2003年3月8日付「しんぶん赤旗」東北版に掲載

〔HP限定〕

日本共産党の大躍進で暮らし守る地方自治の流れおこそう

宮城・仙台市 志位委員長の演説から(2003年2月23日)



 日本共産党の志位和夫委員長は二十三日、仙台市の宮城県スポーツセンターで開かれた大演説会で、平和と外交、暮らしと経済、宮城県の地方政治にわたって縦横に語りました。このうち宮城県政について述べた部分を紹介します。

 次に地方政治の問題についてです。私はいま、全国行脚をやっていますが、あちこちで新しい変化に出合います。わたしの実感でいいますと、地方政治の分野では、自民党はもう立ち行かなくなっています。希望ある変化がおこっています。長野の田中県政、徳島の大田民主県政、高知の橋本県政など、あちこちで変化がおこっている。


東北でも希望ある変化が・・・

 東北でもめざましい変化があります。昨年から今年にかけて、秋田県の湯沢市、福島県の霊山町、岩手県の陸前高田市で、つぎつぎと共産党員の市長さん、町長さんが誕生しています。保守の方々と共産党との共同で、新しい政治をつくろうという流れです。
 そして成果もあがっています。たとえば秋田の湯沢市では、共産党員の鈴木さんが市長になりました。
 まだ一年もたたないのに、介護保険利用料の半額の減免をやっています。国保料の引き下げもやっています。財源はどうしているんですかと聞きました。そうしましたら、「財源はその気になれば出てくるものなんです」と。(笑い)

国保税下げ、よく考えられた案がすぐでてきた

 たとえば、介護保険の利用料の減免は、市長報酬を三割カットして、市長交際費を半分にして、黒塗り公用車をやめただけで出てきたというんです。その気になれば、出てくるんですね。「国保税を下げたのは大変だったでしょう」と聞きました。こっちはもっとお金がかかったはずで、どうしたんですかと聞きました。そうしますと、「たしかにこれは大変だと思って、公約には入れなかった」と言うんです。しかし、市長になってみたら、やはり要望が強いので、福祉局長さんに、「なんとかならないものか」と言ったところ、すぐに、「市長、この案でやってください」と持ってきたと言うんです。よく考えられた案で、ちゃんと下げられるんです。ちゃんとつくってあったんですね。福祉局も窓口で、いろんな応対をやるわけです。滞納世帯からの国保証の取り上げなんかやりたくないんです。何とかしたいと思っていた。しかし、市長が悪いからなんともならなかった。共産党員の市長になったらすぐに案を持ってくる。ずいぶん希望のある話じゃありませんか(拍手)。
 保守の方々を含めた無党派の方々と共産党とが力を合わせたら、政治を変えられる。これがいま、全国でおこっていることですから、これを宮城でも大いにおこそうじゃないかということを、心から訴えたいと思うものであります。(拍手)

浅野県政――政党の推薦は受けていないが、自民党より自民党型

巨大開発病――船のこない港に3190億円

 宮城の県政はどうか。浅野県政が三期目です。この知事さんは政党の推薦を受けていないんですが、やっている政治の中身をみますと、自民党より自民党型なんです。県議会でも自民党、公明党をはじめ、共産党以外のすべての政党が事実上のオール与党です。宮城の県政には、二つの大きな問題があります。
 第一は、自治体の「開発会社化」、巨大開発病です。たとえば、石巻港の整備事業の実態を聞いて驚きました。一九八九年に事業計画がつくられて進行中の事業ですが、計画がすごいんです。大水深のふ頭六つを含め十二ものふ頭をつくる。四千三百メートルもの巨大防波堤をつくる。ふ頭用地、工業用地として三百四ヘクタールを埋め立てる。総事業費は三千百九十億円。途方もない計画です。
 この石巻港の整備計画にすでに千五百億円が投入されて、水深十三メートルの新しいふ頭が九八年に使用開始になり、防波堤は九百メートルまでつくったそうです。新しいふ頭をつくった理由は、「四万トンクラスの大型貨物船のためのもの」ということでした。ところが船が来ない。九八年は三隻、九九年は九隻、二〇〇〇年は二隻、二〇〇一年はゼロ隻(笑い)。二〇〇二年は突如、九十三隻。
 そこで県議団が利用状況の資料を取り寄せてみましたら、この九十三隻のうち八十三隻は、港の埋め立て工事のための船だったそうです(笑い)。ともかくも、港をつくった理由だったはずの四万トンクラスの船は、九八年の利用開始以来、ただの一隻も入港していない。こうした大破たんが試されずみなのに、やめようとしないんです。破たんを突き付けられて県も動揺している。しかし、見直す勇気がないんです。九百メートルまでつくった防波堤を、ともかく二千三百メートルまで延ばしてほしい。なにがなんでも延ばしてほしい。これに固執しているんです。しかし、防波堤といったって立派なものですから、一メートルで三千二百万円です。残り千四百メートルをやると防波堤だけで四百四十八億円かかる。なんのために防波堤を延ばすのかと県議団が追及しますと、「港の波を静めるためだ」と(笑い)。波が静まれば船が来ると言っているそうであります。船が来ないのは、波が荒いからではありません。需要がないからです。ここがわからないで、これを続けるというのは、本当に愚かなやり方です。いまからでも見直し中止、この四百四十八億円もの税金を海に投げるのはやめさせようという声を、共産党への一票で示していただきたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)

