2003年5月4日(日)「しんぶん赤旗」

米の無法戦争に参加する有事法案廃案に

5・3集会でのスピーチと特別発言


 三日、東京・日比谷公会堂で開かれた5・3憲法集会での特別発言とスピーチの要旨を紹介します。


憲法9条守り、平和のルール
とりもどす共同の輪広げよう

日本共産党 志位和夫委員長

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 日本共産党の志位和夫委員長は、ブッシュ米大統領が「戦争に勝利した」「イラクを解放した」と誇らしげに宣言したことに、「米国にその言葉を口にする資格はない」と厳しく批判。イラク戦争が、無法な侵略戦争で非人道的な戦争だったことにいささかも変わりはないこと、米国が無法な軍事占領をおこない、米国いいなりの政権樹立をめざしていることを告発し、国際社会が「無法な戦争の追認をしない」「新しい植民地主義を許してはならない」と訴えました。

 「世界の平和のルールをとりもどしていく希望はあるでしょうか」と語りかけた志位氏は、「今度のイラク戦争ほど、国連が戦争をくい止めるために力と機能を発揮したことがなかった」として、その歴史的意義を解き明かしました。

 米国は、国連安保理で二度にわたって「外交では敗北」しました。それは、(1)昨年十月に米英提出の武力行使容認決議が拒否され、十一月に査察による平和解決の一四四一決議が採択されたこと、(2)今年二月に米英が提出した、査察を中断して戦争にきりかえる決議が拒否されたということです。安保理は半年間にわたって超大国の戦争をくい止めたのです。

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憲法を生かそうと野スピーチや訴えに聞き入る5・3憲法集会参加者=3日、東京・日比谷公会堂

 志位氏は、「こんなことは国連の歴史でかつてないこと」と強調。ベトナム侵略戦争で国連は、戦争をくい止める決議も措置もとれず、イラク戦争では堂々と侵略反対の声をあげた非同盟諸国も、ベトナム侵略戦争のときは反対の声をあげられませんでした。

 この国連の力と機能の発揮をささえたのは、「国連憲章を守れ」のスローガンを正面からかかげた数千万人規模の諸国民の平和のたたかいだったとのべ、「イラク戦争反対のたたかいは、国連憲章を守るたたかいを新たな段階に高めました。ここに確信をもって平和のルールをとりもどすために力をつくそうではありませんか」とよびかけると、大きな拍手がおきました。

 志位氏は、有事法案は「日本が攻められたさいの備え」でなく、「攻めるときの備え」が本質だとのべ、一年余の国会論戦で明らかになった二つの重大問題を指摘しました。

 第一は、「有事法案が海外での自衛隊の武力行使にはじめて公然と道を開くものとなっていること」です。法案にいう「わが国への武力攻撃」の「わが国」には、公海上の自衛隊艦船も含まれること、「武力攻撃が予測される事態」になれば自衛隊は危なくなってもその場にふみとどまり、攻撃されたら応戦することになること、「この法案は海外での武力行使法だ」と指摘しました。

 第二は、「米軍の先制攻撃の戦争に参戦する法律」ということです。石破防衛庁長官は、米国がアジア太平洋地域でイラク戦争のような国連憲章をふみやぶる先制攻撃に踏み切った場合、有事法制が発動することを「できないわけではない」と認めています。

 志位氏は、米軍の先制攻撃の戦争に武力行使をもって参戦し、国民を強制動員する有事法制の本質は、法案「修正」で少しも変わるものでないと強調。「有事法制を許さないたたかいは、憲法九条を守りぬくたたかいであるとともに、世界の平和のルールを守りぬくたたかいでもあります。廃案に追い込むため全力をあげようではありませんか」とよびかけました。

 最後に志位氏は、北朝鮮問題を外交的・平和的に解決するために「道理にたって説く」外交がもとめられていると強調するとともに、北朝鮮の核兵器開発問題などを党略的に利用して有事法制の成立を急ぐ議論の誤りを批判。「憲法九条を守り、国連憲章にもとづく平和のルールをとりもどすために、立場の違いをこえ、さらに大きな共同の輪を広げ、がんばりぬきましょう」と連帯を訴え、大きな拍手に包まれました。

