」――「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」をただし、「国民が主人公」の新しい日本をつくるという旗印です。「国民の暮らしと権利を守る『ルールある経済社会』」をつくる、「憲法9条を生かした自主・自立の平和外交」を築く――これが綱領が示す日本改革の展望、新しい日本像です。

 旧来の古い政治が深刻な行き詰まりにぶつかるもとで、日本の情勢と党綱領の立場が、客観的には深く響きあい、かみあう状況が生まれていることは、間違いありません。同時に、綱領の立場と、国民の意識との間には、ギャップが存在することも事実です。

 歴史をたどると、1980年の「社公合意」を大きな転機として、とくにこの30年間、支配勢力が、政界からの「共産党排除」とともに、安保条約を絶対化し、大企業の横暴な支配を合理化する思想攻撃をメディアを動員して系統的にすすめてきたという問題があります。このもとでいま、「安保廃棄」、「大企業の横暴な支配をただす」というわが党の主張が、簡単には受け入れられない状況も生まれています。今回の選挙戦での対話のなかで、「共産党の主張は理想論で、現実性がない」という声が聞かれたことは、そうした状況の一つの反映でした。

 こうした支配勢力による思想攻撃、国民の意識にかみあって、党綱領の示す日本改革の方針への国民の共感を広くかちとるためには、つぎのような努力を日常的系統的におこなうことが必要でした。

 第一は、「異常な対米従属」「財界・大企業の横暴な支配」――「二つの異常」の実態を、多くの国民に具体的事実をもって知らせていく活動です。たとえば、大会決定では、日米軍事同盟の実態を、多面的角度から分析し、「この軍事同盟の不平等性、従属性、侵略性の深さは、世界に二つとないほど異常で、突出したものである」とのべていますが、大会決定で明らかにされている事実は、ほとんど国民に知られていません。また、大会決定では、「ルールなき資本主義」といわれる日本経済の異常な特質について、世界の流れとの対比で明らかにしていますが、これも国民のなかで広く知られていることではありません。大企業の横暴な支配による害悪を具体的に知らされていない国民には、これを打破しないと、暮らしも日本経済も再生の道はありえないといっても、説得力をもちません。「二つの異常」の実態を具体的事実をもって広く知らせていく活動が重要です。

 第二は、日本共産党の「日本改革の方針」そのものを丁寧に明らかにしていくことです。綱領の立場は、大企業の「否定」や「敵視」ではなく、ただすべきは「ルールなき資本主義」といわれるような「目先の利益第一の横暴」であり、めざすべきは大企業が社会的責任をはたし、税金と社会保障で応分の社会的負担をになうことです。また綱領の立場は、「反米」ではなく、ただすべきは「異常な支配・従属関係」であり、日米友好条約を結び、「対等・平等・友好の日米関係」を築くことが目標です。こうした綱領の立場を、丁寧に、伝えていく努力が必要になります。

 第三は、国民に有害な政治を押し付ける誤った考え方とはきっぱりとたたかうことです。マスメディアなどによって「海兵隊は日本の平和を守る抑止力」、「大企業への負担増は国際競争力を損なう」などといった考え方がふりまかれており、広く国民の間に浸透しています。新自由主義の経済政策が進められ、企業そのものが弱肉強食の競争・淘汰(とうた)にさらされているもとで、「企業が存立・繁栄してこそ労働者の生活も成り立つ」という「企業主義」が新たな形で労働者のなかに広がっています。ごく一握りの特権的官僚集団と、一般の行政サービスに携わっている公務員をいっしょくたにして「特権を享受している」と攻撃し、国民のなかに分断を持ち込む議論も広く流布されています。これらは、新しい政治への国民の合意をつくりあげるうえでの大きな障害となっています。支配勢力がふりまくこうした考え方の誤りを事実と道理で示し、克服する努力が必要です。

 これらの努力方向にてらして、中央の活動を振り返ってみれば、弱点があったことは明らかです。

 中央の姿勢の弱点は、発行した宣伝物にあらわれています。綱領が示す日本改革の方針を正面からの主題とした宣伝物は、選挙本番前にも、選挙中にも発行されませんでした。選挙後の感想や意見で、「これまでの『こんにちはパンフ』のような日本改革の方針、党を押し出す宣伝物が必要ではなかったのか」という声が多数寄せられています。パンフレットの発行は、中央の選挙財政の制約から不可能だったという実情がありました。しかし、それにかわるリーフやビラなどの宣伝物を早い段階から作成し、「日本共産党は日本をこう変える」という大きな展望、党の理念や歴史をふくめた全体像を語るとりくみのイニシアチブを発揮すべきでした。

