2006年4月27日(木)「しんぶん赤旗」

職場問題学習・交流講座

志位委員長のまとめ


写真

(写真)討論のまとめをする 志位和夫委員長=23日

 みなさん、二日間にわたる講座、ごくろうさまでした。

 二日間で三十六人の同志が発言しました。感動的で豊かな教訓があふれるように語られた交流になりました。発言のすべてが教訓的なものでありました。その内容と感動について、しかるべき形で全党に伝えるようにしたいと思います。

 発言を希望しながら、時間の関係で発言できなかった同志も、発言文書を準備された方は、私たちのところにお寄せいただくことをお願いします。よく読ませてもらい、今後のとりくみに生かしていきたいと思います。

 この講座は、お互いに学びあうことを目的にした講座です。そこで、最後に私は、中央として、みなさんの発言から学んだことを、いくつかのべたいと思います。

労働者・国民の利益の守り手としてたたかう不屈性

 第一に、すべての発言に共通していたのは、どんな困難ななかでも労働者・国民の利益の守り手としてたたかう不屈性――不屈な姿だったと思います。

 日本共産党は、立党の精神を、そのときどきの国民の苦難を軽減することにおいています。この立党の精神が、職場支部と労働者党員のなかに脈々と流れている。このことが確認された講座となったのではないでしょうか。

 大リストラで労働者がはるか離れた二つの職場に分散して、移動させられた。しかし、移動先となった二つの職場のそれぞれに党支部をつくり、新しい職場の要求をとらえ、未組織労働者を結集し、読者を増やしているとりくみが、報告されました。どこに行っても日本共産党員であることには変わりがない。その不屈の奮闘が伝わってくる発言でした。

 九州から参加した青年労働者の同志は、会社の清算・解散によって不当解雇された若者たちが、自ら解雇撤回をもとめて立ち上がり、「若者が未来に希望を持てる世の中にするためにも、勝利までがんばりぬく」という決意をのべました。

 競争と管理の教育がおしつけられ、教育現場に大きな困難がおしつけられるもとで、その現状打開のために苦闘しながら、子どもたちの成長のために必死になってがんばりぬく姿が、報告されました。発達障害の子どもが、不安定な状態になったとき、「オレはどうせ不良品だ」という子どもを、抱きしめながら、「違うよ、君はすごくいい子だよ」といって心をよせ、守り抜く姿をつたえた発言は、胸をうちました。

 報告では、教育基本法改悪の重大な問題点を告発しましたが、教育基本法第一〇条は、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」とあります。「直接に責任を負つて」というのは、たとえそのときどきの政治がどんなに悪かろうと、教育という仕事は人間対人間の仕事であって、教師は子どもと国民に「直接に責任を負つて」いるということです。どんなに困難な条件であっても、「不当な支配に服することなく」、子どもを守ってがんばるのが教育基本法第一〇条の精神だと思います。それをまさに体現した日本共産党員ならではの不屈の奮闘だと、私は感動を持って聞きました。

自らの知恵と力で前途を切り開く自発性と創意性

 第二に、私たちが学んだのは、職場支部のみなさんが、自らの知恵と力で前途を切り開こうという自発性と創意性を発揮して、困難に立ち向かっている姿であります。

 労働者へのリストラ攻撃は、労働法制の規制緩和などによって直接に働くルールを壊すとともに、会社分割とか企業譲渡など企業の経営形態を変えることによってリストラを促進するという、二重の手口ですすめられています。たいへんな悪巧みを発揮した攻撃がくわえられています。ですから、これをあばき、労働者のたたかいを組織するには知恵がいります。この知恵が発揮されています。

 たとえば経営統合というやり方で大リストラがすすめられた職場支部では、職場新聞で「企業危機」といわれるけどそれは違う、会社がつぶれる心配はないと、リストラの不当性を広く告発した。このたたかいで、職場の世論を変えていった。結果としてリストラ攻撃は強行されたけれども、労働者のなかで党の信頼はおおいに高まり、党建設もすすんだという経験でありました。資本がかけてくる複雑な労働者に対する攻撃にたいして、自らの知恵と力によって立ち向かっている姿に感銘をうけました。

 ある企業では、整理回収機構(RCC)のもとに入ったことを理由に、大リストラ案を強行してくる。会社は、「RCCの合理化案だからもうだめだ」と、あきらめの気分を流してくる。それにたいして、RCCは合理化案を出すところではなく、実態は銀行がつくったものだったことを職場新聞で明らかにしていったところ、労働者が真実を知って、「反共の壁」が崩れた。党の信頼が高まり、読者も増えたという報告がありました。

