2009年2月6日(金)「しんぶん赤旗」

「派遣切り」を止めるために政治はあらゆる手段をつくせ

衆院予算委 志位委員長の質問


 日本共産党の志位和夫委員長が四日の衆院予算委員会でおこなった基本的質疑の内容を紹介します。(Movie


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(写真)質問する志位和夫委員長=4日、衆院予算委

 志位和夫委員長 日本共産党を代表して、麻生総理に質問します。

 私は、昨年二月、十月の本委員会で、派遣労働の問題を取り上げ、その最大の問題点が、人間をモノのように「使い捨て」にする、究極の非人間的労働であることを明らかにし、抜本的是正を求めてきました。

 いま景気悪化のもとで、大企業が競い合ってすすめている大量の「派遣切り」「非正規切り」は、人間を「使い捨て」にする派遣労働の非道さ、残酷さを、最悪の形で示していると思います。多くの労働者が、突然の「首切り」で職を失い、同時に住居も失い、大量のホームレスがつくられ、寒空の路頭で文字通り命の危険にさらされています。

志位
雇用破壊は「政治災害」だ。「想定外」という言い逃れは通用しない

麻生首相
雇用の確保のために(派遣労働は)一定の役割を果たした

志位
つくったのは大量の「働く貧困層」だ。反省が必要だ

 志位 まず、総理にただしたいのは、総理が、こうした事態を引き起こした政治の責任をどう自覚されているかということについてであります。

 派遣労働が急増したことは、もとより自然現象ではありません。財界の求めに応じて、一九九九年に派遣労働を原則自由化する法改悪を行い、さらに二〇〇四年に製造業にまで広げる法改悪を行うなど、一連の労働法制の規制緩和の結果であることは、否定できない事実であります。

 この問題について、本会議で私が、「いま起こっている事態は、政治の責任で引き起こされた『政治災害』であるという認識と反省が必要ではないか」とただしたのに対して、総理は、「今回の急激な雇用情勢の悪化は、これまでの改正時の想定をはるかに上回るものだった」とのべるにとどまりました。しかし、派遣労働の自由化が何をもたらすかは、私は、十分に「想定」できたと思います。一九九九年の派遣労働の原則自由化のさいに、わが党は、これが「大量の低賃金、無権利の労働者をつくる」と批判いたしました。現実は恐れていた通りになりました。「想定外」という言い逃れは、私は、通用しないと思います。

 私は、政治の責任への真摯(しんし)な反省があってこそ、対応も真剣で本腰が入ったものになると思います。重ねて総理に問いたい。「政治災害」であるという認識と反省が必要ではないでしょうか。端的にお答えください。

 麻生太郎首相 いま労働者の派遣法に関連したご質問だったと思いますが、この法律ができた当時のことを考えたり、いろいろそのできた経緯、その時代の状況というのを合わせて考えなければならんもんだとまず基本的にそう思っております。当時、いろんな意味で雇用というものが低賃金を求めて海外へという時代にありました。そういった時代の中にあっては、これは我々としては国内において雇用を確保するための一つの方法としてという、確かそういった議論があの当時なされたと思いますが、雇用の場を確保することと、もう一つは労働者の多様な働き方というものに対応するために終身雇用で、ずっと同じ会社にずっと一生いるというのはいかがなものかという当時の風潮もありました。そういった意味では我々としては、こういった方々の雇用の確保ということを考えて、私どもは、これは一定の役割を果たしたもんだと思っております。特にその時代において。

 ところが、いまいわれておりますのは、ご指摘にありました通り、急激な、我々の想定を、少なくともあの当時やりました二十世紀末の想定を上回るような事態が起きたために、多くのところで、いろんな意味での正規、非正規の格差の話とか、またいわゆる急激な雇用情勢の悪化にともなって、いろいろなかたちで我々の予想としていなかったとこに起きていると。したがって、それに対応していかなければならないもんだと私は基本的にそう思っておりますんで、今回の日雇いの原則禁止などなど、いまいろんな提案を申し上げさしていただいておりますが、この問題につきまして、改めていろいろな場で、もっとこういう情勢がある、ああいった状態があると、いろいろな議論がなされて結構なものだと思っております。

 志位 政治の責任ということは、はっきりお認めにならない答弁でした。雇用の場を確保されるというふうに言われましたけれども、つくったのは大量の「ワーキングプア」、「働く貧困層」ですよ。そして、いざとなれば「首切り自由」のそういう不安定雇用ですよ。それから、労働者のニーズと言いますけど、財界のニーズでつくった制度がこの制度だったと思います。私は、これは、反省が必要でありまして、反省してこそ対策も本腰を入れたものになるということを重ねて申し上げたいと思います。

志位
大企業による大量解雇は「やむを得ないもの」ではないと認めるか

首相
企業としてもう少し頑張れるところがある

 志位 具体的にただしていきます。

 大企業による大量解雇の波は拡大する一方です。厚生労働省の調査でも昨年十月から今年三月末までに約十二万五千人が職を失うとされています。業界団体の試算によると、製造業で働く派遣・請負の失業は三月末までに四十万人に達するといいます。

 こうしたもとで、職を失った労働者の住居と生活と再就職の支援のために万全の手をつくすことは、もとより政治の重大な責任であります。同時に、これ以上の大量解雇による被害者を出さない、「非正規切り」を止めるために、政治が可能なあらゆる手段をつくすことが今、強く求められていると思います。

