2006年3月28日(火)「しんぶん赤旗」

冷たい官僚府政はもうごめん 衣笠さんで「あったか府政」を

志位委員長の訴え(要旨)


 「民主府政の会」の衣笠洋子さんを応援して、日本共産党の志位和夫委員長が二十五日、京都市で演説した要旨はつぎのとおりです。


 商店街のみなさん、お集まりのみなさんこんにちは。

相乗り官僚知事―政党の数は多いが中身なし

衣笠さん―府民の多数の声を代表

 みなさん、このたたかいは、「オール与党」に担がれた相乗り官僚知事と、「民主府政の会」の衣笠洋子さんの一騎打ちです。

 このたたかいの構図をみると、相手の陣営は、政党の頭数だけは多い。自民党、公明党、民主党に社民党も入っている「オール与党」です。しかし中身があるでしょうか。

 だいたい昨年の夏の総選挙のころには、小泉さんが「改革」と叫ぶと、人気があがったものでした。ところが、耐震偽装、ライブドア、官製談合、BSE、さらに格差と貧困、いろいろな害悪が噴き出して、小泉「改革」は、いまやぼろぼろではないでしょうか。

 民主党は「偽メール」事件を起こして、自民党にペコペコと頭を下げてあやまってばかりであります。そういう政党が一緒になって手を組んだところで、府民のための仕事は何もできない、中身は空っぽというのが相手の陣営ではないでしょうか。(拍手)

 衣笠洋子さんと「民主府政の会」は、まったく対照的です。衣笠さんは母親運動を長くやってこられ、平和や憲法、府民のくらしを守る運動でも、つねに府民の目線で庶民とともに歩んでこられた方です。衣笠さんには党派をこえて京都をよくしたいという声がよせられ、日本の良識を代表する方々からの期待の声が日に日に広がっています。

 「民主府政の会」が府民のみなさんにアンケートをおこない、三万人を超える方々から府政への痛切な声が集まった。冊子にされています。これを読みますと60・6%の方が、いまの府政に不満だと答えておられます。六割の方は府政の転換を求めている。どうかこの声を、衣笠さんに大きく合流させて、四月九日にはすばらしい春を呼ぶ勝利をご一緒に勝ち取ろうじゃありませんか。(拍手)

小泉「改革」の害悪が全国でもひどい京都

 国の政治をみますと、小泉「改革」の害悪が、大問題になっています。なかでもいちばん深刻なのは、国民のなかに貧困が広がっている、弱肉強食の寒々とした格差社会がつくりだされていることです。ここに一番の問題があります。

 この害悪が、京都で一番ひどい形で現れていることに、たいへん胸が痛みます。京都の事業所の減少率は全国でも最も悪いクラスです。日本が誇る伝統産業、地場産業が苦況に追いやられ、この三年間で二万三千もの事業所がなくなりました。十三万人を超える人たちの働く場が奪われ、不安定な雇用が急増しています。

 こういうときこそ地方自治体の出番のはずであります。かつて蜷川民主府政のときの合言葉だった、「住民のくらしを守る」、ここに地方自治体の一番の仕事があります。いまこそこの仕事がもとめられているのではないでしょうか。(拍手)

 ところが、山田知事は、小泉「改革」に「私も同感だ」とエールを送り、国に輪をかけた弱肉強食の政治を府政に持ち込んでいます。

 国の政治では「四点セット」が問題になっています。私は山田知事が府政に持ち込んだ「府政の冷たさ四点セット」を告発したい。

“冷たさ4点セット”―衣笠さんで転換を

第1 立場の弱い人を痛めつける

 まず第一は、立場の弱い方を痛めつけて、そのことに心を痛めないということです。

生活保護―府独自の上乗せをバッサリ

 たとえば、生活保護の問題です。小泉内閣は、ここで、老齢加算の廃止、母子加算の廃止と、つぎつぎに切り捨てる冷酷な政治をやってきました。この京都では、松島松太郎さんが、老齢加算の廃止は憲法違反だと勇気をもって裁判を起こし、全国を励ましています。松島さんは、“老齢加算を廃止されたら、お刺し身を食べることもできない、年に一、二回の国内旅行もできない。年寄りは、貧しい食事とただ寝るだけでよいとでも言うのか”。こう言って裁判に訴えられています。こういうたたかいにやむにやまれずたちあがらねばならない、弱い者いじめの政治が国から押しつけられています。

