2001年12月15日(土)「しんぶん赤旗」

志位委員長 慶大生に熱いメッセージ

"世の中で「あたり前」といわれていることも自分の頭、目と耳と足でたしかめて"


 「世の中で『あたり前』といわれていることも自分の頭、目と耳と足でたしかめて」―日本共産党の志位和夫委員長が熱いメッセージをこめた慶応大学経済学部での講義。正規の受講者のほか、「この講義をとっているわけではないが、政党の委員長が話をするということなので聞きにきました」という学生などが詰めかけました。「真剣でまじめに聞いてくれました」(志位さん)という講義の様子をのぞいてみると――。


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講義する志位委員長。奥手前が小田実氏=14日、慶応大学
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慶応大学三田キャンパスの図書館。手前の「青年像」は学徒出陣の学生をいたんだかつての慶応大塾長・小泉信三(故人)の銘が刻まれています

現場からみた日本の議会政治の問題

――「私たちはどう働きかければいいの?」の質問も

 「政治の現場で、まっとうな仕事をしている共産党のリーダー」―小田実さんは志位さんをこう紹介。「市民と政治をどうつなぐのか」という話を、と“注文”しました。

 「議会というとあまりいい印象をもっていない人もいるのではないですか」。教壇に立った志位さんは、階段式の教室に座った学生の顔をみながら語りかけました。

 アメリカ、イギリス、フランス、日本―。世界の各国で議会制民主主義が「民衆のたたかいのなかでつくり上げられていった」ことを解明した志位さん。日本の政治の現場で感じている問題を三つの角度―(1)国民をきちんと代表しているか(2)審議が保障されているか(3)行政監督権が保障されているか―から提起しました。

 第一の問題では、小選挙区制や企業・団体献金、政党助成制度など民意の反映を妨げるしかけがあることが問題です。志位さんは、「自民党はなんでも民営化をいうのに、政党だけは(政党助成金で)国営化とはおかしい」とユーモアをまじえて告発しました。

 「現状と問題点は納得できる部分もあります。でも私たちの周りで、どのような働きかけができるのでしょうか」。経済学部三年生の質問です。志位さんは、アメリカで反戦Tシャツを着て登校した高校生の話を紹介しながら、「デモや集会、インターネットなど、議会を民意によって動かすよう、いろいろな手段をつくそう」とよびかけました。

「政党と市民運動は対等の立場で共同を」

――住民投票の法制化に「共感する」

 「国民は議員を選ぶだけの存在と、自分も周囲もとらえがちだったが、市民運動を通じてより能動的な役割を発揮していくことは重要だ」との感想がでたのが、議会政治と市民運動とのかかわりについてのべた部分です。

 志位さんは、「私たちは議会活動だけからものをみていません。議会活動は国民運動、市民運動の全体のなかの一部です」という見方を強調。小田さんたちとの市民・議員共同立法の経験や、徳島市での吉野川可動堰(かどうぜき)問題での住民投票を例に「政党と市民運動の関係では、上下関係でなく、対等の立場での共同が何より大切ではないでしょうか」と語りかけます。話は、昨年の日本共産党大会で「前衛党」の規定を削除したことの意味にもおよびました。

 「議会制(代議制)民主主義と直接民主主義の関係が現代の新しい問題になっている」と提起した志位さんは、とくに地方政治の場で、議会制民主主義を基本におきながら、直接民主主義の豊かな発展を探求していくことを提起。住民投票の法制化も提案しました。

 実際に市民運動を経験した大学院生からは「運動する側は働きかけのつもりでも、おしつけと感じる人もいることの難しさをどう思うか」との質問も。志位さんは「まず情報提供が大事だと思います。私たちの考えは率直にいうが、おしつけはしない。判断は相手を信頼してまかせます」とのべ、「この講義も情報提供の一つと受けとめて」とよびかけました。

 この問題に関連して、小田さんが生命倫理問題で遺伝子技術などを「金もうけに使わない」との決議を国会でおこなったらと提案。志位さんも「考え方の方向は同じです」と応じる場面も。環境経済学専攻の学生からは廃棄物処分場建設にかんする質問も出ました。

議会制民主主義

――戦争に利用するか、平和のために生かすかは、たたかいしだい

 「議会制民主主義を生かすも、殺すも国民のたたかい、市民の運動しだい」。ワイマール共和国でナチスが政権をとったことを示しながら、志位さんは自分の頭で判断することの重要性を語りかけました。

 とくにテロ問題での米国の報復戦争がもたらしたものは何かと提起。罪のないアフガニスタンの民間人のおびただしい犠牲と、「テロへの対抗」を看板にした無法を国際社会に持ちこむ動きの二つをあげました。アフガンでどれだけの民間人が犠牲になったかは、国際社会が糾明しなければならない重大問題だと提起しました。

 「日本政府は浮かれたように参戦法案を通し、米軍の支援におもむいているが、このことで失ったもの、失おうとしているものははかりしれない」。こう語った志位さんは「私は二十一世紀を決して暗い世紀になるとは考えません。平和の問題、くらしの問題、どんな問題でも不合理と不正義がおこなわれたら、社会の側から、市民の側から、反撃する日本をつくりたい」とのべました。

 小田さんも質疑応答の冒頭、「平和の問題では、同じことを考えているなと思って話を聞いた」と感想を一言。熱心に聞いていた学生は「アフガンでの戦争報道にかんするテレビの情報は相当ゆがんでいる。戦争の是非はまだ判断つかないでいるが、タリバンやビンラディンと関係ない人が殺されているという点では、戦争には絶対反対」と語っていました。

 日本共産党の志位和夫委員長が、十四日に慶応大学で行った講義の骨子は次の通りです。


議会制民主主義の諸問題について

講義骨子

一、議会制民主主義――人民のたたかいでかちとった、人類の英知の一つ

 (1)議会=議会制民主主義ではない――国民主権、普通選挙権があってこそ

 (2)各国の政治史を概観する(アメリカ、イギリス、フランス、日本)

 (3)日本の議会制民主主義の現状――現場から問題点をただす

二、国民運動、市民運動と、議会、政党とのかかわりを考える

 (1)議会活動を重視するが、議会活動からだけものをみる考えをとらない――人民的議会主義という立場

 (2)政党と市民運動の関係について――一致点を大切にして、対等の立場で共同を

 (3)議会制(代議制)民主主義と、直接民主主義の関係について

 (4)政党のあり方にもさまざまある

三、議会制民主主義を生かすも、殺すも、国民・市民の運動いかん

 (1)議会制民主主義から恐るべきファシズムが生まれた経験もある

 (2)テロと報復戦争――米軍の戦争がもたらしたものは何だったのか

 (3)世の中で「あたりまえ」といわれていることも、自分の頭と目と耳と足で判断を

 (4)二十一世紀は希望ある世紀になりうる――若いみなさんへの期待