2008年6月21日(土)「しんぶん赤旗」

「攻め」の論戦で発揮された党議員団の三つの値打ち

党国会議員団総会での志位委員長のあいさつ


 第百六十九国会閉会にあたって二十日に開かれた日本共産党国会議員団総会での志位和夫委員長のあいさつは次の通りです。


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(写真)議員団総会であいさつする志位和夫委員長=20日、国会内

 半年間の国会での奮闘、ほんとうにご苦労さまでした。国会閉会にあたって、ごあいさつをもうしあげます。

 国会開会の日の議員団総会で、私たちは、福田内閣が政治の行き詰まりに対して何一つ打開の旗印がしめせないもとで、「国民の切実な要求から出発しながら、……どの分野でも抜本的な政策転換を求める論戦を攻勢的におこなう。『攻め』の論戦を、この国会では心がけたい」ということを確認しました。

 半年間のたたかいを振り返りますと、この国会は、日本共産党ならではの「攻め」の論戦を、院外の国民運動としっかり連携しながら、立派にやり抜き、たいへん豊かな成果をあげる国会となったということがいえると思います。(「よし」の声、拍手)

国民と響き合った「攻め」の論戦

 私は、「攻め」の論戦のなかで発揮された日本共産党議員団の値打ちとして、三つの点を強調したいと思います。

 第一に、今度の国会ほど、わが党議員団の論戦に、国民から多くの共感・激励が寄せられた国会はなかったということです。

 わが党が今度の国会でとりあげた問題は、派遣労働、後期高齢者医療制度、道路特定財源、食料と農業、米軍基地と「思いやり」予算、税制問題、地球環境問題など、どれも国政の根本問題でしたが、どの問題でもこんなに国民との響き合いが実感された国会は、なかったと思います。それは党本部、「しんぶん赤旗」の編集局、国会の党事務所などに寄せられた電話やメールの空前の多さからも実感されるのではないでしょうか。

 この国民との響き合いが、メディアにも伝わり、少なくないメディアがわが党の国会論戦に注目を寄せました。派遣問題を取り上げたわが党の国会質問が、インターネットで反響を呼び、それにメディアが注目を寄せるという状況も生まれました。ある新聞は、国会論戦の「三賞」を発表し、「後期高齢者医療制度の問題点を粘り強く訴えてきた共産党を代表して、小池晃政策委員長に(敢闘賞を)贈りたい」と書きました(拍手、笑い)。(小池氏「みんなの努力です」)。派遣問題にしても、後期高齢者医療制度にしても、議員団とそれをささえるスタッフみんなの努力の結果だと思います。

 こうした国民との深いところでの響き合いというのは、自民党政治がいよいよ行き詰まるなかで、わが党の綱領に明記された民主的な改革が、広い国民の痛切な願いと接近し、一致し、文字通り国民的課題になっていることを示すものにほかなりません。

国民運動と結びついて現実政治を前に動かす

 第二に、わが党の国会論戦が、国民運動と結びついて、現実の政治を一歩二歩と前に動かしたことも、特筆すべきことだと思います。

 派遣労働の問題については、わが党の論戦と国民運動との連携によって、労働法制の規制緩和から規制強化への潮目の変化が生まれました。一連の大手製造業のメーカーが、派遣解消の方針を打ち出しました。国会でも、野党四党がそれぞれ労働者派遣法の改正案を提起しています。舛添厚生労働大臣は、日雇い派遣の原則禁止を表明し、与党として派遣法改正案をつぎの臨時国会に提出すると伝えられています。

 もちろん、わが党が主張しているように労働者派遣法を“派遣労働者保護法”と呼べるものに抜本改正ができるかどうか、非正規雇用から正社員への本格的な流れをつくれるかどうかは、今後のたたかいにかかっていますが、ともかくもこの問題で事態を一歩前に動かしたということは、確認できるのではないかと思います。

 それから後期高齢者医療制度の問題については、わが党は、高齢者差別という問題の本質を突く論戦に一貫してとりくみ、これを国政の大争点に押し上げました。この問題をさかのぼりますと、二〇〇〇年十一月の健保法改悪のさいの付帯決議で、高齢者医療を別建ての制度にし、診療報酬にも定額制を持ち込むなど、後期高齢者医療制度の原型となる方向が打ち出されたわけですが、この付帯決議にきっぱり反対をつらぬいたのは日本共産党だけでした。

 二〇〇六年に法案が出されたときにも、高齢者差別という事の本質をずばり突く論陣を張ったのは、日本共産党だけでした。このことは当時の川崎二郎厚生労働大臣が、「本質的な追及をやったのは、共産党だけだった」と、相手が認めているわけですから、間違いのないことだと思います。

 こうしたわが党の一貫したたたかいが、野党四党での廃止法案の提起につながり、この法案の参議院での可決につながった。この法案は継続とされましたけれども、臨時国会ではぜひとも可決・成立させ、希代の高齢者差別法を撤廃させるためにがんばりぬきたいと思います。(拍手)

