2004年11月26日(金)「しんぶん赤旗」

「三位一体改革」どうみる―

自治体の役割まもるたたかいを

CS放送で志位委員長が発言(大要)


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CS放送・朝日ニュースター「各党はいま」で、早野透・朝日新聞コラムニスト(右)の質問にこたえる志位和夫委員長

 日本共産党の志位和夫委員長は二十五日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、国内外の課題について朝日新聞コラムニストの早野透さんの質問に答えました。このなかで政府の「三位一体の改革」に関して発言した部分(大要)を紹介します。

国庫補助負担金―国民生活支える当然の支出を削減

 早野 最近の一番大きなテーマは「三位一体の改革」で、政府や各省庁と自治体が対立した形になっているんですが、全体としてどういう立場でごらんになっていますか。

 志位 「三位一体」というのはキリスト教の言葉で、それを使うのも変な話なんですが、要するに国庫補助負担金の縮減・廃止、地方への税源移譲、地方交付税の見直しを一体にやるという話なんですよ。

 ところが、国庫補助負担金と一言でいいますけど、国庫負担金と国庫補助金とは別の性格を持っているわけですね。

 国庫負担金というのはどういう性格のものかといいますと、たとえば義務教育、生活保護、国民健康保険、介護保険など、要するに法律で国が出さなきゃならないと義務づけられている、いわばナショナルミニマム(国による最低基準)といいますか、国民の一番基本的な生活や権利を守るための国の当然の財政支出なんですね。

 早野 だから負担金。

 志位 そうです。補助金の方には、例えば公共事業の問題とか、本来地方に任すべきものも入ってるわけで、ここにはムダ遣いが行われている部分もあって改革が必要だけど、しかし私学助成みたいに教育の問題にかかわる大事なものも含まれています。これをバサッと削る。その代わりに税源を移譲するというのですが、そうすると住民の暮らしと権利を壊すいろんな問題が起こってくるんですね。

義務教育費―四十道府県は切り捨てに

 早野 大きな額で議論になっているのは義務教育の問題ですね。中学校の先生の給与というのが当面の問題になっていますが、これはどうすべきですか。

 志位 これはやはり、いまの制度を崩すというのは私は反対です。といいますのは、いまの制度を崩して義務教育への負担金をなくしてしまうと。その代わり税源移譲したとしてどうなるかというと、(文部科学省の試算で)四十七都道府県のうち七つの都府県では額が増えるんですよ。つまり、東京など税収の多い県では多少増える。しかし、残りの四十道府県は義務教育のお金が減るわけですよ。

 簡単にいえば、税収のある県は義務教育に充てるお金が増えるが、あまり税収のない県は下がるという話になる。

 早野 義務教育を削った分はちゃんと税源移譲するんだと…。

 志位 税源を移譲したとしても、その移譲された税源の収入が県によって違うわけです。

 早野 でこぼこができちゃう。

 志位 お金のある県は増えるけれども、増えるのはごくわずかなんですよ。減るところが圧倒的なんです。

 早野 そうすると義務教育のあり方が、切りつめちゃったりするようなことをせざるを得なくなる県が…。

 志位 多数になる。一番削られるのは高知県ですが、四割削られちゃう。ですから、こういう格差が生まれていいのかという問題がある。ノーベル物理学賞を受賞された小柴(昌俊)さんは、「だいたい義務教育がお金のあるなしで差ができるのはおかしい」といっていますが、私たちも本当にその通りだと思うんですね。

 義務教育への負担というのは、お金のある県もあまりない県も、国が等しくナショナルミニマムとして保障するというのが当たり前の姿です。

 早野 その辺は自民党文教族の親分の森(喜朗)さんなんかと意見が一致するわけですか。

 志位 動機は知らないけれど、これを崩していくということになると、そういう問題が生まれてきます。

 早野 そうすると単純に国に軍配を上げるとか、自治体に軍配を上げるという問題でもないわけですか。

 志位 そうですね。ともかく国庫負担金をなくしていくということになりますと、そういう一番基本のところが崩される。

 そして税源移譲といわれても、本当に補助負担金を減らした分だけ税源が移譲されるかといえば、これも保障がないんですよ。四兆円ぐらい補助負担金が減らされて、税源移譲は三兆円ぐらいで、差し引き一兆円減るんじゃないかという話もあるわけでね。実際は、そういう地方切り捨てということに全体として向かわざるを得ないことになる。

