2003年5月12日(月)「しんぶん赤旗」

利権政治の復活許さず
県民主権の県政改革を前進させよう

徳島知事選での 志位委員長の訴え(大要)


 徳島知事選での大田正候補応援に徳島入りした日本共産党の志位和夫委員長が十日、徳島駅前でおこなった演説(大要)は次のとおりです。


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大田正知事候補勝利を訴える志位和夫委員長=10日、徳島駅前

 みなさん、こんにちは(「こんにちは」の声)。日本共産党の志位和夫でございます。(拍手)

 全国が徳島県民のみなさんの選択に熱い注目を寄せています。大田正さんを必ず再び知事におしあげていただきたい。このことをお願いするために駆けつけました。どうかよろしくお願いします。(拍手)

対照的な二つの陣営――
どちらに未来があるかは明りょう

 知事選挙は大激戦ですが、私は、二つの陣営をみますと、何から何まであまりに対照的だと思います。

大田陣営――ほんとうの“地方自治の力”が一つに合流

 私は、大田正さんの陣営には、ほんとうの地方自治の力が結集していると思います(拍手)。自治体というのは、その名のごとく住民が自ら治める――住民が自ら参加し、自らの力で、自らの進路をきめていく――ここに自治体の本来の姿があるのではないでしょうか。(拍手)

 私は、徳島県には、この力が、目をみはるばかりに、草の根からわきおこり、発展していると思います。吉野川可動堰(ぜき)に圧倒的ノーをつきつけた住民投票に、この力はしめされました。円藤元知事の汚職追及の調査団を、県民みんなの力で、署名を集め、あるいは募金を集めて、自らつくりあげていった運動にも、この力はしめされました。私は、ここに徳島の素晴らしい未来ある力を感じます。

 大田正さんの陣営には、これらの力が大きく一つに合流しています。勝手連県民ネットワークなど市民運動の力、政党の力、団体の力、個人の力、みんなの力が大同団結し、ほんとうの地方自治をつくりあげようというのが大田正さんの陣営であります。(拍手)

相手陣営――官僚候補、利権勢力、しめつけ選挙

 相手候補の陣営はどうでしょうか。何から何まで対照的です。

 まず、かついだ候補が旧自治省、いまの総務省の官僚です。旧自治省、総務省というのは、地方自治を大事に育てようという役所ではありません。地方自治体にしめつけや圧力をくわえて、国いいなりの自治体にすることを仕事にしている役所です。

 その官僚候補をかついでいる勢力が、自民党を中心とした汚職と利権の勢力です。そして、選挙のやり方も、業界をしめつける、町内会をしめつける、市町村をしめつける――しめつけ選挙であります。

 古いものがみんなそろっているではありませんか。官僚候補、利権勢力、しめつけ選挙――“三点セット”がそろっているではありませんか(拍手)。しかしみなさん、この“三点セット”こそ、全国どこでもすたれてきて、通用しなくなりつつある、古い時代錯誤の“三点セット”ではありませんか。(「その通り」の声、拍手)

日本共産党は大田勝利のため大同団結して力をつくす

 どちらの陣営に未来があるかは明りょうです。絶対にこの選挙は負けられません。

 私たち日本共産党は、清潔で県民主権の県政改革をすすめる大田正さんの勝利のために、立場の違いをこえた大同団結を何よりも大切にし、多くの県民のみなさんとともに、あらゆる力をつくしてたたかいぬく決意を表明するものであります。がんばりぬいて必ず勝利をつかもうではありませんか。(大きな拍手)

第一の争点――

道理のない知事不信任に審判をくだし、
汚職と利権の県政への逆戻りを許さない

 みなさん、選挙戦の争点は、すでにすっかりあきらかです。

 その第一は、道理のない知事不信任に審判をくだし、汚職と利権の県政への逆戻りを許さない。ここにあるのではないでしょうか。(拍手)