 「しんぶん赤旗」の紙面、選挙戦にむけた全国遊説などでは、綱領と党大会決定にもとづいて日本改革の方針そのものを語る努力がはかられました。同時に、その内容を吟味してみると、さきにのべた支配勢力による思想攻撃、国民の意識にかみあって、党の日本改革の方針そのものを分かりやすく、丁寧に、説得力をもって語るという点で、なお改善が必要といわねばなりません。

 また、国民に有害な政治を押し付ける誤った考え方を克服するという点でも、「海兵隊=抑止力」論、「大企業の国際競争力」論批判などについて、一連の努力はおこなわれましたが、国民への説得力という点ではなお論立ての発展が求められていると考えます。

情勢の進展にそくして、日本改革の方針を豊かに具体化していく活動について

 いま一つは、生きた情勢の進展にそくして、日本改革の方針を、豊かにしていく活動についてです。

 その時々に生起する国政の重要問題にたいして、日本改革の方針を具体化し、機敏に、深く、国民の立場からの打開策を指し示していく、日本社会と日本国民が解決を求めているあらゆる問題にたいして、綱領の立場にたって解決の展望を示していく――そういう姿勢にたって、政策活動に積極的・創造的にとりくみ、日本改革の方針を豊かにしていく日常不断の努力が必要です。生きた情勢の進展にかみあって綱領の生命力が実証されてこそ、日本改革の方針への共感を広範な国民のものにすることができます。

 この点で、わが党が、暮らし最優先の経済成長論を「五つの提言」として発表し、各界と懇談を広げたこと、中小企業政策、農業政策、都市農業政策、保育政策、大学政策などを発表したことは、積極的な努力でした。

 同時に、わが党の政策活動には、この点での重大な立ち遅れや弱点、新しい政策的発展の努力が求められる問題がありました。順不同にいくつかの問題をのべます。

 ――参議院選挙後の党創立88周年記念講演では、綱領の今日的生命力を示す二つの実例として、今日の財政危機をどう打開するか、東アジアに平和的環境をつくる外交努力について、解決の方向を明らかにしましたが、本来こうした政策活動は、日常不断にとりくまれるべきものであり、国民にたいする分かりやすい政策として仕上げ、参院選の政治論戦の力にしていくべきものでした。

 ――民主党、自民党、みんなの党などの大合唱によって流布されている、「政治主導」論、「脱官僚依存」論、「公務員削減」論、「地域主権」論などの、「国のかたち」をめぐる議論にたいして、その問題点を深く解明・批判し、綱領の立場にたった抜本的な対案をしめすことも重要な課題となっています。

 ――日本は、欧州諸国などに比べて、経済規模比での社会保障給付があまりに少ないということは、わが党がかねてから指摘してきた問題ですが、社会保障の水準を欧州諸国なみに拡充するためには、これまで明らかにしてきた財源政策にとどまらない、抜本的な財源政策が必要になります。綱領がのべている「大企業・大資産家優遇の税制をあらため、負担能力に応じた負担という原則にたった税制と社会保障制度の確立をめざす」という見地での政策の発展が必要になります。

 ――経済の国際化、アジアでの巨大な経済発展とのかかわりで、また多国籍企業化の本格的進行のもとで、日本経済の現状と問題点をとらえ、その民主的進路を指し示す政策の発展のための努力も必要です。

 情勢の進展が求める水準にてらしての政策活動の立ち遅れ、新しい政策的発展の努力が求められる課題は、ほかにもさまざまな問題・分野にあります。中央として、新たな知恵と力をつくして政策活動の創造的発展にとりくむ必要があります。そのために中央とその政策部門の活動の抜本的改善と強化をはかる決意です。また、党内外の民主的・進歩的研究者の協力も広く得るように、つとめるものです。

国政における日本共産党の値打ちの押し出しについて

 第三は、国政における日本共産党の値打ちの押し出しについてです。

「二大政党づくり」のもとで、新しい努力が必要な検討課題    

 選挙後の感想、意見では、各地から、国民との対話のなかで、「共産党は良いことをいうが力がない」という見方、声が少なくなかったという報告があります。ここには、「二大政党づくり」の動きのもとで、初めから日本共産党を政党選択の選択肢から除外しようという攻撃が強まっているという情勢の反映があります。

 こうした状況のもとで、国政における日本共産党の値打ちをどう押し出すか――「日本共産党を伸ばせば現実の政治を動かす大きな力となる」ということをどう訴えるかは、新しい努力が必要な検討課題です。

