2010年6月8日(火)「しんぶん赤旗」

参議院選挙にどうのぞむか

NHK日曜討論 志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は6日、NHK「日曜討論」に出演し、鳩山首相の退陣・菅首相への交代問題の見方、終盤国会への対応、参議院選挙にどうのぞむかなどについて、インタビューに答えました。聞き手はNHKの島田敏男解説委員。


菅新首相――鳩山退陣への反省と自覚があまりにもない

 島田 今回の鳩山(首相)・小沢(民主党幹事長)ダブル辞任を受けての菅新体制の発足という政府・与党側の動きをどうご覧になっていますか。

 志位 鳩山前政権が、どうして発足してからたった8カ月で、かくも惨めな退陣に追い込まれたかといいますと、「政治を変えてほしい」という多くの国民の期待を裏切った、自ら掲げた公約を裏切った、このことに対する国民的な怒りが広がって、破たんした結果だったと思います。

 ところが菅さんの発言を聞いておりますと、このことは鳩山さん個人の問題ではなくて、民主党政権全体の共同責任であり、菅さんはとりわけ副総理として重い責任を負っているにもかかわらず、それに対する反省と自覚があまりにもないというのが率直な感想です。

 たとえば(民主党代表選)出馬の記者会見を聞きますと、(菅氏は)鳩山さんの辞任によって、これまで普天間(問題)と「政治とカネ」(の問題)という「二つの大きな重荷」があったけれど、これが「取り除かれた」とおっしゃった。これはとんでもない考え違いだと思います。

 普天間問題というのは結局、(名護市)辺野古の海を埋め立てて巨大な基地をつくる案に戻った、そして徳之島や本土にも分散移転するという最悪の案になったわけです。この(5月28日の)日米合意は厳然として残っている。沖縄県民にひどい「重荷」を背負わせようという方針を続けようとしながら、鳩山さんが辞めたから一件落着なんだと、こうはならないわけですね。

普天間問題――日米合意は白紙撤回し、無条件撤去で交渉を

 島田 普天間の問題で菅さんは、鳩山さんが最後に日米共同声明としてまとめた合意をしっかり踏まえて対応していくんだという言い方をしていますね。この点についてさらに、どうお考えですか。

 志位 日米合意というのは、「県内移設」という方針に戻った、辺野古に新基地をつくる方針に戻ったというだけではないんです。(鹿児島県)徳之島や本土にも訓練を分散移転する、そして拡大するということですから、もっと悪い案になった。

 沖縄では4月25日に9万人の県民集会が開かれ、私も参加しました。「県内移設は絶対反対」「普天間基地は閉鎖・撤去」、これが沖縄県民が示した意思なわけです。日米両国でどんな合意をしようと、県民の合意は絶対に得られません。

 私は先日、アメリカに行って、国務省の高官ともこの問題について話し、「この方針は絶対に県民の合意は得られません。無条件撤去しかない」と話しましたが、やはりそこにいかないと解決の道はありません。日米合意は白紙撤回して、無条件撤去を求めて米側と交渉すべきです。

「クリーンな政治」というなら、小沢氏の証人喚問が最低限の条件       

 島田 もう一つは「政治とカネ」の問題。これも菅新政権が背中にしょうことになるわけですが、とくに小沢さんの「政治とカネ」の問題について、志位さんはどのような対応を求めていきますか。

 志位 小沢さんの問題というのは、政治資金規正法違反の容疑にとどまらず、ゼネコンのヤミ献金が流れていたのではないかという非常に深刻な問題です。ところが私たちの再三の要求にもかかわらず、証人喚問はおろか参考人招致もやられていない。

 ですからこの小沢さんの問題を本当に解決する、民主党が「クリーンな政党になる」というのであれば、小沢さんを国会に出させて、証人として証言をさせ、国民の前で真実を語ってもらう。そうして初めて「クリーンな政治」ということを語る、最低限の資格が得られると思います。

企業・団体献金の即時禁止、政党助成金の撤廃を

 島田 菅さんの新しい体制のもとで企業・団体献金の扱い、あるいは政党助成金の問題でどういう考え方を出すかまだ分かりませんが、志位さんはどう主張していきますか。

 志位 企業・団体献金は、あらゆる政治腐敗の根源ですから、私たちは即時禁止に踏み切るべきだと考えます。そして、法律で禁止されなくても自分の党で決めれば受け取らないことはできるわけですから、受け取りをしないというのは「クリーンな政党」というかぎり当たり前のことです。