 さらに道路特定財源の問題が、この国会の一大争点になりましたが、わが党は問題の核心が、際限なく高速道路をつくり続けることを許すのかどうかにあることを明らかにし、論戦をリードしました。政府は、ともかくも道路特定財源を一般財源化すると約束せざるをえなくなりました。そして、日本列島各所にかける予定だった六つの海峡横断道路については、わが党がおこなった衆参の連携した追及で、調査の中止にまで追い込んだ。これはわが党ならではの論戦による重要な成果であります。

 いま一つのべておきたいのは、医師不足の問題です。これは、つい最近、政府から新しい動きが出てきました。これまで政府は一貫して、「医師は不足しているのでなく偏在しているだけだ」ということを言い張ってきたわけですが、ついに医師不足という現実を認め、医師数を増やす方向に転換することを表明するにいたりました。これはわが党が、この間の一連の国会論戦のなかで、救急車の患者さんの搬送先がみつからない、地域から産科や小児科の病院がなくなっていく、医師にあまりにも過酷な勤務が押し付けられているなどの現場の深刻な実態を突きつけて、転換を迫ってきた。ここでも国民運動と共同しての日本共産党の論戦が、政府を動かし、方針転換にまで持ってきた。これも重要な成果として確認しておきたいと思います。

 いくつかのべましたが、もちろんどの問題も、本格的な解決のためには今後のたたかいが大切になってきますが、自民党政治が行き詰まるもとで相手も打開策が示せない、そのもとで、ほんとうに国民の立場にたった打開策を示し、そして国民運動との共同で政治を一歩二歩と前に動かしてきた議員団の奮闘は、大いにわれわれの確信にするとともに、全党の確信にもしていきたいと思います。(拍手)

議会制民主主義を守る重要な役割を発揮した

 第三に強調したいのは、こうした「攻め」の論戦と一体に、国会運営でも、議会制民主主義を守る役割を発揮してきたことであります。

 いまの国会はよく「ねじれ国会」と言われます。すなわち、衆院では与党が多数を占め、参院では野党が多数を占めている。こういう国会のもとでの国会運営のあり方はどうあるべきかという問題がよく問われます。

 私は、ほんらいならば、そういう状況というのは、政府・与党がこれまでやってきたような“数の横暴”に頼って、悪い法案をろくな審議もおこなわずに衆議院で強行し、参議院でも強行するというやり方が通用しなくなり、国民の前で徹底的な審議によってことの是非を明らかにする条件が広がったということがいえると思うのです。

 ところが与党、民主党が、それぞれとっている態度はどうか。与党がとった態度というのは、「はじめに三分の二の再議決ありき」という立場でした。つまり衆議院での数の力を頼んで、問答無用で悪法をごり押しするというもので、まともに審議をおこなうという態度をとらない。他方で民主党はどうかといいますと、率直に言って、参議院での数の力に頼って、審議拒否をおこなったり、強行採決をおこなったりというものであり、この党も徹底した論戦によって自公政権を追い詰めていくという態度をとったとはいえません。そういうもとで、わが党は、相手がだれであれ数の横暴に反対し、国会論戦によって自公政権を追い詰めるという立場を堅持してたたかいぬきました。議会制民主主義を守る大道にたった行動をつらぬいたといえると思います。

 振り返ってみますと、国会冒頭と国会最終盤に象徴的な出来事がありました。

 国会冒頭に、与党は、道路特定財源の「つなぎ法案」を提出しました。これは審議を完全に封殺して、暫定税率を十年延ばしてしまおうというとんでもないものでした。議会制民主主義の形骸(けいがい)化をはかるものでした。それに対して民主党の側は審議拒否、物理的抵抗などで対応しようという動きをみせました。そのときにわが党は、与党と民主党の双方に働きかけ、衆参議長あっせんによって「つなぎ法案」を撤回させ、事態の収拾に道を開く働きをしました。ある新聞は「議長斡旋(あっせん)で決着をみたブリッジ法案の取り扱いをめぐり、民主党の実力行使を批判する一方で、斡旋による事態収拾の口火を切った共産党がジワリと存在感をみせた」と、わが党の対応に注目しました。

 それから国会最終盤に、民主党が福田内閣に対する問責決議案を提出しようとしたときに、わが党は、「党略的都合で問責を出すことにはくみすることができない」、そして問責というものは重いものであって、「いま出すというのは時期が適切ではない」ということを率直にのべて、提出された問責決議案には賛成するけども、共同提案には加わらないという態度をとりました。そして審議ボイコットではなくて、論戦で追い詰めるという態度を堅持して、最後までそのための努力をつづけました。とりわけ後期高齢者医療制度の廃止法案は、野党が自ら出したものですから、「自ら出した法案を自らボイコットするというのは道理が立たないではないか。おおいに審議しようではないか」ということを他の野党に呼びかけ、与党にも提起して、法案の審議入りのために最後まで力をつくしました。