大きなスケールでの党押し出しの努力を発展させるうえで弱点があった        

 ただ、この問題でも、わが党は、参議院選挙で発展させるべき重要な経験と教訓をもっていました。

 それは、2009年総選挙にむけて全国で取り組んだ党押し出しの経験です。2年前の党創立86周年記念講演「正義と道理に立つものは未来に生きる」では、国民の利益、世界の前途がかかった「決定的な場面」で、日本共産党が勇気を持って掲げた旗が、初めは孤立しているように見えても、歴史を切り開き、どれも未来に生きる力を発揮していることを明らかにしました。記念講演では、侵略戦争反対と主権在民のたたかい、労働者派遣法の問題、後期高齢者医療制度の問題、コメ輸入自由化の問題、アメリカの一国覇権主義批判、ソ連崩壊という大激動のもとで「資本主義万歳」論にくみせず未来社会の旗を掲げたことなどの具体的な実例をあげて、そのことを語りました。この記念講演で明らかにした党押し出しは、全国で大いに語られ、総選挙にむけて力を発揮しました。

 参議院選挙にむけても、こうした大きなスケールでの党押し出しの努力をさらに発展させるべきでした。この点での弱点がありました。

 この数年間を振り返ってみても、「決定的な場面」での日本共産党の奮闘が、現実政治を動かす力となって働いたという実例は、豊かになっています。たとえば――。

 ――日本共産党は、首相の靖国神社参拝問題など、過去の侵略戦争を正当化する逆流を克服するために一貫して力をつくしましたが、内外の批判の高まりと国際的孤立によって「靖国派」は重大な打撃をこうむり、事態の前向きの打開がはかられました。

 ――沖縄の米軍基地問題で、「基地の県内たらい回し」を決めた1996年の「SACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意」が結ばれた当時、これにきっぱり反対した政党は日本共産党だけでしたが、それから14年たったいまでは、「県内移設反対」は文字通り沖縄県民の動かすことのできない総意となっています。

 ――「核兵器廃絶のための国際交渉を」という、日本の反核運動とともに日本共産党が一貫して掲げてきた旗が、今年5月のNPT(核不拡散条約)再検討会議にみられるように、いまや国際政治の現実の課題となりつつあります。

 ――国民健康保険の保険証取り上げを自治体の義務にした1997年の国保法改悪に反対を貫いてきたのは日本共産党だけでしたが、その後の全国での粘り強いたたかいと日本共産党の国会論戦によって、保険証の取り上げを、子どもについてはやめさせ、生活困窮者からも許さないという政策転換を実現させてきました。

 これらは一例ですが、国民の草の根のたたかいと一体となった日本共産党の奮闘は、必ず現実の政治を動かす力となって働く。その根本には、党綱領に示された日本改革の方針のもつ力がある。このことを豊かな実例をもって語る活動に、もっと知恵と力をそそぐべきだった。これも今後に生かすべき教訓です。

2、選挙活動についての総括と教訓について

「結びつきを生かし、広げることを軸にした選挙活動」という本来のあり方にてらして

 つぎに選挙活動についての総括と教訓です。

 今回の参院選を振り返って、全国から、つぎのような意見が寄せられていることは、重要です。「選挙のたびに支部の台帳に記載されている人数は減るばかりです。日常的に結びつきを強め、支持者を広げる活動が大事になっています」、「『支部が主役』で要求実現、地域活動、世話役活動などを通じて、国民との結びつき、信頼関係をもっと深くつくらないと支配層のマスコミ攻勢に勝てないのではないか」。

 国民との結びつきを生かし、広げることを軸にして、日本共産党支持の波をつくりだしていく――これは選挙活動の「四つの原点」にも明記された、選挙活動の基本中の基本です。ところが、参議院選挙を振り返ってみると、ここに中央として光をあて、本腰を入れて取り組むうえで弱点がありました。

対話と支持拡大――結びつきを生かした取り組みが弱まっている 

 第一は、対話と支持拡大の活動において、一人ひとりの党員がもっている結びつきを生かし、広げるという本来のあり方が弱まっていることです。

 結びつきを生かした対話と支持拡大を進めるうえでは、名簿(台帳)と地図をもった活動が不可欠ですが、名簿をもっている支部は、地域支部で82・5%、職場支部は43・3%にとどまっています。持っていても未整備という支部が少なくありません。また、一人ひとりの党員が、多面的な結びつきを持っていながら、それを生かして働きかけるという点で党の援助がとどいていないという問題もあります。そうした結果、対話と支持拡大のかなりの部分が、結びつきのない人への電話による働きかけに頼っている現状があります。もちろん電話を使って新しい結びつきと支持を広げる活動は大切ですが、それだけに頼る傾向が、選挙のたびに広がりつつあることは、きわめて重大です。

 これらの現状を深くつかんで、支部と党員を励まし、対話と支持拡大の運動を、一人ひとりの党員の結びつきを生かし、広げるという本来のあり方にしていくうえでの、中央のイニシアチブに弱点がありました。