 ところが、山田府政は、この国の冷たい仕打ちに立ち向かうどころか、府独自にやっていた生活保護世帯への見舞金を廃止してしまいました。

 この見舞金は、蜷川民主府政の時代に独自に府で始めた制度です。一人世帯の場合、夏季見舞金二千七百円、歳末見舞金五千二百円。額は少ないですけれども、府独自の上乗せをしていたんです。ここには、国の生活保護の基準ではくらしていけないという国への抗議の意思が込められていたと、私は思います。これをバッサリ削ったのは、単にお金を削っただけじゃない、福祉の心を削るものです(拍手)。憲法二五条の生存権への挑戦として、許すわけにはいかないのではないでしょうか。(拍手)

障害者―この切り捨ては道理がたたない

 障害者の方々はどうでしょう。小泉内閣は、障害者の自立の道を閉ざす「自立」支援法を、昨年強行しました。これが四月から実施されます。矛盾が全国で噴き出しています。ところが、ここでも山田府政は、国の冷たい仕打ちに追い打ちをかけるやり方を持ち込んでいます。

 昨年、京都で障害者にかかわって、府独自の二つの施策が廃止になりました。

 一つは、「養護学校高等部進路支援事業」です。養護学校の進路担当の先生が、卒業生の方の新しい職場を開拓したり、就職後も定着できるようにフォローする。そのために、その仕事にあたれるように先生を補充するという制度です。

 もう一つは、「共同作業所等機能向上支援事業」です。障害者の共同作業所に技能や技術を持った人を派遣して、作業所の技術の向上をはかり、障害者の雇用を確保する制度ですが、これも廃止になりました。

 この廃止に少しでも道理があるでしょうか。府がつくった「事務事業評価調書」というのがあります。それぞれの事業の効果や、廃止したらどうなるかを調べています。養護学校の「進路支援事業」の調査票を見ますと、事業の効果は「十分な効果が上がっている」と評価したうえで、廃止した場合「養護学校高等部生徒の新しい職場開拓に支障をきたす」とのべています。共同作業所の「支援事業」の調査票を見ても、「期待した効果があがっている」と評価したうえで、廃止したら「障害者が地域の中で就労できる場の確保についても支障が生じる」と書いています。

 府みずから「廃止したら支障が生じる」としながら、二つあわせても年間三千八百万円、府の予算の0・005%、わずかなものまで削り取る。こんな理不尽な政治は、絶対に許してはなりません。(拍手)

 地方自治体は、くらしを守るためにある。そして、立場の弱い方にあたたかい政治をやってこそ、すべての府民に優しい政治ができます。そういう本物の自治体を衣笠さんでとりもどしていこうではありませんか。(拍手)

第2 府民の声に耳を傾けない

 第二の問題は、いまの官僚府政は、府民の声に耳を傾けない府政だということです。

乳幼児医療費助成―使いづらい制度ただせ

 たとえば、乳幼児医療費の助成の問題です。

 京都府では、府民のみなさんの長いたたかいと熱い思いにおされて、就学前までの乳幼児医療費の助成の拡充に踏み切らざるを得なくなりました。ところが、三歳以上については、通院した場合、「月八千円までは自己負担」、そして「償還払い」という二重の使いづらい制度になっています。

 向日市の市民団体の調査では、八千円以上の助成の対象になる人は、15%です。しかも「償還払い」は、病院の窓口でいったんお金を払い、あとで役所まで取りに行くんです。しかし役所は、休日はやっていません。ですから仕事を持っている方は、なかなか取りに行けません。向日市の調査では、半分の方が、償還払いを受けていないというんです。二重に使いづらい制度をつくった結果、九割の子どもさんが、せっかくつくった制度から排除されているのが実態です。

 この乳幼児医療費助成制度を拡充してほしいと、府民のみなさんからたくさんの署名など切実な要求が寄せられています。その中で、府内二十八市町村のうち二十五市町村は、「償還払い」をやめて窓口給付にするとか、八千円の自己負担を引き下げるなど、府制度に上乗せした独自の助成をやっています。