 それに取り組むうえで、総理に確認しておきたいことがあります。いま大企業がすすめている大量解雇が、全体として、「万策尽きたうえでのやむを得ない」ものかどうかという問題です。いま大企業の多くは、赤字決算の見通しを出している。しかし、ある新聞にこういう川柳が投稿されました。「赤字だと?黒字の金はどこいった」。大企業はつい最近まで空前の黒字を誇っていたではないか。その金はどこにいったんだ。これは庶民の当然の気持ちだと思います。

 (パネル(1)を出す)これは、製造業の大企業の内部留保と、非正規労働者数の推移を表したグラフです。この十年間に、非正規労働者は一千百五十二万人から一千七百三十二万人に急増しています。それと並行して、大企業の内部留保は八十八兆円から百二十兆円へと急膨張しています。この巨額の内部留保のごくわずか、1%を取り崩すだけで、四十万人の非正規社員の雇用を維持することができます。大企業には雇用を維持する体力が十分にあることは、私は、明らかだと思います。

パネル(1)

(写真)パネル(1)

 私が、本会議で「内部留保のごく一部を雇用を守るためにあてることは企業の当然の社会的責任ではないか」とただしたのにたいして、総理は、「こういう非常時こそ労働者の雇用と生活をしっかり守るよう、最大限の努力をしていただきたい」と答弁されました。この答弁は、大企業には雇用を守るための「努力」の余地がまだある、すなわち、いま大企業が行っている大量解雇は、全体として見るならば、それを行わなければ経営破綻(はたん)に陥るといったような、「万策尽きたうえでのやむを得ないもの」とは言えないということですね。そういう認識のうえでの答弁だと理解してよろしいですね。確認したいと思います。

 首相 あの、お答えをしておきますが、個別企業のことに関しましてお答えをすることができないのは当然で、まずこれだけは頭に入れておいてください。何回も申し上げますけど。それから、問題は大企業だけではありません。中企業でも同じことが言えると思います。大企業、大企業と言われると、あの、よく、志位さん好きな言葉でよく大企業と使われますけれど、中企業でも結構やってるところありますんで、我々から言わせますと、それは大企業だけの問題ではないと。私は基本的にそう思っております。企業のなかにおいて少なくとも、まだ雇用ができる、そういった余力があるという企業は基本的に雇用を支えるようにすべき。これはずっと同じことを申し上げてきたと思います。これはもう、志位さんと、総理になる前からこの話はさせていただいたことがありますんで、申し上げてきたと思います。少なくとも、そういった意味で人を大事にするというのは企業経営者として、特に日本の企業経営者はここが一番大事な観点、大事なキーポイントだと記憶いたしますし、少なくともそういった企業というのは、会社が雇用だけは守るという、松下幸之助をはじめいろいろな方々の逸話が残っているのはもうよくご存じのとおりだと存じます。

 そういった中にあって、今、なんとなく慌てておられるって所も認めているとこです。とにかく、いきなり来ましたんでね。かなり慌てている。それともう一つは、企業として、やっぱり今までになかったのは、グローバライゼーションといわれるあの時代の中にあって、企業の出す利益の配当率の話、配当性向、配当率といろんな言葉がありますが、こういうものに関して、きちんとしたものにしないと、株主からの反応が悪く、株価が下がる、結果として会社のファイナンスがうまく行かなくなるという難しさが企業の場合、最近大きな企業ほど、上場しておられる企業ほどそうなっておられる傾向がある、私はそう思っております。

 したがいまして、今やっておられるのは、かなり慌てておられるにしても、もう少し頑張れるところがあるのではないか、他の企業がやってるからうちもやっちゃおうというようなことに流れてりゃせんかということは、私どもの立場として、感じとして言わせていただけることは申し上げられますが。重ねて申し上げます。私どもは、単なる行政府、立法府におりますんで、いきなり会社の利益の内容について我々が差し挟むというのはいかがなものかと思っております。ただ、労働者派遣法の違反に関しまして、平成十九年度におきまして、政府として六千五百件を超える文書指導等々を実施しておりますんで、いずれにいたしましても、違反が確認された場合、厳正な指導は徹底していかれてしかるべきだと考えております。

志位
いすゞでは偽装請負から通算で4〜6年も派遣で働かせたあげく解雇している

首相
明らかに(法律に)違反している

 志位 全体としてみるならば、余力がある、あるいはもう少し頑張れるところがあるということは否定されませんでした。大企業にはその気になれば、雇用を守る体力はあると。それならば、政府はあらゆる手段を尽くして、雇用を守る社会的責任を大企業に果たさせる必要があります。

派遣期間は最大3年まで、それを超える場合は直接雇用の申し出義務がある     

 志位 この議論をすすめる前提として、ここで労働者派遣法の大原則を再確認しておきたいと思います。これは、厚生労働大臣に二つの点を確認したい。

 第一は、派遣は「臨時的、一時的業務に限る」「常用雇用の代替――正社員を派遣に置き換えることはしてはならない」、これが労働者派遣法の大原則だということです。

 第二は、この大原則を担保するものとして、派遣受け入れ期間の期間制限が設けられていることです。すなわち派遣期間は原則一年、最大三年までという制限があり、期間制限を超えて同一業務をさせることは違法行為になる。三年を超えて労働者を使い続けようという場合には、派遣先企業は労働者に直接雇用の申し出をしなければならない。ということですが、この二点、間違いないですね。

