2003年8月8日付「しんぶん赤旗」に記事を掲載

〔HP限定〕

総選挙は21世紀の日本の進路大きく問う選挙に

CS放送 朝日ニュースター

志位委員長語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、七日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、民主党と自由党の合併問題、総選挙にどうのぞむかなどについて、質問に答えました。聞き手は、朝日新聞政治部の高久陽男記者でした。


民主党・自由党の合併問題

 高久 民主党と自由党の合併・合流どんなふうにご覧になっているか、そのへんのお話しをお伺いできればと思うんですけれども。

 志位 合併によってつくられる党が、野党として自民党政治のどこをどう変えるのか、どういう改革の中味をどう打ち出すのか、これを注視したいと思っています。

 高久 政策によっては、国会でも、今後とも中味を見ながら協力すべきところは協力していくということでしょうか。

 志位 それはその通りです。私たちは野党間の国会共闘はこれまでもやってきましたし、これは前進面もあると思っているのです。

 野党共闘というのは、最初はどちらかというと与党が横暴を働く、これに反対する「反対共闘」という面が中心だったのですけれども、最近では、たとえば(政府が)健保本人負担三割に値上げした、これを二割にもどしなさいという法案を共同で出す。あるいは、三十人学級実現の提案を共同で出す。そういう共同で政策課題を実現する動きも一歩前進していますから、国会内での一致点にもとづく協力関係は今後も大事にしていきたい。これは変わりありません。

 高久 今回民主党と自由党の合流合併の背景には、おそらく総選挙も近いということもあったと思うのですが、社民党とは選挙協力を協議しています。(共産党は)選挙、どんなふうに対応されるのか。

 志位 選挙協力をやる条件というのは現状ではないと思っています。これは先方もそういう認識のようですが、私たちも同じです。

 といいますのは、選挙協力ということになりますと、やはり基本政策――外交・内政での一致が必要になってきます。私たちの党を支持してくださるみなさんに、他党の候補者の支持をお願いする。任期四年、あるいは参議院ですと六年という期間には、いろいろな問題があるでしょう。そういうときに責任をもって「どうぞこの方を」といえるには、それだけの政策的な一致点がなければ、責任をもったものにならないというのが私たちの立場ですから。

 その立場で見ますと、いろいろな問題があるのですが、たとえば外交で見ますと、やはり日米安全保障条約にたいする立場の違いというのは大きい。私たちは、日米安保条約をなくして日米友好条約に変えて本当の独立中立の日本をつくるということを、日本の改革の中心課題に据えています。私たちはこれに手をつけないで、安保永久化の立場に立つということでは、およそまともな改革はできないという立場にたっています。

 しかし、残念ながらこの問題では政党で安保廃棄といっているのは日本共産党だけです。他の党は安保では自民党と同じ立場に立っている。安保存続、安保肯定という立場に立っているわけです。やはりここに大きな違いがあるのです。選挙協定を結んでたたかうという条件は、それ一つとってもなかなか現状ではない。

 ですから、野党がそれぞれたたかう。私たちは安保の問題でも、経済の問題でも、自民党政治の背骨の部分にせまる論戦をやって、大もとから変えるという問題提起をして選挙をたたかうつもりですけれども――それぞれがたたかって、自民党政治を打破していく。それが実際上一番効果的だと思います。

 逆にいいますと、たとえば安保問題という大問題で意見が違うにもかかわらず(選挙協定を)結んだとしますと、日本共産党は安保問題を選挙で訴えることが事実上できなくなりますよね。これだけの大問題がありながら、安保の問題をだれも訴えるものはいないということになりますと、自民党にとって一番痛いところをつく政党がなくなってしまうことになるわけで、それは自民党を利することにもなります。

細川連立政権の経験

 高久 今回も菅さんなり小沢さんなりに、小選挙区制にもとづく二大政党制というか、政権交代可能な自民党に対立する政党をつくるということなのですけれども、政党システムとこの選挙制度の関係についてはどんなふうに考えておられるでしょうか。

 志位 小選挙区制というのは、もともと中小の政党を切り捨てていくというシステム上の問題をもっているわけで、私たちは制度そのものに批判的ですし、比例代表中心の制度に切りかえるべきだと主張しています。