 一人ひとりの党員は、家族や親せき、知人や友人、要求実現の活動、世話役活動、大衆組織や各種サークル、市民運動、自治会や老人会、同窓会など、さまざまな形で、多面的な結びつきを持っています。対話と支持拡大の活動を、それらすべてに光をあて、生かした取り組みに改善・刷新していくことが必要です。

 棄権防止活動も、改善・刷新します。今後、棄権防止活動は、一人ひとりの党員、後援会員の結びつきを生かして取り組むことを基本にします。無差別の人を対象とした棄権防止活動はやめることにします。

「大運動」「集い」――取り組みの弱まりと中央の援助の問題

 第二は、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」「集い」を、選挙活動の軸にすえるうえでの弱まりです。

 今回の選挙でも、積極的に「集い」にとりくんだところでは、他党支持層や新しい層が参加し、人間的・政治的な信頼と結びつきの絆(きずな)が強まっています。日本の政治のあり方や日本共産党への疑問などについて率直に話しあわれ、日本共産党への誤解を解き、支持を広げ、担い手を増やす場になっています。「集い」の準備のなかで、周辺地域の総訪問など軒並み対話が進み、「集い」が党員拡大や「しんぶん赤旗」読者拡大の契機にもなるなど、選挙活動全体を発展させる「軸」として、大きな威力を発揮した経験も生まれました。

 しかし、全党的な到達は、取り組み支部で39%、参加者で32万人にとどまりました。これは2009年総選挙と比べても、取り組みの期間が半分程度という違いがあるとはいえ、きわめて不十分なものでした。

 中央として、「集い」の意義を情勢の進展とのかかわりで新鮮に明らかにする活動を強め、進んだ経験を交流し、「集い」を気軽に開くことを後押しする資材を提供し、支部と党員が党を語る力をつける「綱領講座」を推進するなど、支部への援助にもっと力をそそぐ必要がありました。

後援会活動――単位後援会の確立・強化を土台に

 第三は、後援会活動の問題です。全国から、後援会のあり方について、多数の意見が寄せられました。

 「後援会ニュース」を読んでもらう人を増やし、ニュースを定期的に届け、人間的・政治的結びつきを強めたことが、選挙戦で大きな力を発揮した経験が、全国各地に生まれていることが報告されています。この活動をさらに発展させることが大切であることは、進んだ実践と成果にてらしても明らかです。

 その一方で、すべての支部が対応する単位後援会を確立し、日常的に活動を発展させる努力が弱まっているのではないかとの指摘が寄せられていることは、たいへんに重要です。現在、対応する単位後援会が確立している支部は、地域支部で72・4%、職場支部で42・0%にとどまっています。「開店休業」となっている単位後援会も少なくありません。これは、この分野での中央の日常の指導と援助に弱さがあることを示しています。

 支部に対応する単位後援会、分野別後援会を確立し、要求実現の活動、学習活動、お花見会や新年会など親ぼくを深める楽しい行事などに日常的に取り組み、党員が後援会員とともに選挙戦をたたかう――単位後援会の確立・強化こそが後援会活動の土台であり、その抜本的な再構築に力をそそぐことを、今後の教訓とします。

選挙戦のあり方の改革を保障する党機関の指導と活動の改善・刷新

 選挙戦のあり方を、「結びつきを生かし、広げることを軸とした選挙活動」という本来のあり方に改革していくためには、党機関の指導と活動のあり方を抜本的に改善・刷新していくことが不可欠です。

悪弊をただし、党機関の活動の重心を支部への指導と援助にうつす

 党機関の活動の重心を、思い切って支部への具体的な指導と援助にうつすという立場にたって、いくつかの悪弊をただす必要があります。

 たとえば、長期、多項目にわたる「日報」の実施の問題です。全国から寄せられた意見では、長期、多項目にわたる「日報」の実施によって、中間機関が報告の集約に多大な時間をとられ、支部へ入って指導・援助することを困難にしているとの声が多数あります。ある地区委員長からは、日報の集約に毎日数時間を費やし、活動の大きな制約となっているとの声も寄せられました。また、支部への指導・援助も「数字」の追求が中心になり、党支部の活動の中身をつかみ、支部が直面している困難を協力して打開する援助が弱くなるなど、重大な弊害が生まれています。

 中央からこの悪弊をたださねばなりません。今後、中央の「日報」「週報」「月報」などの報告制度を抜本的に見直し、支部への援助に機関活動の重心がすえられるよう指導と活動の改善・刷新をはかります。とくに「日報」については、選挙本番直前の時期など特別の場合には、項目をしぼっておこなうことが必要となりますが、それ以外はなくすようにします。これは都道府県委員会、地区委員会も厳守することとします。