 舛添要一厚労相 労働者派遣法におきまして、この臨時的、一時的な労働力の雇用調整制度として派遣制度を位置づけられている、まずこれはその通りです。それから、派遣可能期間を制限する、今、制限期間は委員がおっしゃったとおりですが、これは派遣労働を常用雇用の代替にしないことの担保のためであります。そして、派遣可能期間を超えた派遣労働者を使用しようとする場合は、一定の要件、一定の要件というのは、派遣先と派遣労働者があらかじめ派遣元事業主から派遣停止の通知を受けていると、こういう条件があれば、派遣先に雇用されることを希望する者に対し、雇用契約を申し込まなければならないと、こういうふうになっております。

 志位 基本的に確認いたしました。(派遣労働の期間制限は)三年以内ということですね。

偽装請負で働いていた期間は、派遣期間に通算される

 志位 ところが実態はどうか。私は、この間、全国各地で、「派遣切り」の被害にあった多くの労働者から直接、話を聞かせていただきました。驚いたのは、四年、五年、六年と、同じ工場で同じ仕事を続けながら、派遣先企業から直接雇用の申し出がないまま、突然の「派遣切り」によって、職を失っているケースが大変に多いということであります。

 たとえば、いすゞ自動車です。いすゞ自動車は、栃木工場、神奈川・藤沢工場で、期間社員、派遣社員で合計千四百人の解雇をすすめていますが、労働者のみなさんに話を聞きますと、その多くは、いすゞで四年、五年、六年と働き続けているといいます。

 なぜそうなっているのか。いすゞでは、二〇〇三年ごろから二〇〇五年にかけて請負労働者を使っていました。ところが偽装請負が社会問題化する中で、いすゞは二〇〇五年十月、当時千五百人いた請負労働者をいっせいに派遣労働者に切り替えた。その結果、偽装請負から通算しますと、多くの労働者が四年、五年、六年という長期にわたって派遣として働き続けることになったわけであります。

 厚生労働大臣にもう一つ確認しておきたい。偽装請負とは違法な形での派遣労働ですね。ですから、偽装請負で働かされていた期間は、当然、派遣期間に通算されることになりますね。この点(どうですか)。

 厚労相 契約の形式にかかわらずですね、実態として労働者派遣事業が行われている場合は、派遣期間として通算するとなっていますので、したがって、今おっしゃった偽装請負が行われていた場合は、偽装請負の期間も通算し、実態として労働者派遣事業が行われている期間により、派遣期間を判断するということになっております。

 志位 通算するという答弁が明確に、今、されました。


 偽装請負 派遣の場合は、派遣先から指揮命令を受けて働きますが、「請負」の場合は受け入れ先企業の指揮命令は受けません。「偽装請負」は、実態としては、派遣先の指揮命令で働く派遣労働なのに、契約上「請負」と偽り、受け入れ先企業が労働者派遣法の規制を逃れようとする違法行為です。

 派遣期間制限 派遣法は、製造業などでの派遣労働の受け入れ期間を最長三年と定めています。これは、派遣はあくまで「一時的、臨時的業務」に限定し、常用雇用の代替にしないという原則を担保する措置です。それを過ぎる場合、派遣先には派遣労働者に直接雇用(正社員など)を申し込む義務があります。今回の志位委員長の質問では「偽装請負」だった期間も含めて、派遣期間として通算されることが確認されました。


偽装請負、派遣、「名ばかり期間社員」、派遣、そのあげくの解雇はあまりに理不尽だ

 志位 そうなると、どういうことになるか。(パネル(2)を出す)これは、いすゞで「派遣切り」にあった労働者の典型的なケース、Tさんの職歴をパネルにしたものです。Tさんが、いすゞで働き始めたのは二〇〇三年の四月、今年一月に「派遣切り」にあっていますが、合計で五年十カ月もの間、働き続けています。仕事は一貫して自動車づくりの心臓部といわれるエンジンの組み立てラインでの作業でした。

パネル(2)

(写真)パネル(2)

 話をうかがいますと、二〇〇三年四月から二〇〇五年の十月までは、形は請負だったが、請負元の社員は出勤を確認するだけで、ラインでの作業はいすゞの正社員の指示を受けての仕事であり、明らかな偽装請負でした。偽装請負が社会問題になる中で、Tさんは他の請負社員とともに二〇〇五年十月、派遣に切り替えられました。さらに二〇〇六年十月には、当時の派遣期間制限一年に達したために、期間社員に切り替えられました。ところが、期間社員の期間はわずか三カ月で、二〇〇七年一月には派遣に戻された。期間社員になっても、仕事場も業務も派遣のときと同じ、寮も送迎バスも派遣会社のものでした。最初からすぐ派遣に戻すことを予定した「名ばかり期間社員」だったわけです。偽装請負、派遣、「名ばかり期間社員」、派遣と、合計で五年十カ月、働き続けたあげくの解雇ですよ。Tさんは、私にこういう訴えをされました。