 二大政党制とよくいわれますが、アメリカの二大政党制を見てみましても、多少色合いが違う二つの政党があって、しかし、実際に世界戦略が変わるかといえば、ちょっとくらいは違っても、だいたい同じ路線を交代しながらやるわけですね。同じレールの上を担い手だけ変えるという二大政党制というのは、国民の本当に政治を変えてほしいという願いにこたえるようであって、実はこたえないという問題があるのです。

 日本でも経験がありまして、「非自民」の細川政権が生まれたことがありました。あのときは、いよいよ二大政党制かという議論もされたのですが、細川政権が最初に打ち出したのは、「自民党政治の基本路線の継承」ということで、結局、失敗に終わったわけです。「基本路線の継承」では、政治は変わらないですよ。基本路線を変えなければ、政治を変えていくことはできない。

 戦後の自民党政治を支えてきた基本路線というのは、外交面では日米軍事同盟を絶対的に優先する、経済では大企業の利潤の拡大、もうけの拡大をとことん応援する、この二つの原理でずっとやってきたわけですよ。

 このシステムが、制度疲労をおこして、行き詰まっているわけで、そこを大もとから変えて、本当に独立した日本、国民のくらしを応援する政治、これをつくりあげようというのが、私たちの立場なのです。そこの中身が伴わないと改革とはいえないということではないでしょうか。

 高久 もう一つ、政権交代によって、おそらくいままでの政官業の癒着体質が、ある程度ガラス張りになっていく部分があるのではないかと思うのですが…。

 志位 これも、政権交代をすれば必ず自動的にそうなるというふうには保証されないと、私は思います。中身がともなわないと。

 すなわち、企業献金を禁止する。団体献金を禁止する。こうすれば、根本から断たれると思います。しかし、それがやられなければ、結局、腐敗の構造は温存されたままになる。これも、細川政権が証明したことでした。

 あのときも、「政治改革」がいわれました。「政治改革」ということで、おもに小選挙区制というところに話がすりかえられてしまいまして、はじめは細川首相も、当時、「企業献金を五年以内に禁止する」ということをいったけれども、結局、自民党との談合のなかで、禁止というのはなくなってしまって、「見直し」になりました。

 「見直し」ということになったけれども、結局、五年後もまだ続けると。結局、禁止までメスを入れられなかったわけですよ。メスを入れられないものですから、自民党はすぐ復活してきて、まさに政官業の癒着の構造がずっと同じように続いたわけですね。

 やっぱり中身が伴わなければ、交代しただけでは(政治は)きれいにならない。これはそういう事実が証明していると思います。

総選挙にどうのぞむか

 高久 もう一つ、これも仮定の話で恐縮なのですが、仮に、民主党が次の総選挙で自民党を破って政権をつくるということになったときには、どんな対応をとられるのでしょうか。

 志位 これは、これから選挙をやるわけですから。

 私たちは、今度の選挙でぜひ反転攻勢の第一歩を踏み出すような前進を勝ち取りたいと思います。日本共産党を伸ばすことが日本の本当の改革をすすめる確かな力を大きくすることになるし、共産党という一番大もとから(自民党政治を)変える旗印をかかげている党が伸びることが、野党全体にもいい影響を及ぼすことにもなると思いますから、私は共産党がこんどの選挙で伸びるかどうかが、最大の焦点だというつもりでがんばりたいと思います。

 その先のことは、国民のみなさんがどういう審判をするかわからないわけですし、先ほどいったように、民主党が合併したあとどういう旗印をかかげるのかも、まだはっきりとは見えてこない。全体の結果のなかで判断するべきことであって、いま、それをいえるときではないのではないでしょうか。いまはやはり、いかに自民党政治を打破するか、そのために日本共産党が、本当にそのなかで大きな役割を発揮したいというところに全力をあげるべき時期ではないかと思っています。

21世紀の日本の進路の選択を問いかける

 高久 おそらく民主党は、政権選択選挙というか、民主党政権を選ぶのか、自民党政権の存続を選ぶのかということを争点に仕立ててくるのだろうと想像がつくのですが、そういうなかで、委員長のところは、どんなふうなたたかいをするとお考えなのでしょうか。