 また、党機関や支部に重い負担をおわせるような、過度の電話による指導・点検のあり方も、中央を先頭にあらためます。中央の専門部による都道府県委員会、地区委員会への電話による指導・点検は、今後やめることにします。電話による指導・点検は書記局をつうじてのもののみとし、それもどうしても必要不可欠なものに限定します。

中央から党指導のあり方の根本的な改革をすすめる

 党機関の活動は、何よりも支部に入り、支部の自主性、自発性、創意を引き出すとともに、それを尊重し、自由闊達(かったつ)にのびのびと活動が前進するように援助することを、最優先にしなければなりません。

 そのさい、党機関が、支部の意見をよく聞き、相談にのり、直面している困難をよくつかみ、支部と協力してその打開のために力をつくす活動に取り組むことは、とりわけ重要な活動となります。

 中央は、都道府県機関、地区機関が、そうした役割を生き生きと発揮することができるよう、これまでの指導と活動のあり方を抜本的に改善・刷新する決意です。

 都道府県委員会、地区委員会の活動も、同じ精神にたって、改善・刷新することを訴えます。ただ、ここでのべた党機関の指導と活動のあり方の改革は、「日報」の問題でも、電話による指導・点検の問題でも、たんに実務の問題でなく、党指導のあり方の根本的な改革となるものですから、都道府県・地区委員会でこの方針を実践するさいには、事前によく機関の会議で討論し、みんなの納得と合意を得て、そのうえで実践に移してほしいと思います。

選挙活動のいくつかの重要な問題と教訓について

 選挙活動のあり方については、さまざまな意見が寄せられています。その主なものについて、幹部会としての立場を明らかにするものです。

「選挙区選挙をより攻勢的・積極的に位置づける」という方針について

 第一は、4月の「全国都道府県委員長、地方議員・候補者会議」で提起した「『比例を軸に』を堅持しつつ、選挙区選挙をより攻勢的・積極的に位置づける」という方針についてです。党内の一部から、「この方針によって、比例代表選挙が弱まったのではないか」という意見が寄せられています。

 4月の全国会議で提起した方針は、選挙区選挙で各党が激しく争い、その動向が比例選挙にも大きく影響するという、選挙情勢の新たな特徴が生まれているもとで、「比例を軸に」をあらゆる活動の中心にすえながら、選挙区選挙で攻勢的・積極的なたたかいを展開し、比例選挙と選挙区選挙の取り組みを相乗的に発展させ、そうした努力を何よりも比例選挙の前進に結実させるという提起でした。選挙情勢の新たな展開のもとで、選挙区選挙をより攻勢的にたたかうことを位置づけた方針は、全体として全国から積極的に歓迎され、新たな活力をもたらしました。この方針の提起そのものは的確なものだったと考えます。

 4月の全国会議の方針では、「二人区、三人区でも、本腰を入れて議席の獲得に正面から挑戦する」こと、「一人区であっても、勝利にむけて大いに名乗りをあげて、積極果敢なたたかいをやろう」とよびかけましたが、候補者を擁立する以上、勝利をめざす構えで意気高い活動をすることは当然のことです。ましてや選挙区で各党が激突する様相が生まれたときに、わが党が真剣なたたかいに挑戦しなければ、それは比例代表選挙にも悪い影響をあたえることになります。

 同時に、こうした方針の発展を提起した場合には、それを全党に正確に徹底するとともに、それぞれの選挙区の力量や実情にそくした具体化が必要であり、そのための中央としての熟達した指導・援助が必要でした。各県からの報告として、「結果として『比例を軸に』が弱まった」というものがあったことは、中央の指導・援助の弱点を反映したものと受け止めなければなりません。

 また方針の正確で積極的な具体化のうえでも、こうした新しい提起をおこなう場合には、「全国都道府県委員長、地方議員・候補者会議」という場ではなく、幹部会など適切な機関の会議を開き、その場でよく討論して決定すべきでした。

東京選挙区のたたかいについて

 第二は、東京選挙区でのたたかいについてです。東京選挙区での勝利をかちとれなかった悔しさから、小池晃候補を、東京選挙区から立候補させたこと自体が間違いではなかったかとする意見も寄せられています。

 しかし、小池候補の東京選挙区からの挑戦それ自体は、積極的な方針でした。現在、わが党の国会議員は衆議院、参議院とも、全員が比例代表選出の議員です。比例代表選挙でより多くの国会議員を送り出すとともに、選挙区からも国会議員を誕生させることは、党全体の発展にとってきわめて重要な意義をもつものであり、だからこそ東京での挑戦は全党を大きく励ましました。東京選挙区での挑戦が、容易でないことは明らかでしたが、定数5の首都東京の選挙区で、小池候補を擁立して「絶対確保議席」との位置づけで挑戦したこと自体は、積極的意義をもつものだったと確信しています。