 「まじめに一生懸命働き続ければ、いつかは正社員になれる。北海道の家族を呼べると夢見て、頑張ってきた。休みもとらず、いつも始業時間の一時間前に、だれよりも早く出社して工具の手入れ、仕事の段取りをたてるなど、懸命に働き続けてきた。いすゞが好きだった。モノづくりが好きだった。もっと働く人を大切にする企業になってほしい」

 総理に認識を問いたいと思います。さきほど確認した通り、派遣労働というのは、最長でも三年までで、三年を超える場合には、派遣先企業は直接雇用を申し出なければならないわけですよ。偽装請負の時期から、これは(派遣期間に)通算するということも確認しましたが、通算すれば五年十カ月もの長期にわたり、事実上、派遣として働かされてきたTさんは、とっくに直接雇用、正社員になっているべき労働者であります。ところが期間制限を超えても、いすゞからまともな直接雇用の申し出もされることなく、突然の「派遣切り」で職も住居も奪われる。これはあまりに理不尽だと思いませんか。総理どうでしょう。総理の認識です。

 厚労相 個々の、個別の企業については答えませんが、一般的なことを申し上げれば、偽装請負は明らかな労働者派遣法違反であります。違反に対しては、労働者の雇用の安定を図るための措置を講ぜよというように指導しているところでございます。ただ、今おっしゃったように、直接労働契約をやりなさいということを行政が勧告できる制度を、まさにいま、継続審議となっている労働者派遣法の中に組み込んでいますから、一刻も早くこれを審議していただきたいと思います。

 志位 私は総理に認識を聞いているんですよ。こういう不安定な働かせ方を五年十カ月も続けさせた。これは本来、直接雇用義務が発生しているわけですよ。現行法の精神からいっても、常用代替という事態が起こっているわけですから、当然、正社員、あるいは直接雇用にすべき人を、こういう形で働かせて解雇というのは理不尽じゃないかと、認識を聞いているんです。総理、お答えください。

 首相 まったく同じです。これは基本的には三年以上ということになった場合はということになっておりますので、それは明らかに違反していますし、極めて有能な社員だったからたぶん三年ずっとというのは、雇っている側も、有能だったから五年だったんだと思いますし、間にちょっと期間社員というのも入れてまでやるほど有能な社員だったということを意味しているんだと理解しています。

 志位 いま総理が、まったくその通りだとお認めになったのは、非常に重要な答弁です。これが、ずっと行われているんですよ、この会社では。違法状態があるんだったら、きちんと是正を図ることを強く求めたい。

志位
マツダでは違法「クーリング」で4〜5年も派遣で働かせたあげく解雇している

舛添厚労相
法違反があった場合は、厳しい指導をおこなう

 志位 同様の事態は、全国いたるところで起こっています。

 自動車メーカー・マツダでは、広島県・宇品工場、山口県・防府工場で、昨年末までに千三百人の派遣社員が解雇され、さらに期間工二百人が雇い止めにされようとしています。ここでも三年を超えて長期にマツダで働いてきた多くの派遣労働者が職を奪われております。

違法「クーリング」の場合は、派遣の期間制限のさいに通算される

 志位 (パネル(3)を出す)これを見ながら聞いていただきたいんですが、これは私たちが、直接聞き取りを行った六人の派遣労働者の職歴を示したものです。派遣として働き始めてから解雇されるまで、五年三カ月、四年〇カ月、四年十一カ月、三年四カ月、五年一カ月、四年三カ月と、いずれも三年を超えております。青い色の部分が派遣社員の期間です。赤い色の部分は、マツダが「サポート社員」と名づけている期間社員となっていた期間で、そのすべてが三カ月と一日です。六人とも派遣社員として働いていた間に、一回から三回の「サポート社員」の期間を挟んでいますが、同じ場所、同じ仕事で、三年、四年、五年と働いているわけですね。総理、マツダは、何のためにこんな形で、「サポート社員」を挟み込むようなことをやっていると思いますか。

パネル(3)

(写真)パネル(3)

 首相 私に聞かれても…。聞く人をちょっと間違えているんじゃないでしょうか。

 志位 マツダの工場で派遣社員の管理業務をやっていた方から、次の証言を私たちは得ました。

 「『サポート社員』への置き換えは、三カ月と一日の後は派遣に戻ることを前提にすすめた。いっせいにやると派遣会社への実入りがなくなるから、業務ごとにサポート期間を四月から、七月から、十月からというように少しずつずらしていた。派遣法逃れだった」

 こうはっきり認めました。「派遣法逃れ」とはどういうことか。

 派遣法について、いわゆる「クーリング期間」――同一場所の同一業務であっても、三カ月を超えて派遣を受け入れない期間があれば継続した派遣とはみなさないという厚生労働省の指針があります。マツダはこれを悪用して、派遣社員を業務ごとに順次、三カ月と一日だけ「サポート社員」という名前の期間社員にして、見せかけだけの「クーリング期間」を挟むことで、派遣期間制限を逃れ、四年、五年と派遣のまま使い続けたわけであります。

 ここで厚労大臣に確認しておきたい。一般論としてお答え願いたい。派遣労働者を、派遣先がいったん直接雇用しても、「クーリング期間」の三カ月を経た後は、また派遣元の派遣労働者に戻すということが、派遣元と派遣先の間で予定されている場合は、職業安定法違反になりますね。さらに、そういう違法な「クーリング期間」があった場合には、最初の派遣開始を起点に、最大三年の派遣可能期間を超えた時点から、派遣法違反になりますね。これは、間違いありませんね。

