2007年8月10日(金)「しんぶん赤旗」

歴史的大局にたって希望ある日本の未来を開こう

日本共産党創立85周年記念講演会

志位委員長・不破前議長が講演


 日本共産党は九日、東京都内の渋谷C.C.Lemonホール(旧渋谷公会堂)で党創立八十五周年記念講演会を開きました。「選挙結果にショック。希望を持ちたくて」(二十六歳女性)、「当面の進路を志位さんや不破さんがどう話されるか聞きたい」(七十一歳男性)などの思いを胸に、ロビーにまであふれる約二千四百人が参加。CS通信で全国に中継されました。志位和夫委員長が「参院選の結果―政治の展望と日本共産党の役割」、不破哲三前議長が「日本共産党史八十五年と党発展の現段階」と題し記念講演、歴史的大局にたって希望ある日本を切り開こうというよびかけに、参加者は大きな拍手でこたえました。


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(写真)日本共産党創立狆周年記念の講演会=9日、東京・渋谷C.C.Lemonホール

 講演会では、広井暢子・党常任幹部会委員が司会を務めました。参院選で当選した井上哲士、紙智子、山下芳生各議員と、この一年間で新たに誕生した党員首長の、茂木祐司・長野県御代田町長と、頼高英雄・埼玉県蕨市長があいさつしました。

 参院選の結果をどうみるかや、国民が新しい政治の中身を探求する時代が始まったことなどを解明した志位委員長、八十五年の党史を振り返りながら、世界の目と日本政治史という二つの角度から日本共産党の現段階を明らかにした不破前議長の講演―聴衆から「共産党の役割に確信がもてた」「新しい時代に向かう力強さを感じた」との声が聞かれました。


志位委員長の講演

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(写真)講演する志位和夫委員長

 志位和夫委員長は最初に、参院選の結果について、日本共産党の結果と全体としての大局的結果の両面から明らかにしました。

 今回の選挙戦では、自民・公明政治にたいする国民的批判の激流が、野党第一党の民主党に集中する流れが起こり、他方で「自民か民主か」の二者択一のキャンペーンが日本共産党への流れをせき止める最大の壁となりました。志位氏は、その中で、比例代表で四百四十万票を得た意義は大きく、「おそらく百数十万という規模で無党派層、他党支持層からの支持を得た」と強調。くみ出すべき教訓は第五回中央委員会総会で明らかにしたいとのべました。

 全体の大局的結果について、「今回の選挙で最も重要なことは、自民・公明の政治の古い枠組みを続けていては日本の前途はないとの国民の判断が下ったことだ」と強調。安倍政権の「構造改革」路線、改憲路線に国民が審判を下す上で、日本共産党の果たした役割を力説しました。

 その上で、志位氏は、今後の日本政治の展望と日本共産党の役割について解明。「国民が、自公政治に代わる新しい政治の方向と中身を探求する新しい時代、新しい政治プロセスが始まった」とのべ、どうやって、このプロセスを前向きに打開するか、三つの政治的な中心点を提起しました。

 第一は、過去の日本の侵略戦争を正当化する異常な逆流を克服することです。参院選直後に、米下院本会議で元「従軍慰安婦」に、日本政府が「公式かつ明確な謝罪」を行うことを求める決議が採択されました。

 志位氏は、「この決議は、安倍・『靖国』派外交の国際的大破たんをしめすものにほかならない」と強調。首相として、歴史的事実を受け入れ、謝罪をする公式の声明を出すよう強く求めました。

 第二は、異常なアメリカいいなり政治から脱却することです。志位氏は、自衛隊をインド洋に派兵するテロ特措法の延長案について、民主党が反対を貫くなら参院で葬ることは可能だと指摘。同延長案を廃案にするために野党が共同することを呼びかけました。

 参院選の結果は、憲法改定の企てへの重大な打撃ともなったとして「安倍・自民党が『マニフェスト』のトップに改憲を掲げ、惨敗した以上は、改憲方針は撤回するのが筋だ」と訴えました。

 第三は、極端な大企業中心政治の異常をただし、国民の命と暮らしを守ることです。

 その中で、志位氏は、参院選で民主党も公約した障害者自立支援法による負担増の撤回などをあげ、「わが党が提案した『緊急福祉1兆円プラン』のさまざまな要求が参院で多数派になる可能性が生まれている。それを現実のものとし、実行させるために国会内外でおおいに力を尽くして奮闘しよう」と力を込めました。

 日本の希望ある未来について話をすすめた志位氏は、現在日本共産党が立っている歴史的地点を一九六一年に綱領路線を確立したあとの四十六年の政治対決の歴史のなかで解明しました。党の前進は、支配勢力による歴史の逆流を呼び起こし、それを打ち破ってのものとなることを指摘。一方で、自民党の国政選挙での得票率が、六〇年の58%から今回の28%まで落ち込んだことを紹介しながら、「国民が自公政治に代わる新しい政治を探求する時代がやってきた。これを前向きに打開すれば、新しい日本への展望が見えてくる」と強調しました。

 最後に、故宮本顕治元議長のたたかいにふれた志位氏は、歴史を大局においてとらえ、どんな困難にも負けない不屈さを発揮し、科学的理性をもって前途を開くこと―このことが、日本共産党の先輩たちによって築かれてきた伝統だとのべ、次のように呼びかけました。