予算案に賛成しながら不信任――ここには道理のかけらもない

 自民、公明など野党が、三月二十日に強行した知事不信任は、まさにひとかけらの道理もない暴挙でした。

 だいたい直前の県議会では、大田知事が苦心してつくりあげ、三十五人学級や「緑の公共事業」など、県民の願いがたくさんもりこまれた予算案を、自民、公明も含む全会一致で可決しています。予算案に賛成するということは、大田県政の基本方向にはケチのつけようがなかったということではありませんか(「その通り」の声、拍手)。賛成したならば、知事と立場が違っても、きちんと議論をたたかわせながら、ともに県政に責任をもつというのが、議会人としてあたりまえではありませんか。(拍手)

 ところが、県民のみなさんに直接選ばれた大田知事を問答無用で不信任にする。ここには、どんな理屈もありません。どんないい訳もなりたちません。こういう勢力には、県政にたずさわる資格はないという審判を、はっきりとくだそうではありませんか。(大きな拍手)

利権構造温存のための不信任――卑怯、卑劣な態度

 不信任を強行した理由は明らかです。大田知事が、円藤元知事の利権と腐敗の構造の究明、根絶に、心血を注いだからであります。

 私は、昨年十一月に徳島にうかがって、大田知事にお会いしたさいに、大田さんが「この問題では、絶対にあいまいな決着は許さない」という強い信念をのべられたことを思い出します。大田知事は、その信念を断固としてつらぬきました。

 大田知事は、弁護士や公認会計士を入れた汚職調査団の設置を提案しました。これに対して野党は、「メンバーに県外の弁護士がいる。秘密が県外にもれる」といって、調査団設置費をいったんゼロにする暴挙をはたらきました。「秘密が県外にもれる」といった。「語るに落ちる」(笑い)とはこのことではありませんか(拍手)。自分たちがもれては困る「秘密」をかかえこんでいるということを告白したにひとしい発言ではありませんか。(拍手)

 しかし、このとき県民のみなさんが立ちあがった。募金を集め、署名を集め、汚職調査団をつくろうという運動をおこしました。そして、そのなかで調査団設置費をもりこんだ補正予算がとうとう通る。しかしこのときも、野党は「県外弁護士をはずせ」という「付帯決議」をつけました。しかし大田知事は断固として県外の方を含めた調査団を設置しました。そうしましたら野党はこれを「議会軽視」と攻撃する。そして、不信任に突き進みました。

 この全経過を見るならば、まさに不信任の手をくだした勢力が、事件の究明を恐れに恐れている、その姿がはっきり示されているではありませんか。(拍手)

 じっさい、不信任派は、自らも利権と腐敗に汚染されています。すでに、円藤元知事から県議など十一人に二十数万円から百万円のお金がわたっていることが明らかにされています。

 くわえて今度の県議選の後、一昨日のことですが、自民党の柴田県議が供応の容疑で逮捕されました。県議会自民党では、議長の職を狙っていたといわれている“大物県議”だそうでありますが、供応――飲ませ食わせという、汚い選挙をやって逮捕された。そのほかにも四人の県議の運動員が買収や供応で摘発されています。

 結局、この勢力は、自分たちの利権と腐敗の構造を温存し、隠すために、大田知事を不信任にしたのです。なんという卑怯(ひきょう)、卑劣な態度でしょうか(拍手)。絶対に許すわけにいかないではありませんか。(大きな拍手)

官僚候補――利権勢力にかつがれて「清潔」が語れるか

 それでは、自民、公明推薦の官僚候補は、不信任について何といっているでしょうか。朝日新聞のインタビューでこういっています。「議会も議会だし、知事も知事。議論を尽くして妥協するところは妥協するのが本来の姿なのに、妥協しなかった」(「朝日」五日付徳島版)。つまり大田知事が汚職と利権の徹底究明で「妥協」しなかったのが悪いと言っているのです。これはひらたく言えば、汚職と利権にふたをしろということではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 官僚候補は公約の第一に「清潔感」を掲げているそうでありますけれども、そんな姿勢でどうして清潔な政治ができるか(拍手)。「円藤マネー」をもらい、県議選でも買収と供応を繰り返す、逮捕者まで続出する、そういう勢力にかつがれる人物には、「清潔」などという言葉を口にする資格はありません。(拍手)