 とすると、地方団体がいろいろいっていますが、地方団体の要求のなかでも削られた分は必ず税源をという強い要求が出ていますね。これは私たちは当たり前のことだと思います。当たり前のことだけど、矛盾が政府との間で出てくるということになりますね。

地方交付税切り捨て―二重の機能壊す

 志位 もう一つの問題は、それに加えて地方交付税の切り捨てなんですよ。

 早野 これは谷垣財務相が七兆―八兆円削るといって、かなりリアクションが出ていますね。

 志位 地方交付税というのは、いまの自治体間の税源のアンバランスを調整するための機能です。そしてそれこそナショナルミニマムをどんな自治体でもできるだけ保障するという二重の機能を持っているのですが、これを壊しちゃうということになります。

 「三位一体」で国庫補助負担金が削られる。それに相応する税源移譲もやられない。そしてアンバランスが生まれる。そこに交付税の切り捨てだということになりますと、自治体全体が福祉や教育やくらしを守るという本来の機能を果たせなくなるということですから、これは大問題だと思いますね。

 早野 動機は明らかに国の財政を少し削ろうという…。

 志位 財政を削ろうというんだが、削るんだったらもっと優先的に削るべき分野というのは、われわれは巨大開発の問題とか軍事費をもっと削るべきとか主張している通りです。

 早野 さまざまな問題がからんでいますね。

 志位 全国の自治体で矛盾がうんと広がってくる問題ですから、私たちはこの流れは食い止めるという運動を全国の自治体でも起こしたいし、国会でも論陣を張っていきたいと思います。

ほんとうの地方自治の拡充にきりかえを

 早野 個々の問題では確かにいろいろ錯そうした問題があるんですが、大きく中央でなく地方に任せようという方向はいかがですか。

 志位 これは本当の意味での地方自治を充実、拡充する、そして地方の財源を豊かにする、これは私たちは大賛成なんですよ。しかしいまのやり方というのは、実際は地方に任せるといいながら地方を切り捨てようというのが実態ですし、もう一方でできるだけ国の統制をやめましょうといいながら、統制していることはたくさんあるんですね。

 介護保険のあり方でも、国民健康保険の問題でも、市町村が単位になっているところにまで国が口を出して、自治体が住民のくらしを守る独自の措置をしようとするとペナルティーを科すとか、さんざんやっているでしょう。そういうひどい暗黒の統制は手放さないまま、財政の方を切り捨てるというのがいま起こっていることですから、これは地方分権でも何でもない。本当の地方自治が必要だと思っています。

 早野 知事会がかつてのような全会一致でなく、またちょっと違った形で国にチャレンジするような形になっているわけですよね。一種の創意みたいなものは肯定すべきかと思うんですが。

 志位 これは複雑な動きがありましてね。さっきいったような国庫補助負担金の切り捨てと税源移譲という枠のなかで地方案を出しなさいというものですから、どうしてもそのなかで妥協せざるを得ない側面があったと思います。

 ただそのなかでも、財源はきちんと確保せよというのが地方側の要求ですから、これはどうしても国と矛盾が出てくる。そういう問題をきちんと見ておく必要がありますが、地方の側から国庫補助負担金をなくせという方向を出しますと、さっきいったような問題が生まれてきますから、これは私たちは首肯できない面があります。

 早野 動きとしてはどうもバサッバサッといっちゃいそうなんだけど、本当はもっと志位さんのおっしゃるように一つひとつ具体的に議論しなければいけない。

 志位 そうですね。たとえば生活保護の問題では、地方六団体のみなさんも一致して国庫負担を減らす方向に反対だとおっしゃっています。これをもしやったら大変なことになりますよ。いまの生活保護だってギリギリまで切り詰めて切り捨てをやっているところを、国庫負担を減らしちゃったら、これはもう憲法二五条を投げ捨てるようなことになりますからね。そういう矛盾がひきおこされないよう、一つひとつよく見ながら解決していく必要があると思いますね。