 ところが、府は絶対にやろうとしない。「全国で一番進んだ制度だ」といいはって、使いづらい制度を続けています。京都市も府に右へならえしてこの冷たい制度を続けています。「府市協調」と言いますが、「府市共犯」です(拍手)。とりわけこの京都市内から使いづらい制度をなおせ、子どもさんが安心して医療が受けられる京都をつくろう、という願いを衣笠さんに託していただきたいのです。(拍手)

洛東病院の廃止―「希望の光」うばったことは許せない

 「府民の声に耳を貸さず」という点では、洛東病院の廃止問題も、大問題だと思います。洛東病院は一九七三年に、当時の蜷川さんのもとでリハビリ医療の拠点として整備されて、大きな役割を果たしてきました。府民の大事な財産でした。多くの府民のみなさんと患者の方々が、自由のきかない体をおして運動を広げ、三万を超える廃止反対の署名が寄せられたとうかがいました。これを無視して「経営の視点」が大事だと、「経営」の一言でつぶしたのが今の知事です。

 私どもの「しんぶん赤旗」に、この病院に通っておられた患者さんから、こういう声が寄せられました。「リハビリは、失った機能を回復させるだけでなく、人間として再び生きていく希望を見つけ出すことでもあります。知事は『希望の京都』とさかんに言っていますが、ならばなぜ、『社会復帰の希望の砦(とりで)』であった洛東病院をつぶしたのですか」

 この声になんと答えるのか。リハビリで不自由だった手足が少しでも戻れば、ご本人も、介護しているご家族も、うれしいものです。それは希望です。「希望の京都」と言いながら、府民の「希望の光」をうばったこのやり方は、断じて許すわけにはいかないではありませんか。(拍手)

 地方自治体とは「住民が主人公」の機関です。住民の声を聞くのが地方自治体の基本の姿勢でなければなりません。このあたりまえの姿勢を衣笠さんでとりもどしていこうではありませんか。(拍手)

第3 国の悪い政治おしつけの総務省「京都出張所」

 第三の問題です。いまの府政は、国の悪い政治押しつけの、総務省の「京都出張所」になっている。こうズバリ言いたいと思います。(拍手)

国保証―命にかかわる取りあげやめよ

 たとえば、国保証の問題です。国が、国保料を払えない方から、「国保証を取り上げろ」と法律の改悪をしました。

 これを一番熱心に実行したのが京都の前の知事の荒巻さんでした。他県にない、保険証取り上げの「連絡文書」を、すべての市町村に送りつけて、国いいなりに保険証取り上げの号令をかけました。

 今の官僚知事は、これを「継承する」という姿勢をつづけ、国保証取り上げの世帯は、前の府政時代の約一・五倍に増えました。三万世帯を超えています。滞納世帯にしめる取り上げ率は、全国平均が29・6%、京都府は36・9%、東京都の二・七倍、大阪・愛知の一・五倍。全国的にもひどい取り上げ率です。

 たとえ国の法律が悪くなったとしても、お金が払えないからということだけで、命にかかわる保険証を取り上げることはやるべきでない。それがあたりまえの地方自治体のあり方ではないでしょうか。(拍手)

「市町村経営支援シート」―市町村締めつけ許せない

 それにくわえて、昨年、現知事のもとで「市町村経営改革支援シート」というのが作られています。読んで驚きました。これには、国いいなりで、市町村を締め上げるプログラムが満載されています。

 昨年十月、山田知事が「市町村経営改革支援チーム」を立ち上げて、「自己診断をやれ」といって送りつけたのが、この「市町村経営改革支援シート」なのですが、市町村の仕事を、“ここまでやるか”というひどいところまで切り縮めろというプログラムが満載なのです。

 たとえば、「手数料・使用料の適正化。受益者負担」というところは、「使用料及び手数料水準の検討を定期的に行っているか」と書いています。つまり公共料金を定期的に値上げせよという号令です。

 それから、「現在無償でも、有料化を検討すべきものはないか」。たとえば京都市ではこれまでゴミ回収は無料だったでしょう。これが、十月から全面有料化されるということで、大問題になっています。府がこういう「シート」を出して、無償のものを有料にしろと号令をかけている。