 発言のすべてがそういう精神にたっていたと思いますが、自らの知恵と力で、攻撃に立ち向かい前途を開いている、ここに感銘をうけました。そして私は、それを聞いて、ほんらい日本共産党の活動というのは、こういうものだと痛感しました。

 わが党の活動は、もちろん党綱領、大会決定、中央委員会決定、こういうみんなでつくりあげる基本の方針のもとに、団結しすすめるわけですが、それぞれの支部が自ら責任を負うところで直面している課題は、自らの知恵と力で打開する、支部の自発性と創意性をおおいに発揮しながら突破していく、これが基本なのです。もちろん党機関の指導と援助は大切であります。しかし、機関にいわれようと、いわれまいと、支部というものは、自分の知恵と力で困難を打開し、前途を切り開いていく。日本共産党というのは、ほんらいそういう党だと思います。そういう支部のとりくみに、心をよせて援助するのが党機関の役割だと思います。

労働者との人間的な結びつき、つきあいこそ、あらゆる活動の土台

 第三に、労働者との人間的な結びつき、日常のつきあいから出発し、要求に心をよせるということが、あらゆる活動を前進させる土台だということも、討論を通じておおいに深められたと感じました。

 医療関係の支部の支部長は、「ここに来るまでは『政策と計画』を難しく、面倒くさいことだと思っていました。しかし報告で『政策と計画』について、『労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくること』というのを聞き、それなら支部でやってきたことだと理解できました」とのべ、職場でのさまざまな要求実現の活動を紹介したあと、「『政策と計画』とはいま私が発言したことをまとめて、後継者づくりなどを明らかにし、みんなで活動することなんですね。それでいいですか」と発言しました。もちろん、それで立派な「政策と計画」になると思います。

 職場の労働者と結びつき、その要求に心をよせて活動している支部は、「政策と計画」と銘うってなくても、その要素となる活動に多面的にとりくんでいます。それをまとめあげ、自覚化することが、「政策と計画」をつくることであります。

 関西の郵政職場の代表は、非正規雇用の青年たちを結集し、職場支部が元気になっているという経験を発言しました。印象的だったのは、花見、焼き肉、なべ会、あらゆるつきあいで人間と人間の信頼をつくる活動とともに、「私は、困ったことがあったら何でも相談にのりますといっている。私の後ろには共産党がついており、全労連がついている。すべて解決できるわけではないが、相談にはのれる」という精神で、青年のあらゆる悩み、あらゆる相談に心をよせ、耳を傾け、結びつきを広げているということでした。

 関西の民間大企業でがんばる職場支部の同志からは、新婦人、後援会、読者会など、いろいろな形態での民主的団体や組織に参加し、ありとあらゆる要求をくみあげ、要求を接点にして結びつきを広げる。それを生かして党づくりを前進させ、職場の女性を広く結集した運動を発展させている姿が語られました。

 労働者との日常的なつきあいと結びつき――これこそが党活動発展の土台だということを、討論をつうじて、あらためて学ぶことができました。

労働者の要求にもとづくたたかい――報告が討論で深められた

 第四に、今日の労働者の深刻な状態悪化をどう打開するのかという問題です。

 報告では非正規雇用労働者の問題、成果主義賃金の問題、公務員攻撃の問題などのそれぞれについて、どうやって労働者の要求実現のたたかいを前進させていくかについて、全国のみなさんの経験にも学びながらいくつかの点を話しましたが、討論ではそれがさらに深められたと思います。

非正規労働者の悩みと要求に心をよせて

 まず、非正規雇用の労働者の結集の問題ですが、討論では、正規雇用の労働者が、非正規雇用の労働者に心をよせ、その苦しみを自分の苦しみとして、多面的な要求にこたえてともに奮闘する――労働者同士の連帯の温かい気持ち、心が通いあうとりくみが、全国で展開されていることが報告されました。

 教職員の現場からは、臨時教職員の問題が語られました。同じ教員なのに画然と差別がつけられている。身分がきわめて不安定になっている。教師の集団になかなか入れない。そういう状況にさいして、「教育に臨時はない」ということを合言葉にして、臨時教職員の悩みに心をよせ、差別待遇の改善をかちとった経験が語られました。

 関西の大企業の職場支部からは、要求アンケートがひじょうに力になっていることも報告されました。非正規雇用の労働者にアンケートをとると、「身分を安定させてほしい」、「給食費をきちんと出してほしい」、「厚生施設を使わせてほしい」など、リアルな要求がどんどん返ってくる。それを手がかりにしながらともにたたかいをすすめ、給食費の支給を実現させたという報告でした。