 厚労相 今、おっしゃったように、派遣可能期間の満了後のいわゆる「クーリング期間」中に、派遣労働者を派遣先が直接雇用するけれども、「クーリング期間」後に再び派遣労働者として派遣就業させることを予定していると認められる場合には、職業安定法第四四条で禁止している労働者供給に該当し、違反になります。しかも、二点目でございますけれども、適正な「クーリング期間」が設けられたといえないために、最初の派遣開始時から最大三年の派遣可能期間が経過した時点以降は、派遣を行うことができないということになっております。これが一般的な法の解釈でございます。

 志位 私が指摘した点をお認めになったと思います。(再度の派遣労働への就業が)予定されていたということは、私ども現地に行って、さきほど紹介した証言でも確かめてまいりました。


 クーリング期間 三カ月と一日以上派遣を受け入れない期間のこと。この空白期間があれば、継続した派遣とみなさないという厚労省の指針が出されています。大企業がこれを悪用し、みせかけだけの「クーリング期間」をはさむことで、派遣期間制限を逃れ、長期に派遣を繰り返すやり方が問題になっています。


派遣法違反にとどまらず職安法違反――直接雇用の義務を果たせと指導せよ

 志位 そうしますと、マツダは、期間制限違反という派遣法違反にとどまらず、“偽装クーリング”という職業安定法違反までやっていたわけです。会社ぐるみでやっていた。会社ぐるみで、「クーリング期間」を悪用した違法な方法で、派遣期間制限を逃れ、派遣のままで四年、五年と働かせ続けたあげく、まともな直接雇用の申し出もしないまま、「派遣切り」をすすめている。これは悪質ですね。総理、これは悪質なやり方だと思いませんか。総理の見解、認識をうかがいたい。

 首相 さきほどから何度も申し上げておりますように、個別の案件について自分なりの感想をのべることは差し控えさせていただかないといかんと思っております。

 志位 個別の問題について言わないといっているから増長するんですよ。派遣先大企業が。

 こうした企業に対して、政治がどう対応すべきか。いすゞも、マツダも、偽装請負や「クーリング」を悪用した違法行為で、期間制限をごまかし、直接雇用の義務を逃れてきたわけです。違法行為によって義務を逃れてきたことが明らかになったら、その逃れてきた義務を、きちんと果たさせるというのが、法治国家では当たり前ではないですか。すなわち派遣先大企業に「派遣切り」をやめ、直接雇用の義務を果たせと、厳しく指導するのが道理ではないですか。いかがでしょう。

 厚労相 いやしくも法違反があった時には、厳しい指導を現地の労働局において行っておるところでございます。

 志位 この明瞭(めいりょう)な法律違反について指導しましたか。

 厚労相 個々のケースについてのお答えは差し控えますが、明確な法律違反の場合には、きちんと厳正に対処いたしております。

常用雇用代替という派遣法の大原則を崩す違法状態――現行法でも対処は可能だ

 志位 現行法でも、厳正な対処は可能です。期間制限逃れの違法行為によって、期間制限の三年を超えて、四年、五年、六年と派遣のまま働かせ続けるという、常用雇用代替の状態がつくられてしまっているわけですよ。これは労働者派遣法の大原則を根本から崩す違法な状態なわけです。そしてこの違法状態をつくりだしたのは、派遣先大企業の違法行為ではありませんか。ならば、その派遣先大企業に直接雇用の義務を果たせと厳しく指導するのは、これは当然だと言わなければなりません。

 それができないというのなら、「派遣切り」にあっている労働者を見殺しにするのかということになる。三月末に向けて四十万人ともいわれる大量の非正規労働者が解雇されようとしている。その時に、派遣先大企業の罪は問わず、被害者である労働者を見殺しにするのか。それはできないでしょう。厳しく直接雇用義務を果たさせると、総理、言ってください。

 厚労相 何度も申し上げておりますように、法律に基づいて、的確な指導を厳正に行っているところでございます。

 志位 そう言いながら、どんどんどんどん「派遣切り」が増えているじゃないですか。あなた方が厳正にやっていたらもっと止められるはずだ。それがやられていないことを問題にしています。「派遣切り」をやめさせ、派遣先に直接雇用責任の義務を果たさせるべきです。


志位
違法摘発されても雇用責任を果たさない――パナソニックの横暴を許せるか

首相
(長時間労働について)いまの話、間違いないなら異常だ

厚労相
個々の企業は答えられない。法違反には厳正に対応している

 志位 「派遣切り」に対する労働行政を(厳正に)やっているというので、さらにただしていきたい。

 福井県にあるパナソニックのグループ企業、パナソニック・エレクトロニックデバイス若狭工場で、三年十カ月にわたって働きながら、「派遣切り」にあったという労働者、Mさんからの訴えがありました。Mさんが働いていた職場は、二十五人の労働者のうち派遣は十五人を占め、派遣労働者が文字通り生産の中核を担っていましたが、その全員が十二月にかけて突然解雇を言い渡されたといいます。さっそく私ども現地にうかがい、話を聞きました。