 それから政党助成金がいま、いろいろな害悪をもたらしていると思います。これは政党の運営を税金頼みにしてしまっている。300億円もの国民の税金が、共産党以外の党で山分けされて自由勝手に使われ、(政党によっては)党の収入の7割、8割が税金になっている。「官から民」といいながら“国営政党”になっている。これは異常な事態で、この政党助成金という制度も撤廃すべきだというのが私たちの立場です。

選挙制度――民意を鏡のように反映する比例代表中心の制度への改革を

 島田 選挙制度ですが、どうしても今の制度は衆議院も参議院も二大政党に有利に働く。それ以外の政党にとってみると、この選挙制度を変えたいという気持ちはあろうかと思うんですが、志位さんはどのようにお考えですか。

 志位 小選挙区制は、第1党に圧倒的に有利な制度で、第3党、第4党、中会派、小会派は、議席を得ることがきわめて困難な非民主的な制度です。私たちは、選挙制度は、民意を鏡のように反映することが最も民主的なあり方だと考えていますから、比例代表制を中心とした制度に抜本的な改革をはかるというのが私たちの主張です。

郵政法案――根本から矛盾した法案は廃案にして抜本的に見直せ

 島田 当面の最終盤の国会、会期延長の可能性も民主党内から意見が出始めていますけれども、いかがお考えでしょうか。

 志位 与党から出ている会期延長論は、郵政法案を何が何でも通すためのものですけれども、いまの郵政法案は、郵貯・簡保のユニバーサル・サービス(全国均一サービス)を保障すると言いながら、株式会社にするというもので、根本から矛盾した法案です。私たちは、ユニバーサル・サービスを保障するというなら、公社に戻すというような抜本的な改革が必要だと思っています。

 何よりも、衆議院ではたった6時間しか審議せずに強行採決しているわけですから、これはいったん廃案にして、抜本的に見直すことが必要だと思います。

参院選の投票日――現時点では7月11日を想定して全力をつくす

 島田 与党側が検討している2週間程度の延長があった場合、参院選が2週間ずれて7月8日公示、7月25日投票という日程になる可能性もあります。このことについてはどうお考えですか。

 志位 かりに、いろいろな状況の中で選挙の日程が延びれば、延びただけ、私たちは大いにその期間を有効に活用してがんばりますけれども、現時点では何ともいえないわけですから、7月11日投票ということを想定して全力をつくしているところです。

アメリカと財界にモノの言える政治を

 島田 参院選で共産党が柱として訴えていく政策は、今回は何になりますか。

 志位 「アメリカと財界にモノの言える政治をつくろう」ということを訴えていきたいと思います。

 普天間の問題で、なぜああいう(鳩山政権の)転落が起こったかといいますと、結局、「海兵隊は抑止力だ、平和を守るための部隊だ」という米側の論理に屈してしまった、ここから転落が始まったと思うんですね。しかし、海兵隊はアフガニスタンやイラクに展開している部隊であって、日本を守る部隊ではないわけです。アメリカにモノが言えない政治では、国民の暮らしや安全を守ることはできない。

 さらに、後期高齢者医療制度は撤廃と言いながら、この約束がほごにされました。政府の労働者派遣法の改定案は、「抜け穴」だらけのザル法になっています。なぜこうなるかといいますと、日本経団連の圧力に屈してずるずると後退していく。消費税増税の声が起こっているのも財界の号令です。

 アメリカと財界に対して正面からモノを言う、直接話し合う、私たちは、そういうことをやってきました。訪米したさいに、核兵器廃絶を世界に訴えるとともに、日米関係を対等・平等・友好なものにしていこう、沖縄の普天間基地(問題)は無条件撤去しか解決の道はないですよと、アメリカに伝えてきました。こういう政党が伸びてこそ、日本の政治に明るい未来が開けるということを堂々と訴えて、必ず躍進を果たしたいと思っています。

 島田 参院選の目標は。

 志位 私たちは、比例代表選挙で650万票以上、5議席以上を絶対にとりたいと思っております。選挙区では47都道府県すべてに(公認・推薦)候補者を立てていて、どこでも必勝をめざしますが、とりわけ東京の小池(晃政策委員長)さんは、(比例代表から)選挙区に転出しましたので、必ず(議席を)確保したいと思っています。

 島田 ありがとうございました。