2005年12月9日付「しんぶん赤旗」版に掲載

自衛隊のイラク派兵再延長

党首会談での志位委員長の発言(要旨)


 自衛隊のイラク派兵延長に関する八日の党首会談での、日本共産党の志位和夫委員長と小泉純一郎首相とのやりとり(要旨)は次の通りです。


■志位 「派兵延長にはまったく道理がない」

 志位氏は冒頭、次のように発言しました。

 志位委員長 自衛隊派兵をさらに一年延長することには、まったく道理がない。

 第一に、今日もなおイラク情勢の悪化が続いている根源は、米軍が無法な侵略戦争に続いて軍事占領を続け、抵抗する勢力への武力弾圧を繰り返していることにある。米軍はこれまで名前がついているだけでも百六十を超える武力掃討作戦を行っており、多くの罪のない子どもやお年寄りや女性を殺害している状況がある。そのことがイラク国民の怒りを広げ、情勢を悪化させている元凶となっている。

 こうした米軍を支援するために自衛隊のイラク派兵を継続することは、イラク情勢の前向きな打開にとって有害無益だ。イラク情勢の打開にとっていま大事なことは、期限を区切った外国占領軍の撤退であり、自衛隊のすみやかな撤退だ。

 第二に、政府はイラクへの自衛隊派兵にあたって、「非戦闘地域に限る」としてきたが、自衛隊の宿営地を狙った攻撃が十一回にも及び、車列もたびたび攻撃されている。投石による破壊もある。「非戦闘地域」という言い分がいよいよ通用するものでなくなっていることは明りょうだ。

 そして「人道復興支援」ということについても、給水活動は二月に終わり、いまは公共施設の復旧などをやっているようだが、イラク人を雇用しているといっても人数は限られており、失業問題は解決せず、不満が逆に強まるという事態になっており、「人道復興支援」のために継続するという理屈も成り立たない。

 わが党は、自衛隊派兵の延長に強く反対する。すみやかな撤退の決断をすべきだ。

■志位 「1年延長はあと1年で撤退ということか」

■小泉 「いつ撤退か、1年後に再延長かはいまいえない」

 志位氏はその上で、四つの点を首相にただしました。

 志位 今回の政府の「基本計画」にかかわって首相にただしたい点がいくつかある。

 第一の点は、自衛隊の派遣を一年延長するという方針だが、それはイラクでの自衛隊の活動をあと一年間で終了させ、撤退させるという意味なのか。

 イタリアのベルルスコーニ首相は先月二十二日、イラクに駐留しているイタリア軍部隊の撤退を二〇〇六年末までに完了するということを言明している。このことはすでに同盟国と協議ずみだといっている。

 一年間延長というのは、国民が普通に聞いたら一年たてば撤退と受け取ると思うが、そういう意味なのか。あと一年で終わりということなのかどうかをお答え願いたい。

 小泉首相 一年間延長するなかで今後のことはよく判断していきたい。いつ撤退するのか、再延長なのか、いまの時点でそれは言えない。

 志位 再延長ということをいわれたが、そうすると、状況によっては一年後にまた延長するということもありうるのか。

 首相 理論的にはその可能性はある。

 志位氏は党首会談後の記者会見で、「イタリア政府のように来年中に撤退するという方針ではなく、一年後にさらに再延長することも選択肢としてあり得るというのが首相の姿勢でした」と説明しました。

■志位 「英豪軍が撤退したら陸自はどうするのか」

■小泉 「そのときに判断する」

 志位 第二に、「イラク特措法基本計画の変更について」のペーパーの「派遣期間」というところに、「ムサンナー県で任務に就いている英国軍及び豪州軍を始めとする多国籍軍の活動状況及び構成の変化など諸事情を…よく見極めつつ…適切に対応」と書いてあるが、これはどういう意味か。

 サマワのイギリス軍の司令官は、「ムサンナ州を管轄する英軍とオーストラリア軍は来春にも撤退する」と表明している。オーストラリアの国防相も、オーストラリア軍のサマワ撤退を「来年五月までには決定する」といっている。すなわち、来年五月にはムサンナ州サマワの治安を担当している英豪軍が撤退するという状況が強まっている。

 ここに書いてある「適切に対応」とは、英豪軍がサマワから撤退したら陸上自衛隊も撤退するということか。もしそうでないなら、英豪軍撤退後の治安維持活動についてどういう見通しを持っているのか。

 首相 英豪軍について勘案しなければいけないということだ。

 志位 英豪軍が撤退した場合どうするのか。

 首相 英豪軍が撤退するとはきいていない。

 志位 あれだけ報道されている。現地の司令官も来春撤退といっている。

 首相 政府からはきいていない。

 志位 では、仮に撤退したらどうするのか。

 首相 そのときに判断する。

 志位 あまりに見通しも備えもない態度ではないか。

 志位氏は会見で、「英豪軍の撤退という問題が来年の春に迫っていても、それに対するまともな考え方もなければ備えもない無責任な姿勢を、やりとりのなかで非常に強く感じました」とのべました。

■志位 「陸自の活動範囲がサマワをこえることがありうるのか」

■小泉 「検討の対象だ」

 志位 第三に、アメリカ政府がイラクでの新規事業「地方復興チーム(PRT)」を立ち上げ、そこに陸上自衛隊の参加を打診したと報道されている。このPRTとは米軍と民間の混成チームをつくり、地方に派遣して治安にあたるというものだ。また、アメリカの国防次官がサマワ以外にも陸上自衛隊の活動範囲をひろげることを示唆したという報道もあった。サマワ以外に陸上自衛隊の活動を拡大することはありうるのか。

 首相 今のところ予定していない。

 志位 米軍から仮にそういう要請があった場合どうするか。

 首相 検討の対象だ。アメリカと協議して判断する。

 志位 拒否しないのか。

 首相 どういう協議かわからないし、どういう要請かわからないので、いえない。

■志位 「空自の活動範囲が広がる可能性は」

■小泉 「米と協力体制とり判断する」

 志位 第四に、報道では、陸上自衛隊が仮に撤退したとしても、航空自衛隊による輸送活動は継続する方向だと伝えられている。

 アメリカ政府は、バグダッドやバグダッド近郊のバラド、カタールに航空自衛隊の活動範囲をひろげることを要請していると伝えられている。

 いま航空自衛隊が行っているのは、クウェートにある基地からタリル、バスラなどイラク南部の空港へのピストン輸送だが、これがさらにひろがっていく可能性はないのか。

 首相 検討していきたい。

 志位 可能性があるということか。

 首相 現地の状況をみて、アメリカとの協力体制をとりながら判断する。

 以上のやりとりを経て、志位氏は最後に次のように首相に意見をのべました。

 志位 一年派遣延長をするというが、いっさいの“出口戦略”がないではないか。場合によっては再々延長もありうるという。英豪軍が仮に撤退した場合も「そのとき検討する」という責任のない答えしかない。陸上自衛隊や航空自衛隊の任務の拡大についても否定しない。これでは、アメリカにいわれるままどこまでもついていくということになる。こういうやり方は抜本的に再検討すべきだ。

 志位氏は会見で「アメリカがよしというまではイラクに派兵を続けるというのが政府の方針だということがはっきりしました。こういう姿勢を国民の世論とたたかいで転換させ、すみやかな撤退においこむことがいよいよ大事だと痛感しました」と語りました。