2007年7月14日(土)「しんぶん赤旗」

TBS系番組 党首討論

志位委員長の発言(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は、十二日深夜放映のTBS系「NEWS23」の党首討論に出席し、六党党首といまの政治状況、年金、消費税、憲法問題などで議論しました。その大要を紹介します。


「たしかな野党」としての役割発揮が、未来の「たしかな与党」につながる

 番組では冒頭、視聴者から寄せられた質問に各党の代表が回答しました。志位氏は、「『たしかな野党』と言いますが、『たしかな与党』になる気はないのですか」との日本共産党への質問に、次のように答えました。

 志位 私たちはもちろん、二十一世紀の早いうちに、アメリカいいなりと大企業中心の政治のあり方をおおもとから変える民主連合政府という政権構想をもっております。

 私たちは、そういう未来において「たしかな与党」を目指しますが、今度の選挙でそれを言うのはちょっと早いので、いま「たしかな野党」としての役割を果たすことが、未来の「たしかな与党」につながるというふうに考えて、頑張りたいと思っています。

くらしと平和を壊す「欠陥車の大暴走」――食い止めるために共産党は頑張る

 討論では、いまの政治の現状が議論となり、国会での強行採決、閣僚の相次ぐ辞任、「政治とカネ」の問題の頻発などが問われました。安倍首相は「既得権を打ち壊していかなければ新しいものはできてこない」などと強行採決した悪法を合理化。それに対し、志位氏は次のように指摘しました。

 志位 一言で言いますと、「欠陥車が暴走している」という感を強くいたします。

 欠陥という点で言いますと、安倍内閣が発足して九カ月ですが、「政治とカネ」にまつわる疑惑が閣僚から次々と出ました。佐田前行革相、松岡前農水相、そして今度の赤城農水相、一人としてこの疑惑について真相を明らかにした方はいない。そして明らかにさせる努力も、党の総裁としても総理としてもやってこられなかった。

 もう一方で暴言が相次ぎます。「(女性は)子どもを産む機械」発言、「原爆投下しょうがない」発言、こういう問題が立て続けに起こる。私はそういう点では、欠陥内閣だと言わざるを得ないんです。

 同時にその欠陥内閣が、衆院で三分の二の数の力で、暴走している。暴走の方向は、いま日本列島で大問題になっている定率減税を廃止しての住民税の大増税、それに続く消費税の増税、こういう暮らしを壊す暴走、そして憲法九条を壊して、日本を「戦争ができる国」にしようという方向で、いろいろな重大な法案を力ずくで通していく暴走。この「欠陥車の暴走」を、本当に今度の選挙で食い止めないと日本は大変なことになる。その点でも私たちが頑張らないと(いけない)と思っております。

年金問題――1億人への通知ただちに、さらに受給資格改善、最低保障年金など制度改革を

 年金問題がテーマとなり、公明党の太田昭宏代表は「消えた年金」問題を「年金記録問題は社会保険庁の問題であり、労働問題。社会保険庁を解体したことが大事」とすりかえました。安倍首相と民主党の小沢一郎代表は年金制度をめぐって互いに非難を繰り返しました。そこへ割って入った志位委員長は次のようにのべました。

 志位 いまの議論を聞いていまして、年金の問題というのは二つの問題をきちんと区別して対応する必要があると思うんです。

 一つは「消えた年金」の問題の解決ですが、この問題はもちろん、歴代の政府や厚生労働相、社会保険庁長官の責任というのは重いものがあるので、その政治責任というのはきちんと批判しなければなりませんが、同時に解決に当たっては、この問題については党利党略ではなくて、与野党が知恵を出し合って協力して解決すべきだと、私たちは考えております。

 そのために私たちは、一億人の国民への(年金納付記録の)通知の問題も提案しました。今度の政府の新方針にはそれが盛り込まれたのは一歩前進だと思っております。ただ実施の時期が来年度の四月から十月ですから、これは遅すぎます。私たちは今すぐやるべきだと提案しておりますけれども、この「消えた年金」問題は、いわば制度以前の問題ですから、そういう対応が必要だと思っております。

 もう一つ、(年金)制度自体の問題は、これはやはり根本的な議論が必要なんですよ。私はいまの年金の最大の問題というのは、無年金の方が六十万人とも百万人とも言われている。それから低年金(の問題があります)。年金が低すぎる――満期で払っても、国民年金で六万六千円、平均は四万七千円とあまりに低い。こういう問題を解決するのにどうやっていくのか。

