2008年9月22日(月)「しんぶん赤旗」

志位委員長の発言

NHK「日曜討論」


 日本共産党の志位和夫委員長は、二十一日に放映されたNHK「日曜討論」で、自民党総裁選や解散・総選挙にのぞむ姿勢などについて、野党各党の代表と討論しました。


自民総裁選――国民の苦しみに向き合う議論がまったくない

 冒頭、自民党が総裁選から解散・総選挙に突っ込む戦略をとっていることについて問われた志位氏は、つぎのように指摘しました。

 志位 総裁選挙を拝見しておりまして、国民が現に苦しんでいる問題、不安に感じている問題に対して、正面から向き合って、具体的にどう打開していくかという議論がまったくないと思うんですよ。

 例えばいま「働く貧困層」がどんどん増えて広がっています。若者の二人に一人が派遣、請負、期間社員などの、「使い捨て」といわれる不安定雇用に置かれています。こういう事態をどう打開して安定した雇用を保障していくのか。

 あるいは後期高齢者医療制度、怒りが沸騰していますよ。十月十五日には新たに「前期」(高齢者)の方も含めて六百二十五万人も年金からの天引きがやられる。合計一千五百万人の天引きがやられる。こういう問題も正面からの議論になっていない。

 きょう麻生さんが(後期高齢者医療制度を)「抜本的に見直しする」とおっしゃったけれども、内容が定かでないんですね。ただ、あそこまでいうのはやはりかなり破たんを自分で認めたというところにきていると思いますから、これはやはりぜひ撤廃に追い込みたい。

 こういう国民が本当に解決を願っている問題に対する真剣な議論がない。

 汚染米の問題についても、農水省の責任はもちろんですけれども、米の輸入の自由化をどんどんやってきた、米の流通に対する規制緩和をやってきた。この路線が問われているわけで、こういうところからもメスを入れる必要があると思います。

経済対策――“外需・輸出頼み、内需・家計ないがしろ”の体質改善を根本からおこなえ

 景気対策をめぐって、自民党の麻生太郎幹事長の路線が「構造改革」路線の転換かどうかを問われ、志位氏は次のようにのべました。

 志位 「小泉改革」を見直すというんですけれども、例えば後期高齢者医療制度、あるいは労働法制の規制緩和、一定の見直しをいうんだけれども、どう見直すのか。これは小手先のとりつくろいしか、いまのところはメニューとしてはでてきません。

 私は、日本経済の最大の問題は、この間、「構造改革」という名で、一部の輸出大企業のもうけだけを応援することに熱中した。その結果、日本の経済があまりに“外需・輸出頼み、内需・家計はないがしろ”という、非常にぜいじゃくな経済になってしまった。ですから外からショックが加わるとぺっちゃんこになりますよ。この体質改善を根本からやらないと、日本の経済はよくならないと思うんです。

 先ほどいった、例えば「働く貧困層」を解消するために労働法制の規制強化という方向、正社員に置き換えていくことが大事です。それから社会保障削減路線です。毎年(自然増から)二千二百億円ずつ削ってきた。これをやめて拡充に転換していく。こういう雇用や社会保障という暮らしの土台のところから経済をよくして立て直していく。大企業から国民に軸足を転換する。こういう改革をやらないと、とりつくろいだけやっても、よくならないと思います。

財源問題――むだを徹底的になくし、大企業に応分の負担を

 景気対策に伴う財源問題で財源を問われた志位氏は、次のように発言しました。

 志位 社会保障と暮らしに必要な財源を振り向けていくことは当たり前で、例えば社会保障を毎年二千二百億円ずつ削っていくというやり方をやめて、拡充に転換すべきだと。そして国民の安心できる医療、介護、年金をつくっていくという方向に転換すべきだと思います。

 ただその財源を考える際に、財源というとすぐ消費税しかないという議論が多いんですけれども、消費税というのは所得が少ない人にのしかかる、いわば“福祉破壊税”ですから、これをもって財源にあてるというのは邪道中の邪道だと思います。

 私たちは、まず第一にむだを徹底的になくす。特に年間五兆円の軍事費、ここには削れるものがたくさんあります。例えば二千五百億円の米軍への「思いやり予算」、これはきっぱり撤廃すべきですし、三百二十億円の政党助成金はなくして障害者福祉にあてるべきだと私たちはいっております。

 第二に、大企業や大資産家への行き過ぎた減税、これを元に戻すべきだと。バブルの絶頂期に比べて大企業のもうけは一・七倍ですよ。ところが税金の方は横ばい。減税してきたからですね。トヨタを調べてみましたら(もうけは)二・二倍ですよ。ところが税金のほうは八割にまで減っている。

 やっぱりこういう不公平税制ですね、大企業は空前のもうけをあげているわけですから、とるべきところからはとるということを考えなければいけない。

「二つの政治悪」――自民と民主に違いが見えない

 民主党と国民新党の合併問題について、「他党の問題ですからとくにコメントいたしません」と答えた志位氏は、野党間の選挙協力について聞かれ、次のように語りました。

 志位 (小選挙区での擁立を)絞ったのは私たちの現状の力量に応じた自主的な判断で、政局的な思惑があってやってるわけではないんですね。

 自民と民主どちらを選ぶかという議論がよくありますけれど、今のいろいろな、国民が解決を願っている問題の根っこをたどりますと、「二つの政治悪」にぶつかる。一つはあまりにひどい財界中心の政治。もうひとつはあまりにひどい安保を中心としたアメリカいいなり政治。この「二つの政治悪」という点では、私は自民党と民主党で大きな違いは見えてきません。ですから(民主党と)政権の協力という条件はない。

 ただ、私たちが前進・躍進しましたら、国民の要求にもとづいて大いに積極的な提言をやります。一致できる点では個別の課題で大いに協力したい。野党四党でこの間、後期高齢者医療制度の撤廃問題で法案を出して参議院で可決しているわけですから。たとえばこの問題についてはほんとうにとどめを刺す決着をつけるという協力(をおこなう)。あるいは労働者派遣法の問題の改正についての協力。さまざま協力が可能だと思います。個別の課題では大いに政治を前に動かすための協力はやっていきたいと思っています。

民主党との政権協力の条件はない

 さらに、司会の影山日出夫・NHK解説委員が「衆議院選挙の結果によっては日本共産党がキャスチングボートを握る事態もないわけでない」として、「首相指名選挙で決選投票になった時の態度をどうするのか」と質問。志位氏は、次のように答えました。

 志位 先ほどいったように政権の協力の条件はないとはっきり申し上げています。首相指名についてはそういう状況が生まれたときに言う問題ですから、それを言うのはちょっと早いと思うけれども、私たちの立場は、常に国民の利益にかなった行動をするということだけ申し上げておきたい。

臨時国会――暮らし・平和で問題の本質に迫る論戦をやりたい

 最後に臨時国会での論戦にどうのぞむかについて、志位氏はつぎのようにのべました。

 志位 国民のみなさんが不安に感じている汚染米の問題。これの根源をたどりますと、「小泉改革」による規制緩和と米の輸入自由化にゆきつきます。ですから(問題の)本質はなにかということを議論したい。

 それから「働く貧困層」の問題。これも、労働法制の規制緩和という「構造改革」路線がつくりだしたわけですから、この本質にせまる論戦をしたい。

 それから後期高齢者医療、これも財界の号令で社会保障費を削ってきた。ここに根源があるわけですからここをつきたい。

 そしてなんといってもアメリカいいなりに憲法を壊して海外派兵を続ける、こんな道に進んでいいのか。こんなアメリカいいなりでいいのかの議論をやりたいと思っています。