 志位 私たちは、二十一世紀の日本の進路の選択ということを、大きく国民のみなさんに問いかけたいと思います。

 すなわち、先ほどいったように、外交でいえば、日米安保体制というものを絶対化する――これは戦前でいえば「国体」と一緒ですよ――ここに指一本触れさせないと、(高久「そういう傾向が強くなっていますね」)いま、これがものすごいでしょう。

 その相手であるアメリカが、一国覇権主義で世界中で横暴をふるって、自分の気にくわないものは先制攻撃でやっつける、それから占領も勝手にやる、大量破壊兵器への対抗だといって核兵器まで使う計画までもっている。これだけむき出しの横暴な、私たちはまさに帝国主義だといっていますが、帝国主義そのものの姿を見せているときはないですよね。

 それだけに、このアメリカに従属の体制を二十一世紀に続けていていいのか、これはまさに日本の進路の大問題だと(思います)。私たちはこの問題を大きく問いかけたい。いまこそ安保をなくして本当の独立国への道を一歩進むべきときではないかと。

 もう一つ経済の問題でいいますと、さっきいった大企業のもうけと利潤(のための政治を)を戦後半世紀やってきた。ところが、だいたい九〇年代に入ってうまくいかなくなってきました。うまくいかなくなってきて自民党がとった手というのは、一方で公共事業の積み増しをやる、もう一方は金利を引き下げる。この二つの政策をやったけれどもうまくいかない。

 そこで「構造改革」ということが出てきた。これは弱肉強食で、大企業の当座の利益追求を応援するという点はもっと徹底してやりながら、弱いものはみんなつぶしてしまおうというような路線ですが、このことによって、ますます国民のくらしがひどくなる。

 ごく一握りの企業が“勝ち組”になっても、この企業も、国民の生活全体が悪くなるわけですから、企業自身の売り上げも上げられなくなって、先行きがなくなる。経済全体が閉塞(へいそく)状況におちいっている。

 大企業のもうけをただ応援するやり方ではもう行き詰まった。国民の暮らし自体を応援する経済政策への根本的切り換えをやらないとたちゆかないところにきているわけですね。外交でも経済でも半世紀続けてきたこの路線がもう成り立たない。

 だから二十一世紀の日本は、この進路自体を変える必要があるという、進路の選択を問いかけたいと私たちは思います。

 高久 外交で日米同盟を基軸にということを変えていくとすると、国連中心主義ということになるのでしょうか。

 志位 そうですね。私は、いまのアメリカ一国覇権主義といわれる横暴にたいして世界の多くの国がとっている立場というのは、国連を中心にして平和のルールを守っていく。国連憲章にもとづく平和の秩序をいかに守っていくか、そして強めていくかということです。

 経済の分野でも、弱肉強食型のアメリカ型資本主義をグローバル・スタンダードとして押しつけるのじゃなくて、各国の経済主権と平等・互恵を基礎にした新しい経済秩序、民主的経済秩序をつくりあげていく課題が大事です。

 私たちがこの間重視している異なる文明間の対話と共存という問題も二十一世紀の大きな課題です。つまり、イスラムという世界が一方であるわけですが、これを世界の文明の発展の外にあるかのようにみなして、それとの衝突を必然視する考え方が、ブッシュ政権の一部にもあります。「十字軍」といったりするわけですから。そういう考えではなくて、対話と共存によって二十一世紀の世界を築いていく。

 こういういろいろな課題を、国連という、世界大戦の惨禍を経て人類がつくりあげた機関があり、国連憲章というルールがある。そしてさまざまな民主的枠組みがある。この多国間の協力の枠組みを大事にしながら世界を構築していくことが大事ではないでしょうか。

 この前のエビアン・サミットでも、フランスがそういう立場をいい、ロシア、ドイツもそういう立場を表明しました。中国も中ロの首脳会談でもそういう立場を表明したけれど、みんな一致していったのは、一国主義ではなくて「国連を中心とした多極的な世界が二十一世紀の世界なのだ」と。これが未来ある方向だと思いますね。そういう世界を追求すべきだし、世界の大勢はそうなっているのですよ。