 発言では、非正規雇用の労働者の劣悪な労働条件をまぢかにみて、同じ労働者として「何とかしたい」という痛切な思いをいだいて、ともにたたかう姿が語られました。職場支部に属している同志は、正規雇用の労働者が多いと思いますが、正規雇用の労働者の側から、非正規雇用の労働者に心をよせる、まさに「すべての労働者階級は団結しよう」の精神で、その苦しみをわが苦しみとして受け止めて、ともに労働条件の改善をかちとる。これは日本共産党の職場支部ならではのすばらしい活動だと思います。

成果主義管理とのたたかい――要求から出発して

 報告では、成果主義の職場支配にたいしてどうたたかうかという問題を提起いたしました。討論のなかでは、この労務管理のもたらす矛盾、そこから生まれる要求から出発して、これに立ち向かうことの重要性がうきぼりになったと思います。

 ここでも職場アンケートが力を発揮しているとのことでした。関東の医療関係の支部の代表は、成果主義の賃金体系が入れられたもとで、職場アンケートをとってみたところ、「仕事をやめたい」という労働者がうんとひろがっていた。さらに要求の中身を聞くと、「忙しすぎる」、「精神的・肉体的な疲労がひどい」、「健康が不安だ」などと、つぎつぎと具体的な不満が返ってきた。その不満と要求を接点に結びつきを広げ、若い看護師さんが入党したという話も報告されました。

 ある職場支部の代表の発言では、この成果主義賃金の導入にたいして、この問題を「考える会」を職場でたちあげた。賃金がどれくらい下がるかという資料もつくって職場でおおいに議論をおこしたとのことでした。大幅な賃下げが強行されたが、このたたかいで職場の労働者の信頼を高め、十数年ぶりに新しい党員を迎えたとのことでした。

 非正規雇用への置き換えにせよ、成果主義賃金の導入にせよ、相手は財界・大企業ですから、そう簡単にたたかいに勝てるものではありません。強行されることが多いというのが現状でしょう。しかし、労働者の要求、正義の旗をかかげてたたかった場合には、必ず党の信頼がたかまり、党を強く大きくしていく道が開けます。そのことが討論をつうじて明らかになったと思います。

職場で変化が――財界による労働者支配が揺らぎつつある

 そして、私が、二日間の討論を聞いて感じたのは、いま職場が、非正規雇用労働者の急増、成果主義管理のおしつけという、二つの矛盾を根源にしながら、変わりはじめているということでした。「職場で変化が生まれはじめている」ということを、何人もの同志が発言されたのを、私は、ひじょうに印象深く聞きました。

 製造業の大企業のある職場で、青年が自殺未遂をするという事件がおこった、これを機に職場が大きく変わり始めたという発言は印象的でした。自殺未遂をして会社を休む青年のもとに、仲間の青年たちがたずね、悩みを聞き、食事をともにするなかで笑顔が戻ってきた。これをきっかけにして、生きがい、自分たちの将来のことについて、思いを語る雰囲気が生まれた。こうして「雇用形態の枠をこえて連帯の輪が広がりつつある」との発言でありました。成果主義についても正面から話し合ってみたら、「頑張れば報われるというが、頑張れば体を壊すし、病気になるだけだ、もう十分頑張っている、会社のいいなりになる人生はもういやだ」という声が返ってきたとのことでした。

 金融関係の大企業のある職場からは、この企業の組合が、ベースアップを要求しない。「ベア要求ゼロでいいのか」が職場の分会で問題になり、大多数が反対に手をあげて否決されるという事態もあったとの発言がありました。

 いま空前のもうけをあげている大企業の中枢部で、この職場支配に反対する声があがっている。財界・大企業の中枢部で、労働者支配が揺らぎつつある。このことが、討論のなかで確認されたのは、非常に重要なことだと思います。

公務員攻撃――「住民が主人公」のたたかいをともに

 報告では、公務員攻撃について、住民とともに打ち破ろうということをのべました。討論では、それをさらに深める発言がされました。

 ある自治体職場の代表は、住民との共同で保育園の民営化などとたたかっていることを紹介し、「住民が主体になることが有効なたたかいになる。住民に知らせ、住民が自ら立ち上がる、そのたたかいに専門性を生かして参加して、前進させることが勝利のカギだ」と発言しました。私は、ほんとうにその通りと、ひざを打って聞きました。まさに「住民こそ主人公」という立場で、公務員攻撃をはね返そうという大事な基本姿勢がのべられたと思います。

職場における党建設――豊かな経験、教訓が語られた

 第五に、党建設の問題でも、後継者づくり、党員拡大をどうすすめるのか、読者拡大をどうすすめるのかなどについて、創意的で教訓にとんだ発言が続きました。

 発言からいろいろ感じましたが、「何としても増やす」という意識的な追求がやはり大事だということがはっきりしたと思います。ある同志は、「党勢拡大を握りつぶさず、握って離さないようにしよう」と言いました。ついつい大事だと思っても、「握りつぶし」てしまう――棚上げにしてしまうという傾向が生まれがちなのですけれども、その傾向とたたかって、「握って離さず」という意識性から始まるのだと思います。

