2002年4月11日(木)「しんぶん赤旗」

党首討論で志位委員長

日ロ領土交渉をめぐる「二重外交」うきぼりに

首相 日本政府の立場は「四島」で一貫している

志位 鈴木発言は「二島で終わり」のロシア側に迎合

首相 それは日本政府の交渉ではない

志位 東郷局長も同席、鈴木議員は“一体”といっている


 十日の党首討論での日本共産党の志位和夫委員長の追及は、日ロ領土交渉で鈴木宗男衆院議員がかかわって「二重外交」をおこなっていたことを浮き彫りにしました。志位委員長と小泉純一郎首相とのやりとりを紹介します。


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小泉首相との党首討論にたつ志位委員長=10日、参院第1委員会室

 志位 私は、鈴木・外務省疑惑にしぼって質問いたします。

 鈴木宗男議員がかかわって、日ロ領土交渉において、日本政府がいわゆる「二元外交」「二重外交」を行ってきたという指摘がありますが、その事実はありますか。端的にお答えください。

 小泉 何をもって「二元外交」というのかは分かりませんが、日本政府の対ロシア外交は一貫しております。「二元外交」というのは、今のところ意味がわかりませんが、「二元外交」ということはしておりません。

 志位 否定されましたけれども、昨年三月の下旬にイルクーツクで行われた森・プーチン会談に先だって、三月五日、日ロ間で二つの会談が行われています。

 昼には日ロ専門家協議という正式の政府間の協議が行われています。

 私は、ここに外務省が行った記者ブリーフのペーパーを持ってきましたけれども、日本側からは加藤外務審議官と東郷欧州局長、ロシア側からはロシュコフ外務次官とパノフ大使が参加し、この会談では、日本側は政府の公式方針である「四島返還」論ですね――歯舞、色丹、国後、択捉、この返還を要求し、会談は不調に終わっています。これは昼の会談です。

 ところが、同じ日の夜に、日ロ間で秘密裏に会談が行われた。私あてにこの会談録が届けられました。総理にもお渡ししてお読みくださっていると思うんですが、この会談には、加藤審議官にかわって鈴木宗男議員が参加し、東郷局長も参加し、ロシア側はロシュコフさんとパノフさんと同じです。

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答弁にたつ小泉首相=10日、参院第1委員会室

 そして会談録をみますと、まず、鈴木議員は昼間の会談が不調に終わったのは、「日本には、冷戦時代の言葉を使って領土問題の議論をする人」もいるというふうに述べて、そして、「四島返還」論を当時主張していた橋本北方担当大臣、河野外務大臣を非難しております。そこにおられる福田官房長官にたいしても「官房長官の発言など気にする必要もない」といっております。

 領土問題について(会談録の)四ページをごらんになっていただきたいのですが、こう鈴木議員は発言している。

 「出来れば、無人島であり日本側に渡してもロシアが損することはないであろう歯舞群島を日本に渡し、また面積は狭く、なくなってもロシアの国益を毀損(きそん)することはないであろう色丹島を日本側に渡し、国後島、択捉島については継続的に協議を行う」と。

 こういう発言ですが、要するに「歯舞、色丹を返してくれればよい、二島で手を打ってください」というメッセージですよ。ロシア側は「歯舞、色丹の二島を返還したら領土問題は終わり」という方針です。こういうロシア側の方針に迎合する発言をやっている。

 会談の最後を見てください。鈴木議員の言葉は「皆様の希望することは何でもやる」と、ロシア側の歓心をかう言葉ですよ。

 まさに昼の会談で主張した「四島返還」論を、夜の裏会談では否定している。そして、ロシア側の「二島返還で終わり」という立場に迎合する発言をやっている。まさに、これは「二重外交」ではありませんか。国益を損ない、国民をあざむくこういうやり方は、私は許されないと考えますが、総理のご見解をうかがいたいと思います。

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 小泉 これは、今お話をうかがったのは鈴木さんの発言でしょう。日本政府の発言じゃないんですよ。ここを間違えないでください。われわれ日本政府の発言は一貫しています。四島の帰属、歯舞、色丹だけじゃない、国後、択捉も含めて四島の帰属を明確にして、平和条約交渉締結、これは一貫しているんです。ただ、議員としていろいろな活動をする人がいます。また、いろんな発言をする人がいます。しかしこれは日本政府の発言でないことをしっかりと確認したいと思います。

 志位 一議員の発言ということは、到底これは通用しません。なぜならば、東郷局長が同席しているんですよ。

 (東郷局長は)通訳じゃないんですよ。日ロ領土交渉の事実上の事務方の責任者が同席している。その席で、東郷局長を横において、鈴木議員は自分と東郷さんは一体の立場だと、繰り返しいっていますよ。これを政府間交渉とロシア側が受け取るのは当たり前じゃないですか。

 私は総理に求めたい。わが党は、千島問題に関しては全千島返還の立場です。政府の「四島返還」論とは立場を異にしています。

 しかし、私は鈴木議員と東郷局長のやったことは、政府の公式の方針にも反して、ロシア側の主張に迎合して、交渉をゆがめて、まさに国益を損なう、そういうことをやったわけですから、これはしっかり首相の責任として、きちんと調査をして、国会に報告するということを求めたいと思いますが、いかがですか。

 小泉 これは、政府の交渉ではありません。鈴木さん個人の交渉をどうしたのかは、私は定かではありませんけども、政府としてこの問題について、歯舞、色丹の二島返還で平和条約交渉を締結するなんてことは一度もいっておりません。

 志位 そういうことではあなたに領土交渉を行う資格はないと思います。以上をもって終わります。