2008年1月19日(土)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ


 日本共産党の志位和夫委員長が十八日の党国会議員団総会でおこなったあいさつは次のとおりです。


写真

(写真)あいさつする志位和夫委員長=18日、衆院第一議員会館

 みなさん、ご苦労さまです。閉会と思ったら、すぐ開会です(笑い)。忙しい日々を送っておられると思います。開会にあたってごあいさつを申し上げます。

 私は、どういう基本的な構えでこの国会にのぞむかについて、のべたいと思います。

福田内閣――政治の行き詰まりに、何一つ打開策を示せない

 この国会は、これまでにない新しい特徴を持った国会になっています。新春の「党旗びらき」でものべたように、アメリカと財界・大企業に軸足をおいた自民党政治は、どの分野でもいよいよ行き詰まってしまっています。昨日、自民党大会が開かれましたが、そこでは「結党以来の最大の危機」ということがいわれたそうです。

 ところが、自民党がこの国会にのぞむにあたって、自民党なりに、この行き詰まりを打開する旗印を示しているかといえば、何一つとして旗印を示せない。こういう深刻な特徴があらわれています。

 これまでの内閣を振り返ってみますと、小泉内閣は、自民党政治の行き詰まりにたいして、「構造改革」を叫び、さらに「郵政民営化」を叫び、彼らなりに行き詰まりを打開するニセ「改革」の旗印を示してのぞみました。もちろん打開の旗印といっても、悪い方向への旗印であり、それがいっそうの行き詰まりをつくりだしたわけですが、ともかく旗印があったわけです。それにつづく安倍内閣はどうだったかというと、「美しい国」づくりという反動的打開の旗印を揚げました。いまでは露と消えましたけれど、ともかくもそういう旗印があったわけです。

 しかし、福田内閣となると、何があるだろうか。旗印が何一つ見えてきません。これだけ自民党政治が深刻な行き詰まりに陥っているのに、その打開の旗印を何一つ示せない。かといって、これまでの路線の転換に踏み切ることもできない。行き詰まり、立ち行かなくなった路線に、取り繕いをおこなったり、ごまかしをほどこしたりして、ただしがみついている。これがいまの自民党政治の末期的姿なのであります。

どの分野でも抜本的な政策転換を求める「攻め」の論戦を

 こういう国会で、私たちはどういう構えで論戦をすすめるか。一言で言って、「攻め」の論戦におおいに意気高くとりくみたいと思います。すなわち、国民の切実な要求から出発しながら、外交でも内政でも、自民党政治の古い枠組みそのものの根本的転換を求める「攻め」の論戦をおこなう。じっくりと地に足をつけながら、どの分野でも抜本的な政策転換を求める論戦を攻勢的におこなう。「攻め」の論戦を、この国会では心がけたいと思います。

雇用でも社会保障でも、従来の路線が立ち行かなくなってきた

 たとえば雇用の問題では、労働法制の規制緩和路線が、いよいよ立ち行かなくなってきています。グッドウィルとフルキャストという派遣最大手の企業が無法を繰り返し、事業停止命令に追い込まれるという事態が起こりました。そういうもとで、政府・与党は、財界が要求している派遣労働のいっそうの自由化を、見送らざるをえなくなりました。かといって、それでは規制強化の方向にかじを切るかといったら、それもできないでいる。規制緩和もできなければ、規制の強化にも踏み込めない。これがいまの状況です。ですから、雇用の問題についていえば、無法の実態を告発しながら、いまこそ派遣法を抜本的に改正し、本格的規制に踏み出せという主張をおおいにおこなうべきときです。

 社会保障の問題では、社会保障費の自然増を、毎年二千二百億円ずつ削減する、こういうやり方を続けてきたわけですが、これがいよいよ立ち行かなくなってきた。高齢者医療の問題をとってみても、全国で怒りが噴き上がっています。そういうもとで、政府も一時的・部分的な凍結策をうちださざるをえなくなっています。しかし、それも補正予算で措置してつじつまをあわせ、本予算案では二千二百億円の削減という社会保障費抑制路線にあくまでもしがみつくという路線を変えようとしません。ここにも大きな矛盾につきあたってしまっています。そのもとで、私たちは、ここまで行き詰まったのだったら、医療の制度改悪は撤回せよ、医療費抑制路線はやめなさいという、「攻め」の論戦をここでも展開していく必要があります。

道路特定財源――4つの改革を一体的にすすめる

 それから、この国会では、道路特定財源の問題が一つの大きな焦点になりますが、この問題の核心というのは、一言でいうならば、無駄な道路をつくり続けるシステムを温存するのか、断ち切るのか、ここにあります。

 わが党の立場は、第一に、道路特定財源については一般財源化し、福祉や教育、暮らしにも自由に使えるお金にする。

 第二に、暫定税率については、無駄な道路をつくり続けることを加速する役割を果たしてきたわけですから、これはきっぱり廃止をする。

 第三に、道路政策については、十年間で五十九兆円を使うという、「総額先にありき」という「道路中期計画」は撤回させる。そして、「国際競争力」を口実にした無駄な高規格道路計画は中止し、道路は、国民生活からみて必要不可欠で、緊急性の高いものをよく吟味して整備をする。こういう方向での抜本的転換をはかっていく。

 第四に、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税を導入する。

 この四つの改革を一体のものとしてすすめる。こういう立場で、この問題についても、おおいに攻勢的な論戦にとりくみます。

経済政策の軸足を、大企業から国民・家計に移せ

 マクロの経済政策の問題では、政府はこれまで、「大企業が利益をあげれば、いずれはそれがめぐりめぐって、家計にも及ぶ」という「経済論」を繰り返していました。ところが、それがいえなくなったというのが、この間の新たな特徴です。