不信任ノー、汚職・利権一掃の願いを大田さんに

 知事不信任に対する県民の審判は、まず県議選でしめされました。大田知事を支える勢力は、九議席から十五議席へと躍進しました。私たち日本共産党も、二議席から四議席へと倍増させていただきました。

 まさに本番となる知事選挙で不信任問題にはっきり決着をつけようではありませんか(拍手)。道理なき知事不信任ノー、汚職と腐敗の政治一掃、この願いを大田正さんにこぞって託してください。よろしくお願いいたします。(大きな拍手)

第二の争点――

県民主権の県政改革をすすめ
るのか、逆戻りさせるのか

 第二の争点は、県民主権の県政改革をいっそう前にすすめるのか、逆戻りさせるのか。私は、ここにあると思います。

 官僚候補は、大田県政は「混乱・停滞」だと悪口をいっているそうです。しかし、これは相手にそっくり返そうではありませんか(拍手)。円藤知事の汚職による逮捕という前代未聞の不祥事を引きおこした、「混乱・停滞」の張本人は自分たちのほうではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 私は、大田県政は、激しい妨害のなかでも、わずか一年たらずのうちに希望ある変化を県政につくりだしてきていると思います。

少人数学級がスタート――知事がかわれば政治がかわる

 少人数学級が始まりました。今年四月から一年生、来年から二年生へと少人数学級が前進しています。県民のみなさんが、長年、切望していたものです。「三十人学級実現を」という県民の願いは、毎年のように県政に寄せられてきました。しかし、これに背をむけつづけてきたのが、自民・公明の県政です。少人数学級をとっても、長年のみなさんの要求にたいして、県政を「停滞」させてきたのが、自民・公明の県政ではありませんか。(拍手)

 大田知事にかわったら、みなさんの願いがすぐに県政に届き、実現の道が開かれた。知事がかわれば県政はかわる。このことをみなさんは、この一年の経験で実感されているのではないでしょうか。(大きな拍手)

「緑の公共事業」への情熱――環境保護と雇用対策の一石二鳥

 さらに、公共事業の改革がはじまりました。

 その一つは、公共事業の中身が、巨大開発型から環境・福祉型にきりかわってきているということです。

 大田知事が情熱をもってすすめている「緑の公共事業」というのがありますね。昨年の十一月に大田さんにお会いしたときに、大田さんは、私に、この事業のもつ意義を熱心に話してくれました。「私が、子どものころは、徳島の山は豊かな山だった。カブトムシ、キジ、スズメなどたくさんの生物が住んでいた。ところがいまはスギ、ヒノキばかりの山になり、荒れて、生物もほとんどいなくなっている。ぜひ私は、十年がかりで森林整備をおこない、命あふれる豊かな山を徳島に取り戻したい」。こうおっしゃられていたのが、私の心にしみました。

 そして、大田さんは、「この森林整備という事業は、八割が人件費になる。鉄やコンクリートにお金の大半が使われてしまうダムなどと違って、八割が人件費だ。環境保護と雇用対策が一石二鳥になる」。こういうことも、いわれていました。

 まさに、夢もあれば、希望もある仕事です。大田正さんに、この仕事をやりとげてもらおうではありませんか。(大きな拍手)

地元企業に仕事を確保――この道でこそ地域経済に活力が

 いま一つ、公共事業の改革という点で、私が感心したのは、地元企業のみなさんの仕事を確保する仕組みを大田知事がつくったということです。これまで、県外の大手ゼネコン中心だった十億円以上の公共事業を、県内企業が受注できる仕組みに改革したとうかがいました。

 たとえば、県立高校の改築です。だいたい十億円以上の事業になるわけですが、円藤県政の時代には、鳴門高校、小松島高校の改築の仕事は、フジタなど東京の大手ゼネコンにもっていかれてしまったとのことです。しかし、大田県政に変わって、城東高校の改築は、県内業者さんがこれを受注した。大きく変わってきていますね。

 それから、今度、総工費二十一億円の「徳島障害者交流プラザ」というのをつくるそうですが、これも分離分割発注などで、県内業者さんの仕事になるそうです。同じ規模の事業で、円藤県政時代に二十四億円の「県総合教育センター」というのがありますが、落札したのは大阪本社の大手ゼネコンの奥村組でした。