 いま一つ、党勢を拡大する場合には、ふやす側も、相手の側も、党に入る、あるいは読者になってもらうことも、一つひとつのなかに踏み切り、飛躍がそこにあるわけです。この踏み切りの重要性ということも発言の中で語られたのではないでしょうか。

 自治体党組織から、半年間で十八人に働きかけて、四人を党に迎えた経験が報告されました。そのきっかけになったのは、たいへんまじめで党を信頼してくれていた研究者に思い切って入党を働きかけたところ、二つ返事で決意してくれた。この経験は、いかに対象者をせまく考えていたかを証明することになった。これがきっかけとなって、「内なる壁」が打破されて、つぎつぎと党員を増やしてきたという経験でした。発言した同志が、「言葉では『まじめな人は誰でも』と言いながら、実際は、『あの人はどうも』、『この人はどうも』と言って、結局、誰も働きかける対象がいなくなっていた」、ここを突破したところから拡大が前進したということを語ったのは、たいへん教訓的でした。

 党建設の問題では、党と労働組合の関係について、労働組合の前進も、党の前進も、それぞれ独自に追求する、このことの意味が、発言のなかでいろいろな角度から語られました。

 たいへん印象的だったのは、ある同志が発言のなかで、「非正規雇用労働者を組合に結集することは非常に大切だ。同時に、非正規雇用労働者は、組合については、他の職場に移ったら、その組合をやめてしまうことにもなる。しかし、党に迎え入れれば、どこに行っても党員だ」とのべたことは、たいへんに重要な見地だと思います。

 非正規労働者というのは、職場をどんどん変わります。変わらざるを得ない労働条件におかれています。それだけに、入党してもらう。入党すれば、どこに行こうと日本共産党のネットワークがあります。どこに行こうと温かい党組織が迎えてくれます。いっしょになってたたかう仲間がいます。党に入ってこそ先々まで生きる、しかも共通の社会進歩の志で結ばれた人間集団に入っていけると思うのです。ですから組合に組織する努力とともに、入党してもらう努力が大切です。それが、「党に迎え入れれば、どこに行っても党員だ」という言葉のなかに、ズバリ示されていると思いました。

 さらに党建設の問題では、職場支部こそ学習をしようということがずいぶん語られ、またそれにとりくむことが活力の源泉となっている経験が報告されました。

 東京で教職員の援助をしている地区委員会の同志は、綱領の学習と、労働時間短縮などの要求実現という二つの柱で、党づくりを前進させている経験を語りました。

 関西の大企業の職場からは、『資本論』の学習が、非正規労働者の要求実現のたたかいを前進させていく深いところの原動力になっているということも報告されました。

 私たちはいま、「ルールなき資本主義」ということを問題にしています。「ルールなき資本主義」のうえに「新自由主義」の経済路線がかぶさり、労働者の苦難をいっそう深刻にしているわけですが、これを打開し、「ルールある経済社会」をつくるという経済改革の大方針は、綱領に明記されているわけです。

 さらに『資本論』をひもとくなら、そこには資本主義という体制の矛盾、その生成、発展、没落の法則が解明されています。資本がどういうやり方で搾取を強化するのか――長時間労働、過密労働、不変資本の節約など、さまざまな形で搾取を強化する方法も明らかにされています。それはまさにいまの職場でおこっていることを分析する生きた指針ともなるものです。

 綱領を学び、科学的社会主義を学ぶことが、労働者階級を結集していく力を党員が深いところから身につけることになるのだと思います。

日本の未来がかかった大事業――系統的な前進のための努力を

 討論から私たちが学んだことについて、いくつかのことをのべましたが、討論の成果はもちろんこれにつきるものではありません。すべての発言に学ぶべき豊かな中身がふくまれていたと思います。

 この講座は、みなさんの奮闘によって、大きな成果をおさめることができました。

 ただしこの成果は第一歩であって、実践で豊かに花開かせる努力を、お互いにおこないたいと思います。また、大会決定では、こうした講座を「系統的に開く」ことを確認しています。私たち中央委員会としても、これは第一歩のとりくみと考え、系統的なとりくみを今後も続けていくつもりであります。

 職場のなかに強く大きな党をつくり、労働者の多数を結集していく事業は、長期的に見てまさにわが党の未来がかかった、そして日本の未来がかかった大事業です。お互いに知恵と力をつくし、お互いに学びあって、この大事業を前進させるために奮闘したいと思います。以上をもって討論のまとめといたします。