 わが党の立場が、国民の立場に立つ的確なものであることは、その直後におこなわれたFNN世論調査でも示されています。この世論調査では、「問責を受けるのは仕方がない」と答えた人が68・6%。「決議のタイミングが適切でない」と答えた人が57・6%。「野党の審議拒否は当然か」との問いに、「そう思わない」と答えた人が50・7%。この三つの問いのそれぞれで、わが党の立場こそ道理あるものだということが、世論調査でも証明されたということものべておきたいと思います。

民主党――「対決」をいうが論戦の政治的立場がない

 民主党は、「対決」をいうわけですが、論戦で政権を追い詰める立場をつらぬけないという重大な弱点があることが、浮き彫りになりました。なぜそういう立場をつらぬけないのか。率直にいって、この党には自公と論戦する政治的立場がないからです。

 それは、民主党が「対決」を呼号するのと同時並行で、憲法を踏みにじって宇宙の軍事利用に道を開く宇宙基本法を自公と水面下で合意したら一気に通す。政官の癒着をひどくする国家公務員改革基本法も自公と合意したら一気に通す。さらに「新憲法制定議員同盟」の新しい体制を自公民の議員が参加してつくり、憲法審査会を始動させようという動きをみせる。「対決」をいいながら、実は自公民で談合政治を水面下でおこない、有害な役割を果たしている。これらの一連の行動にも示されました。

 民主党が、自公政権を論戦で追い詰める立場に立てないのは、政治路線のうえでの「同質・同類」という重大な問題を抱えているからにほかなりません。

 ですから、この党との対照でも、日本共産党が、どんな問題でも国会論戦でことの是非を国民の前で堂々と明らかにするという態度をつらぬいてきたことのもつ値打ちは、際立つものがあります。この根本には、わが党の綱領路線と日本改革の方針があるということにぜひ確信をもって、つぎのたたかいにのぞみたいと思います。(拍手)

国民運動の先頭に――消費税増税反対のたたかいを呼びかける

 国政をめぐるたたかいは、つぎの臨時国会、そして解散・総選挙に向けて、いよいよ重要な局面を迎えてきます。国会は閉会になりますが、その期間にも、議員団として、つぎの二つの仕事におおいに積極的に取り組みたいと思います。

 一つは、国民運動と共同して、各分野のたたかいの先頭に立つことであります。この国会でわが党が提起した問題というのは、どれも一過性の問題ではありません。雇用、医療、税制、農業、海外派兵、基地、憲法、環境――どの問題をとっても、アメリカと財界中心から国民中心へと政治の枠組みそのものを根本から変えるという綱領の立場と直接結びついた大問題であり、ひきつづく国政の大問題であり、もちろん臨時国会の課題ともなります。あらゆる分野で、わが議員団が、国民要求の実現の先頭に立つたたかいに、おおいに取り組みたいと思います。

 ここで、強調しておきたいのは、福田首相が、最近、消費税増税について、「決断のときだ」とのべたことについてです。あまり「決断」らしいことをしない首相が、「決断のときだ」(笑い)といったことは、きわめて重大であります。首相は、同時に、「国民世論がどう反応するか、一生懸命考えている」と、国民世論の動きを注視することものべました。ですから、私たちは、一気に国民世論で増税の企てを包囲するたたかいを広げる必要があります。消費税増税の企てを許さない国民的世論を一気に広げるたたかいを、ぜひ、きょうを新たな出発点として、全国津々浦々で取り組もうではないかということを、心から呼びかけたいと思います。(拍手)

「大運動」を軸に総選挙勝利のとりくみの先頭に

 いま一つの仕事は、全党が取り組んでいる総選挙勝利をめざす諸課題の飛躍の先頭に、ぜひ議員団が立とうではないかということです。

 「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」がこの間大きく広がり、取り組んだ支部が五割を超えました。各地の演説会を含めますと、参加した人数は五十万人を超えました。私たちは、「大運動」を、百万人を超える規模まで発展させようではないかということを目標にして取り組んでいますが、それが今後の奮闘いかんでは可能なところまで、画期的な広がりをみせています。

 議員団が、「大運動」をさらにおおきく前進・飛躍させる先頭に立つとともに、強く大きな党づくりの取り組みでも、全党の運動に貢献する奮闘をしたいと思います。

 この国会を振り返って、日本共産党は、衆参両院で、あわせて十六人の議員団でありますけれども、十六人でもこれだけの仕事ができたわけであります。今度の総選挙でこの前進・躍進をかちとるならば、国民の期待にこたえてさらに大きな仕事ができることは間違いありません。つぎの総選挙で必ず前進・躍進することをめざして、この二つの仕事をしっかり取り組み、臨時国会では元気に顔を合わせたいと思います。みなさん、ほんとうにご苦労さまでした。(拍手)