2002年12月15日(日)「しんぶん赤旗」

イラク攻撃反対「12・13集会」

志位委員長のあいさつ


 徳島県で十八日、高知県で二十一日開かれた日本共産党演説会での志位和夫委員長の演説のうち、地方政治の部分を紹介します。


 十三日に東京・渋谷公会堂で開かれたイラク攻撃に反対する「12・13集会」で日本共産党の志位和夫委員長がおこなったあいさつ(大要)は次のとおりです。


 
発言する志位委員長

 志位和夫です。きょうはみなさんと一緒にデモ行進で最後まで歩くために参りました(拍手)。最後まで一緒に歩きましょう。(拍手)

なぜイラク攻撃に反対するのか

 今日のつどいのテーマはイラク攻撃を許すなということです。なぜ私たちはイラク攻撃に反対するのか。私は、まずその理由として、罪なき人々が”無法な力”によって殺されることは許されない、このことを言わなければならないと思います(拍手)。この戦争が引き起こされたとき、罪のない子どもたち、女性、男性、お年寄り、これらの人々がどれだけ犠牲になるか、計り知れません。

 アフガニスタンにたいする報復戦争で、いったいどれだけの民間の犠牲者があったのか。アメリカの研究者が三千人以上という数字を、ずいぶん詳細なデータをもとに出しました。しかしアメリカ政府は、何人殺したか、調べようともしないし、発表もしません。

 今年の九月十一日に、同時テロ一周年ということで、あのテロの被害にあった場所で、亡くなった方々の名前が一人一人読まれました。私はあれを見まして、一人一人の亡くなった方々への追悼の気持ちは同じです。しかし、それではアフガンで亡くなった方々への追悼はしなくていいのかと、ブッシュさんに言いたい気持ちになりました。(拍手)

 では今度、イラクへの攻撃が行われたら、どれだけの人が亡くなるでしょうか。戦争は、砂漠のなかで行われる戦争ではすまないだろうと言われています。バグダッドの市街戦になるだろうということも言われています。しかしバグダッドには五百万人もの人が住んでいる。そこを舞台に戦争が行われた場合、何十万人という人が犠牲になります。

 そして、この戦争は、イラクだけにとどまらない危険もある。この間、私たちの党として代表団を派遣しまして、中東六カ国=ヨルダン、イラク、エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦と回って、戦争反対、平和解決を訴えてきました。どこでもアラブの人たちとはみんな、戦争反対で一致したわけですが、みなさんおっしゃっていたのは、「アラブでの深刻な脅威は、イスラエルのシャロン政権だ」と。これが共通した声なんです。イスラエルのいまの政権がやっていることは、パレスチナを「敵」として、これを否定する。ひどい横暴を働いて、”小型ブッシュ”をやっているわけです。これにたいするアラブの民衆の怒りはすさまじい。そういうなかで、もしイラクに対する攻撃がやられた場合に、動乱はイラクにとどまらないで、パレスチナ・イスラエル紛争や、中東全域を巻き込むことにならないと、だれが言えるでしょうか。アラブ連盟のムーサさん(事務局長)という方がいま、一生懸命平和のためにがんばっています。この方は、イラク攻撃は「中東の地獄の門を開ける」と言いました。この結果は、だれも予想がつかないものです。私は、”無法な力”によって人々を殺させてはいけないという、この出発点から、われわれは行動を起こしたいと思うのです。(拍手)

 みなさん、殺されるのは罪なき人々だけではありません。国連憲章が殺されます。アメリカがやろうとしている先制攻撃というのは、国連憲章で許されていない、国際法蹂躙(じゅうりん)の無法です。もしアメリカがこれを、今度のような乱暴な形で実行に移すならば、世界はまさに無法と脅迫と恐怖の力が支配する、恐ろしい二十一世紀になってしまう。ですからこれは実は、二十一世紀の世界の秩序はどうあるべきかという大きな問題ともかかわってくるたたかいではないでしょうか。(拍手)

 国連憲章にもとづく平和の秩序をつくろうという一点で、みんなが団結して、これを食い止めたいと思います。(拍手)

戦争をくいとめる可能性はあるのか

 さてそれでは、この戦争を食い止める可能性はあるのかという問題です。戦争の危険はたいへん深刻です。しかし私は、戦争不可避だとは思いません。食い止める可能性はある。あるから、こうやってみんなが集まっている(拍手)。この可能性を見いだすうえで、私は十一月八日に国連安保理で採択された決議一四四一、これが大事な意味を持っていると思います。この決議にいたる過程にはいろんな議論があったけれども、全会一致でイラクに無条件で大量破壊兵器の査察を求めるという内容になりました。イラクはこれを受諾して、いま査察が始まっています。