 さらに、「国基準があるものについては、基準に対する水準を意識しているか」。保育料・国保料などを、国の基準に合わせて値上げせよという号令をかけている。

 「料金水準について、他団体と比較しているか」。隣の市町村に比べて安い料金があったら高くしろ、値上げ競争をやりなさいと言っています。

 この「シート」の最後は「民営化、民間委託」をじゃんじゃんやれです。病院については「統廃合や経営移譲について、検討しているか」。この号令のもとに、いま舞鶴の市立病院が縮小・民営化されようとしています。京丹後市の市立弥栄病院の産科が休止に追い込まれる。こういう事態が次々と起こっています。

 京都の府政は、知事も副知事も総務省の天下り、そして総務部長も総務省の官僚です。全国に例のない異常な総務省の「出張所」になっていますが、今の知事は市町村まで総務省の「出張所」にしていこうとしているのです。

 地方自治をまったく理解していないやり方です。市町村のくらしを守る仕事を応援するのが府政の役目のはずです。こんな鋳型にはめて、すべてを切り捨てるようなやり方を絶対に許してはなりません。(拍手)

第4 伝統産業を壊し、大企業に大盤振る舞い

 第四は、いまの府政が伝統産業をこわし、大企業に大盤振る舞いのかぎりをつくしているという問題です。

 京都には、友禅や西陣をはじめ、日本に誇る和装産業、伝統産業があります。その予算を四億円から二億円あまりに半分に減らしてしまった。その一方で大企業への大盤振る舞いは、今の知事になってエスカレートする一方です。

 山田知事は昨年、大企業が京都府に工場や本社を移転したら、補助金を出すという「雇用創出のための企業立地促進条例」を改定して、補助金の限度額を五億円から二十億円に引き上げました。

 この使い方がひどい。村田製作所という大企業は長岡京の市内に本社があります。長岡京の市内で本社を別のところに移しました。同じ市内に本社を移しているだけですから、京都府民の雇用はただの一人も増えません。それなのに一億円ポーンと渡したんです。

 その後、この村田製作所が滋賀県や福井県の工場から労働者を連れてきた。そうしたら、「新しい雇用を増やした」と五千万円追加です。京都府内で雇用はただの一人も増えないのに一億五千万円です。

京都の「活力」うばう逆立ちただそう

 雇用の支え手になっているのは中小企業、地場産業、伝統産業のみなさんです。こういう方々への予算は半分にして、そのお金をそっくり大企業にくれてやる。相手の「会」は「活力の会」とか言いますが、京都の本当の活力は、京都の町衆の活力、伝統産業や中小企業の活力を取り戻してこそ、よみがえるのじゃないでしょうか。(拍手)

 弱い者いじめ、府民の声を聞かない、国の悪い政治押しつけの出張所、そして伝統産業をこわして大企業に大盤振る舞い――「冷たさ四点セット」。ひどいですね。ですからやっぱり「あったか府政」に転換しないといけません(拍手)。どうか、あったかい府政、府民のみなさんと心のかよう政治への願いを、衣笠洋子さんに託してください。(大きな拍手)

憲法守る平和の願いを党派をこえて衣笠さんへ

 最後に強調したいのは、こういうくらしへの冷たさは、平和をこわすことにつながっているということです。

 いまの知事は、全国知事会で「憲法改定を議論しろ」と主張したそうです。くらしへの冷たさが、人間の命を破壊する戦争への道を開く、憲法をこわすことに根っこでつながっているということが、重大ではないでしょうか。

 “憲法二五条を守ろう、健康で文化的なくらしを守ろう、この願いを衣笠さんへ”とさきほど申しましたが、同時に“憲法九条を守り抜こう、平和への願いを衣笠さんに”ということを、私は心から訴えたい。(大きな拍手)

 京都で憲法九条を力強く守りぬくと宣言する知事が誕生しましたら、九条改定の動きにストップがかかります。改憲勢力が腰を抜かします。ぜひそういう素晴らしい、春を呼ぶ勝利を四月九日にはつくろうではありませんか。

 「日本の夜明けは京都から」――どうかみなさんの力で、衣笠洋子さんの勝利を最後にお願いして、私の訴えとさせていただきます。(大きな拍手)