 東京選挙区での勝利を得られなかった最大の要因は、比例代表選挙で、全国的にも、東京でも、日本共産党支持の大波をつくれなかったことにあります。そこにこそ中央の指導責任がありました。

中央が発行した宣伝物について

 第三は、中央が発行した宣伝物にたいして、寄せられた意見についてです。

 一つは、「政治を前に」のポスターのキャッチコピーが良くなかったとの意見です。もともと「政治を前に」のポスターは、総選挙後の新しい政治局面のもとで、わが党が「建設的野党」としての役割をはたす決意を示すものとして作成されたものでした。そのポスターを、民主党政権が、肝心要の問題で期待と公約に背く裏切りを重ね、国民の支持を大きく失いつつあった4月の時点で増刷して送付したのは不適切であり、その局面にふさわしいキャッチコピーを検討すべきでした。

 いま一つは、中央の宣伝物の計画性の問題です。「宣伝物の発行が遅すぎた」、「いまの党支部の状況では、いつごろに、どんな宣伝物が届くかを、事前に、連絡してくれないと、課題をこなしきれない」などの意見が寄せられています。

 早い段階で、党押し出しのリーフやビラを作成すべきだったというのは、すでにのべた反省点です。参議院選挙のような期日の決まった選挙では、早い段階から先を見越した宣伝戦略・宣伝物の発行計画をたて、おおよそいつどのような宣伝物を作成するかを事前に示すことが大切であり、改善をはかります。

情勢判断の問題について

 第四は、情勢判断の問題です。全国からの感想、意見では、「今度は前進できる、現有議席から後退することはない、と思っていた」、「中央の情勢判断が甘かったのではないか」などの意見も寄せられています。

 今回の参議院選挙では、中央は、4月と6月の2回の全国会議、6月の常任幹部会声明と7月最終盤の常任幹部会声明などで、そのときどきの選挙戦の局面での情勢判断をおこない、勝利にむけて必要な課題の提起、全党の奮起のよびかけをおこないました。そこでは中央として、くりかえして、「わが党の取り組みの飛躍がなければ現有議席からの後退もありうる」ことへの警鐘を鳴らしてきました。

 しかし、中央として、今回の参議院選挙がはらむ客観的厳しさを全面的に認識し、それをふさわしい形で全党に伝え、厳しさを打開する手だてをとりきっていたかというと、十分とはいえませんでした。たとえば、すでにのべてきたような支配勢力による思想攻撃がどれだけ深く国民のなかに浸透しているか、それがわが党の選挙戦にとってどういう深刻な障害をもたらすかなどについては、選挙戦をたたかい、その結果を分析するなかで、中央として認識した問題でした。

 選挙戦の情勢判断という場合、他党派との関係、主体的取り組みの到達点だけでなく、メディアを通じて流されている支配勢力による思想攻撃、その国民への影響も含めて、選挙戦の情勢全体を大きな視点でリアルに分析することを、今後の教訓とします。

非拘束名簿式の比例代表選挙での投票の訴え方について

 第五は、非拘束名簿式の比例代表選挙での投票の訴え方についてです。比例議席の絶対確保をめざした第1次候補者の5人全員を当選させることができなかった悔しさ、とくに現職の仁比候補を当選させることができなかったことなどから、非拘束名簿式の投票方法についての意見が寄せられています。

 今回の参議院選挙では、非拘束名簿式のもとでの比例代表選挙の訴えは、「日本共産党名で投票してください」という方針で取り組み、党大会が決定した5人の「絶対確保議席」を保障するため、党員は活動地域の候補者名で投票することにしました。これは前回選挙につづいての方針でしたが、その方針そのものの徹底が弱く、選挙後に、「知らなかった」という意見も少なからず寄せられています。方針の徹底が弱かったことは、中央の指導上の反省点です。

 同時に、「党員は候補者名で」という方針は、第1次名簿の5人の当選を保障するための措置であり、5人の候補者のなかに順位をつけるという方針ではありません。現職の仁比候補が当選できなかった最大の問題は、比例票の絶対数が少なかったことにあります。

 今後の方針については、今回の結果をふまえて、党中央として非拘束名簿式の投票方法について、「比例を軸に」という基本方針をつらぬきつつ、もっとも積極的で合理的な投票の訴え方について、さらに検討をすすめることにします。