2交代制で毎日12時間労働、「過労死基準」の2倍近い残業時間

 志位 まず驚いたのは、派遣労働者の働かされ方です。この工場は、DVDプレーヤーなどに使われる検知スイッチとよばれる電子部品などを製造しています。Mさんはここで、二人一組で十二台から十五台の機械を操作する仕事をしてきたといいます。原材料の補充や交換、トラブル処理など、一日中ほぼ立ちっぱなし。休憩中も機械を動かし続けるため、トラブルがあればいつでも飛んでいかなければならない。つねに緊張状態を強いられる仕事であります。

 私が何より驚いたのは、労働時間です。ここでは日勤夜勤の二直二交代制で、日勤は朝八時三十分から夜八時三十分まで、夜勤は夜八時三十分から翌朝八時三十分まで、月曜から金曜まで毎日十二時間労働であります。休日出勤も常態化しており、月に四、五日の休日出勤が当たり前でありました。Mさんの場合は、三年十カ月のうち、最初の四カ月を除く三年半は、ずっと夜勤のまま、十二時間労働を続けてきました。ここに私は、Mさんからいただいた給与明細の写しを持ってまいりましたけれども、この月は、普通残業時間が九十五時間三十分、休日出勤による残業時間が五十九時間十五分、月の残業時間が(合計で)百五十四時間四十五分ですよ。厚労省が「過労死基準」としている八十時間の二倍近い。こういう働かせ方を派遣労働者にやらせてきたわけですよ。所定内労働時間の百六十時間を加えると、月に三百十四時間四十五分も働かされている。こうした月百時間を超える残業が常態化していたといいます。総理にうかがいたい。こんな長時間労働、あまりに異常で非人間的だと思いませんか。

 首相 あのー、今の話を聞いて、それが本当かどうかがわからんのに一方的なことは言えませんけど、もし志位さんの言われた通り、一点の非の打ちどころのなく間違いがないという前提なら、異常です。

 志位 後で資料を差し上げてもいいですけれども、私が言ったのは本当にご本人に聞いたし、給与明細もありますし、就業状況全体を見渡した上でのものですから、まさに異常なことであります。

写真

(写真)パナソニック・エレクトロニックデバイスで「派遣切り」にあったMさんの給与明細の一部

偽装請負の調査を求めても労働局は拒否――これで労働者の権利が守れるか

 志位 もう一つ驚いたのは、今度は厚生労働省ですよ。厚生労働省・福井労働局の「派遣切り」に対する一連の対応です。三年半にわたってこういう働かせ方をさせられたあげくに「派遣切り」にあったMさんは、労働局に「私は三年を超えて働いているけれど、いまだに直接雇用の申し出がないまま、逆に解雇されようとしている。違法ではないか」と訴えました。労働局は調査を約束しましたが、「二〇〇六年十一月以前は請負契約になっているので派遣法違反にならない」と回答してきました。そこで初めて、「あっ、請負契約だったのか」と知ったMさんは、「請負契約というけど働かせ方は同じだった。偽装請負だったのではないか。調査してほしい」と求めました。ところが労働局は「二年前のことなのでパナソニック若狭に資料要求はできない」という対応をしたといいます。Mさんは、やむなく偽装請負の証拠となる資料を自分で集めて、あらためて労働局に出向きました。そこで初めて労働局は、偽装請負の事実を認定し、調査と指導を約束したとのことでした。

 Mさんにとって偽装請負は過去の問題ではありません。偽装請負が事実ならばその期間は、さきほど確認したように、派遣期間に通算され、Mさんは派遣期間(制限)を超えて派遣で働かされていることになり、派遣先企業に直接雇用申し出義務が生まれるわけであります。にもかかわらず労働局は過去の問題として調査もしない。被害者が自分で証拠を集めて立証しなければ動こうともしない。全国の労働局では「派遣切り」に対してこんな対応をやっているのですか。こんなことで労働者の権利がどうして守れるか。

 厚労相 法律違反に対しては厳正に対応しております。個々の企業についてのお答えは差し控えたいと思います。

 志位 偽装請負の被害者が、自分で立証の義務を果たさなければその違法が認められない、そんな怠慢な、怠惰なことで、どうして労働者の権利を守れるかと私は言いたいと思います。

収入半分以下、期限付きアルバイトで、直接雇用の申し出だと開き直る

 志位 さらにもう一つ。労働局の指導を受けたパナソニックはどういう対応をしたか。パナソニックは労働局に、「派遣切り」を撤回し、直接雇用か請負会社への移行かのどちらかで対応すると回答しました。ところが一月中旬、パナソニックがこの工場で働く派遣労働者約八十人を集めて提示した直接雇用とは、なんと期限付きのアルバイトで、時給はわずか八百十円だといいます。時給八百十円というだけで、何時間、何日、いつまで働けるかもわからない。たとえ一日八時間、週五日働けたとしても、月収十三万円です。これまで派遣労働者として得ていた月収と比べても、半分以下に落ち込む。

 本来、パナソニック若狭の派遣労働者は、正社員にして当然の人たちです。ところが(パナソニックは)偽装請負という違法行為で直接雇用の責任を逃れてきたあげく、逃れられなくなったら、これまでの半分以下の収入しか得られないアルバイトという、誰もが到底受け入れられないような低賃金・劣悪な条件を提示して、これが直接雇用の申し出であると開き直る。