平和な世界に生きてと
憲法は多くの死者が託した夢

翻訳家 池田香代子さん

 翻訳家の池田香代子さんは、ミリオンセラーとなった『世界がもし百人の村だったら』の感想の中に、「この本を日本国憲法の横においている」という人がいると紹介。英文の日本国憲法をやさしい言葉で訳した憲法前文を朗読しました。

 「憲法記念日には、芥川龍之介の『羅生門』を思い出す」と会場を不思議がらせた池田さんは、その理由を「羅生門のあった平安京には、城壁がなかった。そこに、(平和憲法の)丸腰の思想が実現している」。

 池田さんは、「物語とは、死者の思いをもののけがとりついたように語るもの」とのべ、押しつけられた憲法という考えに対して、「戦争直後、敵も味方もない、死者をたくさん見送った方々が、死者の思いがどうであったろうかと突き動かされてつくったのが、この憲法ではないか」と問いかけました。

 そして「憲法は、死者が次の世代を生きる者に、このような世界に生きてほしいと託した夢です。(誰がつくったかという)国籍を問うより、私たちは死者の夢を託された夢の子どもなのだということの方がうんと大切だと思います」と締めくくりました。

9条は基地返還運動に
計り知れない力与える

沖縄県読谷村前村長 山内徳信さん

 沖縄県読谷(よみたん)村前村長の山内徳信さん(山内平和憲法・地方自治問題研究所長)は、米軍基地を返還するたたかいで平和と人権尊重の憲法が大きな力になった経験を紹介し、改憲勢力とのたたかいを呼びかけました。

 村域の73%が米軍基地という読谷村の村長として基地の返還運動をした山内さん。村長室に憲法九条(戦争放棄)と九九条(公務員が守る義務)を掛け軸としてかかげたと話し、「この条項がどれほど大きな力を与えてくれたかは計り知れない」とのべると拍手がわきました。

 米軍パラシュート部隊の演習に使われていた用地に、日米共同使用の福祉施設や陸上競技場、文化センター施設を建設していくことにより返還に結びつけたことを紹介。「憲法九条を守りぬく知恵を出し、戦術も工夫し、それぞれの地域で改悪を許さぬたたかいを広げましょう」と呼びかけました。

復興支援室への派遣は
軍事占領行政への参加に

社民党 土井たか子党首

 社民党の土井たか子党首は、小泉首相が、アメリカのイラク攻撃への支持を表明したことについて、「憲法で戦争をしないといっている国が、国際法も国連憲章も無視したイラク攻撃を支持したことは、だれが考えても理解できない」と強調。イラクの戦後復興問題でも、小泉内閣が、従来の憲法解釈を変更し、米国防総省の復興人道支援室(ORHA)への要員派遣を決定したことをとりあげ、「軍事占領行政への参加は明らかだ。憲法を尊重、擁護しようという考えがみじんもない」と批判しました。

 土井氏は、小泉内閣・与党が、連休明けにも国会での成立を狙っている有事三法案について、「国民の主権をないがしろにして、アメリカの軍事戦略に加担して、日本を戦争できる国にするためのものだ」と告発。「廃案にむけた大きなうねりを、全国津々浦々でつくっていきましょう」とよびかけました。


特別発言

憲法の理想実現をめざす
教育基本法の改悪を許さない

法政大名誉教授 永井憲一さん

 法政大学名誉教授の永井憲一氏が教育基本法をめぐる問題について特別発言しました。

 永井氏は、三月二十日におこなわれた中教審の教育基本法のあり方についての答申について、教育の「改革」といいながら、「教育の現場の悩みがまったく議論されてはいません。教育基本法『改正』がいかに政治的なものかわかります」と批判しました。

 教育基本法の「改正」は常に憲法の「改正」とリンクされていると指摘し、教育基本法の前文が、日本国憲法の理想の実現は教育の力にまつと宣言していることを紹介。憲法を「改正」する前に、「人格の完成を第一の基本目標にかかげ、平和を愛し、憲法の民主主義を担う国民の育成をめざす教育基本法がじゃまだ」というのが改悪の狙いであることを強調しました。

 「軍備を持たないで、血を流さない平和を求めるんだという気持ちの原点にあるのが、憲法九条です」とのべ、憲法を守り、教育基本法を生かしていくためにがんばろうと呼びかけました。


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