「有権者の過半数対話を目標にする」という方針について

 第六は、「有権者の過半数対話を目標にする」という方針についてです。

 第25回党大会は、選挙活動の規模を抜本的に広げることは、今日の情勢が求めている活動だとして、「支持拡大とともに、対話の広がりを思い切って重視する」、「有権者の過半数と対話することを目標に、広大な規模でとりくむ」ことをよびかけました。

 この提起について、「方針は画期的であり、今後とも最重視すべき課題の一つ」、「正面から実践しようとしたところで、要求署名、後援会ニュース、『しんぶん赤旗』などでの全世帯訪問など、いろんなことをやりながら接近していく努力が始まった。今後全体に広げたい」などと積極的な役割を果たしたとの感想が寄せられています。

 その一方で、「過半数対話という方針は、いまの党の現状では、非現実的な方針ではないか」、「『過半数対話』への挑戦ということに力がそそがれることで、事実上、支持拡大が遅れる結果となった」などの批判的意見も寄せられています。

 この批判的意見は重要だと考えます。どんな問題であれ、選挙戦のさまざまな活動を「目標」として提起する場合には、全国のそれぞれの党組織の力の大小、活動の到達点にそくしたものとすべきです。この点で、「有権者の過半数との対話」を「目標」として提起したことは、党組織のそのような実情の違いを考慮の外においた、一律の目標の提起となり、適切ではありませんでした。新しい政治への探求が国民的規模でおこるもとで、今後も「有権者の過半数対話」という方向は大切ですが、それは、活動の幅を思い切って広げるという構え、それぞれの支部のとりくみの大志という位置づけとし、これを「目標」とする方針は、今後はとらないことにします。

 以上が、参議院選挙の政治論戦と選挙活動にかかわる総括と教訓です。ここには、中央としての多くの反省点と教訓がありますが、私たちはそれを、つぎの選挙戦における勝利のために必ず生かす決意です。

3、党の自力の問題について

全国からの切実な声――ここにこそ最大の教訓がある

 つぎに党の自力の問題についての総括と教訓です。

 参議院選挙での後退の原因は、すでにのべた政治論戦上の弱点や選挙活動上の問題点とともに、その根本に、党の自力の不足がありました。

 全国からの感想、意見でも、「党建設の遅れが選挙戦全体を通じて致命的でした。読者拡大の遅れが比例での得票減に直結していると思います。これまで奮闘してきた党員も高齢や病気のために行動力が落ちています」、「実力が足らなかったということははっきりしてきました。いくつかの支部は、党員そのものが少なく高齢化がすすみ、活力がでませんでした。大きな組織では、全党員の活動参加に苦労し、力を出し切ったという状況にはなりませんでした」など、切実な声が多数寄せられています。

 この間、わが党は、強く大きな党をつくるために、さまざまな努力を重ねてきました。第24回党大会以降をみても、2回の「職場問題学習・交流講座」、若い機関幹部を育成するための2回の「特別党学校」、若い世代のなかでの活動を提起した6中総と民青同盟地区再建をすすめる全国会議、地区委員長研修会などを開催してきました。これらを通じて、若い党員、若い党幹部が新たに生まれるなど、前進の芽をつくりだしていることは重要です。

 しかしその成果はごく端緒的なものであり、なおわが党は、党建設の面での後退・停滞傾向を脱していません。党の自力の問題にこそ、参議院選挙の結果からくみ出すべき最大の教訓があります。

党の実態――その問題点を三つの角度から直視する

 参議院選挙後の8月、4年ぶりにおこなった、今年1月時点での党の「現勢調査」の最終集計の結果が明らかになり、党の実態とその問題点があらためて浮き彫りになりました。それをつぎの三つの角度から直視しなければなりません。

党員の実態――党活動への参加、世代的構成、党を語る力の問題  

 第一は、党員の実態です。わが党は、全国の党組織の努力で、この4年間に3万6千人の新入党員を迎え、党員総数は40万余人という水準を維持しています。新入党員を迎えた支部の多くで、新鮮な活力を得て、党活動が前進していることはうれしいことです。

 同時に、党員の実態について、つぎのような問題点があることをリアルに直視し、その打開のために力をつくさなければなりません。

 ――一つは、党活動への参加の問題です。党費納入は、全党的には62%という水準にとどまっています。今回の参議院選挙の活動に参加した党員も、5割〜6割にとどまったと報告されています。支部長のいない支部が4・8%、1カ月に一度も支部会議が開かれていない支部が2割となっています。少なくない党員が党活動に参加できておらず、支部の一部に党生活の崩れが生まれているという現状があります。

