2002年3月28日(木)「しんぶん赤旗」

02年度予算成立

宗男・加藤疑惑そのまま

「予算執行できぬ」と財務相も


 自民、公明、保守の与党三党の賛成多数で可決・成立した二〇〇二年度予算は、戦後五番目の早い成立となりました。「北方四島」支援事業などで利権をむさぼり、国益を損なう裏外交までやった鈴木宗男衆院議員、自民党元幹事長としての影響力を行使して公共事業を食い物にした加藤紘一衆院議員…。これらの疑惑の究明にフタをし、政治責任をうやむやにしたままの強行です。

 衆・参予算委員会の論戦を通じて、外務省にとどまらず、防衛庁、国土交通省など、省庁を横断して国民の税金を食い物にしていた「ムネオ疑惑」の構図が白日のもとにさらされました。加藤疑惑では、公共事業受注額の3〜5%を“口利き料金”として受注企業に上納させるシステムの存在が明らかになりました。いずれも国民の税金の還流です。

 利権の巣くつをつくりあげ、手広く集めた献金を「ムネオマネー」「加藤マネー」にして政治的影響力を広げる――それは、自民党の変わらぬ腐敗体質そのものであり、予算執行の資格にかかわる重大問題です。

 予算が公正に執行されることに重大な疑惑がかけられたまま、国会が予算を議決し、執行権限を政府に与えたら、国会自体が職務怠慢になり、厳しい批判を受けることになります。とりわけ、「ムネオ疑惑」は、予算を執行する省庁が共犯者です。

 だからこそ、日本共産党など四野党は、「真相の徹底的な究明が予算審議をすすめる不可欠の条件」として、十分な審議を尽くすよう求めてきました。わずかな審議でさえ次々噴出した鈴木氏の疑惑に政府は何度も調査を約束せざるをえなくなり、塩川正十郎財務相は「このままの形では予算の執行はできない」(六日の衆院予算委員会)とまで答弁しました。

 しかし、与党は鈴木、加藤両氏の自民党離党で疑惑の幕引きを図り、衆院では継続審議を求める野党の要求を無視して予算案通過を強行。参院では証人喚問を拒否しつづけ、疑惑を追及する野党に「ためにする議論に終始している。猛省を促したい」(自民党の金田勝年参院議員、二十七日の本会議)などといい、予算を成立させたのです。小泉首相はみずから乗り出して調査しないばかりか、「出処進退は本人が決めることだ」と人ごとの態度に終始しました。

 衆院予算委員会で野党四党は共同で、外務省所管の「北方四島」支援事業費約十億五千万円を削減する修正案を提出しましたが、与党はあっさり否決しました。

 疑惑解明の自浄能力も予算執行の能力もない。あるのは、国民への痛みの押しつけ――予算成立はそんな政府、自民・公明など与党の姿を浮き彫りにしています。(高柳幸雄記者)


不況を加速、国民に痛み

 発足一年になる小泉内閣のもと、坂道を転がり落ちるように悪化しつづけた日本経済。二〇〇二年度予算は、不況をさらに加速させ国民に痛みを強いようとする「欠陥予算」そのものです。

 「関西空港二期工事に国費三百二十一億円。そのうえ、神戸空港もつくろうというんでしょう。一体、どこに飛行機が降りればいいんだという話になりますよ」。二十六日、参院予算委員会で日本共産党の小池晃議員が小泉内閣の公共事業ばらまきぶりをこう指摘すると委員会室から思わず笑いがもれました。

 来年度予算ではこの空港のほか、川辺川ダムに百十億円。さらに東京湾、伊勢湾、紀淡海峡、豊予海峡、関門海峡、九州・天草などに橋をかけるための調査費五億五千二百万円を計上しています。これらはすべて、世界最長の明石海峡大橋より長い橋です。先の見通しもなく大型公共事業に国費を投じる姿勢は、旧来の自民党政治となんら変わりがありません。

 鈴木宗男議員が食い物にし、小泉首相自身がそのずさんな管理を認めた「北方四島」支援事業の予算もそのまま。五兆円の軍事費は聖域扱いで、米軍「思いやり予算」は二千五百億円にもなります。

 それでは、「税金の(使い方の)構造を変えたんだ」と胸を張る小泉首相が変えたものは何か。予算の中身をみると、国民負担をどう増やすかということばかりです。

 サラリーマンなどの医療費自己負担三割への引き上げに加え、母子家庭の命綱である児童扶養手当は年間にして三百六十億円もばっさり削る。国立大学の授業料の値上げや、育英奨学金の無利子貸与の縮小など、文教予算も軒なみ削減されています。

 小泉首相は予算案発表の際、「目の前の痛みを恐れるな」と述べましたが、国民に痛みを押しつけて「恐れるな」とは、よく言えたものです。

 予算案が衆院を通過した翌七日、保守党の野田毅党首は、二〇〇二年度補正予算案について、「みんな必要性を認識しているのだから、スピーディに対応するべきだ」と述べ、今回の当初予算が景気回復に役立たないことをあけすけに語っていました。

 小泉内閣が予算審議の途中に発表した「デフレ対策」の中身は、不良債権早期最終処理を中心に「構造改革」をいっそう推進する「デフレ加速策」。小泉「改革」路線のもとで、日本経済が深刻な不況に陥ったという反省はまったくありません。

 いわゆる「デフレ」が問題になるのは、物価の持続的下落だけでなく、国民の所得と消費が大きく減少したために、需要が不足し、生産も低下するという悪循環が起きているからです。

 自民党政治を切りかえ、家計を応援する方向に切り替えることが、いま切実に求められています。(佐藤高志記者)