 そうなっているときに、日本はごく一握りの逆流に位置して、アメリカの横暴な世界戦略にただただ唯々諾々従っているだけの国となっている。これを続けていいのか。やっぱり日本の進路が問われる選挙ですよ。

 もう一ついいますと、私は内政、外交ということをいったけれども、日本の国民の生存、存続自体を危うくするいろいろな問題があると思います。

 たとえば、少子化という問題があります。一・三という出生率をそのままにしていたら、人口が五十年で半分になる。これはもう一刻も猶予できない事態です。やっぱりこれは、子どもを生み育てやすい働く環境、女性の権利を拡大することが必要になってきます。

 エネルギーの問題でも、いまみたいな原発をどんどん増やしてプルトニウムをぐるぐる回す。こんなやり方ではうまくいかないというのが、もう明りょうになっているもとで、どういう新しいエネルギー戦略をもつのか。また農業でも自給率が四割を切ってしまうなかで、どういう食料戦略をもつのか。

 こういう二十一世紀の日本が、このままいったら国民の持続可能な生存が不可能になる事態がある問題についても、大いに私たちの対案を示して、いまの政治では解決できないですから、ここでも政治の改革が必要だと訴えたいと思います。

 高久 もう一つ、よくおっしゃるのですが、大企業の優先の政策を転換するという、それは消費者優先ということにあるのですか。

 志位 私は一つの共通のスローガンとして、いま世界でも日本でも多くの人たちが共通の認識になりつつある言葉として、「大企業の社会的責任」という言葉がある。これは非常に重要な流れだと(思います)。

 大企業というのは株主にたいして配当する、当座の利益を提供するという経済性、効率性を追求すればすむわけではない。社会的責任がある。社会的責任には、雇用にたいする責任もある、環境にたいする責任もある、地域社会にたいする責任もある、国際社会にたいする責任もある。こういう全体の責任を果たしてこそ社会も持続可能に成り立つ。経済も発展が先行きをずっと見通してできるようになる。ひいては、企業自身がまともな企業として存続し発展することができる。

 こういう考え方がEU(欧州連合)などで明りょうになって打ち出されていました。エビアン・サミットでも「企業の社会的責任」という問題が提起されました。今度、経済同友会でも三月に提言を出して、「企業の社会的責任」ということをいいました。なかなか注目して読みました。

 最近、内閣府の「国民生活白書」が出まして、若い人の雇用がひどい状態で、フリーターがどんどん増えていく、悪い労働条件におかれている、これをなんとかしなければならないという問題意識があるのですね。どこから生まれているかというと、大企業が新規採用をどんどん減らして、パート、アルバイト、派遣労働に置きかえるところに問題があるというところまではいっているのですよ。その先の処方箋はダメなのですけれど。診断は正しいんですね。

 私たちは、大企業をつぶすとか、敵視するとか、国有化するとかのプログラムはありません。大企業にはその力にふさわしい社会的責任を果たすというのがいま大事になっている。これを正面から主張できるのも、実は日本共産党しか政党ではないと思います。

 これは、さっき経済同友会の話をしましたが、財界側もいまのままのようなスタイル、つまりアメリカ型の資本主義――当座の株主にたいするもうけさえ確保すればいい、投機であれなんであれいいというアメリカ型資本主義、ギャンブル資本主義を続けていったら日本経済は成り立たなくという危機感があるのですよ。危機感があるからこそ同友会も「企業の社会的責任」を打ち出しているわけですから。

 これは、日本共産党が大いに主張すれば経済界や心ある知識人、労働界を含めて国民的合意が可能な方向性だと思います。こういう問題も打ち出したいと思います。

 

 高久 民主党や、与党側も対応しようとしているようですが、マニフェスト(政権公約)というのが最近いわれるようになっていますが、委員長のところもつくられるのですか。

 志位 公約をなんと呼ぶかはそれぞれだと思いますが、当然公約はつくります。具体的なものをつくりますが、しかしその公約をみて国民のみなさんが「この政党はこんな日本をめざしているのだな」という“目指す日本像”がなければやっぱりこれはダメだと思うのですよ。

 そういう太いものを私たちは打ち出したいと思っています。

 高久 ありがとうございました。