 ――二つは、党の世代的構成の問題です。今回の「現勢調査」の結果では、現在のわが党の世代的構成は、65歳未満の党員は約6割、65歳以上の党員が約4割という構成であることが明らかになりました。長期的推移でみると、1997年時点での世代的構成は、65歳未満が約8割、65歳以上が約2割でした。高齢の党員が増加し、その社会的経験や知識、結びつきを生かして大きな力を発揮していることは、わが党にとってかけがえのない財産です。問題は、若い世代、現役労働者のなかでの党員拡大に成功していないことにあります。とくに地域支部では、高齢党員の割合が高くなり、高齢の同志たちの献身的な奮闘によって党が支えられていますが、さまざまな困難があることも事実です。これらは党の世代的継承をはかるという点で、いま何としても打開しなければならない緊急かつ切実な大問題です。

 ――三つは、党を語る力の問題です。党を語る力の土台となる綱領学習は、読了党員で40・6%、第25回党大会決定の読了・徹底党員は33・5%にとどまっています。これが、どんな情勢のもとでも党員が未来への科学的確信と展望をもって不屈にたたかううえでも、一人ひとりの党員が国民との結びつきを生かした活動を発展させるうえでも、大きな弱点となっています。

「しんぶん赤旗」読者――現状と参院選の結果について

 第二は、「しんぶん赤旗」の読者の実態です。機関紙拡大、配達・集金活動は、全党のたゆまぬ努力と大きなエネルギーがそそがれている分野です。にもかかわらず、「しんぶん赤旗」の読者数は、後退傾向から脱していません。

 わが党は、今回の参議院選挙を、読者数で、全党的には2007年参院選比で、日刊紙94・7%、日曜版94・8%の到達でたたかいました。2004年参院選比では、日刊紙83・0%、日曜版79・7%の到達でのたたかいとなりました。現在、「しんぶん赤旗」読者は、日刊紙、日曜版合計で、140万人弱という水準となっています。この党勢の後退が、参議院選挙での後退の重大な原因となったことは、明らかです。

 全国的に比例代表選挙の得票数を後退させたなかで、比例得票率を前回比で上回った自治体・行政区が177ありますが、その多くが、党員だけでなく、「しんぶん赤旗」読者でも前回比で前進させています。比例得票率で10%を超えた自治体・行政区が90ありますが、その大半は有権者比で分厚い党勢をもっている党組織です。どういう情勢のもとでも党の前進をかちとるためには、党員と読者の分厚い力量を築き上げていくことが不可欠であることは、全党のみなさんが共通して実感されていることだと思います。

党機関の体制――常勤体制の弱まり、非常勤の同志の持つ力   

 第三は、党機関の体制の問題です。

 地区委員会の常勤常任委員は、1997年と比較して、1376人から918人へと大きく減っています。常勤常任委員がいない地区が3地区から11地区に増え、常勤常任委員が3人未満の地区が46・3%にまで増えています。地区委員会の指導中核が弱まっていることは、「支部が主役」の活動を援助するうえで困難をもたらしています。財政上の困難もあって常勤常任委員を減らし、それが活動に困難をつくり、悪循環をつくりだしている状況もあります。常勤常任委員を一定数確保することは、地区委員会の任務を果たしていくうえで不可欠となっています。その保障のためにも、「財政活動の4原則」にそくした機関財政の強化に、中央と地方が協力してとりくみたいと思います。

 また、市町村合併にともなって、わが党の地方議員の議席占有率は前進しているものの、地方議員数は4千人台から約3千人に減少しています。これまで常勤的に活動し、党支部とともに党活動を草の根から支えてきた地方議員数の減少も、党の活動にとって新たな困難をつくりだしています。

 同時に、非常勤をふくめると現在、1万人を超える地区役員が活動していることは重要です。その年齢構成は、50代と60代前半で約6割を占め、試されずみの経験豊かで活力ある同志が多数となっています。65歳以上の年金生活に入った同志たちが地区役員として奮闘していることも、大きな力です。この1万人の地区役員に依拠して、「支部が主役」の活動の発展をどうつくりだしていくかは、新しい挑戦の課題です。

全党の知恵と力を結集して、強く大きな党を

 こうした党の実態をリアルに直視し、全党の知恵と力を結集して現状を打開することは、わが党が直面する最大の課題です。

 国民と結びついた強く大きな党、若者や労働者を結集した未来ある党、国政・地方選挙を勝ち抜く強大な党、21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立するという目標を担いうる党への前進をかちとることができるかどうか。わが党はいま大きな岐路にたっています。

 全党の同志のみなさん。今回の参議院選挙の深い総括と教訓にたち、全党の知恵と力を結集して、高い政治的、理論的な力量と、国民と広く深く結びついた強大な組織力をもった日本共産党を、何としても築こうではありませんか。私たちは、全党のみなさんと心を一つに、全力をつくす決意です。