 総理、いったいこんなことで、天下のパナソニックが直接雇用の申し出義務を果たしたと認められると思いますか。収入は半分以下、期限付きのアルバイトなどというのは、およそ直接雇用の申し出義務を果たしたとは言えないと思いますけれどいかがですか。

 厚労相 何度も同じ事を申し上げて恐縮でございますが、個別の企業についてのお答えは差し控えます。その上で一般的に申し上げれば、どういう労働条件で直接雇用をするかというのは当事者間の契約であって、それで労働条件の決定があるということでありますが、今、継続審議となっています労働者派遣法の改正案においては、まさに委員がご指摘になった偽装請負や派遣期間制限に違反した派遣先に対して、労働契約を申し込む事および賃金その他の労働条件を低下させることのないよう措置すべきことを勧告する規定が盛り込まれておりますので、一日も早くこの改正案のご審議をお願いしたいと思います。

 志位 当事者間の契約と言いますけれどね、こんな、労働条件を半分以下に落としちゃうようなことは認められるはずがないです。それから、法案を出しているというけれども、(派遣先への措置は)「勧告」にすぎません。義務付けをしなかったら派遣先大企業は言うことなんか聞きませんよ。

「明るいナショナル」が闇のなかで「派遣切り」――あまりに横暴だ

 志位 パナソニック・グループの「派遣切り」は、全国各地の工場で行われています。私たちが把握しただけでも、北海道・帯広工場、千歳工場、宮城・仙台工場、静岡工場、大阪工場で働く派遣労働者などから、「派遣切り」の訴えが寄せられています。そこでパナソニック本社に、私は、「派遣切り」の実態を明らかにするように問い合わせをいたしましたが、本社からは「発表しない」というのが回答でありました。

 「明るいナショナル」と言ってきた企業が、闇の中で「派遣切り」をやっている。「過労死基準」の二倍もの長時間労働を強制し、景気のいいときは搾れるだけ搾り、三年という期間制限を超えて働かせておきながら、景気が悪くなると平気で「派遣切り」を行い、違法を指摘されてもまともに直接雇用の責任を果たそうともしない。三・六兆円もの内部留保をため込みながら、雇用への社会的責任を果たさない。これが日本最大の家電メーカーのやっていることであります。総理、これあまりに横暴だと思いませんか。どうでしょう。

 首相 たびたびお断りして、同じ答えしか申し上げられないんで恐縮なんですが、個別の企業の事に関しては、パナソニックがどうしたとか何とかがどうしたとか言われても、個別の企業に関しては答えることはないというのはこれまでもずっと申し上げてきた通りであります。ただ、たびたび、これ以外の場でも志位先生の質問にお答えしたと思いますが、内部留保というものに関しましては、これは基本的には、個々の会社がどう使うかということに関して行政やら立法府が立ち至る筋の話ではないというのが基本です。その上で、たびたびこれを申し上げましたが、人というものを大切にできるか否かというのは、その企業にとってものすごく大きなイメージでもありますので、この前もお答えしたと思いますが、こういう非常時ほど労働者、雇用者というものを大事にするかしないかと、それは企業にとってすごく大きな価値なんだと、私はそう思っております。

 志位 個別のことは答えないということをずっとやっているから、パナソニックは、“私たち個別の企業は「派遣切り」の実態を出しません”と、こういうことになるわけですよ。

志位
違法はないか踏み込んだ調査・指導を。そうすればかなりの人々が救えるはずだ

厚労相
実態の解明に全力をあげてまいりたい

 志位 私が、今日お話ししてきた、いすゞ、マツダ、パナソニックの例というのは、氷山の一角にすぎません。それぞれに、直接雇用の責任を果たさせるように指導することは当然でありますけれども、全体の問題をここで提起しておきたい。

 製造業の派遣というのは、二〇〇四年に解禁とされましたが、当初は多くの大企業で、請負を偽装する形で、派遣労働者を活用することが行われていました。しかし二〇〇五年から二〇〇六年にかけて、ご承知のように偽装請負が社会的に大問題となり、「請負」から「派遣」への置き換えがいっせいに行われました。したがって、現在行われている製造業への派遣は、偽装請負の期間なども含めれば、さきほど通算するということも確認しましたが、それを含めれば、すでに派遣可能期間である三年をはるかに超えて、派遣を使い続けていたケースが非常に多いのではないかといわなければなりません。

 ところが政府はいろいろと調査の紙を出してきます。政府の調査は、派遣先企業から「派遣切り」の数字を聞くだけの調査になっている。これではだめですよ。派遣期間制限の最大三年を超えて派遣を使い続けてきた事実はないのか、派遣法、職安法などに反した働かせ方をさせていなかったのかなど、踏み込んだ調査を行い、違法があれば厳しく是正指導を行うべきではないですか。そうすればかなりの人々が救えるはずです。現行法でも救えるはずです。そういう中身に立ち入った、踏み込んだ調査を、厚生労働省に求めたいと思います。

 厚労相 現行法の枠内で、各地の労働局においてきちんと法律にのっとって、そういう実態を把握する努力をしております。しかし今、最大の問題は、派遣先、派遣元、そして派遣先についてのお話がありましたけども、基本的には派遣労働者は派遣元との間の契約を行っているわけで、派遣元企業は極めて数が多くて、ここまでどういうことになっているかに踏み込む努力はしておりますが、完ぺきにそこまで今、把握しているところではございません。しかしながら今後とも実態の解明に全力をあげてまいりたいと思っております。