アクセス鉄道と、くりはら田園鉄道、ここにも「逆立ち」政治が

 それから、仙台空港とJR名取駅とを結ぶアクセス鉄道というのも無謀な計画だと思います。県、市、民間でつくる第三セクターでやっている事業ですが、関連事業が大変たくさんあって、それを含めると総投資額は、一千二百億円以上です。今年着工で二〇〇六年開業予定だそうです。これも需要、採算の見通しはありません。
 この計画によりますと、仙台空港の利用客数は、二〇〇一年度で三百二十四万人なのが、二〇〇六年度の鉄道開業時には四百九十五万人と、利用客が一・五倍になると見込まれています。しかし、この五年間の空港の利用客は頭打ち、横ばいなんです。アクセス鉄道をつくったらどうして一・五倍になるのか(笑い)。これも説明がつかない話です。空港利用客だけでは、アクセス鉄道の採算があわないので、地域の利用者が三千八百人生まれるという見込みをやっています。しかし、調べてみましたら、予定沿線の人口は三百人しかいない。人口がどうして三年間で十三倍になるんでしょうか(笑い)。県議団の試算によりますと、開業年度には七億円の赤字になる。第三セクターというのは、こわいんです。赤字ができて返せなくなったら税金で穴埋めするんです。七億円は、みなさんの税金ということになる。
 こういうことを一方でやりながら、くりはら田園鉄道への補助金をカットするという話を聞きました。県北部の鶯沢町と石越町を結ぶ第三セクターの鉄道ですが、年間三千八百万円の補助金が県からでていた。これを打ちきる計画だそうです。こっちのほうは、二十二万五千人が現に利用しているんです。栗駒町長さんは、昨年六月の議会での所信表明のなかで、岩ケ崎高校や鶯沢工業高校に通学する生徒さんなど、「くりでん」が地元の人びとの足として重要な役割を果たしていると訴えて、存続を求めました。みなさん、県民の足として使われる見通しのない事業に巨額なお金をあてる、現に使われている住民にとってなくてはならない足を断ち切る。これも「逆立ち」政治というほかないのではないでしょうか。
 全国でまん延しているゼネコン病、巨大開発病には特徴があります。住民のみなさんの必要があるから事業をやるんじゃないのです。“事業をやれば需要がおこるだろう”という、すべてが「逆立ち」で出発します。港を掘れば船が来るだろう、アクセス鉄道をつくれば客が増えるだろう、こういうふうにすべてが「逆立ち」している。ところがそうはならないということが、全国で証明されている。この「逆立ち」政治をただす力を持っているのは、日本共産党であります。よろしくお願いします。(拍手)

自治体を営利企業化 福祉費は東北最低

 第二の大きな問題として、自治体の本業である福祉と暮らしはどうなっているのか。こっちは自治体を「営利企業」のようにしてしまうひどい政治がやられています。
 総務省が出している『統計でみる県のすがた』という行政水準の比較があります。私は、東北六県の比較をしてみました。そうしますと、宮城県は一人当たりの住民税は、六県中一位です。みなさんは一番税金を払っていらっしゃる。これは、ぜひ覚えておきたいことです。ところが一人当たりの民生費、つまり福祉費は六位、最下位です。教育費も六位、衛生費も六位、つまり巨大開発病のしわ寄せがここにきているんです。
 東北六県最下位の予算を中身で見てみますと、いくつか具体的な姿がでてきます。たとえば、特別養護老人ホームの待機者が五千六百七十八人にも及ぶと聞きました。介護保険がスタートした二〇〇〇年三月には一千百三十七人でしたから、三年間で五倍になったことになります。なんでどんどん増えるかといいますと、やっぱり県の姿勢に問題があります。高齢者の人口に対する介護の三つの施設の定員の率は、全国四十一位なんです。これは、国が基準を決めています。お年寄り百人当たり三・四人分の施設をつくらなくてはいけないという3.4%という標準を決めています。ところが、宮城県は目標そのものが3.0%なんです。私は国会で、3.4%をやったとしても待機者は解消されない、こんな標準を取り外して必要なだけつくらなければいけないと提起したことがあります。しかし、その全国水準よりも目標が下なんです。
 浅野知事さんは、「介護は在宅が基本」だとブレーキをかけているそうです。話がちがうじゃありませんか。介護保険がつくられたときには、「在宅でも施設でもサービスを選べるのが介護保険だ」というのが公約だったじゃありませんか。それが在宅のほうはどうなっているかというと、利用料が重すぎて支えきれない、そこで施設に行こうとするといっぱいで入れない、在宅も施設もだめになっている。保険料だけ上げるというのは、詐欺同然じゃありませんか。私は、利用料の軽減、施設の整備、保険料の値上げの中止、減免制度の確立に本気になって取り組まなければいけないと思います。(笑い)

