2003年2月13日(木)「しんぶん赤旗」

健保3割負担凍結を―国民の声をきけ

党首討論 志位委員長の追及


 日本共産党の志位和夫委員長は十二日の党首討論で、すでに三割負担が実施されている国民健康保険の受診抑制の実態をとりあげ、四月からの健康保険本人三割負担実施の凍結を求めました。小泉純一郎首相とのやりとりを再現しました。


志位氏 “国保3割負担が重症化の一因との認識あるか”

首 相 “必要な医療おろそかにされると思っていない”

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医療費の負担増問題で小泉首相にただす志位和夫委員長=12日

 志位和夫委員長 私は、医療費の自己負担増の問題について質問します。

 政府がこの四月から強行しようとしている健保本人自己負担の三割への引き上げにたいして、きょう、日本医師会、日本歯科医師会、薬剤師会、看護協会などが、そろって「負担増凍結」の全国いっせい行動をおこなうなど、国民の怒りが広がってきています。野党四党は、本日、国会に「負担増凍結」の共同の法案を提出しました。

 私たちが、この負担増に反対する最大の理由は、医療費の自己負担増が、必要な受診を抑制し、治療を中断させ、結局国民の健康悪化を引き起こす──ここにあります。

 九七年に健保本人の自己負担が一割から二割に引き上げられたさいに、厚生省の調査で、12%、三十五万人の患者が受診をやめています。これが三割負担になったらどうなるか。いっそう深刻になる。国民皆保険とはいえなくなる。これは許せないというのが国民の声であります。

 この国民の声にたいして、総理が繰り返し答弁しているのは、「国保はすでに三割負担だ」ということです。“国保が三割なら、健保も三割にして何が悪い”と繰り返します。私はその発言を聞くたびに、総理は、国保の三割自己負担について、何の問題もないかのように言うけれども、これがどんなに重いものか、どんな実態なのかをご存じなのかと思います。

 これは政府の統計から作成したグラフです(パネルをかかげる)。赤い棒は、百人あたりの高額療養費の件数です。政管健保本人は、年間百人あたり三・二件です。それにたいして市町村国保は、高齢者と退職者を除く一般分で、十七・七件です。高額療養件数が、国保は五・六倍になる。

 高額療養費とは、自己負担が上限を超えた場合に、全額保険から給付される仕組みですが、要するに病気が重症化したケースです。重症率が五・六倍です(「高齢者が多い」とのヤジ)。高齢者、退職者を除いています。

 二割負担の健保本人とくらべて、三割負担の国保が五・六倍になるというのは、いろんな要因があるかもしれないけれども、三割負担は重い、このためにお医者さんにかかれないで、結局重症化するということを示しているのではないでしょうか。総理、どういう認識をお持ちですか。

 小泉純一郎首相 二割から三割負担になって、それは「若干負担が重くなるから、お医者さんには少し行くのをひかえようかな」という方もあるかもしれません。しかし、やはりどうしても体が悪い、お医者さんに診てもらおうというなら、三割負担もやむをえないかな、ということで、必要な医療がおろそかにされるとは思っていません。

 上限がありますから。何度も言っているように、三割負担といっても、百万円かかった場合に(負担は)三十万円じゃありませんから。上限は、今までだったら六万三千六百円でしたか。今度は七万二千円くらいになりましたけどね。百万、二百万かかっても上限がありますから、必要な医療は診ていただく。

 そして、料金が低い方がいいというのは、それはいい面もありますが、同時に、皆保険制度をどうやっていくか。病気にならないで保険料を負担している方──これからますます高齢者が増えてきますから、当然病気になる方も増えてまいります──そういうさいに、どの程度の保険料を病気にならない人が負担していただけるのか。また、税金にしても七兆円程度、毎年投入していますから、いわゆる患者負担を抑えていくと、保険制度そのものの持続可能性に問題点が起こってくる。

 そういう点を総合的に考えて、私はこれからも、患者さん自身がどの程度負担するのか、保険料をどの程度負担するのか、税金をどの程度負担するのかということを、やはり一部だけじゃなくて総合的に考えていただきたい。

 今回、三割負担といっても、乳幼児にたいしては、今度は二割負担ということになるんですから、その点も考えていただきたい。


志位氏 “3割負担は保険制度そのものを持続不可能にする”

 志位 私は三割負担が結局、重症化の一つの要因になっているのではないかということを聞いたわけですが、それについては、何のお答えもない。必要な医療は確保されているというふうにいいますが、中小業者のみなさんでつくっている全商連(全国商工団体連合会)の調査でみますと、業者の婦人の方は病気の自覚症状がありながら、8・3%の方はお医者さんにいけないという統計もあります。

 それから、(亡くなった方で)初診から亡くなるまで四人に一人は一カ月以内という。すなわち、がまんにがまんを重ねてお医者さんにいったときは手遅れで亡くなるというケースが、はっきり統計としてあらわれていますよ。

 持続可能性ということを総理がおっしゃったので、もう一度、これを見てください。結局、一人あたりの医療費、この青い棒ですが、政管健保(本人)の場合は年間十四・二万円、国保の場合は十八・九万円です。結局一・三倍になるんです。一人あたりの医療費が。結局病気が重症化すると、医療費も引き上がってしまって、制度自体が持続不可能になるんですよ。これを改革しようと思ったら、いまの税金の使い方を変える必要があるというのは、予算委員会でも申し上げました。

 この問題について、私は国保と健保の格差を問題にするなら、国保にあわせて健保を引き上げるということではなくて、国保の三割負担を下げるべきだ。

 もともと(国保の自己負担の引き下げは)八四年の健保に自己負担を導入したときに政府が公約したことですから。やはり、これは逆の方向に向かっている。(負担増の)中止を求めたいと思います。質問を終わります。


時間つぶしの逃げの答弁

志位委員長が感想

 日本共産党の志位和夫委員長は十二日、国会内で党首討論終了後に記者団から感想を問われ、「私が聞いたのは、国保で医療費三割負担を強要していることが、患者の重症化の一つの要因になるという認識があるかという一点だった。しかし、首相の答弁は、時間つぶしの逃げの答弁だった」とのべました。

 志位氏は、政管健保(本人)では、医療費二兆七千六百四十八億円のうち、高額療養費の給付額が五百五十億円で約2%であるのに対し、国保では医療費五兆八百二十八億円のうち、高額療養費の給付額が四千四百三十八億円と8・7%、一割近くを占める実態を指摘。「首相が唯一言ったのは『持続可能な制度にするため』ということだったが、逆に三割負担による重症化で医療費が増え、医療保険制度を圧迫して持続不可能にしていることが国保の実態で明らかだ」と指摘しました。

 志位氏は「三割負担をとめたいというのは、国民の澎湃(ほうはい)として起こっている声だ。ぜひ、この問題提起をそれにも役立てていきたい」とのべました。