 この間の経済の状況は、一方で、空前の利益を上げる大企業がある。他方で、貧困と格差が広がる国民生活がある。この落差が広がる一方であり、そしてこれほど深刻になったことはありません。さらに重大なことは、このゆがみが日本経済の土台を脆弱(ぜいじゃく)なものとし、経済そのものが立ち行かなくなってきたということです。この間、日本の株価が下落を始め、大きな問題となっています。各国の株も下がっていますが、「日本の一人負け」といわれるぐらい、日本がとりわけ深刻です。いまおこっている株価の下落は、国際的な投機マネーによるかく乱の影響もありますが、日本経済の土台があまりに脆弱であることを反映したものにほかなりません。とりわけ、どこが脆弱かといったら、内需が低迷している、とくに家計消費、個人消費が冷え込んでいる。そこに日本経済の脆弱性の一番の根本があります。

 こういういまの経済情勢とのかかわりでも、経済政策の軸足を、大企業から国民・家計に転換せよという日本共産党の主張は、日本経済のまともな発展にとっても避けて通れなくなっています。この要求を私たちは大きく掲げて、この国会をたたかいぬいていきたいと思います。(拍手)

「大連立」による情勢の反動的打開の動きに、正面から立ちはだかる

 もう一つ、この国会論戦にのぞむ私たちの構えとして重要な問題があります。それは、先ほど私は、自民党が、行き詰まりを深めながら打開の旗印を示せないでいるとのべましたが、行き詰まりのいわば反動的打開の道が一つだけあるということです。それが何かといえば、自民党と民主党による「大連立」、あるいは「政界再編」という道にほかなりません。

 自民党が、つねにこの道をさぐろうとしていることは、福田首相が口を開けば「野党のみなさんのご協力を」と言っていることにも示されています。民主党はどうかというと、昨年の「大連立」騒動をつうじて、この党が自民党との連立政権を選択肢にする政党だということが示されました。双方が、「あうんの呼吸」でそのタイミングをはかっているわけです。

 ですから、この国会にのぞむ私たちのもう一つの重要な構えとして、自民党と民主党の合作によって、平和を壊し、暮らしを壊す悪い政治がすすめられる、それによって自民党政治の行き詰まりの反動的打開をはかろうとする、そうした危険があることにつねに注意を払い、正面からそうした動きに立ちはだかる役割を、日本共産党が果たしていこうではないかということを訴えたいと思います。(拍手)

自衛隊の海外派兵の恒久法――自民・民主両党の危険な接点

 この問題がどう展開するかについて、予断をもっていえませんが、いまあらわれている問題としては、自民、民主両党の接点として二つの点が浮上していることをよく注視し、論戦でもただしていく必要があります。

 一つは、自衛隊の海外派兵の恒久法の問題です。

 この問題では、前の臨時国会で民主党が提出した海外派兵法案――そのなかには恒久法の制定という重大問題が規定されていますが、それが継続審議になって今度の国会に持ち越しになり、重大な火種となりました。もう一方で、自民党の福田首相がどうかといえば、こちらの側も恒久法についての検討をすすめたいということを表明しています。

 きわめて重大で危険な接点がここにあります。アメリカいいなりに、いつでもどこでも、「迅速・柔軟」に自衛隊を派兵する体制をつくろう、武器の使用の基準を緩和していこうという方向が、合作ですすめられる危険があります。これに正面から立ちはだかる論戦と運動にとりくみたいと思います。

消費税増税を許さない論陣と運動を

 それからもう一点は、消費税の税率引き上げの問題です。

 この問題では、自民党と民主党の双方から、昨年末に「税制改革大綱」が発表されました。自民党の「税制改正大綱」では、二〇〇九年度をめどにして、「社会保障の財源」を口実として消費税を値上げするという方向を色濃くにじませました。民主党の方針では、「将来の方向性」として消費税の税率引き上げに言及しました。ここにも重大な接点があります。

 憲法を踏み破った海外派兵の恒久法、消費税の税率引き上げ、こういう平和と暮らしの根本にかかわる重大問題で、自民・民主の合作によって政治の行き詰まりからの反動的打開をはかろうとする危険な動きを、絶対にわが党は許さない。この立場での論戦、運動をおおいに起こしていこうではありませんか。(拍手)

知恵と力つくし、総選挙勝利への道を開く国会に

 自民党政治の行き詰まりのもとで、国民の切実な要求から出発しながら、アメリカ・財界中心から国民中心の新しい政治への大転換を求める、「攻め」の論戦にとりくむ国会にしていこう。そして、自民・民主の合作による悪政の強行の動きに、正面から立ちはだかる日本共産党の役割をしっかり果たしていこう。このことを国会開会にあたって誓い合いたいと思います。(拍手)

 最後にのべておきたいのは、新春の「党旗びらき」でものべた直面する重要な課題にもおおいに挑戦する国会にしていきたいということです。地球環境を守る課題にどうとりくむのか、国際的投機マネーをどう規制していくのか、破たんの淵(ふち)にある農業をどうやって立て直していくのか。これらは、一つひとつが新たな探求を必要とする大問題ですが、綱領の立場にたって、これらの課題にも果敢に挑戦し、国民の立場からの抜本的打開策をしっかり示していきたいと思います。

 議員団全員の力を合わせた奮闘で、また院外の国民運動ともしっかり連携した奮闘によって、この国会が総選挙勝利への道を開く国会になるように、知恵と力をつくしてがんばりぬきましょう。以上をもって国会開会にあたってのあいさつとします。(拍手)