国保証とりあげ。ずいぶん冷たい

 それから国保証の取り上げも、ずいぶん冷たいやり方をやっています。国保の料金が高すぎて払えない、払えない世帯から取り上げる、短期保険証が七千五百八世帯、資格証明書が九百四十七世帯。この一年間で資格証明書は二十六倍です。資格証明書というのは、窓口で全額医療費を払わなければなりません。病院に行くなということにひとしいやり方です。これが二十六倍です。県は国の言いなりで、市町村に取り上げをさせてきたのです。
 高すぎる国保料の方の手当は、県としてまじめにやりません。市町村国保会計への県からの繰り入れは、一人当たりたったの二百三十七円。全国平均七百四十九円の三分の一です。ここにこそ手厚い財政が必要じゃないでしょうか。(拍手)

ムダな防波堤の二十メートル分で35人学級が

 それから、少人数学級をやろうとしない。三十人学級をやろうとしない。全国で二〇〇二年度には二十二道県一政令市で少人数学級がはじまっています。東北六県をみましても青森、山形、秋田、福島で踏み出しています。宮城の県政は、財政難を理由にやろうとしない。しかし、三十人学級に踏み出すのに必要な予算は、十四億五千万円です。三十五人学級だったら六億円です。さっきの石巻港の防波堤を思い出してください。一メートル三千二百万円といいました。六億円というとたったの二十メートル分じゃありませんか。二十メートルをつくるのか、それとも三十五人学級にまず六億円使うのか、どっちを優先させるのかは、明りょうではないですか。(拍手)
 もうひとつ言いますと、「財政再建推進プログラム」というのも、ひどいものが出ていると思いました。二〇〇一年十月に策定したものですが、二〇〇五年までに一千二百七十件もの県独自の事業の廃止・縮小をやる。とくにみなさんの怒りが広がっているとうかがったのは、昨年十月から乳幼児、障害者、母子父子家庭児童への入院給食費助成が廃止されたことです。これで月約二万円の負担増になる。これにかかる費用は三億円です。ここでも財政が大変だからと言い訳していますが、三億円といえば防波堤にすれば十メートルです(どよめき)。他県でも有料だからと言っているそうですが、全国の半数以上は自治体で無料にしているんです。見習うのなら、こっちの方を見習うべきだと考えますがいかがでしょうか。(拍手)

党県議団の値打ちが光っている

 みなさん、巨大開発に熱中する、福祉や暮らしの仕事は手抜きする、この逆立ち政治に真正面から立ち向かって、みなさんの声を県政に届けてきたのが日本共産党県議団です。前回一名から三名に躍進し、大きな仕事をやってきました。とくに巨大開発のムダづかいに正面から切り込める党は、日本共産党しかありません。四年前の選挙では、仙台港の拡張工事と石巻港の整備の二つの港が問題になっていました。しかし、仙台港の拡張のほうは、凍結に追い込んだじゃありませんか(拍手)。今度は石巻港のムダづかいをやめさせるところまでいこうじゃありませんか。(拍手)
 暮らしを守るという点でも、みなさんの運動がバックにありますから、乳幼児医療費は二〇〇二年度から、入院については無料化が就学前まで拡充されました。この運動は、県民のみなさん、新婦人のみなさん、さまざまなお医者さんの団体のみなさん、一九七二年以来、みなさんが取り組んでこられた、そしてずっと広げてきた、とうとう入院は就学前までいきました。県民とともにいっかんして取り組んできた日本共産党の値打ちが光っています。
 日本共産党の県議団と市町村のすべての議員を、今度のいっせい地方選挙で大躍進させていただいて、自治体らしい自治体の本当の姿を取り戻そうではございませんか。お願いいたします。(大きな拍手)