 私たちは、緊急策として、年金の受給資格がいま(保険料を)二十五年かけないと年金が一円ももらえない、これはいくらなんでも長すぎる、二十四年半では(年金を)一円ももらえない、掛け捨てになるんですね。ですからこれはせめて十年に下げるという抜本的な対策が必要だと思います。

 もう一つ、抜本策としては最低保障年金をきちんとやって、土台をしっかりつくって、その上に掛け金に応じた給付という二階建ての制度にして、低年金、無年金をなくしていくと。この制度論は制度論として議論する。きちんと立て分けて議論していったほうが、交通整理がうまくいくように思います。

 志位氏の発言に、コメンテーターも「志位さんのいうことはわかる」とのべました。

消費税――首相の発言は上げる可能性があるということと同じではないか

 年金財源をめぐる議論に関連して、司会者から「消費税を上げる可能性があるのか」と問われた安倍首相が「歳出削減と経済成長に取り組み、それでも足りない部分は、秋の抜本的税制の改革の中で議論していく」とのべました。前日の日本記者クラブの党首討論会で、この問題をただした志位氏が安倍首相に再度質問しました。

 志位 「消費税を上げないとは一言も言っていない」という総理の発言から、この問題が選挙の争点になってきています。私たちは消費税の増税には絶対に反対ですけれども、上げる可能性があるのだったら、今度の選挙で信を問えと、昨日(十一日)の日本記者クラブでの党首討論会でも言いました。

 その際、安倍さんがこうお答えになったんです。「歳出削減と経済成長で消費税を上げなくても財政再建の目標に到達できる可能性がある。しかし、経済は生き物だから到達できないケースもある」。ここで昨日の討論は終わったんです。

 そこで続きを聞きたいのですが「到達できないケースもある」ということになりますと、消費税を上げる可能性もあるということになりますね。これは「到達できないケースもある」ということを言われたんですから、消費税を上げる可能性があると言われたのと同じだと思いますが、いかがですか。

 安倍 今年の一月に将来、経済が成長していって名目経済成長率が3%の後半、歳出削減努力を十一兆円から十四兆円していく、これが達成できれば消費税を上げなくても二〇一一年にプライマリー・バランスは黒字化するというケースを示しました。しかし、削減が不十分でなかなかうまくいかない、あるいは経済の成長がうまくいかない場合もある。そのときには足りない部分がある。足りない分については、税制改革全般のなかで議論していかなければならない。

 志位 あなたのいう税制改革のなかには、消費税増税が含まれることになるのではないですか。税制改革全般の中で、消費税を上げる可能性もあるということになるのではないですか。はっきりさせてください。

 志位氏と安倍氏の討論はここで打ち切られ、安倍氏の回答がないまま、コマーシャルになりました。

憲法改定――米国と肩を並べて武力行使する国づくりが目的、首相はごまかさず語るべきだ

 憲法改定問題では、自民党が公約のトップで二〇一〇年の改憲発議を掲げていることについて、説明を求められた安倍首相は「私は何回も述べているからいいです」などと回避。コメンテーターが「憲法には与野党にねじれがある。選挙後に憲法を軸とした政界再編がありやなしや」と質問し、太田氏は「自公民三党を中心に」などと発言しました。志位氏はそこで、次のように発言しました。

 志位 政界再編という問題がいま議論されていましたけれども、私はその前に、憲法改定をいま自民党がいっている目的はなにかということを、正直に語るべきだと思うんです。

 私が印象深く覚えているのは、去年の総裁選の折に安倍さんがこういうことをおっしゃった。「アメリカと肩を並べて武力の行使をする。それは憲法の解釈改憲ではできません。憲法改定抜きにはできない」という言い方を繰り返しされておりました。

 これは逆をいいますと、憲法改定の目的がアメリカと「肩を並べた」戦争をする国をつくることにある。イラク戦争のような戦争にアメリカが打って出る、それに日本が国家として参戦する、こういう国をつくることにあるということを、目的として総裁選のときははっきりおっしゃられておりました。

 私はこういう国づくりには絶対反対ですが、安倍さんの自民党は、憲法改定ということを、選挙の「155の約束」のトップにもってきているんですから、一体これでどういう国をつくろうとしているのか、何が目的なのか。

 私たちは、海外で武力行使をする、「肩を並べて」―あなたの言葉でいえば―武力を行使する国が憲法改定の目的だと、あなたの発言からはそうしか読み取れませんが、いかがでしょうか。

 志位氏の発言に対し、司会者が「議論はつきないんですが、時間が限られている」として議論を打ち切ったため、安倍首相の回答はありませんでした。