2009年11月6日(金)「しんぶん赤旗」

志位委員長の記者会見

(詳報)


 日本共産党の志位和夫委員長が5日の記者会見で表明した見解は以下の通りです。


 国会論戦のなかで、民主党政権のいくつかの重大な問題点が明らかになってきた。わが党は、「建設的野党」の仕事の一つとして、国民の利益を守る立場から新政権の問題点をただすことを公約してきたが、いまの局面のもとでは、この仕事がたいへん重要になってきている。4点ほど問題を提起しておきたい。

沖縄・普天間基地

「『県外』公約でない」(岡田外相)は絶対通用しない

 第一は、沖縄・普天間基地の問題だ。わが党は、衆参の代表質問、衆院予算委質問で、新政権が、「県外、国外」(への移設)という自らの公約にたち、「県内たらい回しを許さない」という沖縄県民の意思にたって、本腰を入れた対米交渉をおこなうことを求めてきた。

 ところが、昨日の衆院予算委で、わが党がこの問題をただしたのに対して、岡田外相は「『県外』(移設は)公約ではない」と答弁した。これは絶対になりたたない弁明だ。党首が、公開のテレビ党首討論で「県外、国外」と言明したことが公約でないなら、選挙中の論戦は意味がなくなる。

 鳩山首相は、昨日の答弁で、県内移設を求める岡田発言について、「(公約の)範囲の中だ」とのべた。自らの公約とまったく異なる発言を、閣僚がおこなっていることを容認、放置するというのは、無責任な態度といわねばならない。

 わが党は、首相に、総選挙での公約、沖縄県民の意思を踏まえた対米交渉を重ねて強く求める。「対等な日米関係」というが、それができなければ、旧来の対米従属外交と変わらないといわれてもしかたがない。

後期高齢者医療制度

「先送り」への方針転換に道理はない

 第二は、後期高齢者医療制度の問題だ。国民の世論の圧倒的多数は、差別制度の即時撤廃だが、わが党の質問にたいして、首相は、「新しい制度」ができるまでは撤廃を先送りにするという姿勢を示した。

 これも重大な態度の後退だ。昨年の国会で当時の野党4党共同で廃止法案を参院で通したさいには、民主党の提案者も「差別への怒り」が最大の問題であり、「いったん元に戻すことが非常に重要」、「戻した上で旧老人保健法制度の問題点を是正する」と言明してきたことだった。

 なぜ方針を転換したのかとのわが党の問いに、首相は、「混乱を生じてはいけない」と弁明した。これは自民・公明などによる反対論と同じ言い訳であり、道理はない。

 「混乱」というなら、最大の混乱は、高齢者を差別する制度をつくったことそのものにある。わが党は、すみやかな撤廃を強く求めていく。

「政治とカネ」

衆参の予算委員会で真相解明のための集中審議を

 第三は、鳩山首相の「偽装献金」問題、小沢幹事長の政治資金パーティーの虚偽記載疑惑についてである。

 首相の疑惑について、わが党は、司法まかせにするのでなく、国民への説明責任を果たすことを求めてきた。しかし、首相は、「捜査に支障をきたす」などの理由で、「発言を控える」と説明責任を避け続けてきた。

 そのなかで、昨日の予算委員会の答弁で、首相は、元秘書が鳩山家の資金管理団体「六幸商会」から資金を引き出す際に、首相がその手続きに必要な「指示書」に署名していたことを明らかにした。

 また、「偽装献金」の資金源について、首相本人以外の、親族、企業、労働組合などではないと言い切れるかとの問いに、首相は「私の知る範囲でそのようなことはないと信じている」とのべるのみだった。

 「偽装献金」はすでに明らかになっている。首相の関与はどうだったのか、資金源はどうなっているのか。疑惑をもたれたら自ら明らかにするのが国会議員の責務である。ましてや首相においては、それがいっそう強く求められる。

 くわえて、今日の報道で、小沢幹事長の関連政治団体「小沢一郎政経研究会」が、政治資金収支報告書で、2000〜04年分の政治資金パーティー券収入について、個々の企業の購入額を実際より少なく見せかける虚偽記載をした疑いがあることが報道されている。購入上限額(1回のパーティーで1企業150万円)を上回る金額を要求し、上限額との差額を、収支報告書で企業名の記載義務がない小口分に分散している疑いだ。これについても小沢氏に説明を求める。

 これらの「政治とカネ」をめぐる一連の疑惑について、国会として真相究明が必要だ。わが党は、衆参の予算委員会で「政治とカネ」をめぐる集中審議をおこない、関係者の出席を求め、国民の前で徹底的な真相究明をおこなうことを要求する。

「官僚答弁の禁止」

「政治主導」の名で解釈改憲がすすめられる重大な危険

 第四は、民主党・小沢幹事長が主導してすすめようとしている「国会改革」の一つの内容として、法律で「官僚答弁の禁止」を決めようとしていることについてである。ここには重大な問題がある。

 まず、国会の「国政調査権」「行政監督権」の重大な侵害となる。国会が行政機構、官僚機構の問題点を直接ただすことに大きな障害が持ち込まれる。

 くわえて、さらに重大な問題が浮かび上がってきた。小沢氏は、会見で、「法制局長官も官僚でしょ。官僚は(答弁に)入らない」とのべ、内閣法制局長官の国会答弁を封じる意向を示している。

 平野官房長官は、4日の会見で、鳩山政権が、憲法解釈について、内閣法制局長官の過去の答弁にしばられず、「政治主導」で決めていくとの見解を示した。

 これまで内閣法制局は、憲法9条について解釈改憲を積み重ね、憲法違反の海外派兵を合理化する「論建て」をすすめてきた。しかしそれでも、憲法9条のもとでは、「海外での武力の行使」「武力行使と一体となった活動」などは禁止されているとの一線を超えることはできなかった。

 小沢氏の立場は、「国連の決定があれば、武力の行使をおこなうことも、憲法上許される」というものだ。小沢氏は、この立場に内閣法制局が従わないことに、強い批判と不満を示してきた。その立場から、小沢氏は、自由党時代の03年5月には「内閣法制局廃止法案」を提出している。同時に03年4月には「安全保障基本法案」を提出し、国連の決定があれば「武力の行使を伴う活動」を含めた活動をおこなうことを提起している。

 これは過去の問題ではない。07年に小沢氏は、民主党代表として、『世界』の論文で、アフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)への参加を主張し、「国連の平和活動は、たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しないというのが、私の憲法解釈です」とのべている。

 小沢氏がすすめようとしている「官僚答弁の禁止」の真の狙いの一つは、内閣法制局長官による従来の憲法解釈を、「政治主導」の名で自由勝手に変え、小沢氏の特異な憲法解釈を押し付ける――これまで自民党政権ですら違憲としてきた自衛隊の海外での公然たる武力行使を合憲化する、極めて危険なものといわねばならない。わが党は、この動きにきびしく反対するものである。