2004年12月10日(金)「しんぶん赤旗」

自衛隊のイラク派兵延長問題

党首会談での志位委員長の発言(大要)


 九日の党首会談での自衛隊のイラク派兵延長問題の志位和夫委員長の発言と小泉純一郎首相とのやりとり(大要)は次のとおりです。


志位 「派兵延長の根拠は崩れた。すみやかな撤退を」

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記者会見する志位和夫委員長(中央)と、市田忠義書記局長(左)、緒方靖夫国際局長=9日、国会内

 志位委員長 昨年十二月に、自衛隊派兵の「基本計画」を決定してから一年がたった。わが党は、派兵延長には道理がないことが、つぎの三つの点で明らかであると考える。

 第一に、イラク戦争の「大義」とされたことが、根底から崩壊し、この戦争が、無法な侵略戦争であることが、いよいよ明りょうとなった。

 戦争の最大の口実とされた「大量破壊兵器」問題について、十月、米国の調査チーム自身が、「開戦時に保有せず、開発計画もなかった」ことを最終的に言明した。

 首相は「大量破壊兵器の保有」を断定して戦争を支持し、「いずれみつかる」といって自衛隊を派兵したが、両方とも国民をあざむくものだったことが明らかになった。

 第二は、米軍が、ファルージャでの住民への無差別攻撃をおこなうなど、無法な武力弾圧路線をすすめていることが、イラク情勢の深刻な悪化をまねいていることだ。

 ファルージャでの犠牲者は、六千人を超える可能性があるとも伝えられているが、民間人への無差別攻撃は、国際人道法にそむく戦争犯罪であることは明らかだ。

 にもかかわらず、首相がこの作戦に全面支持をあたえたことは、侵略戦争と戦争犯罪の共犯者として、イラク国民全体を敵にまわす深刻な立場に日本をおいたことを意味する。

 第三に、陸上自衛隊の派兵先のサマワが「非戦闘地域」だとしてきた政府の説明も、いよいよ根底から成り立たなくなっている。

 すでに自衛隊の宿営地にたいして八回にわたって迫撃砲、ロケット砲などによる攻撃がおこなわれた。サマワで治安維持活動にあたっていたオランダ軍がおそわれ、兵士六人が死傷するという事態もおきた。

 このまま派兵をつづけるならば、自衛隊がイラク国民と「殺し、殺される」というとりかえしのつかない事態がひきおこされかねない。

 自衛隊の派兵を延長する根拠はことごとく崩れた。すみやかな撤兵を強くもとめる。

志位 「現地の治安責任者の話をきくべき」

首相 「会った方がよかった」

 志位氏は「その上で、私からとくに三点、首相にただしたい問題がある」として、次のようなやりとりがありました。

 志位 第一に、ペーパー(首相の説明資料)のなかでも書かれているが、「現地の治安情勢などの情報収集を徹底」していると政府は説明している。そこでうかがいたいのは、きょうの「共同」が配信しているサマワからの報道では、サマワの地元のムサンナ州警察本部のカリム・ミナヘル本部長が、あいついで視察に訪れた防衛庁長官らからいっさい会談の申し入れがなかったことについて、「治安情勢を知りたいなら、治安の実務責任者から話をきくべきではないか」と批判していることだ。本気になってサマワの治安について政府が責任をもつという立場に立つのだったら、少なくとも現地の治安責任者に話をきくのは当然ではないか。なぜ、そういう当たり前のこともやらないで帰ってきたのか。

 小泉首相 現地の警察本部長の方とは会った方がよかった。しかし、あとできいてみると、治安は大丈夫なのでという報告もあった。

 志位氏は記者会見で、「これは、結果的にどういう判断をしているかということが問題ではなくて、現地の治安の責任ある当事者と会わないという姿勢そのものが、本気になってサマワの治安について実態をつかみ対応するという態度ではないという、政府の姿勢の重大な問題をしめすものです」とのべました。

志位 「オランダ軍撤退後の見通しは」

首相 「アメリカ軍などと協議する」

 志位 第二に、オランダ軍が撤退をするのは三月末だときいている。これまでオランダがサマワの治安維持活動を担当してきたのだが、今後はこれがどういう部隊に引き継がれるということになっているのか、その見通しをのべていただきたい。

 首相 アメリカ軍、イギリス軍、多国籍軍などさまざまな関係者とよく協議をしたい。

 志位 一年間の派兵延長期間を決めているにもかかわらず、三月末以降の治安維持についての見通しがないというのは責任がないではないか。

 首相 (同じ答えをくりかえす)

 志位 要するに見通しをもっていないということではないか。

 志位氏は会見で、「サマワの治安維持活動をだれが担うかということについての見通しもなしに、一年間の派兵延長を決めてしまおうというわけですから、これはほんとうに責任のない立場だといわなければなりません」と指摘しました。

志位 「情勢悪化の認識はあるのか」

首相 「将来にわたって安全とはいえない」

 志位 第三は、すでに報道されているが、現地の治安にかかわる状況など変化が起こった場合は、「必要に応じて適切な措置を講じることとする」という一文が、今度の「基本計画」のなかに新たに盛り込まれると聞いている。これは間違いないか。

 首相 そのとおりだ。

 志位 この「必要な措置を講じる」ということのなかには撤退は含まれるのか。

 首相 これは当然、法律の規定のなかにそういうものがあるから、「必要な措置」のなかには撤退も含まれる。

 志位 これまでの「基本計画」にはこの「必要な措置を講じること」という項目はなかったのに、新設した理由は何か。撤退もありうるということをわざわざいれたということは、情勢が悪化したという認識があって入れたのか。

 首相 将来にわたって百パーセント安全だということは言えない。

 志位 そうだとするならば、「非戦闘地域」という認定そのものが根拠を失うではないか。

 首相 状況をみて判断する。

 志位 これは撤退以外にない。

 志位氏は会見で、「派兵延長の『基本計画』に撤退することもあるという一文を新たに入れるということは、情勢が悪化したということが念頭にあるわけです。そのなかで撤退も起こりうるということを自ら認めたわけです。そうしますと、むこう一年間はサマワは『非戦闘地域』だと認定したけれども、そこで戦闘活動が起こるということもありうるということを自認したことになるわけで、これは『非戦闘地域』だという認定そのものが、その根拠を根底から失うということになります」と批判しました。