 「この伝統を二十一世紀に発展的に引き継ぎ、日本の希望ある未来を開くためにともに力をつくそう」

不破前議長の講演

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(写真)講演する不破哲三前議長

 不破哲三前議長は冒頭、「日本共産党の八十五年の歴史をきずいてきたすべての同志たちに心からの敬意をささげたい」とのべ、世界の目と日本政治史という二つの角度から日本共産党の現段階を明らかにしました。

 まず、「日本の政治と政党は、戦前・戦時の日本をどう見るかを世界で問われている」という問題です。参院選で、過去の日本の侵略戦争を肯定する「靖国」派でかためた安倍内閣が大敗し、同盟国のアメリカで「従軍慰安婦」問題で日本の謝罪勧告決議が採択されました。

 「日本共産党の立場は明白だ」として不破氏は、天皇制絶対権力の迫害に抗し、戦争と植民地支配が進行したその現場で命がけで侵略戦争に反対し、国民主権の民主政治への転換をかかげた日本共産党の戦前・戦中のたたかいを詳述。先月亡くなった宮本顕治元議長が侵略戦争と専制政治に反対した法廷闘争にもふれ、「この旗をまもりぬいた党だからこそ、私たちは安倍内閣の『靖国』派政治を正面から、そして誇りをもって糾弾することができる」と力説しました。

 次に不破氏は、米誌『タイム』が「世界第二位の経済大国で、共産主義が活気にあふれ健在」と、日本共産党論を展開していることを紹介しました。以前は、資本主義諸国の共産党ではイタリアとフランスがもっとも有力といわれた時代が長く続きました。それがいまは日本共産党がもっとも元気な党とされています。この「逆転現象」がおきた根本には、日本共産党が早い時期に自主独立の路線――過去にいかなる成果をおさめた党であろうと、日本の革命運動の問題にたいする外国の干渉はいっさい許さない立場を確立した歴史があります。

 不破氏は、「五〇年問題」の教訓として導き出されたこの自主独立路線が党活動の大原則になり、六〇年代のソ連と中国・毛沢東派による二つの干渉主義との闘争で試練にたたされ、これを完全に打ち破った歴史を語りました。このたたかいは自主独立の精神をすべての党支部と党組織が自分のものとしたことの実証となったのです。

 不破氏の講演は、「『政治対決の弁証法』の現段階」に及びました。この三十数年間の政治史が日本共産党を政界から閉め出す集中攻撃の波と切り結びながら、党の前進のために力をつくしてきた歴史だったと指摘。支配勢力による日本共産党の「閉め出し」作戦を歴史的に跡付けました。それは現在、政党戦線をむりやり「二大政党」の流れにはめこむ型になっており、九三年総選挙の「非自民」対決では公然と自民党政治の枠内での政権交代をとなえ、二〇〇三年総選挙の「二大政党」押し出し選挙では、消費税増税と憲法改定という共通の政治目標をかかげ、その実行力を競い合う内容になりました。

 不破氏は、今回の参院選では「自民か民主か」の選択にしぼるやり方は前と共通だが、二つの新しい特徴が出たと指摘しました。それは、(1)「靖国」派でかためた安倍内閣が登場することで、自民党の基盤の政治的な衰退がいよいよ明瞭(めいりょう)になった、(2)民主党の側でも、同じ政策目標を掲げて実行力を競い合うやり方が、通用しなくなり、対決型の選挙戦になったが、政策的な対抗軸は最後まで示せないまま――という点です。不破氏は「自民党政治の衰えが『二大政党』作戦の姿・形をも変化させてきている」と新しい政治変化に注目しました。

 そのうえで、党綱領こそ、自民党政治の行き詰まりの打開の道を示していることを内政と外交の両面から詳述。すべての党支部、後援会が綱領を手に、国民の声にこたえる「新しい政治」とは何かを草の根で語る全国的なネットワークをつくろうとよびかけました。

 最後に不破氏は「不屈の意志、開拓・探求の精神とともに、困難なときも未来を広い視野で見定める革命的大局観を自らのものとし、日本と世界の明るい未来のためにがんばりぬこうではないか」と結びました。

参院選で政治に関心■信念貫くこと大切なんだ

参加者から声

 二階席の端で聞いていた三人の青年は、東京都渋谷区内にあるIT関係会社の会社員。会社帰りに飲みに行く途中、演説会の看板を見つけて入りました。その中の一人、横浜市に住む女性(22)は「メモまでとって、聞き入っちゃいました。政治に無関心でしたが、この参院選挙から関心を持ちはじめました。何が正しいのか、こういう演説会を聞いたりして考えていきたい。志位さんの話はわかりやすかった」と話しました。

 留学先のカナダから夏休みで帰国した十七歳の娘とともに参加した看護師の女性(53)=都内在住=はいいます。

 「娘はカナダの高校で、中国や韓国の学生から、侵略戦争を肯定する日本政府に対する批判をいわれるそうです。不破さんの話を聞いて、国民の幸せのために自主独立路線を貫いてきた日本共産党の綱領の大切さがよくわかりました。戦前、侵略戦争に反対して不屈にたたかった政党があったことなどを、改めて若者にも知らせていきたいと実感しました」

 介護福祉士の男性(31)は職場の七夕の会で、短冊に「生きにくい社会で早く死にたい」と書いたお年寄りがいたといいます。「こんな世の中はおかしい」と思い、答えを見つけに、栃木県小山市から電車で二時間かけて来ました。

 「正しいことや当たり前のことを言うと迫害されるなど、戦前の弾圧のもとでもたたかった共産党の歴史を初めて知り、感銘を受けました。生活を守るためには、信念を貫いて、おかしいことはおかしいと主張していくことが大切なんだということがよく分かりました」と話しました。