 志位 今後やっていくということだったので、実態を踏み込んで明らかにして、「派遣切り」をやめさせるためのあらゆる力を尽くすことを求めたいと思います。

志位
経済団体・大企業代表の参考人招致と集中審議を要求する

 志位 委員長に一つ、本委員会のすすめ方で提案があります。いま大企業がすすめている大規模かつ急激な「非正規切り」、雇用破壊は、国民の暮らしを土台から壊すとともに、日本経済にも深刻かつ重大な影響を与えています。

 かつて、一九七四年、石油危機に端を発した大企業による「買い占め」、「売り惜しみ」、「狂乱物価」が国民生活を直撃した時、予算委員会の場に、大商社、大銀行、大企業二十社の社長、石油連盟をはじめ三つの業界団体の会長を、参考人として招致して、集中審議を行い、大企業が果たすべき社会的責任をただし、その横暴の是正を図った経験をわが国会は持っております。

 こうした役割が今、国会に求められていると私は考えます。史上かつてない雇用危機のもとで、いまこそ国会が国権の最高機関として国民生活を守る責任を果たすために、本委員会に日本経団連の会長をはじめ、トヨタ、キヤノン、パナソニックなど、大規模な人員削減を行っている大企業の経営者を参考人として招致し、その社会的責任をただす集中審議を行うことを提案します。委員長、お取り計り願いたい。

 衛藤征士郎予算委員長 志位君の申し入れにつきましては、後日、理事会で協議いたします。

志位
労働者より大株主優先――この大企業の経営姿勢を正面から正す意思があるか

首相
個別の企業のあり方を説くというのが、いま一つ納得できない

志位
個別でなく、経済界をみんな集めて説けといっている

 志位 最後に総理にもう一点うかがいます。日本の企業経営のあり方の根本についての認識と対応の問題です。

 私が、大企業による大量解雇の動きについて、あまりに異常だと感じるのは、少なくない大企業が、この不況下で、株主配当を増やしながら、労働者の「首切り」をすすめていることであります。

 (パネル(4)を出す)このパネルをご覧ください。これはこの十年間の製造業の大企業の経常利益、配当金、従業員給与の推移でありますが、経常利益を八・二兆円増やし、配当金を四・〇兆円増やしながら、従業員給与は二・三兆円減らしています。額に汗して働く労働者よりも、ぬれ手で粟(あわ)のもうけをしている大株主を優先する。こういう経営でいいのでしょうか。これは、私は、資本主義としても堕落ではないかと考えます。目先の利益だけを追い求め、人間をモノのように「使い捨て」て恥じるところがない。これでは企業にとっても未来がなくなるのではないかと考えます。

パネル(4)

(写真)パネル(4)

 本会議で私がそうただしたのに対して、総理は、「企業の経営者は、株主のみならず、消費者や従業員やその家族、さらには地域社会に責任を負っている。経営者が従業員を大切にし、意欲を引き出すような経営が結果として企業価値の向上につながるものと考えている」とお答えになりました。

 私はこれは、同感ですよ。総理の言う通りだと思います。ただ、総理が本当にそう考えるのであれば、行動に移すべきではないか。株主への配当を至上のものとして、「従業員やその家族」、「地域社会」に対する責任を到底果たしているとはいえない経済団体、大企業の代表を集めて、そうした経営姿勢の誤りを道理をもって説き、大量解雇はやめよと、正面から求めるべきではありませんか。その意思はありますか。

 首相 共産党の委員長から「健全な資本主義」を説かれると、ちょいといろいろ考えるところがありましたし、いままた、まったく同じでありますといわれると、ちょっといろいろ考えるのが正直な気持ちです。ただその上で申し上げさせていただきますけれども、たびたび、本会議でもいまの私の言葉を引用しておられましたけれども、少なくともこれは、だいぶ前にいわゆる労働分配率の話が、三十年前に比べても今は下がっておりますから、こういったのはいかがなものかという話をしておると申し上げた。その時も賛成いただいたと思いますが、そういったことを申し上げてきておりますので、だからといって、私が出て行ってみんなの前で経営のあり方という、個別の企業のあり方について説くというのが、私にはいまひとつ納得できないところであります。

 志位 個別に説けと言っているのではないんですよ。経済界みんな集めて説けということを言っているんです。正面から求めろということを言っているんです。

労働者派遣法の抜本改正、人間を人間として大切にする経済社会を

 志位 私は、これ以上の雇用破壊を食い止めるために、いま政治が知恵と力をつくすべき時だと思います。

 同時に、日本共産党は、二度とこうした「政治災害」を起こさせないために、労働者派遣法は一九九九年の原則自由化前に戻し、最も不安定な働かせ方である登録型派遣を原則禁止する抜本的法改正を求めます。そのさい、現に派遣として働いている労働者が職を失わず、直接雇用に移行できるような経過措置を設けることを提案いたします。

 未来ある若者が、懸命に働きながら、突然、仕事も住居も奪われ、ホームレスに突き落とされる。こんな社会は根本から変えなければなりません。日本から「使い捨て自由」の労働、「首切り自由」の労働をなくす、人間を人間として大切にする経済社会をつくるために力をつくすことを表明して、質問を終わります。