 着実な改革の道を歩みはじめている。みなさん、大田知事の改革の方向でこそ、徳島で汗をかき、働いている地元の業者さんの仕事もきちんと確保ができ、徳島の産業の活力、経済の活力もつくれるのではないでしょうか。(拍手)

相手候補は可動堰も「選択肢の一つ」――亡霊よびおこす人はお断り

 それでは、公共事業の問題で、自民・公明推薦の官僚候補は何と言っているでしょうか。

 私が驚いたのは、この候補が出馬の記者会見で、吉野川可動堰について、「選択肢の一つ」と言ったということです。その後、ごまかしているようですが、だいたい人間は、最初に言ったことが本音なんです(笑い、拍手)。ここに本音があるのは、間違いありません。しかし、みなさん、可動堰といえば、二〇〇〇年一月の住民投票で、みなさん方が圧倒的に「ノー」の審判を下した、徳島では決着済みの問題ではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 この二〇〇〇年一月の住民投票というのは、歴史的意義をもつ勝利でした。全国に衝撃を与えました。同じ年の十月に、長野県では「脱ダム」を掲げた田中県政が誕生しました。全国に大きな希望を与えたのが、この住民投票の結果でした。すでに葬られた亡霊を呼び起こすような人には県政をまかすことはけっしてできません。(大きな拍手)

「国から仕事をもってくる」というが――巨大開発では税金が吸い上げられるだけ

 それから、官僚候補は、「国から仕事を持ってくる」というのが、“売り物”だそうです。しかしみなさん、持ってくる仕事は巨大開発です。巨大開発が県の経済をよくするか。

 先日、大田さんの応援にみえた長野県の田中知事が、痛烈に批判しています。なぜ長野では「脱ダム」をすすめたか。田中さんは、「ダム建設の仕事は、その八割が東京と大阪のゼネコンにもっていかれてしまう。ところが、ダムにかかる税金のうち国からくるお金は七割、三割近くは地元で出さなければならない。県民が三割近くも税金で負担しているのに、県内の企業にまわってくる仕事は二割しかない」。田中知事のいうように、巨大開発というのは、「国から仕事がくる」のではない。東京と大阪のゼネコンにお金がすいあげられるだけの仕組みなのです。

 官僚候補は、「国から仕事を持ってくる」といっていますが、実態はそうではありません。みなさんの税金をゼネコンに献上するシステムをつくろうというのが、官僚候補のやろうとしていることなのです。(拍手)

「できる知事」というが――つくったのは借金の山だった

 さらに、官僚候補は、自分のことを「できる知事」といっているそうです。ほんとうに「できる」人は、自分でそういわないものですが(笑い、拍手)、この官僚候補が、これまで全国をあちこち渡り歩いて、やってきたことが何だかごぞんじでしょうか。

 この人物が埼玉県に出向し、財政課長を務めた当時、すすめたのは「さいたま新都心」などの巨大開発でした。私は、埼玉にも応援に行きましたが、残したのはひどい借金の山です。この「できる知事」が財政課長に在任した二年間で、埼玉県の借金は約五千億円も増えたのです。つまり、「できる知事」とは、借金が「できる」知事だ(笑い)、というのが正体ではありませんか(拍手)。こんな人物は願い下げです。

 みなさん、大田正さんの再選で、可動堰ノー、県民主権の県政改革をさらに前進させようではありませんか。(大きな拍手)

横暴勝手はもはや通用しない――
大田さんが勝利すれば前途は洋々と開かれる

 大田さんが今度の選挙で勝利しますと、前途は洋々と開けてまいります。

 県議選で、大田知事を支える勢力は、県議会の定数の三分の一を上回りました。もう不信任はできません。予算の否決もできません。横暴勝手をやる力はありません。無法は簡単には通りません。

 今度の選挙で、大田さんが勝利すれば、みんなでつくる徳島県政が、前途洋々と発展することは間違いありません。安心して大田さんを選んでください。激戦を勝ち抜かせていただきたい。

 そのことを最後にお願いして、私の訴えにかえさせていただきます。ありがとうございました。ともにがんばりましょう。(大きな拍手)