2009年8月15日(土)「しんぶん赤旗」

雇用と社会保障を支える政治を

TBS党首討論 志位委員長が発言


 日本共産党の志位和夫委員長は、13日夜放映されたTBS系番組「THE・NEWS」の6党党首討論に出席し、景気対策、消費税問題を中心に改革の展望を語りました。志位氏のほかに出席者は自民党の麻生太郎首相(総裁)、公明党の太田昭宏代表、民主党の鳩山由紀夫代表、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の綿貫民輔代表。キャスターの後藤謙次氏らが司会を務めました。


「建設的野党」の立場で

 冒頭、番組側から各党首それぞれに質問があり、志位氏は、総選挙後の首相指名について、「ズバリ、民主党の鳩山代表に投票することはありますか」との問いにこう答えました。

 志位 最初の投票で私たちは、独自の行動をとります。民主党とは、例えば消費税の問題、あるいは憲法9条の問題など、国の政治の根幹(について立場)が違います。ですから、お互いに連立政権を組むという条件はないと(いうことです)。これはお互いがそういうふうに思っていると思います。ですから、私たち独自の行動をとります。

 私たちは、民主党との関係では、(総選挙後に)民主党中心の政権ができる確率がだいぶ高いと思いますけれども、その際は、「建設的野党」として頑張りたい。すなわち、賛成できるものでは協力する。一方、反対しなければならない、国民にとって有害なものは、きっぱり反対という立場でやってまいります。

内需主導への切り替えこそ本当の景気対策

 討論の最初のテーマは各党のマニフェスト(政権公約)についてで、とくに暮らしの問題が取り上げられました。麻生氏は、「景気回復はまだ道半ば。引き続き全力を挙げて、景気回復最優先」などと表明。これに対し鳩山氏は、「決して経済政策が成功していると言える状況ではない」「内需をうまく導き出すような政策に」と述べました。志位氏は、自公政権の経済対策の根本的転換を力説しました。

 志位 (自公は)「成長戦略」ということをおっしゃるけれども、2001年から2008年までをとってみますと、GDP(国内総生産)が2%伸びてはいるんですよ。ですから、全体のパイは10兆円ぐらい増えているんですよね。ところが家計の手取り収入(可処分所得)は、1世帯あたり26万円減っているんですよ。

 ですから、この時期景気は良かったというふうに数年間言われてきたけども、よかったのは一部輸出大企業だけですね。輸出をどーんと伸ばして、1・6倍にも伸ばした。その企業はうんともうかったけれども、働く人は、労働法制がどんどん規制緩和されて、派遣労働をはじめとして「ワーキングプア」が広がって、そして家計はどんどんひどくなっていったわけですね。ですから、こういうことを繰り返していったらだめだと思う。

 本当に景気を良くしようと思ったら、内需主導に切り替える必要があるし、それから国民の雇用や社会保障を支える政治が必要です。

なぜ、消費税増税の議論にしかならないのか

 次のテーマは消費税です。「景気が好転したら遅滞なく増税」という立場の自公。4年間は上げないとする鳩山氏は一方で、最低保障年金に消費税を充てる立場を強調。消費税問題を含む与野党協議機関についても、「拒否するつもりはない」と述べました。これに対し志位氏の指摘は明快でした。

 志位 結局、この消費税増税というのは、自民党は、かなり近いところで考えている。民主党は、先ほどのお話を聞きますと、当面は手をつけないけど先々は消費税(増税)と。結局消費税(増税)という議論になってくるのはなぜかというふうに考えますと、二つの分野を「聖域」にしているからだと思うんですよ。

 第一に、無駄遣いの一掃というんだったら、5兆円の軍事費に縮減のメスを入れる。2800億円の米軍への「思いやり」予算を廃止する。そしてグアムへの基地建設など3兆円もの米軍再編経費とか、こういうものをなくす必要がある。

 もう一つは、大企業と大金持ちに対する行き過ぎた減税を正せるかどうか。いまアメリカでも大企業と大金持ちに120兆円の増税を行って、それで医療保険と庶民減税をやろうという動きになっています。

 この二つがやれるかどうか。やらないと、結局消費税(増税)という議論になっていくと思うんですよ。

どうする「小泉改革」の傷跡

 番組後半、党首が他党首一人を指名して、番組が用意したなかからテーマを選んで質問するコーナーに。志位氏は「小泉改革」を選び、麻生氏にこう切り込みました。

 志位 麻生総理は今度のマニフェストで「国民の暮らしの安心を取り戻す」とおっしゃられていますけれども、暮らしの安心と希望を奪ってしまったのが「小泉改革」だったと思います。二つの点を端的に聞きたいと思います。

 一つは、労働法制の規制緩和をどんどん進めて、労働者の3人に1人は不安定雇用、年収200万円以下の「ワーキングプア」といわれる方々を1000万人以上に増やしてしまった。このことへの反省はあるのかどうか。そして労働法制の規制緩和から規制強化という方向にかじを切り替える、たとえば労働者派遣法の改正も含めてかじを切り替えるご意思はあるのかどうか、これが一点です。

 二つ目の点は、社会保障の問題です。(毎年、社会保障費の)自然増を2200億円削ってきた、これがあらゆる点で社会保障をズタズタにしたと思います。この前の番組で、“もう2200億円削らないんだ”と言われましたけれど、その傷跡がたくさん残っているんですね。

 端的に言って四つ聞きたい。一つは後期高齢者医療制度をどうするのか。そして、障害者自立支援法をどうするのか。さらに、医療費の窓口3割負担をどうするのか。四つ目に生活保護の老齢加算、母子加算を削ってしまったことをどうするのか。こういう傷跡をどうするのか、具体的に聞きたい。

 これに対し麻生氏は、今後3年間で100万人の職業訓練をおこなうなどの政策を並べただけで、根本的な反省は語らないまま。「派遣をすぐやめた場合は派遣労働者の雇用を直ちに失わせることになる」などと、見当違いの態度まで示しました。

日米FTAでコメ82%が壊滅

 このコーナーでは、太田氏が鳩山氏に対し、民主党が日米FTA(自由貿易協定)問題について、マニフェストで「締結」から「交渉促進」に「修正」した問題を指摘。鳩山氏は、「方向として、国際的な環境の中でがんばっていかなければならない」などと述べました。志位氏は、「日米FTAに入ると、日本の農業、とくにコメが82%壊されるという問題です。交渉に入ってしまうとそういう結果になる」と強調。自公にたいしても、「さんざん自由化をやってきたわけだから反省が必要だ」と述べました。

 番組では最後に、各党党首が「目指すべき日本の未来」像をフリップに書いて示しました。志位氏は「『国民が主人公』の日本を」と掲げました。