 問題は、査察の過程で問題が起こったらどうなるか。査察の過程でイラクが義務違反をやったらどうなるか。このときの対処であります。決議一四四一では、そういうことがあったとしても、アメリカが自動的に武力の行使をしてはならない、自動的な武力行使は排除する、これをはっきり決めたのが、決議一四四一です。そういうことが起こったとしても、国連に報告され、国連が協議をし、次なる措置を決める権限を持っているのは国連だけなんだということが、はっきりと明記された。

 明記されただけではありません。国連の討論のなかでは、米国の大使のネグロポンテさんも、これは「隠れた引き金はない」とか、「武力行使の自動性を排除したものだ」とか、はっきり言いました。三つの常任理事国=フランス、ロシア、中国が共同声明を出して、この決議は「武力行使の自動性を排除したものだ」と言った。だからアラブの国であるシリアも賛成して、全会一致になったんです。

 アメリカは当初、武力行使のお墨付きの決議を得ようとした。しかしそれは、思惑どおりにはいかなかったというのが、決議一四四一であります(拍手)。この決議をしっかり守らせる。アメリカに絶対に一方的な攻撃はさせない。イラクはきちんと査察を受け入れる。これを守って双方の決議違反を許さないことで、平和解決の道をなんとしても開くことが必要です。

 もしブッシュ大統領がそれを無視してやったとしたら、二重の無法になりますよ。国連憲章を無視した先制攻撃というだけじゃない。自分も賛成した安保理決議にアメリカ自身が、それを踏みつけにするということになるわけです。私は、国連で、世界の”理性の声”が反映した決議が決められた以上、この決議に沿って、国連の枠内で平和の解決をはかるという声を、みんなであげようではないかということを、呼びかけたいと思います。(拍手)

日本は何をなすべきか

 最後に、日本の政府の問題です。日本は何をなすべきかです。私どもの代表が中東を回りましたら、中東のみなさんは、日本にたいして親近感を持っている方が多いというのです。朝鮮半島から、中国、東南アジアまでは、かつて軍国主義の侵略が行われて、いまでも深い傷跡を残していますが、幸いなことに、そこから先は、南アジアの一部までは侵略がされましたが、中東までは行きませんでした。中東から見ますと、西欧の列強と言うのは、自分たちを植民地支配した歴史をもつ国だと見えている。しかし、日本にひどい目にあった覚えは、いまのところない。ただその日本がどうして、アメリカの支援に軍艦を出すのかわからない、という感じなんですね。しかし日本は、九条をもっている平和な国、原爆の被害を受けた、そういう国だというふうに思っている。

 ですから私は、今日、この声明のなかで「日本は両国のなかで仲介の労を惜しまず」とありますでしょ。本当はこれをやるべきなんです(拍手)。それをやりうる位置にあるんです。中東の人たちは、それを日本の政府にやってくれと、どこの政府の人もいいましたよ。

 このまえ党首討論がありまして、その声を紹介しまして、中東の人びとが日本の政府に望んでいるのは、そういう九条にもとづく努力ですよと、いうことを言いましたら、小泉さんは、党首討論の場では、「戦争によらない解決を図りたい」といいました。私は、「言葉だけでなく、行動が必要ですよ」ということを言いました。そうしたら、その行動はなんですか、イージス艦じゃないですか(どよめき)。イージス艦が十六日に横須賀から出港する。このイージス艦を、なぜいま出すのか。理屈がたたないじゃありませんか。理屈がたたなくて、政府は、「いま出ている軍艦は、クーラーがきかなくて、暑くて困っている」と(笑い)。暑くて困っているというなら、帰ってくればいいじゃないですか(拍手)。これは、本当に理屈がたたない。いま、イージス艦を出すということは、イラクへの戦争の後押しを、戦争の始まる前から日本の政府がやるということであって、こんなことは、本当に日本がやるべきことでは絶対にない、私はそう思います。(拍手)

 日本政府にたいして、私たちの声を突きつけていきましょう。アメリカの無法な戦争に日本は絶対に協力するな、反対と言えと、小泉さんに迫ろうではありませんか。(拍手)

 みなさんとご一緒に、今日は最後まで渋谷の街を歩きます。今日ここに集まった方はこれだけですけれども、次はもっともっと大きくして、最後は何十万人もにして、無法な戦争を食い止めようではありませんか。(拍手)